【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】八日目:素敵な夢よりも、素敵な

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 ……暖かい。全身が春の陽気に包まれているような、ふかふかのお布団にくるまっているような。

 ああ、でも、肌に感じる感触は明らかに布団じゃないな。柔らかいは柔らかいんだけれども、もふっていう柔らかさじゃなくてムニっていうか。それに低反発のクッションみたいな程よい反発感っていうか、弾力もあるしさ。

 あと、いい匂いがする。

 この匂い……俺が大好きな匂いだ。包まれていると安心して、もっとくっついていたくなるハーブの匂い。そう、彼の……かれ、の?

「……バ、アル?」

 明らかに眠気が残っていそうな、舌っ足らずな声が聞こえたのを切っ掛けに目が覚めた。

 どうやら、俺の声だったらしい。彼の名前を呼んでいたことから察するに、夢の中でもバアルに会えていたんだろうか。

 なんて素敵な……でも思い出せない。思い出したくても、ワンシーンすら思い浮かんできてくれやしない。さっきまでは頭の中で再生されていただろうに、今はもう煙のように跡形もなく消えてしまっている。

 それでも思い出そうと躍起になっていると、柔らかな指先に顎を撫でられた。

 釣られて顔を上げれば、眠っていても俺の心を掴んで離さない張本人が微笑んでいた。その優しくも鮮やかな緑の瞳と目が合った途端に、ぼんやりとしていた視界が晴れやかになっていく。

「おはようございます、アオイ」

 目鼻立ちがハッキリとしている整った顔が、形のいい唇がゆっくりと近づいてきてくれる。熱い吐息と共に柔らかな温もりが口にそっと触れてくれて、残念な気持ちがあっという間に溶けていく。

 続けて頬にも。軽やかなリップ音を鳴らしながら送ってくれた際に、少し伸びたお髭がふわりと頬を擽っていった。お髭だけでなく、こちらも寝起きにしか見られないレア物。頭の上でふわふわと揺れている二本の触角のように、ぴょこんと跳ねてしまっている白い髪が可愛い。

 おはようのキスをしてくれてから、バアルは片方の腕を俺の枕にしてくれたまま、反対の手で俺の髪を整えるように撫でてくれている。

 彼の透き通るような白い肌を、カッコいい筋肉のラインが浮き出るくらいに鍛え抜かれた魅力的な身体を隠してくれているのは、重みを感じないほどに軽い掛け布団だけ。引き締まって色っぽい首も、尖った喉仏も、浮き出た鎖骨も、硬そうに見えて柔らかい分厚い胸板も、全部見えてしまっている。

 窓から差し込んでいる柔らかな光の元に晒されてしまっている。そのせいか彼の輪郭が白く淡く輝いていて、いや元々そう見えるんだった。俺だけには。

 どれだけ眺めていても飽きない、飽きることのない柔らかな笑顔とスタイル抜群なお身体のハッピーセットに見惚れていると、白い頬にほんのりと赤みが差した。手を止めて、照れくさそうに白い睫毛を伏せながら口を開く様子は、何だか言い辛そう。

「大変嬉しくは存じます……愛らしい眼差しを、私めだけに向けて頂けるのは……ですが、どうかお返しを……貴方様からの御慈悲を頂けないでしょうか?」

 なんだ、内容も可愛いじゃないか。俺の旦那様、カッコいいだけじゃなくて可愛過ぎか? いや、ずっと可愛かったわ。

「うんっ、おはようバアル、遅くなってごめんね」

 高鳴る鼓動以上に上々になった気分に突き動かされて、俺は彼の逞しい首に腕を絡めていた。額を重ね、高い鼻先に自分の鼻先を擦り寄せると、照れていた瞳が細められていく。カッコいい目尻のシワが深くなっていく。
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