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【新婚旅行編】八日目:抱き締め返せば、撫で返せばおあいこみたいなもんだし?
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「ええっ、誠に! ですから、どうぞ。もっと、お召し上がりになって下さい。貴方様の美味しい笑顔を存分に拝見させて頂きたいのです」
不意にナイフとフォークをステーキ皿の端へと静かに置いたかと思えば、大きな手のひらが俺の手を恭しく取った。それから手元のすでに半分になりかけているハンバーグではなく、まだ手つかずなハンバーグステーキへと視線を向けてから、俺に微笑みかけた。
「その後は、どうか私めに……アオイの手ずから食べさせては頂けないでしょうか?」
「……分かった。だったら、いいよ」
「ありがとうございます」
整えられた渋い髭まで微笑んで見えるように、それはそれは嬉しそうに、満足そうな笑顔を向けられてしまうとそれ以上は何にも言えなくなってしまう。
バアルが嬉しそうだから、それでいいかって。俺まで満足な気持ちになってしまうのだ。
「誤解なきよう、お先に申し上げておきますが……」
「大丈夫、分かってるよ。いつもの交互に食べさせ合いっこするのに不満がある訳じゃないんだよね? ただ、時々は、ずっとこうしていたいってことでしょ?」
「ありがとうございます。ご理解頂けていたようで、大変嬉しく存じます」
あんまりにも安心したように表情を綻ばせるもんだから、またしても俺の口は釣られて綻んでしまっていた。
「まぁ、気持ちは分かるからさ。俺だって、バアルのこと甘やかしたいのはホントだけど……いっぱい俺だけを甘やかして欲しいなって、その、ちょくちょく思っちゃうし……」
「アオイ……っ」
長い腕が俺を包み込むように抱き締めてくれる。
俺の名を呼んだ声は感極まっているようで、見つめてくる眼差しは言葉にしなくとも彼の想いが、愛が伝わってくるようで。駆け足になっていた鼓動が、ますますはしゃぐように踊ってしまう。
だというのに微笑む瞳に見つめられながら、さも愛おしげに頭を撫でられてしまえばつい彼に甘えたくなりそうに、流されてしまいそうに。
「だ、だからっ、今日は俺の番だってば!」
この時点ですらも、ちゃんとバアルのことをとびきり甘やかすことが出来ているのかってのは、若干疑問が残ってはいるけれども。
「左様でございましたね……」
危なかった。やっぱりこの流れのまま主導権を握るつもりだったらしい。
一応は納得してくれたみたいだけれどもそれはそれ、これはこれなのだろうか。バアルは残念そうに同意してくれた後も俺を離そうとはしないし、撫でる手を止めることもしない。
いや、まぁ、俺も今はこのままでいたい気分だし? 俺からも抱き締め返せば、撫で返せばおあいこみたいなもんだし?
自分で自分に言い訳になっていないような言い訳をしながら俺は彼の背に腕を回して、その広くて少しゴツゴツしている背中を撫でた。よし、完璧だ。
そうして、また一人で勝手に納得していると頭の上でくすりと笑う気配がした。そっと見上げれば、何事もなかったかのように穏やかに微笑むバアルが魅力的なお誘いをしてくれる。
「では、お食事が終わりましたら、魔術のお勉強を致しませんか? 昨日は丁度いい術の体験が出来ました故、そちらの中から貴方様がお気に召したものを」
「やった! じゃあ、俺もバアルみたいに分身出来るようになれる?」
彼の言葉を待てなかったくらいにすでに前のめりな俺の頭の中は、もう彼との魔術の勉強のことでいっぱいになっていた。ほんの数秒前に引っかかっていたことなんぞ、遥か彼方へとすっ飛んでいってお星さまになってしまっている。
「ふふ、もうお決まりでしたか。ええ、いずれは。寧ろ私めよりもお得意になられるやもしれません」
「そうかなぁ……でも、優秀なバアルが先生だもんね。俺にとっての得意な術になっちゃうかも」
「ええ、きっと」
嬉しそうに頷いて、バアルは俺をもう一度ぎゅっと抱き締めてくれた。
名残惜しそうに腕を緩めてから再びフォークとナイフを手にして、まだ鉄板の上で出来立ての音を立てているハンバーグへとナイフを入れる。すぐさま丁寧に一口サイズに切ったハンバーグを、満面の笑みを浮かべながら俺の口元へと差し出してきた。
「では、より良い成果が出せるよう、しっかりと食べておきましょうね」
「うんっ」
腹が減っては何とやら。俺は気合十分に、バアルが差し出してきたハンバーグを頬張った。
不意にナイフとフォークをステーキ皿の端へと静かに置いたかと思えば、大きな手のひらが俺の手を恭しく取った。それから手元のすでに半分になりかけているハンバーグではなく、まだ手つかずなハンバーグステーキへと視線を向けてから、俺に微笑みかけた。
「その後は、どうか私めに……アオイの手ずから食べさせては頂けないでしょうか?」
「……分かった。だったら、いいよ」
「ありがとうございます」
整えられた渋い髭まで微笑んで見えるように、それはそれは嬉しそうに、満足そうな笑顔を向けられてしまうとそれ以上は何にも言えなくなってしまう。
バアルが嬉しそうだから、それでいいかって。俺まで満足な気持ちになってしまうのだ。
「誤解なきよう、お先に申し上げておきますが……」
「大丈夫、分かってるよ。いつもの交互に食べさせ合いっこするのに不満がある訳じゃないんだよね? ただ、時々は、ずっとこうしていたいってことでしょ?」
「ありがとうございます。ご理解頂けていたようで、大変嬉しく存じます」
あんまりにも安心したように表情を綻ばせるもんだから、またしても俺の口は釣られて綻んでしまっていた。
「まぁ、気持ちは分かるからさ。俺だって、バアルのこと甘やかしたいのはホントだけど……いっぱい俺だけを甘やかして欲しいなって、その、ちょくちょく思っちゃうし……」
「アオイ……っ」
長い腕が俺を包み込むように抱き締めてくれる。
俺の名を呼んだ声は感極まっているようで、見つめてくる眼差しは言葉にしなくとも彼の想いが、愛が伝わってくるようで。駆け足になっていた鼓動が、ますますはしゃぐように踊ってしまう。
だというのに微笑む瞳に見つめられながら、さも愛おしげに頭を撫でられてしまえばつい彼に甘えたくなりそうに、流されてしまいそうに。
「だ、だからっ、今日は俺の番だってば!」
この時点ですらも、ちゃんとバアルのことをとびきり甘やかすことが出来ているのかってのは、若干疑問が残ってはいるけれども。
「左様でございましたね……」
危なかった。やっぱりこの流れのまま主導権を握るつもりだったらしい。
一応は納得してくれたみたいだけれどもそれはそれ、これはこれなのだろうか。バアルは残念そうに同意してくれた後も俺を離そうとはしないし、撫でる手を止めることもしない。
いや、まぁ、俺も今はこのままでいたい気分だし? 俺からも抱き締め返せば、撫で返せばおあいこみたいなもんだし?
自分で自分に言い訳になっていないような言い訳をしながら俺は彼の背に腕を回して、その広くて少しゴツゴツしている背中を撫でた。よし、完璧だ。
そうして、また一人で勝手に納得していると頭の上でくすりと笑う気配がした。そっと見上げれば、何事もなかったかのように穏やかに微笑むバアルが魅力的なお誘いをしてくれる。
「では、お食事が終わりましたら、魔術のお勉強を致しませんか? 昨日は丁度いい術の体験が出来ました故、そちらの中から貴方様がお気に召したものを」
「やった! じゃあ、俺もバアルみたいに分身出来るようになれる?」
彼の言葉を待てなかったくらいにすでに前のめりな俺の頭の中は、もう彼との魔術の勉強のことでいっぱいになっていた。ほんの数秒前に引っかかっていたことなんぞ、遥か彼方へとすっ飛んでいってお星さまになってしまっている。
「ふふ、もうお決まりでしたか。ええ、いずれは。寧ろ私めよりもお得意になられるやもしれません」
「そうかなぁ……でも、優秀なバアルが先生だもんね。俺にとっての得意な術になっちゃうかも」
「ええ、きっと」
嬉しそうに頷いて、バアルは俺をもう一度ぎゅっと抱き締めてくれた。
名残惜しそうに腕を緩めてから再びフォークとナイフを手にして、まだ鉄板の上で出来立ての音を立てているハンバーグへとナイフを入れる。すぐさま丁寧に一口サイズに切ったハンバーグを、満面の笑みを浮かべながら俺の口元へと差し出してきた。
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