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【新婚旅行編】四日目:斯様にも愛らしい自己紹介があるだろうか?
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フェニックスが皆様方へお知らせをしてくれた効果なのか、それともやはりアオイの魔力と魅力が惹き寄せているのか。
「わぁっ、キレイ……こんなに魚の群れに近づいてるのに、一匹も逃げないね」
「ええ、大変美しいですね」
「あっ、イルカだ、可愛い……あれ、あの白いのってマナティ、だったっけ? それともジュゴン……?」
「ジュゴンでございますね」
「ジュゴンか、ありがとうバアル。ごめんね、ジュゴン、名前間違えちゃって」
此方でも私の妻は大変人気者だ。まだ潜って間もないというのに大歓迎を受けていらっしゃる。
眩しい笑顔を浮かべた彼が壁越しに手を振るだけで魚達は見事な統率の取れた泳ぎを披露し、イルカとジュゴンはそれぞれバブルリングを送ってきた。
いくつもの泡の輪っかが次々と生み出されては上っていく。それらを見つめるアオイの瞳は魔宝石よりも煌めいていて美しい。
眩い琥珀色は次なる発見をしたようだ。そのワクワクを共有してくれようと、繋いでいる手をちょいちょいと引きながら私に教えて下さる。
「え、ちょ、見て見てバアルっ、海の中なのに馬が居るよ! って、あれ? よく見たら下半身は魚、だよね?」
「ええ、あちらはケルピーでございますね。上半身は馬、下半身は魚の姿を持っているとのことでございます」
「へぇ……名前はどこかで聞いたことがあるかも? あっ、あっち! ほら、あの深いところに居るのは龍じゃない? もしかして、リヴァイアサンかな?」
「はい、左様でございます。アオイは物知りでございますね」
「ふぇっ、バアルほどじゃないよ……でも、嬉しいな、ありがとう。リヴァイアサン、大きくてカッコいいね!」
弾んだ声で私に同意を求めてくる笑顔が愛らしい。よほど楽しんでいらっしゃるのか、敬語が抜けてしまっているところも。
ほんの少し前からアオイの眼差しは海の景色に釘付け。ふとソファーから立ち上がり、私の手を引きながら泡の壁まで駆け寄ったかと思えば、透明な壁にピタリとその小さな手をくっつけたまま離れない。だから私も、壁に手をついて海中を優雅に泳ぐ皆様方と挨拶を交わしていた。
ケルピーはアオイの前まで泳いでくるとその鼻先をくっつけて挨拶し、リヴァイアサンは離れたところからただ静かに私達を見つめている。その鋭い眼差しに穏やかな光を宿して。
アオイの目にはまだ見えていないようだが、更に下の方ではクジラやクラーケンも。恐らくはタイミングを見計らって頂けているのだろう。気を使って頂けているのだろう。いっぺんに挨拶に来てしまうと、私達の迷惑になりはしないだろうかと。
とはいえ、すでに目立ってしまってはいることだろう。現状でも随分と。致し方ないことではあるが。これだけ、一箇所に集中してしまっていては。私達の他にもお客様方が、周囲には彼らを乗せている泡が、いくつも浮かんでいるというのに。
……皆様、さぞ驚かれていることでしょうね。
はしゃぐアオイを私が目で愛でている間にも入れ代わり立ち代わり。西のゾーンで暮らしている皆様方が挨拶をしに訪れて頂けている。
まだアオイは中級の術を習得出来ていない。なので彼らの話す言葉は分からない筈なのだが。絶妙なタイミングで「こんにちは」と返したり、はたまた「会えて嬉しいよ」と応えたり、スムーズな受け答えが出来ていらっしゃる。
やはり、私の妻は天才なのでは? 術を使わずとも、異なる種族と心を通わせることが出来ていらっしゃるなんて……私を超える術士になる未来も、そう遠くはないのでは……
不意に繋いでいる手を離されてしまった。遠のいてしまった温もりに寂しさを覚える間もなく、アオイの細い腕が私の腕を抱き締めてくれる。そればかりか、その線の細い体で寄りかかるように私に身を寄せて頂けた。その横顔には、はにかむような笑顔が浮かんでいる。
「えっと、ですね……この人は俺の大切な旦那様で……って、皆さんバアルさんのことは知っているんでしたっけ……あっ、じゃあ、初めまして、アオイです。バアルさんの……お、奥さんにしてもらいました……」
斯様にも愛らしい自己紹介があるだろうか?
「わぁっ、キレイ……こんなに魚の群れに近づいてるのに、一匹も逃げないね」
「ええ、大変美しいですね」
「あっ、イルカだ、可愛い……あれ、あの白いのってマナティ、だったっけ? それともジュゴン……?」
「ジュゴンでございますね」
「ジュゴンか、ありがとうバアル。ごめんね、ジュゴン、名前間違えちゃって」
此方でも私の妻は大変人気者だ。まだ潜って間もないというのに大歓迎を受けていらっしゃる。
眩しい笑顔を浮かべた彼が壁越しに手を振るだけで魚達は見事な統率の取れた泳ぎを披露し、イルカとジュゴンはそれぞれバブルリングを送ってきた。
いくつもの泡の輪っかが次々と生み出されては上っていく。それらを見つめるアオイの瞳は魔宝石よりも煌めいていて美しい。
眩い琥珀色は次なる発見をしたようだ。そのワクワクを共有してくれようと、繋いでいる手をちょいちょいと引きながら私に教えて下さる。
「え、ちょ、見て見てバアルっ、海の中なのに馬が居るよ! って、あれ? よく見たら下半身は魚、だよね?」
「ええ、あちらはケルピーでございますね。上半身は馬、下半身は魚の姿を持っているとのことでございます」
「へぇ……名前はどこかで聞いたことがあるかも? あっ、あっち! ほら、あの深いところに居るのは龍じゃない? もしかして、リヴァイアサンかな?」
「はい、左様でございます。アオイは物知りでございますね」
「ふぇっ、バアルほどじゃないよ……でも、嬉しいな、ありがとう。リヴァイアサン、大きくてカッコいいね!」
弾んだ声で私に同意を求めてくる笑顔が愛らしい。よほど楽しんでいらっしゃるのか、敬語が抜けてしまっているところも。
ほんの少し前からアオイの眼差しは海の景色に釘付け。ふとソファーから立ち上がり、私の手を引きながら泡の壁まで駆け寄ったかと思えば、透明な壁にピタリとその小さな手をくっつけたまま離れない。だから私も、壁に手をついて海中を優雅に泳ぐ皆様方と挨拶を交わしていた。
ケルピーはアオイの前まで泳いでくるとその鼻先をくっつけて挨拶し、リヴァイアサンは離れたところからただ静かに私達を見つめている。その鋭い眼差しに穏やかな光を宿して。
アオイの目にはまだ見えていないようだが、更に下の方ではクジラやクラーケンも。恐らくはタイミングを見計らって頂けているのだろう。気を使って頂けているのだろう。いっぺんに挨拶に来てしまうと、私達の迷惑になりはしないだろうかと。
とはいえ、すでに目立ってしまってはいることだろう。現状でも随分と。致し方ないことではあるが。これだけ、一箇所に集中してしまっていては。私達の他にもお客様方が、周囲には彼らを乗せている泡が、いくつも浮かんでいるというのに。
……皆様、さぞ驚かれていることでしょうね。
はしゃぐアオイを私が目で愛でている間にも入れ代わり立ち代わり。西のゾーンで暮らしている皆様方が挨拶をしに訪れて頂けている。
まだアオイは中級の術を習得出来ていない。なので彼らの話す言葉は分からない筈なのだが。絶妙なタイミングで「こんにちは」と返したり、はたまた「会えて嬉しいよ」と応えたり、スムーズな受け答えが出来ていらっしゃる。
やはり、私の妻は天才なのでは? 術を使わずとも、異なる種族と心を通わせることが出来ていらっしゃるなんて……私を超える術士になる未来も、そう遠くはないのでは……
不意に繋いでいる手を離されてしまった。遠のいてしまった温もりに寂しさを覚える間もなく、アオイの細い腕が私の腕を抱き締めてくれる。そればかりか、その線の細い体で寄りかかるように私に身を寄せて頂けた。その横顔には、はにかむような笑顔が浮かんでいる。
「えっと、ですね……この人は俺の大切な旦那様で……って、皆さんバアルさんのことは知っているんでしたっけ……あっ、じゃあ、初めまして、アオイです。バアルさんの……お、奥さんにしてもらいました……」
斯様にも愛らしい自己紹介があるだろうか?
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