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【新婚旅行編】四日目:今日の平和があるのは、全ては貴方の献身のお陰なのですよ?
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白い空間ではより映える、目が覚めるように鮮やかな炎の翼。赤からオレンジを経て黄色へと移り変わっては再び赤へと戻っていく様は神秘的で美しい。温かな光の帯を周囲に広げながら燃え続けている両翼を腕のように広げながら、フェニックスは俺達に向かって細い首を下げた。
『改めまして……お会い出来て光栄です、アオイ。此方へバアルと共に遊びに来て頂き、ありがとうございます』
敬意にあふれた深いお辞儀だった。長く鋭い嘴は、止まり木を掴む足よりも低く下がってしまっている。思わず俺は椅子から立ち上がり、フェニックスに向かって両手をわたわた振ってしまっていた。
「お、俺もお会い出来て光栄です! どうか、頭を上げてくださいっ」
『ですが……』
「その方が助かるのでっ、俺を助けると思ってどうかっ」
救世主だなんて。そう言ってくれるのは嬉しいけれども、俺には勿体ないお褒めの言葉だ。だって、俺は大したことはしていない。出来てはいない。全ては皆さんの、神様の、バアルさんとヨミ様達のお力添えがあって成された奇跡なのだから。
頑なに頭を下げ続けるフェニックスと、両手を顔の前に合わせてお願いし続ける俺というカオスな攻防。どちらも引く気のない戦いの終止符は、穏やかな声からの提案によって打たれた。
「ふふ……フェニックス、他ならぬアオイからのお願いでございますよ? 叶えて上げてはいかがでしょうか?」
『……それも、そうですね。アオイがお願いするのでしたら』
柔らかに微笑むバアルさんの言葉に、フェニックスはあっさりと従った。顔を上げてくれて『お噂通り謙虚な御方ですね』と困ったように、けれどもどこか嬉しそうに瞳を細めた。
バアルさんが手招いたので俺も再び腰を下ろした。
フェニックス専用のお茶なのだろうか。俺達の前にあるティーカップと似たデザインの大きなカップが、いつの間にやら止まり木の側で浮かんでいた。あの長い嘴でいただくからだろう。カップの見た目は水瓶というか、ツボというか。いや、マグカップか? とにかく底が深い。
フェニックスが翼を閉じると、待っていたように縦長のカップがふわふわと寄ってきた。湯気立つカップに上品な仕草で嘴を入れ、ひと息ついた様子。閉じられていた青い瞳が再び俺を捉えた。
『ですが……今日の平和があるのは、全ては貴方の献身のお陰なのですよ?』
献身って……生命力を分けたこと、だよな? といっても、俺の身体に影響が出ないようにって、沢山皆さんに協力してもらってるから、やっぱり皆さんのお陰じゃ……
『皆が心を一つにする切っ掛けを作ったのが、他ならぬ貴方なのですから』
「え……?」
『貴方は人間で、元々はこの世界の住人でもなかったでしょう? そんな貴方がヨミの為に、この世界の為にと身を差し出そうとしているというのに、私達が怯えていては我らが神に顔向け出来ませんもの』
怯えていてはって……?
いくら俺が鈍いからって気のせいではないだろう。言葉の端々に感じた並々ならぬ覚悟は。だからこそ、尋ねてみていいものかと悩んでしまう。
テーブルの上に置いていた手に大きな手のひらが重ねられた。バアルさんが微笑みかけてくれていた。彼の優しい目元に刻まれているシワが濃くなっていく。
「……あの時、此方の皆様方も危険を冒してまで魔力を貸して頂けたのでございます。多大な魔力を消耗してしまっては、魔力そのものであるご自身の存在そのものを失いかねなかったにも関わらず」
「な……っ……皆さん、ご無事なんですよね?」
また腰を上げかけていたところで、擽ったそうに笑う声が頭の中で聞こえた。
『ふふ、大丈夫ですよ。誠に貴方は優しいお方ですね。だからこそ、その魔力は温かく……側に居るだけで心地が良いのでしょう』
「そんな……」
「ええ、アオイはこの老骨めには勿体ないほどに優しく、慈愛に満ち溢れた御方でございます故」
「……ちょ、バアルさんまで」
いやいや、逆ですけど? 約束通りにずっと俺の側に居てくれて、とびきりの優しさで包みこんでくれて、沢山の幸せをくれて。なのに、カッコよくて、キレイで、渋くて、可愛いとか盛り沢山過ぎて毎日毎秒ときめきっぱなし、胸いっぱいですけど?
まぁ、だからといって渡さないけど。バアルさんの一番近くは、ずっと俺専用だけど。
『改めまして……お会い出来て光栄です、アオイ。此方へバアルと共に遊びに来て頂き、ありがとうございます』
敬意にあふれた深いお辞儀だった。長く鋭い嘴は、止まり木を掴む足よりも低く下がってしまっている。思わず俺は椅子から立ち上がり、フェニックスに向かって両手をわたわた振ってしまっていた。
「お、俺もお会い出来て光栄です! どうか、頭を上げてくださいっ」
『ですが……』
「その方が助かるのでっ、俺を助けると思ってどうかっ」
救世主だなんて。そう言ってくれるのは嬉しいけれども、俺には勿体ないお褒めの言葉だ。だって、俺は大したことはしていない。出来てはいない。全ては皆さんの、神様の、バアルさんとヨミ様達のお力添えがあって成された奇跡なのだから。
頑なに頭を下げ続けるフェニックスと、両手を顔の前に合わせてお願いし続ける俺というカオスな攻防。どちらも引く気のない戦いの終止符は、穏やかな声からの提案によって打たれた。
「ふふ……フェニックス、他ならぬアオイからのお願いでございますよ? 叶えて上げてはいかがでしょうか?」
『……それも、そうですね。アオイがお願いするのでしたら』
柔らかに微笑むバアルさんの言葉に、フェニックスはあっさりと従った。顔を上げてくれて『お噂通り謙虚な御方ですね』と困ったように、けれどもどこか嬉しそうに瞳を細めた。
バアルさんが手招いたので俺も再び腰を下ろした。
フェニックス専用のお茶なのだろうか。俺達の前にあるティーカップと似たデザインの大きなカップが、いつの間にやら止まり木の側で浮かんでいた。あの長い嘴でいただくからだろう。カップの見た目は水瓶というか、ツボというか。いや、マグカップか? とにかく底が深い。
フェニックスが翼を閉じると、待っていたように縦長のカップがふわふわと寄ってきた。湯気立つカップに上品な仕草で嘴を入れ、ひと息ついた様子。閉じられていた青い瞳が再び俺を捉えた。
『ですが……今日の平和があるのは、全ては貴方の献身のお陰なのですよ?』
献身って……生命力を分けたこと、だよな? といっても、俺の身体に影響が出ないようにって、沢山皆さんに協力してもらってるから、やっぱり皆さんのお陰じゃ……
『皆が心を一つにする切っ掛けを作ったのが、他ならぬ貴方なのですから』
「え……?」
『貴方は人間で、元々はこの世界の住人でもなかったでしょう? そんな貴方がヨミの為に、この世界の為にと身を差し出そうとしているというのに、私達が怯えていては我らが神に顔向け出来ませんもの』
怯えていてはって……?
いくら俺が鈍いからって気のせいではないだろう。言葉の端々に感じた並々ならぬ覚悟は。だからこそ、尋ねてみていいものかと悩んでしまう。
テーブルの上に置いていた手に大きな手のひらが重ねられた。バアルさんが微笑みかけてくれていた。彼の優しい目元に刻まれているシワが濃くなっていく。
「……あの時、此方の皆様方も危険を冒してまで魔力を貸して頂けたのでございます。多大な魔力を消耗してしまっては、魔力そのものであるご自身の存在そのものを失いかねなかったにも関わらず」
「な……っ……皆さん、ご無事なんですよね?」
また腰を上げかけていたところで、擽ったそうに笑う声が頭の中で聞こえた。
『ふふ、大丈夫ですよ。誠に貴方は優しいお方ですね。だからこそ、その魔力は温かく……側に居るだけで心地が良いのでしょう』
「そんな……」
「ええ、アオイはこの老骨めには勿体ないほどに優しく、慈愛に満ち溢れた御方でございます故」
「……ちょ、バアルさんまで」
いやいや、逆ですけど? 約束通りにずっと俺の側に居てくれて、とびきりの優しさで包みこんでくれて、沢山の幸せをくれて。なのに、カッコよくて、キレイで、渋くて、可愛いとか盛り沢山過ぎて毎日毎秒ときめきっぱなし、胸いっぱいですけど?
まぁ、だからといって渡さないけど。バアルさんの一番近くは、ずっと俺専用だけど。
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