【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】八日目:気恥ずかしさよりも、褒めてもらいたい気持ちの方が圧倒的に

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 ナチュラルな仕上がりだから、俺だということはちゃんと分かる。けれども、頬の透明感だとか眉のカッコよさ具合だとか、細かな部分から受ける印象がいつもと全然違うのだ。

 おまけに服装も、ヨミ様やサタン様が国民の皆様の前で着ているような衣装なもんだから、パッと見、別人に見えてしまう。

 カッコいい、よな。俺は何にもしていないし、自分で思うのもなんだけど。

「ねぇ、バアルはどう?」

 気恥ずかしさはちょっぴり。でも、褒めてもらいたいという気持ちの方が圧倒的に勝っていた。

「……カッコいい、かな?」

 だからこそ、俺は尋ねることが出来ていた。鏡から側に居てくれているであろうバアルの方へと微笑みかけていた。

 瞬間、ぱぱぱっと連写する眩い光に迎えられた。バアルの笑顔ではなく。

「わっ、えっ?」

 よくよく見れば、投影石の輝きだった。真剣な眼差しのバアルが、一心不乱に俺の姿を撮影している。

 いや、バアルの手元からだけじゃない。俺の周囲をくるりくるりと踊るように飛んでいる緑色の煌めきもからも、ピカピカと瞬く光が放たれて……って。

「コルテも? いつの間に」

「私だけでは、斯様に素晴らしいひと時を、愛らしい貴方様のかけがえのない一瞬一瞬の全てを収めることは叶うまいと存じまして、助力を頼みました」

「ああ、それで」

 コルテに関しては納得はした。でも、納得は出来ない、この現状には。

「じゃあさ、一旦手を止めてくれてもいいんじゃない?」

「はい? ……っ、アオイ?」

 撮影に集中していたからか、それとも俺がこんなことをするとは思わなかったのか。どちらでもどうでもいいが、すんなりと俺は彼が手にしていた投影石を奪い取ることが出来た。

 コルテは俺の気持ちを察してくれんだろう。ぴるぴるとガラス細工のように小さな羽をはためかせいる彼に向かってバアルが持っていた投影石を投げれば、豆粒のようなその身で発揮出来ているとは思えない力強さで容易く受け止めてくれた。

「アオイ……?」

 珍しくまだ分かっていない様子な彼に、ヘアメイクが崩れない程度に抱きついてやった。広い背中に回した腕に抗議の意味も込めて力を込めてやった。

「撮影に夢中になるのはいいけどさ、ちゃんと俺のことを見てくれてから、褒めてくれてからにしてよ……」

「っ、も、申し訳ござ」

「その前に、言ってくれることがあるんじゃない?」

 ようやく気づいてくれたのは嬉しいけれど、今欲しいのはそんなヤボな言葉じゃない。彼が時折しているのを真似て慌てる唇を人差し指でつついて止めれば、はたと緑の瞳が瞬いた。

「左様で、ございましたね……どうか、やり直しをさせて頂いても?」

「いいよ」

「ありがとうございます」

 腕を離して逞しい長身から少し離れると、バアルは俺の手を取ってくれた。分厚い胸板に手を当てながら、俺だけを見つめてくれる眼差しは、さっきとは別の熱がこもっている。

「誠にカッコいいですよ、アオイ……この世の何よりも、輝いて見えます」

 一番欲しかった、その口から聞かせて欲しかった言葉をくれた彼の微笑みも、俺の目には何よりもカッコよく、眩しく映っていた。

「へへ、ありがとう……バアル……」

 ハーブの匂いがふわりと香る。満たされた胸の内だけじゃなく、目の奥まで熱くなりそうになってしまっていると今度はバアルの方から強く抱き締めてくれた。逞しい腕から伝わってくる温もりは嬉しいんだけれども。

「わ、と……大丈夫? せっかく頑張ってくれたのに、メイク崩れたりしない?」

「大丈夫ですよ、ちゃんと崩れないように予め術を施しております故」

「そっか……じゃあ、もうちょっと、このままでもいい?」

「ええ、私めも……暫しこのままでいたく存じます」

 そう言ってくれてから、軽々と俺を横抱きにしたバアルは嬉しそうに目尻のシワを深めていた。そのまま近くのソファーへと俺を運んでいってくれる。

 やっぱりコルテに投影石を渡しておいて正解だった。もうちょっとと言っておきながら結構な間、撮影を中断させてしまったんだから。
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