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【新婚旅行編】七日目:冗談のつもりだった。そんなことはないだろうけど、と軽い気持ちで言っただけ
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「ふふ、やはりアオイは愛らしいですね。照れたお顔も可愛いらしいですよ」
「あ、ぅ……って、乾杯って今ので終わり、ですか? こう、グラス同士を合わせたりとかは?」
何のワンシーンかは覚えていない。けれども俺の覚え違いでなければ、ワイングラス同士を上品にくっつける形の乾杯を見たことがある気がするのだけれども。
「ええ、仰る通り軽く触れ合わせる場合もございます。ですが、ワイングラスはビールのジョッキと比べますと繊細ですので、あまり強い力で合わせてしまうと」
「ああ、割れちゃうってことですか?」
「はい。ですので、先程のようにグラスを胸の高さに持ち上げて、目と目を合わせるというやり方の方が宜しいかと」
「ふへぇ……」
色々あるんだなぁ。バアルとワインを一緒に飲むってだけのつもりだったのに、色々と学べてしまった。次の機会までに、全部を覚えていられるかは分からないけれども。
そんな俺の不安を読んだかのようだった。
「もし忘れてしまわれても、またお教え致しますよ」
「良かった、ありがとう、バアル」
「いえ、それよりも」
気になるところで言葉を切った彼の表情は、何だか複雑そう。気恥ずかしそうでありながらも、申し訳なさそうというか。
片方下がった凛々しい眉と連動しているかのよう。金属のような光沢を帯びた触角も、俺から見て右だけへにょんと下がってしまっている。何も言わずに待っていると、おずおずと続きを話してくれた。
「先程は、お伝えするのが遅れてしまい……申し訳ございませんでした」
それって、乾杯の仕方のことだよね。
「ああ、大丈夫だよ、気にしないで。俺も、ワインの持ち方の方に集中しちゃってたし。でも、珍しいね。もしかして、ウィンクしようって構えちゃってたとか? なんて」
冗談のつもりだった。そんなことはないだろうけど、と軽い気持ちで言っただけ。だったんだけれども。
「……申し訳、ございません」
長い睫毛を僅かに伏せた彼の彫りの深い顔は真っ赤っ赤。なんと図星だったらしい。
彼のことだ、俺が喜ぶだろうと意気込んでの渾身のウィンクだったのだろう。ハロウィンの時、最初にお願いした時は、あんなに照れ臭がっていたのに。今となっては自分からだなんて、ホントに。
「……やっぱり、俺のバアルは可愛いね」
「……お褒め頂き、光栄に存じます」
名誉挽回、というほど大げさなことではないのだけれども、その後あっさりと切り替えたバアルさんは張り切ってワインの楽しみ方を教えてくれ始めた。先ずは乾杯をする前にもしようと言っていた、香りを楽しむところから。
バアルさんが見せてくれているお手本通りにグラスをゆっくりと内回しに回してみる。こうやって、ワインを空気に触れされていくことで香りが開くんだと。
因みにだけど、理屈としては酸化させているらしい。酸化、つまりは空気と反応させることによって、より複雑で深い香りを感じられるようになるとのことだ。
ノンアルコールのワインですら初めてな俺にとっては、明確な違いは分からない。でも、確かに最初に香ってきたブドウの香りよりは何だかゴージャスな、よりいい香りにランクアップしたような。
「では、お味の方を楽しみましょうか」
「はいっ」
つい前のめりな返事をしてしまっていた。ずっといい香りだけを嗅いでいたもんだから、待ちかねていたもんだから。
「ふふ、口に含んだら、すぐには飲み込んでしまわずに転がして味わう方が宜しいかと」
「あ、ぅ……って、乾杯って今ので終わり、ですか? こう、グラス同士を合わせたりとかは?」
何のワンシーンかは覚えていない。けれども俺の覚え違いでなければ、ワイングラス同士を上品にくっつける形の乾杯を見たことがある気がするのだけれども。
「ええ、仰る通り軽く触れ合わせる場合もございます。ですが、ワイングラスはビールのジョッキと比べますと繊細ですので、あまり強い力で合わせてしまうと」
「ああ、割れちゃうってことですか?」
「はい。ですので、先程のようにグラスを胸の高さに持ち上げて、目と目を合わせるというやり方の方が宜しいかと」
「ふへぇ……」
色々あるんだなぁ。バアルとワインを一緒に飲むってだけのつもりだったのに、色々と学べてしまった。次の機会までに、全部を覚えていられるかは分からないけれども。
そんな俺の不安を読んだかのようだった。
「もし忘れてしまわれても、またお教え致しますよ」
「良かった、ありがとう、バアル」
「いえ、それよりも」
気になるところで言葉を切った彼の表情は、何だか複雑そう。気恥ずかしそうでありながらも、申し訳なさそうというか。
片方下がった凛々しい眉と連動しているかのよう。金属のような光沢を帯びた触角も、俺から見て右だけへにょんと下がってしまっている。何も言わずに待っていると、おずおずと続きを話してくれた。
「先程は、お伝えするのが遅れてしまい……申し訳ございませんでした」
それって、乾杯の仕方のことだよね。
「ああ、大丈夫だよ、気にしないで。俺も、ワインの持ち方の方に集中しちゃってたし。でも、珍しいね。もしかして、ウィンクしようって構えちゃってたとか? なんて」
冗談のつもりだった。そんなことはないだろうけど、と軽い気持ちで言っただけ。だったんだけれども。
「……申し訳、ございません」
長い睫毛を僅かに伏せた彼の彫りの深い顔は真っ赤っ赤。なんと図星だったらしい。
彼のことだ、俺が喜ぶだろうと意気込んでの渾身のウィンクだったのだろう。ハロウィンの時、最初にお願いした時は、あんなに照れ臭がっていたのに。今となっては自分からだなんて、ホントに。
「……やっぱり、俺のバアルは可愛いね」
「……お褒め頂き、光栄に存じます」
名誉挽回、というほど大げさなことではないのだけれども、その後あっさりと切り替えたバアルさんは張り切ってワインの楽しみ方を教えてくれ始めた。先ずは乾杯をする前にもしようと言っていた、香りを楽しむところから。
バアルさんが見せてくれているお手本通りにグラスをゆっくりと内回しに回してみる。こうやって、ワインを空気に触れされていくことで香りが開くんだと。
因みにだけど、理屈としては酸化させているらしい。酸化、つまりは空気と反応させることによって、より複雑で深い香りを感じられるようになるとのことだ。
ノンアルコールのワインですら初めてな俺にとっては、明確な違いは分からない。でも、確かに最初に香ってきたブドウの香りよりは何だかゴージャスな、よりいい香りにランクアップしたような。
「では、お味の方を楽しみましょうか」
「はいっ」
つい前のめりな返事をしてしまっていた。ずっといい香りだけを嗅いでいたもんだから、待ちかねていたもんだから。
「ふふ、口に含んだら、すぐには飲み込んでしまわずに転がして味わう方が宜しいかと」
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