【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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★【新婚旅行編】九日目:嬉しいのに切なくて、バアルが全然足りなくて

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 バアルはすっかり上機嫌のようだ。

 後ろから包み込むように抱き締めてもらっているままだから、余韻に浸ってしまっている俺がぼんやりと俯いてしまっているから、満足そうに微笑んでいるであろう顔を見ることは出来てはいない。

 でも、あからさまに賑やかなのだ。ぶんぶん、ぱたぱたと彼の触角と羽が奏でいる音がずっと聞こえているのだから。

 喜んでもらえたのは何よりだ。自分のことのように嬉しい。でも、やっぱり気恥ずかしさに慣れることはないみたい。

 特にズボンもパンツも穿いたままで何度も気持ちよくされてしまうと……余計に妙な気分になってしまう。考えるのも恥ずかしいんだけど、粗相してしまった気になっちゃうというかさ。

 いや、実際には普通にイっちゃっただけだし! どれだけ汚しちゃってても、そういうのじゃないし! 健全? だし!!

 大好きな人に俺が好きなところばっかり触ってもらえて、男として自然な反応をしちゃっただけだし! 生理現象みたいなもんだし!!

 頭を蕩けさせるような心地よさが徐々に落ち着いていっているからだろう。余計に気恥ずかしさだけが残ってしまう。

 けれどもご機嫌な彼にとっては俺の様子なんて知る由もない。

「アオイ、可愛かったですよ……誠に嬉しく存じました。達してしまわれたばかりだったとはいえ、大変愛らしい反応を見せて頂けて……」

 改めて口にするくらいだ。本当に喜んでもらえたんだろう。本当に、本当にそれは何よりなんだけれども。

 何かのスイッチが入ってしまったみたい。顔が燃えるように熱くなってしまう。とことん気恥ずかしくなってしまうと、思いっきり開き直れるもんなんだろうか。

「っ……そう、だよ……バアルが、嬉しいことばっかり……ん、言ってくれるから……すぐに気持ちよく、なっちゃったの……っ」

 気がつけば俺は顔だけ振り向きながら、間近にいた彼に対して拗ねたような声で言い捨ててしまっていた。まるで八つ当たりするみたいに。

 ムキになっている俺が珍しく見えたのか、それともこういった形でお返事が返ってくるとは思わなかったのか、それともその両方なのか。バアルは分かりやすいくらいに瞳をきょとんとさせていた。豆鉄砲でも食らったみたいに。

 まだまだ開き直ったままの俺の口は止まらない。それどころか、バアルが勢いをなくしていたもんだから余計に饒舌になってしまう。

「だから、ちゃんと責任取ってよね……ずっと、我慢……してたんだからさ……もっと構ってくれないと……いい子だねって褒めてくれないと……イヤなんだから……」

 一旦、自分の中で言葉を推敲することもせずに、ただ感情のままに話してしまっているからだろう。途中から俺自身も何を言っているのか分からなくなってしまっていた。

 気持ちの方もぐちゃぐちゃだった。スゴく嬉しいのに、同じくらいに何だか切なくて。バアルが全然足りなくて。

 心が渇いてしまっているような衝動に任せて、俺は彼の腕の中で身を捩っていた。まだバアルは、ちょっとした驚きから立ち直っていなかったんだろうか、その筋肉質な腕の力は予想外に緩んでいて、俺の力でも簡単に身体ごと振り返ることが出来ていた。

 やっぱりバアルはまだきょとんとしたままだった。白い睫毛に縁取られた緑の瞳は、ちゃんと俺を映してくれているのにただぼんやりと眺めているだけ。優しく微笑んでくれたり、嬉しそうに微笑むこともない。

 これはこれで珍しい。可愛いな。
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