【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】七日目:……一体、何であんなにムキになってしまっていたんだろう

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「でも、俺だって……俺の方が、バアルのカッコいいところ、いっぱい知ってるんだって……バアルのこと、そういう目で見ている人達に言いたくなっちゃ……っ」

 はたと目を開けた時、かち合った緑の瞳は、蕩けるように微笑んでいた。

「あ、ぅ……」

 細く長い触角を弾むようにふわふわと揺らしながら、半透明の羽をはためかせながら、バアルさんはご満悦そうに微笑んでいる。

 全然、全く、ご機嫌を損ねていらっしゃる様子はない。なんなら、さあ、遠慮なさらずに続きをどうぞ、と今にも言ってきそう。すでにヘタレな俺が顔を出しかけている状態では、続きなんてとても言える訳がないのだけれども。

「って、そもそも、今話していたのはアオニャンのことでっ……俺のことじゃ、な……っ」

 散々重ねておいて今更。強引に話しを捻じ曲げて、戻そうとしていたところで抱き締められた。

 落ち着くハーブの匂いと、大好きな温もりに包まれた途端、ささくれ立っていたのが不思議なくらいに気持ちがホッと緩んできた。

 ……一体、何であんなにムキになってしまっていたんだろう。

 この先、何があったとしても俺はバアルだけのもので、バアルは俺のもの。その事実だけは永遠に変わりやしないのに。そう誓ったのに。

「……ごめんね」

「はて、何故謝られる必要が? 寧ろ、私めは大変嬉しく存じておりますよ。やはり私めは愛されているのだと、改めて愛しい妻のお口から分からせて頂けましたので」

「……っ、もう……なんか、お腹空いちゃった」

「では、スコーンはいかがでしょうか。クリームチーズとイチゴジャムにブルーベリージャム、それからマーマレードがございますが?」

「……じゃあ、イチゴとクリームチーズがいいな」

「畏まりました」

 愛おしそうに目尻を下げ、指先に口づけてくれてから、バアルさんは何事もなかったかのようにテキパキと。二つに割ったスコーンにイチゴジャムとクリームチーズを丁寧に塗ってから挟んだ。

 香ばしそうなスコーンの間から見えている、赤と白が鮮やかだ。見ているだけで美味しそう。

「どうぞ、アオイ」

「ん……」

 差し出されたスコーンをひと齧り。頼むだけ頼んでずっと放ったらかしにしてしまっていたのにスコーンは焼き立てのよう。外はサックリと中はふわっとしている。

 保温の術がかけられていたんだろう。生地だけでも自然と口角が上がるくらいに美味しいのに、ミルク感のあるクリームチーズと甘酸っぱいイチゴジャムとが加わって更なる幸せをくれる。いくらでも食べれてしまいそう。困った美味しさだ。

 サクサクサクサクと紅茶を挟むことなく最後まで食べ終えてしまったからだろう。バアルさんは嬉しそうに目尻を下げながら、ティーセットの横に置かれたバスケットから新たなスコーンを手に取った。

「もう一つ、お召し上がりになられますか?」

「……うん、バアルが食べた後でね」

 彼の手の中からスコーンを頂戴すると、形のいい唇が擽ったそうに笑った。一緒に渋いお髭もふにゃりと笑う。

「バアルは何味がいい?」

「では、マーマレードとクリームチーズでお願い致します」

「うん、任せて」

「ありがとうございます」

 軽く指先に力を込めれば、スコーンは簡単に上下に分かれてくれた。バターの香りがふわりと鼻を擽った。
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