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【新婚旅行編】五日目:俺達にとっての万が一
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美味しいから、バアルさんにもいっぱい食べて欲しいな。
そう思っていたからだろう。つい大きめにカットしてしまっていた。ちょっと食べにくいかも。
思わずバアルさんの方を見ると、期待に満ちた眼差しと目が合った。これは待たせちゃう訳にはいかないよな。
「は、はいっ、バアル、あーん」
焦った俺は、大きめサイズのハンバーグにデミグラスソースをたっぷり絡めて差し出していた。白くてカッコいいお髭についてしまわないように、慎重に口元へと運ぶ。
「いただきます」
大丈夫だったみたい。厚めのハンバーグが、ぱくりと一口。口端にも、お髭にも、ソースがつくことなく食べてもらえた。彼が大きく口を開けた時、ちらりと見えた鋭く尖った歯がカッコよかった。
「……美味しい?」
もくもくと動いていた白い頬が止まったのを見計らって尋ねてみれば、小さく頷き微笑んでくれる。
「はい、肉厚でしっかりとした食べ応えがありながらも口当たりは柔らかく……ソースのコクがお肉の旨味を更に引き出していて……大変美味しいですね、ご飯が欲しくなってしまうお味かと」
「だよねっ! ってことで、はいっ」
かわりばんことはいえ、ご飯までがセットだろう。今度は盛り過ぎないように、けれどもやっぱり食べて欲しいから多めに。絶妙な加減でバッチリ掬えたご飯を、続けて彼の口元へと運んだ。
口端だけを持ち上げ笑い、バアルさんが再び口を開く。
「……いただきます」
もくもくと味わってから、ツラツラと話してくれた感想は共感しかなかった。
「……こちらも誠に美味しいですね。ふっくら炊けていて、お米の甘さが際立っております。硬さも丁度いいですね」
「だよねっ、俺もこのくらいの硬さの方が好きだなぁ」
大好きな彼と美味しさを共有出来る。毎日のちょっとしたことが、嬉しくて……幸せで。
「へへ、じゃあ、今度はバアルの番ね? 俺、グラッセが食べたいな」
だらしなく頬が緩んでしまう。ついつい手を繋ぎたくなってしまう。
大きな手の甲に、そっと指先を忍ばせれば、すぐに気がついてくれた。繋いでくれて、頭も撫でてもらえてから、バアルさんが俺のフォークを受け取った。
「畏まりました」
そんなこんなで、二人で交互に食べさせ合いっこをしている内にペロッと。盛り盛りなご飯もあっという間に食べ終えていた。よっぽどお腹が空いていたのかもしれない。俺も、言ってはいなかったけどバアルさんも。
バアルさんがホテルの投影石を手にして魔力を込めれば、空になったお皿達が淡く光り始めた。瞬いて、空気に溶けるようにテーブルの上から消えていったかと思えば、代わりに現れたのは食後にと注文していたデザート達。
ツヤツヤでパリパリなカラメルが魅力的なクレームブリュレ。
いくつもあるジェラートの種類の中から、悩みに悩んで選び抜いた三つのお味、ミルクチョコレート、パッションフルーツ、ピスタチオ。茶色に黄色に緑の三色が硝子の器に、一つのお山の形で盛られた一品。
さらにさらに、甘い香りが漂うマンゴーとメロンがたっぷりのったショートケーキまで。
こちらも頼み過ぎちゃったかなって思ったんだけれども、あっさりと。かわりばんこに幸せな甘さを共有している内に、キレイに食べ終えてしまっていた。
「では、万が一の為の対処法を決めておきましょうか」
ソファーに腰掛け、紅茶のおかわりをのんびり楽しみながら、話し始めたルール作りの続き。一つ目の「何かあったら必ず相談、一人で勝手に決めてしまわない」の他に必要なことって、とバアルさんに振ってみたところ、そのように返ってきた。
「万が一って……?」
胸の内に過った微かな不安すら、すぐさま彼は見抜いてくれてしまう。肩を抱き寄せてくれながら、頭を撫でてくれながら、微笑んで続けた声はゆったりとしていて優しかった。
「私と貴方様の意見が擦れ違ってしまった時、つまりは喧嘩になってしまいそうな時や、実際に喧嘩になってしまった時……などいかがでしょうか?」
「ホントに、万が一ですね……」
そう思っていたからだろう。つい大きめにカットしてしまっていた。ちょっと食べにくいかも。
思わずバアルさんの方を見ると、期待に満ちた眼差しと目が合った。これは待たせちゃう訳にはいかないよな。
「は、はいっ、バアル、あーん」
焦った俺は、大きめサイズのハンバーグにデミグラスソースをたっぷり絡めて差し出していた。白くてカッコいいお髭についてしまわないように、慎重に口元へと運ぶ。
「いただきます」
大丈夫だったみたい。厚めのハンバーグが、ぱくりと一口。口端にも、お髭にも、ソースがつくことなく食べてもらえた。彼が大きく口を開けた時、ちらりと見えた鋭く尖った歯がカッコよかった。
「……美味しい?」
もくもくと動いていた白い頬が止まったのを見計らって尋ねてみれば、小さく頷き微笑んでくれる。
「はい、肉厚でしっかりとした食べ応えがありながらも口当たりは柔らかく……ソースのコクがお肉の旨味を更に引き出していて……大変美味しいですね、ご飯が欲しくなってしまうお味かと」
「だよねっ! ってことで、はいっ」
かわりばんことはいえ、ご飯までがセットだろう。今度は盛り過ぎないように、けれどもやっぱり食べて欲しいから多めに。絶妙な加減でバッチリ掬えたご飯を、続けて彼の口元へと運んだ。
口端だけを持ち上げ笑い、バアルさんが再び口を開く。
「……いただきます」
もくもくと味わってから、ツラツラと話してくれた感想は共感しかなかった。
「……こちらも誠に美味しいですね。ふっくら炊けていて、お米の甘さが際立っております。硬さも丁度いいですね」
「だよねっ、俺もこのくらいの硬さの方が好きだなぁ」
大好きな彼と美味しさを共有出来る。毎日のちょっとしたことが、嬉しくて……幸せで。
「へへ、じゃあ、今度はバアルの番ね? 俺、グラッセが食べたいな」
だらしなく頬が緩んでしまう。ついつい手を繋ぎたくなってしまう。
大きな手の甲に、そっと指先を忍ばせれば、すぐに気がついてくれた。繋いでくれて、頭も撫でてもらえてから、バアルさんが俺のフォークを受け取った。
「畏まりました」
そんなこんなで、二人で交互に食べさせ合いっこをしている内にペロッと。盛り盛りなご飯もあっという間に食べ終えていた。よっぽどお腹が空いていたのかもしれない。俺も、言ってはいなかったけどバアルさんも。
バアルさんがホテルの投影石を手にして魔力を込めれば、空になったお皿達が淡く光り始めた。瞬いて、空気に溶けるようにテーブルの上から消えていったかと思えば、代わりに現れたのは食後にと注文していたデザート達。
ツヤツヤでパリパリなカラメルが魅力的なクレームブリュレ。
いくつもあるジェラートの種類の中から、悩みに悩んで選び抜いた三つのお味、ミルクチョコレート、パッションフルーツ、ピスタチオ。茶色に黄色に緑の三色が硝子の器に、一つのお山の形で盛られた一品。
さらにさらに、甘い香りが漂うマンゴーとメロンがたっぷりのったショートケーキまで。
こちらも頼み過ぎちゃったかなって思ったんだけれども、あっさりと。かわりばんこに幸せな甘さを共有している内に、キレイに食べ終えてしまっていた。
「では、万が一の為の対処法を決めておきましょうか」
ソファーに腰掛け、紅茶のおかわりをのんびり楽しみながら、話し始めたルール作りの続き。一つ目の「何かあったら必ず相談、一人で勝手に決めてしまわない」の他に必要なことって、とバアルさんに振ってみたところ、そのように返ってきた。
「万が一って……?」
胸の内に過った微かな不安すら、すぐさま彼は見抜いてくれてしまう。肩を抱き寄せてくれながら、頭を撫でてくれながら、微笑んで続けた声はゆったりとしていて優しかった。
「私と貴方様の意見が擦れ違ってしまった時、つまりは喧嘩になってしまいそうな時や、実際に喧嘩になってしまった時……などいかがでしょうか?」
「ホントに、万が一ですね……」
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