【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

文字の大きさ
924 / 1,566

★【新婚旅行編】七日目:二人になったら、もっと厄介だ、勿論、滅茶苦茶良い意味で

しおりを挟む
 バアルさんもマイペースに、俺に触れてくれ始めていた。真っ平らな俺の胸板に、ほんのちょっとしか付いていない筋肉のありかを確かめるように手のひらで揉んでいたかと思えば、直接的なところに指先を這わせ始めた。

 ずっとバアルに付き合ってもらって、そろそろ彼好みくらいには感じられるようになれたところの一つ。口とは違って素直なそこは、すでに期待してしまっているのに。

 触って欲しいと強請るように硬く尖らせてしまっているのに。ちょっと意地悪な彼が出てしまっているようだ。焦らすようにその周囲をなぞるばかりで、触ってはくれない。いつもみたいに、指の腹で優しく摘んではくれない。

「ん、ぁ……バアルさん……あ、あっ……そこ……」

 確かな熱が全身に広がっていったように、そわそわしてしまう感覚も、すでにつま先にまで届いてしまっていた。そのせいか、ようやく口の方も素直になれかけていたところで、息ぴったりに囁かれてしまった。

「愛しております、アオイ」

「お可愛らしいですね、アオイ」

「ふぁ……っ」

 左右から、腰の辺りに響くような甘い低音で。それも、心がたちまちスキップを踏んでしまうような言葉を贈ってくれたもんだから大変だ。

 込み上げてきた喜びが、別の心地よさへと変換されてしまう。触ってもらえていないのに、下腹部が切なく疼いてしまう。

「……だ、だから、一緒にカッコいい声で……囁かないで、ってばぁっ」

 ただでさえ湯気が出ていそうなくらいに熱を持っている頭が、彼らへの好きがあふれてしまっている心までもが、一気にキャパオーバーを起こしてしまっていた。

 声だけで、言葉だけで心地よくなってしまった事実から逃れるように、彼らの大きな手を強く握り締めてしまっていた。

 とはいえ、二人は俺とは鍛え方が違う。彫刻のようにカッコいい筋肉質な身体な上に、腰の高さが違いすぎるほどに抜群のスタイルをお持ちなのだ。子供じみた俺の八つ当たりなんてどこ吹く風。細い眉や触角すらもピクリとも動かしてはいない。

 それどころか、二人して俺の手を包み込むようにもう一方の手を重ねながら、よしよしと撫でてくれ始めた。自信満々に片方の口端を持ち上げながら、またカッコいい声で囁いてきた。

「おや……ですが、お好きでしょう? アオイは、この老骨めの声も、大好きですよね?」

「今しがた、カッコいいと褒めて頂けたのですから」

 タブルなキレイな微笑みに、心臓がますます狂ったように踊り出す。今の俺、絶対変な顔しちゃってそう。だらしなくなっちゃってそう。

 バアルだけでも、高鳴りっぱなしな心臓も、ふわふわしている気持ちも、何もかもがいっぱいいっぱい。なのに。

 ……二人になったら、もっと厄介だ。勿論、滅茶苦茶良い意味で。

「そりゃあ、大好き……だけどさ……ん、ぁ……」

 畳み掛けるように、バアルが口づけてきた。

 角度を変えながら楽しむように数回交わしてくれた後、名残惜しそうに軽く下唇を食んでから離れていく。

 俺の瞳を覗き込むように見つめてくる。どことなく潤んだ瞳には、心の奥までをも見つめられてしまいそう。

「……駄目ですか? ……アオイ」

「……アオイ……どうか御慈悲を」

「ぐぅ……っ」

 やっぱり厄介だ、ズルいっ! カッコよさだけじゃなくて、可愛さも二倍じゃないかっ……!!

 ダブルな寂しそうな声に、どちらを向いても切なそうな表情。おまけに繋いで絡めていた指まで、指の横を撫でるようにおずおずと擦り寄られてしまえば。

「ダメじゃ、ない……です……俺のこと、バアルとバアルさんの好きに……愛して、欲しいです……」

「アオイ……っ」

 喜びに弾んだ声が重なって、左右から抱き締められる。

「今夜も、沢山愛して差し上げますね」

 また同時に両方の耳へと吹き込まれた吐息と穏やかな低音に、俺は何故だか声が出せなくなってしまっていた。小刻みに震えてしまっていた身体にどうにか喝を入れ、頷くだけで精一杯だった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

処理中です...