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【新婚旅行編】八日目:まさか、名前を呼ばれただけでごめんなさいって気持ちになろうとは
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柔らかく微笑んでいるシャープな横顔に手を伸ばせば、甘えたな猫さんのように自ら頬を、手のひらへと擦り寄せてきてくれる。
よしよしと撫でるにつれて渋い目尻のシワが深くなっていく。触角と羽も、ふわふわパタパタとご機嫌そう。俺もまた口角が自然と緩んでいってしまっていた。
「ふふ、作戦大成功! っていうか、別に俺ズルくなくない? バアルに甘えたかったから甘えただけなんですけど?」
「っ、そういうところが……」
今度は威嚇をしている猫さんのよう。頬を赤らめながら鋭く白い牙を見せてくれたところで、言葉を引っ込めてしまった。気恥ずかしそうに伏せられた白い睫毛が、窓から差し込む日差しによってキラキラと透けて見えた。
「いえ、失礼。それよりも、御身体の具合は? どこかお辛いところはございませんか?」
「ううん、全然。元気いっぱい、絶好調だよ。バアルに抱っこしてもらえているし」
「……アオイ」
「いや、ホントだって! 流石にお腹は空いちゃってるけどさ」
実際、俺の身体はピンピンしている。いつも通りバアルがかけてくれていた自然治癒の術のお陰だろう。多少の怠さはあれど、問題ない範囲だ。
けれども、バアルは信用してくれていないみたい。それどころか思わず声を大にして主張したことが逆効果に、余計に彼の疑惑を深めてしまったらしい。鋭く細められた眼差しは、推理系ドラマの探偵さんのよう。心の奥まで見通されてしまいそうだ。
日頃の行い、が悪いんだろうな。俺としては無茶をしているつもりなんて全く無いんだけれども。
それに仮にちょこっと頑張っちゃったとしても、それでバアルが満足してくれたんだったら俺としては万々歳。スゴく幸せで、大歓迎な……
「アオイ」
「ひゃいっ」
大変凄みのある低音はお腹の芯にまで響きそう。思わず声がひっくり返ってしまう。
まさか、名前を呼ばれただけでごめんなさいって気持ちになろうとは。
いつの間にやら思考を繋げられてしまっていたんだろうか。そう思いたくなるほどに、彼は絶妙なタイミングで俺を呼び、こちらの考えを遮ってきたのだ。そういうところですよ、と言わんばかりに。
しばらくじっと見つめてから、軽くつり上がっていた凛々しい眉が困ったように下がっていく。ふっと笑みをこぼした唇も困ったように微笑んでいた。
「全く……貴方様はこの老骨めを甘やかし過ぎでございます」
「……えぇ? バアルにだけは言われたくないんですけどー」
今朝も昨晩も、身も心も満たされるくらいに甘やかしてくれたクセに。それどころか毎日毎日、とびきりの好きを贈ってくれるもんだから、全然返せていないんですけど? これくらいじゃあ、足りないんですけど?
そう心が喚いている間に手が出ていた。シュッとカッコいいバアルの頬を包みこんで、うりうりと撫で回してしまっていた。
両手でムニッと頬を寄せてみてもカッコよく、平然としている彼もやられてばかりではない。
「その御言葉、そっくりそのまま御返しさせて頂きます」
彼もまた大きな手のひらで俺の頬を挟んでから、しなやかな指先でそっと摘んできた。感触を楽しむみたいにむにむにと揉み始めたのだ。
「ひゃあ、俺もお返ひひまふ」
「では、私めも」
同じように頬を揉み返してみても、少し伸びているお髭を指先で撫でてみてもバアルは、俺と違って一向に舌っ足らずにならない。こんな時でも余裕綽々な彼と子供じみたお返し合戦をすること数回。
「ふは」
「ふふ」
堪えきれずに俺が笑ってしまったところで、謎の張り合いに終止符が打たれた。
「お風呂、入りましょうか?」
「ええ、それから朝ご飯に致しましょうか」
「うん」
二度目のお誘いに快く乗ってくれた彼はごくごく自然に俺の手を取り、手の甲に口づけてくれてから俺を抱き上げた。
よしよしと撫でるにつれて渋い目尻のシワが深くなっていく。触角と羽も、ふわふわパタパタとご機嫌そう。俺もまた口角が自然と緩んでいってしまっていた。
「ふふ、作戦大成功! っていうか、別に俺ズルくなくない? バアルに甘えたかったから甘えただけなんですけど?」
「っ、そういうところが……」
今度は威嚇をしている猫さんのよう。頬を赤らめながら鋭く白い牙を見せてくれたところで、言葉を引っ込めてしまった。気恥ずかしそうに伏せられた白い睫毛が、窓から差し込む日差しによってキラキラと透けて見えた。
「いえ、失礼。それよりも、御身体の具合は? どこかお辛いところはございませんか?」
「ううん、全然。元気いっぱい、絶好調だよ。バアルに抱っこしてもらえているし」
「……アオイ」
「いや、ホントだって! 流石にお腹は空いちゃってるけどさ」
実際、俺の身体はピンピンしている。いつも通りバアルがかけてくれていた自然治癒の術のお陰だろう。多少の怠さはあれど、問題ない範囲だ。
けれども、バアルは信用してくれていないみたい。それどころか思わず声を大にして主張したことが逆効果に、余計に彼の疑惑を深めてしまったらしい。鋭く細められた眼差しは、推理系ドラマの探偵さんのよう。心の奥まで見通されてしまいそうだ。
日頃の行い、が悪いんだろうな。俺としては無茶をしているつもりなんて全く無いんだけれども。
それに仮にちょこっと頑張っちゃったとしても、それでバアルが満足してくれたんだったら俺としては万々歳。スゴく幸せで、大歓迎な……
「アオイ」
「ひゃいっ」
大変凄みのある低音はお腹の芯にまで響きそう。思わず声がひっくり返ってしまう。
まさか、名前を呼ばれただけでごめんなさいって気持ちになろうとは。
いつの間にやら思考を繋げられてしまっていたんだろうか。そう思いたくなるほどに、彼は絶妙なタイミングで俺を呼び、こちらの考えを遮ってきたのだ。そういうところですよ、と言わんばかりに。
しばらくじっと見つめてから、軽くつり上がっていた凛々しい眉が困ったように下がっていく。ふっと笑みをこぼした唇も困ったように微笑んでいた。
「全く……貴方様はこの老骨めを甘やかし過ぎでございます」
「……えぇ? バアルにだけは言われたくないんですけどー」
今朝も昨晩も、身も心も満たされるくらいに甘やかしてくれたクセに。それどころか毎日毎日、とびきりの好きを贈ってくれるもんだから、全然返せていないんですけど? これくらいじゃあ、足りないんですけど?
そう心が喚いている間に手が出ていた。シュッとカッコいいバアルの頬を包みこんで、うりうりと撫で回してしまっていた。
両手でムニッと頬を寄せてみてもカッコよく、平然としている彼もやられてばかりではない。
「その御言葉、そっくりそのまま御返しさせて頂きます」
彼もまた大きな手のひらで俺の頬を挟んでから、しなやかな指先でそっと摘んできた。感触を楽しむみたいにむにむにと揉み始めたのだ。
「ひゃあ、俺もお返ひひまふ」
「では、私めも」
同じように頬を揉み返してみても、少し伸びているお髭を指先で撫でてみてもバアルは、俺と違って一向に舌っ足らずにならない。こんな時でも余裕綽々な彼と子供じみたお返し合戦をすること数回。
「ふは」
「ふふ」
堪えきれずに俺が笑ってしまったところで、謎の張り合いに終止符が打たれた。
「お風呂、入りましょうか?」
「ええ、それから朝ご飯に致しましょうか」
「うん」
二度目のお誘いに快く乗ってくれた彼はごくごく自然に俺の手を取り、手の甲に口づけてくれてから俺を抱き上げた。
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