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【新婚旅行編】七日目:俺にとっても一番の
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「……失礼致しました」
そんなに待つこともなく、バアルさんは平静を取り戻した。
透明感のある頬は、まだ少し赤みが差してはいるけれども、それ以外は至って平常運転。穏やかな笑みを浮かべながら、俺の手を優しい手つきで撫でてくれている。
「ううん。それでさ、分身のことなんだけど」
「問題はございませんよ。いくら私めの苦手な分野といえど、一つの分身を維持するくらいでは大して魔力を消耗したりは致しません。よくお見せしております部屋の構造を変える術くらいでしょうか」
「ああ、だったら大丈夫だね」
「ええ、ご心配頂きありがとうございます」
元々気になっていたことは聞くことが出来た。けれども、もう一つの方は聞けなかった。いや、そもそも聞いちゃってもいいんだろうか? 何であんなに笑っていたのかって。
やっぱり、このまま流しておいた方がいいよな? 俺だって、よく分からないタイミングで、何でかは分からないけれど、おかしいなって笑っちゃうことってあるし? そういう時は、聞かれちゃうのは恥ずかしいし、お互いに気不味くなっちゃうんじゃ。
「アオイは、やはり素敵な御方でございますね」
「ふぇ……」
「誠に愛らしく、お可愛らしい……」
思いがけないお褒めの言葉に、俺が情けのない声を上げている間にも、微笑む唇が優しく囁いてくる。
スラリと伸びた背を屈めて、額がくっついてしまうくらいに距離を縮めてくる。高い鼻先と触れ合えてしまいそう。高鳴っている心音が聞こえてしまいそうだ。
「っ……あ、ありがと……嬉しいけど、いきなりどうして?」
彼にしては珍しく何の脈絡もない。しかし、そのことが些細だと思えるほど、いやそれどころか瞬く間に考えから吹き飛ばされてしまうほどに、続いて紡がれた彼の言葉は俺の心を鷲掴みにした。
「いえ、やはり私にとっての一番の推しは貴方様だと、改めて実感しておりましたので」
一番の推し。贈られたその言葉が、反響するように頭の中で響いている。
よっぽど嬉しかったんだろう。それから、今になって気がついたけれども、そこそこ妬いてしまっていたようだ。バアルさんが、ずっとサターン様とヨミーン様に眩しい笑顔を向けていたことに。
バアルさんが喜んでくれているのを見られるのが嬉しいってのは、ホントの気持ちなんだけどさ。
「お、俺もっ、俺もバアルが一番だからねっ」
「ええ、存じておりますとも」
「へへ……良かった」
柔らかく微笑み返してくれてから、バアルさんは俺の腰に腕を回した。そっと抱き寄せてくれてから、行儀よくぬいぐるみが並んでいる棚を手のひらで指し示す。
「では、アオイ……サターン様とヨミーン様のぬいぐるみを此方から一種類ずつ選びたいのですが、手伝って頂けますか? 貴方様のご意見も参考に選びたいのです」
「え……う、うんっ、勿論手伝うけど……」
「またいずれ、此方へは訪れるでしょう? ですから、アオイとご一緒に少しずつ集めていこうかと……楽しみはとっておいた方が宜しいですからね。でしょう?」
「……うんっ」
あんなにも買い物欲をあらわにしていたってのに、どうしてバアルさんが納得してくれたのかは分からない。でも、またここに彼と来れる、その約束が嬉しくて。俺と一緒に選びたいって、その気持ちが嬉しくて。
ぬいぐるみを吟味している間も、勝手に幸せな笑みがこぼれてしまっていた。今度は俺の方が、くすくすと止まらなくなってしまっていた。
そんなに待つこともなく、バアルさんは平静を取り戻した。
透明感のある頬は、まだ少し赤みが差してはいるけれども、それ以外は至って平常運転。穏やかな笑みを浮かべながら、俺の手を優しい手つきで撫でてくれている。
「ううん。それでさ、分身のことなんだけど」
「問題はございませんよ。いくら私めの苦手な分野といえど、一つの分身を維持するくらいでは大して魔力を消耗したりは致しません。よくお見せしております部屋の構造を変える術くらいでしょうか」
「ああ、だったら大丈夫だね」
「ええ、ご心配頂きありがとうございます」
元々気になっていたことは聞くことが出来た。けれども、もう一つの方は聞けなかった。いや、そもそも聞いちゃってもいいんだろうか? 何であんなに笑っていたのかって。
やっぱり、このまま流しておいた方がいいよな? 俺だって、よく分からないタイミングで、何でかは分からないけれど、おかしいなって笑っちゃうことってあるし? そういう時は、聞かれちゃうのは恥ずかしいし、お互いに気不味くなっちゃうんじゃ。
「アオイは、やはり素敵な御方でございますね」
「ふぇ……」
「誠に愛らしく、お可愛らしい……」
思いがけないお褒めの言葉に、俺が情けのない声を上げている間にも、微笑む唇が優しく囁いてくる。
スラリと伸びた背を屈めて、額がくっついてしまうくらいに距離を縮めてくる。高い鼻先と触れ合えてしまいそう。高鳴っている心音が聞こえてしまいそうだ。
「っ……あ、ありがと……嬉しいけど、いきなりどうして?」
彼にしては珍しく何の脈絡もない。しかし、そのことが些細だと思えるほど、いやそれどころか瞬く間に考えから吹き飛ばされてしまうほどに、続いて紡がれた彼の言葉は俺の心を鷲掴みにした。
「いえ、やはり私にとっての一番の推しは貴方様だと、改めて実感しておりましたので」
一番の推し。贈られたその言葉が、反響するように頭の中で響いている。
よっぽど嬉しかったんだろう。それから、今になって気がついたけれども、そこそこ妬いてしまっていたようだ。バアルさんが、ずっとサターン様とヨミーン様に眩しい笑顔を向けていたことに。
バアルさんが喜んでくれているのを見られるのが嬉しいってのは、ホントの気持ちなんだけどさ。
「お、俺もっ、俺もバアルが一番だからねっ」
「ええ、存じておりますとも」
「へへ……良かった」
柔らかく微笑み返してくれてから、バアルさんは俺の腰に腕を回した。そっと抱き寄せてくれてから、行儀よくぬいぐるみが並んでいる棚を手のひらで指し示す。
「では、アオイ……サターン様とヨミーン様のぬいぐるみを此方から一種類ずつ選びたいのですが、手伝って頂けますか? 貴方様のご意見も参考に選びたいのです」
「え……う、うんっ、勿論手伝うけど……」
「またいずれ、此方へは訪れるでしょう? ですから、アオイとご一緒に少しずつ集めていこうかと……楽しみはとっておいた方が宜しいですからね。でしょう?」
「……うんっ」
あんなにも買い物欲をあらわにしていたってのに、どうしてバアルさんが納得してくれたのかは分からない。でも、またここに彼と来れる、その約束が嬉しくて。俺と一緒に選びたいって、その気持ちが嬉しくて。
ぬいぐるみを吟味している間も、勝手に幸せな笑みがこぼれてしまっていた。今度は俺の方が、くすくすと止まらなくなってしまっていた。
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