【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】九日目:もし、今回のことのせいで彼が遠慮しちゃったら……そう思うと寂しくて

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 いや、まぁ、実際にバアルの手の上で見事に踊っちゃってたんだけどさ。とまぁ……それは、ひとまず置いておいて。

 んで、いざ呼ばれた時に喜び勇んで顔を上げてみれば、何だか俺の様子がおかしいぞと。俺が……あー……うん、一人で、その……済ませちゃおうとしちゃっているのに気がついてしまったそうで。

 ……そのことに、バアルにお願いしなかったことに寂しく思ってくれたそうで。思わず声をかけたところで俺があまりにも動揺しちゃっててバアルもびっくりしちゃって……ん、まぁ、今に至るって訳で……うん。やっぱり俺も同罪っていうか、むしろ別にどっちも悪くないんじゃ?

 いや、今は悪いとか悪くないとか考えている場合じゃない。バアルにちゃんと伝えないと。

「大丈夫だよ、バアル」

 膝立ちのままバアルに近づいて、下げたままの頭を撫でる。優しく優しく撫でている内にしょんぼりと下がっていた二本の触角が徐々に元気を取り戻していく。萎れた花のように萎んでしまっていた羽も、ゆっくりと広がっていって小さくはためき始めた。

 顔を上げてくれたバアルの表情もまた少しだけ、分厚い雲から日差しが差しんでいるように明るさを取り戻しつつある。

「……ご機嫌を、損ねてしまわれていらっしゃるのでは?」

「ふふ、怒ってなんかないよ」

 つい笑ってしまっていた。あんまりにも有り得なかったから。

 バアルも微笑んでくれた。けれども、まだ何かしら引っかかっていることがあるんだろう。すぐにまた口角がちょっとだけ下がってしまっている。渋いお髭も何だか元気がなさそう。ふわふわ感が足りないように見えてしまう。

 柔らかな彼の髪を梳いて、頬に触れる。滑らかな肌を手のひらで撫でているとバアルも瞳を細めて擦り寄ってきてくれた。俺は、また俺が思っているままを口にした。

「バアルの気持ち、分かるからさ」

「私めの……?」

「うん……俺がバアルの立場だったら、起こして欲しいなって寂しくなっちゃうし、ちょっかいも出しちゃ」

「ちょっかいを出して頂けるのでしょうか? アオイから私めに?」

 急に元気になってくれたバアルが食い気味に尋ねてきた。心配になるくらいに白くなっていた頬は瞬く間に血色よく色づいていて、透き通った羽までもがご機嫌そうにはためいている。

「ふぇっ? う、うん……」

 嬉しさと驚きに同時に襲われつつも頷けば、バアルの瞳がゆるりと細められていく。

「左様でございますか……」

 噛み締めるように呟いたバアルは何だかとても嬉しそう。まだ、させてもらってもいないのに、そんないいリアクションをされてしまうと顔が熱くなってしまう。気分がはしゃいでしまう。

「と、とにかく俺は安心したっていうか、嬉しかったから……だから、バアルも気にしないでね?」

「はい、御慈悲に感謝致します」

 すっかりバアルはいつもの調子を取り戻してくれていた。念押しで言っておく必要はなかったのかも。でも。

「……また、してもいいからね?」

 もし、今回のことのせいで彼が遠慮しちゃったら。そう思うと寂しくて、俺は彼の手を取りながらお願いをしていた。

「寝惚けちゃってても、寝たフリでも……嬉しいから……」

「っ、アオイ……」

 手を握り返してもらえたかと思えば、視界がブレていた。柔らかだけれどもしっかりとした感触が背中を支えてくれたのと同時に、天井を背に俺を見下ろす彼が見えた。

「あ、バアル……」

 キスしてもらえそう。

 そう思った時には重ねてもらえていた。どこか余裕がなく、遠慮もしてくれないでいる重みが俺にのしかかってくる。抱き締めてくれる筋肉質な腕に、触れ合えた喜びに胸がじんわりと満たされていく。
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