【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】八日目:先に言っておくけど、もう決定事項だから

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 目と目が合えば、お互いに自然と距離を詰めていた。手と手を繋いで頬を寄せ合ったり、額を重ねたり。じゃれ合うように触れ合っていると瞬く間に気持ちが温かく緩んでいく。振り絞ることなく俺は、ごく自然に勇気を出せていた。

「……じゃあ、また、しよっか……?」

 俺から誘ってくるとは思わなかったのだろう。蕩けるように微笑んでくれていた瞳が、まるで今目が覚めたかのようにパチリと開いた。

 思いがけず彼のレアなリアクションを間近で見れたのは嬉しい。嬉しいんだけれども、そこまで驚かれちゃうと気恥ずかしさの方が勝ちそうになっちゃうんだけど。

「その、さ……分身するの……バアルに負担がかからないんだったら……バアルさえ良かったら……また、したいな……」

「ええ、是非……また致しましょう」

 それでも何とか最後まで、伝えたかった気持ちを言葉にすることが出来たからだろう。嬉しそうに微笑んでもらえたからだろう。

 確かな達成感や自信へと変わったそれらが、俺にさらなる一歩を踏み出させたんだと思う。

「それとさ……今日は、俺の番がいいな」

「アオイの番、と言いますと?」

「さっきの、どっちが甘やかしてるかってので思い出せたんだけど……この前は、バアルが俺のこと……とびきり甘やかしてくれたでしょ?」

「ええ」

「だから、今度は俺がしたいなって。バアルのこと一日中、とびきり甘やかしたいなって」

 いくらバアルが俺に尽くしてくれるのが大好きだからって、今回ばかりは譲ってあげるつもりはない。

 そもそも、この新婚旅行中に決めた夫婦の約束で、お互いにお互いのことを甘やかすって決めたのだ。当然、俺にだってお返しをする正当な権利はあるのだ。

 それでも、バアルのことだ。何やかんや上手いこと、言葉巧みに俺のことを丸め込んでくるかもしれない。そこで、俺は先手必勝とばかりに矢継ぎ早に、彼が口を挟む隙を与えないように試みたのだけれども。

「先に言っておくけど、もう決定事項だから」

「誠に宜しいのでしょうか?」

「ふぇ?」

 ポツリと尋ねられた思いがけない一言に、俺の勢いは瞬く間に大失速。続けざまに言おうとしていたことを忘れてしまうどころか、尋ね返すように間の抜けた声を上げてしまっていた。

 真剣なお顔の彼をぼんやりと見つめてしまっていると、バアルは繋いでいる手に力を込めながら前のめりに尋ねてきた。

「誠に、私めの望み通りに、貴方様のお時間を頂いても宜しいのでしょうか?」

「っ、うんっ! 今度は俺がバアルがして欲しいこと、したいこと、全部叶えてみせるからね! 俺が俺の望んだままに、バアルにしてもらえたのと同じように」

 まさか、こんなにも上手くいくなんて……!!

 今にも彼の腕の中から、広い浴槽から飛び上がってしまいそう。いや、気持ちはすでに高い天井を簡単に突き抜けるくらいには舞い上がっちゃっていますけど。

「でしたら、早速、朝ご飯に関してですが」

 早速のリクエストの気配に、ますます鼓動が高鳴っていく。つい俺は広い浴室でも反響してしまうくらいに大きな声で尋ねてしまっていた。

「うんっ、何が食べたい? 頑張るよ、俺!」

「ありがとうございます、アオイ」

 もしも、彼からお願いされたのが初めて作る料理であったとしても、名前すら聞いたことのないような焼き菓子だったとしても、絶対に作ってみせよう!

 きっと、バアルも協力してくれるか、作り方くらいは絶対に教えてくれるだろうから、それなりに形にはなるハズだ。

 そう張り切りに張り切っていた俺の気持ちが、盛大に空振ることになろうとは。
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