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【新婚旅行編】四日目:確かに、こんな中なら目立たないだろうけどさ
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入場ゲートをくぐってすぐの道のりには、レストランっぽいお店やお土産屋さん、ひと息つけそうな休憩所などなど。外観がおもちゃのように可愛らしいログハウスが大きな通りの左右に並んでいた。
が、さらにもう一つ。入場ゲートよりひと回り小さなゲートをくぐった途端に世界が一変した。
「スゴい……何処までも続いていそうですね……」
まるで、一瞬の内に自然豊かな草原へとワープしてきたような。別のゾーンへと導いてくれる順路であろう青いレンガ道。先の見えない、長くて幅の太い線以外は文明の痕跡が一切見えない。海原のように延々と緑の大地が広がっていた。
ところどころに背の高い木が密集して出来た小さな森が、少し遠くには色とりどりの水晶の花畑が煌めいている。あそこは池? いや、湖だろうか? 透き通った緑がかった青色がスゴくキレイだ。
俺達よりも先に入場したであろう皆さんが、思い思いに楽しんでいる。
そのまま順路に沿ってのんびり進んでいる方々もいれば、少しそれたところへと。草花を愛でていたり、木陰で腰を下ろしていたり、草原に寝転がっていたり。あんなに沢山の方々がいらっしゃったのに、その影はぽつりとぽつりとしか見えない。
よっぽどここが広いのかな? それとも他のゾーンへと魔法陣で移動したんだろうか。
入り口付近だからだろう、まだ生き物達の姿は見えない。きょろきょろと見回していると手を引かれた。
「では、私達も参りましょうか」
「はいっ、バアルさ、ん?」
デジャヴだ。また視界がブレたかと思えば、今度は穏やかな微笑みでいっぱいになっていた。バアルさんに、横抱きの形で抱き抱えてもらえていた。
さらには額をくっつけて、甘えるように高い鼻先を擦り寄せてくれている。なんだ? この突然の大サービスは。
「えっと……これは、どういうことでしょうか?」
「まだまだ先は長うございますので、可憐なアオイの足腰に負担をかけぬようにと……お嫌でしたか?」
「ひぇ……いっ、いやいや、全然っ、目茶苦茶嬉しいですけど……ただ……」
一応、広いし、皆さん周りの景色に夢中になられているとはいえ、人の目が多いんですけど?
こういう場所では弁えないといけないんじゃ? いや、まぁ、俺もすでに結構な頻度で抱きついちゃってはいたんだけどさ。
憂いを帯びていた表情から、ぱぁっと上機嫌になったバアルさん。そのしなやかな指で、俺の髪を梳くように撫でてくれている。察し良く、素直になれない俺の気持ちを見抜いたんだろう。少し先を行く家族を見つめながら、安心させるような声色で話し始めた。
「ああ、大丈夫ですよ、アオイ。ほら、ご覧になって下さい、あちらの方々は肩車をしてお散歩を楽しんでおりますよ」
「いや、乗っている方はお子さんですし!」
「手を繋いでいらっしゃる方々も、肩を抱き合っていらっしゃる方々も大勢いらっしゃいますよ?」
確かに、さっきは景色ばかりに注目していたが、いざ恋人同士か夫婦らしき皆さんへと注目してみれば、どなたもそなたも距離が近い。ほとんど抱き合っているような密着具合だ。
元々リゾート地であり、新婚さんにはサービスをするくらいに大歓迎なだけはある。皆さん大っぴらだ。お熱い雰囲気を隠そうともしない。確かに、こんな中なら目立たないだろう。っていうか、そもそも皆さん景色かお互いしか見ちゃあいない。でも、だからといって。
「お散歩って言ってたじゃないですか……バアルさんと一緒に歩きたいんですけど」
「……左様で、ございましたね」
意外にもすんなりと。大きく広がった羽を落ち着きなく揺らしながら下ろしてくれた。ただ、いつものエスコートと比べたら、身を寄せ合うような形になってはいるけれども。
「……あの」
「はい、アオイ」
「もし、その……ぎゅってしたくなったら言って下さいね……俺も……したくなったら、言いますから……」
いくらなんでもはっちゃけ過ぎただろうか。バアルさんは、その長い足をピタリと止めてしまったどころか瞬きすらしていない。
「ご、ごめん……やっぱナシで」
「今、抱き締めさせて頂いても?」
「へ?」
「御身を抱き締めさせて頂いても宜しいでしょうか?」
前のめりな姿勢で俺の手を取ってくれたバアルさんは、いつもと変わらず渋くてカッコいいのに、何だかとっても可愛くて。
「ふふ、いいですよ。あ、でも、もうちょっと入口から離れたところ、でっ」
つい、さっきぶり。またしても俺は彼の腕の中に抱き抱えられてしまっていた。
しかも、今回はすんなりとは。彼が満足してくれるまでの間、俺は彼から香るハーブの匂いに包まれながら緑の景色を楽しむこととなった。
が、さらにもう一つ。入場ゲートよりひと回り小さなゲートをくぐった途端に世界が一変した。
「スゴい……何処までも続いていそうですね……」
まるで、一瞬の内に自然豊かな草原へとワープしてきたような。別のゾーンへと導いてくれる順路であろう青いレンガ道。先の見えない、長くて幅の太い線以外は文明の痕跡が一切見えない。海原のように延々と緑の大地が広がっていた。
ところどころに背の高い木が密集して出来た小さな森が、少し遠くには色とりどりの水晶の花畑が煌めいている。あそこは池? いや、湖だろうか? 透き通った緑がかった青色がスゴくキレイだ。
俺達よりも先に入場したであろう皆さんが、思い思いに楽しんでいる。
そのまま順路に沿ってのんびり進んでいる方々もいれば、少しそれたところへと。草花を愛でていたり、木陰で腰を下ろしていたり、草原に寝転がっていたり。あんなに沢山の方々がいらっしゃったのに、その影はぽつりとぽつりとしか見えない。
よっぽどここが広いのかな? それとも他のゾーンへと魔法陣で移動したんだろうか。
入り口付近だからだろう、まだ生き物達の姿は見えない。きょろきょろと見回していると手を引かれた。
「では、私達も参りましょうか」
「はいっ、バアルさ、ん?」
デジャヴだ。また視界がブレたかと思えば、今度は穏やかな微笑みでいっぱいになっていた。バアルさんに、横抱きの形で抱き抱えてもらえていた。
さらには額をくっつけて、甘えるように高い鼻先を擦り寄せてくれている。なんだ? この突然の大サービスは。
「えっと……これは、どういうことでしょうか?」
「まだまだ先は長うございますので、可憐なアオイの足腰に負担をかけぬようにと……お嫌でしたか?」
「ひぇ……いっ、いやいや、全然っ、目茶苦茶嬉しいですけど……ただ……」
一応、広いし、皆さん周りの景色に夢中になられているとはいえ、人の目が多いんですけど?
こういう場所では弁えないといけないんじゃ? いや、まぁ、俺もすでに結構な頻度で抱きついちゃってはいたんだけどさ。
憂いを帯びていた表情から、ぱぁっと上機嫌になったバアルさん。そのしなやかな指で、俺の髪を梳くように撫でてくれている。察し良く、素直になれない俺の気持ちを見抜いたんだろう。少し先を行く家族を見つめながら、安心させるような声色で話し始めた。
「ああ、大丈夫ですよ、アオイ。ほら、ご覧になって下さい、あちらの方々は肩車をしてお散歩を楽しんでおりますよ」
「いや、乗っている方はお子さんですし!」
「手を繋いでいらっしゃる方々も、肩を抱き合っていらっしゃる方々も大勢いらっしゃいますよ?」
確かに、さっきは景色ばかりに注目していたが、いざ恋人同士か夫婦らしき皆さんへと注目してみれば、どなたもそなたも距離が近い。ほとんど抱き合っているような密着具合だ。
元々リゾート地であり、新婚さんにはサービスをするくらいに大歓迎なだけはある。皆さん大っぴらだ。お熱い雰囲気を隠そうともしない。確かに、こんな中なら目立たないだろう。っていうか、そもそも皆さん景色かお互いしか見ちゃあいない。でも、だからといって。
「お散歩って言ってたじゃないですか……バアルさんと一緒に歩きたいんですけど」
「……左様で、ございましたね」
意外にもすんなりと。大きく広がった羽を落ち着きなく揺らしながら下ろしてくれた。ただ、いつものエスコートと比べたら、身を寄せ合うような形になってはいるけれども。
「……あの」
「はい、アオイ」
「もし、その……ぎゅってしたくなったら言って下さいね……俺も……したくなったら、言いますから……」
いくらなんでもはっちゃけ過ぎただろうか。バアルさんは、その長い足をピタリと止めてしまったどころか瞬きすらしていない。
「ご、ごめん……やっぱナシで」
「今、抱き締めさせて頂いても?」
「へ?」
「御身を抱き締めさせて頂いても宜しいでしょうか?」
前のめりな姿勢で俺の手を取ってくれたバアルさんは、いつもと変わらず渋くてカッコいいのに、何だかとっても可愛くて。
「ふふ、いいですよ。あ、でも、もうちょっと入口から離れたところ、でっ」
つい、さっきぶり。またしても俺は彼の腕の中に抱き抱えられてしまっていた。
しかも、今回はすんなりとは。彼が満足してくれるまでの間、俺は彼から香るハーブの匂いに包まれながら緑の景色を楽しむこととなった。
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