【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】九日目:とある王様は、微笑ましいダンスを見守る

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 胸に手を当てお辞儀をしたバアルに続いて、照れ臭そうに頭の後ろをかいてからクロウも頭を下げた。バアルよりも深いお辞儀であった。

 その後、どうぞ宜しくお願い致します、とバアルが差し出した手にクロウが手を重ね、あっさり決まった長身ペアに対して小柄な愛らしいペアは膠着状態。まだグリムは少し戸惑っているようであった。だが、アオイ殿の手を離そうとする気はさらさらなさそうではあるが。

「わ、うっ、嬉しいです……でも、僕」

「俺も、最初は全然出来ませんでした」

「え……」

「踊ったことなんてなかったから、ステップも全く分からなくて……バアルの足を踏んじゃうんじゃないかって、ずっと不安でした」

「アオイ様、も……」

「はい。でも、その時に……初めてバアルと踊った時に言ってもらえたんです。俺の好きなように踊っていいって、楽しむことが大事だからって」

 優しく微笑む琥珀色の瞳が、バアルを見つめる。二人の視線が交わったのは、ほんの一瞬であった。であるが、心が通じ合っているかのように微笑み合っておった。

 思いがけず聞くことが出来たバアルとアオイ殿の思い出話に、思いがけず見ることが出来た信頼し合っている二人の姿に胸の内が熱くなる。気がつけば、私は自然と彼らの元へと歩み寄っていた。

「……だから、グリムさんも俺達と一緒に楽しみましょう? ね?」

「は、はいっ!」

 話がまとまったところで、手を取り微笑み合うアオイ殿とグリムに声をかける。

「そのダンスパーティー、私達もお仲間に入れてもらってもいいであろうか?」

「はい、勿論っ……あ、でも……」

 アオイ殿は人数が奇数であることを心配してくれているようであったが、問題はなさそうである。

「わしとレタリーが、ヨミと交互に踊るから心配いらんぞ」

「はい。一人の時は、コルテと一緒にリズムに乗っておりますので」

 父上に頷いてからレタリーは、投影石を手にしたまま早速その場で踊り始める。

 黄緑色の長い尾羽根がふわりふわりと揺らめき出す。軽やかでありながらも上品なステップは、まるで見えないパートナーがいるのだと錯覚してしまいそうなほどに素晴らしい。彼に合わせてコルテまでもが側で舞っているもんだから、コルテと共に踊っているかのようにも見えた。流石の腕前である。

「スゴい……!」

 明るく弾んだアオイ殿とグリムの声が重なった。二人共手を繋いだまま、目を輝かせている。

「お褒め頂き、光栄に存じます」

 レタリーはコルテと共にポーズを決めてお辞儀をしてから、これで人数の問題は解決ですね、と瞳を細めた。


 コルテが奏でているのは、のんびりと散歩をしているようなゆったりとしたリズムの曲。穏やかな曲調に合わせて彼らが踏んでいたステップに、すでに最初のぎこちなさはない。

「ふふ、どうです? クロウ。アオイ様仕込みのステップは」

「グリムにしては、物覚えが早いんじゃないか? 様になってるぞ」

「でしょう? アオイ様の教え方、すっごく分かりやすかったですからっ」

 会話を交わす余裕もあるほど。手を取り合って楽しそうにステップを踏んでいる。

「クロウもカッコいいですよっ」

「そりゃあ、バアル様が教えてくれたからな」

「ですよねっ、バアル様もアオイ様もやっぱりスゴいですっ」

 お互いのダンスを褒め合いながら、自慢気に自分たちのダンスの師について語り合う様子は誠に微笑ましい。そして、こちらも。

「わ、ひょわっ、高っ……!」

 アオイ殿が、またその華奢な身体を宙に舞わせている。バアルとのダンスを見たからであろう。父上もやってみたかったらしい。
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