【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】十日目:恐怖を拭う手のひら

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 お揃いの姿をした像は、いくつかの動物をかけ合わせているような。鳥の翼を持っていたり、馬のような蹄を持っていたり、ヘビのような鱗を纏う長い尻尾が生えていたりと、摩訶不思議でいかにも想像上の生物のような見た目をしている。

 だというのに、彫った人の魂が込められているのだろうか、今にも動き出してきそう。俺が何かしらの粗相をしようもんなら、その虎のように鋭い目で睨みをきかせてきそう。その骨をも簡単に砕いてしまいそうな牙で襲いかかってきそうだ。

「アオイ、大丈夫ですよ。貴方様には、このバアルがついております故」

「あ……」

 まだ俺自身すらも気が付けていなかった。でも、バアルは僅かに滲んでいた恐怖心を容易く消してくれる。大きな手のひらで頭を撫でてくれて、ざわつきかけていた俺の気持ちを和らげてくれる。

「そう、だね……何かあってもバアルが守ってくれるもんね」

「はい。貴方様には指一本触れさせは致しません」

 真っ直ぐで頼もしい眼差しが、言葉が、俺の胸の内を温かくしてくれる。

「ふふ、心強いな。じゃあ、もしこの像が動き出しちゃってもへっちゃらだね」

「ええ。貴方様のご明察の通り間もなく動き始めてしまうでしょうが、問題はないかと」

「そっか。じゃあ、安心……うぇっ!?」

 咄嗟に俺はバアルの後ろへと、その広い背中に隠れるように抱きついてしまっていた。

 怖気づいてしまっても気にはなるもので。顔だけは出して、二体の像を観察してみていた。まだ、今のところ動き出す気配はなさそう。でも、さっきより目つきが鋭くなったような。警戒を強めているように、俺達を睨みつけているような。

 完全にビビりまくっている俺をよそに、バアルは冷静さをなくしてはいない。それどころか和んでいるようだった。目尻のシワを深めながら、羽をはためかせながら、俺の頭を撫でてくれている。

「う、動きそうだなって思ってはいたけど……マジで? マジなの?」

「マジです」

「うへぇ……」

「ですが、私達が何らかの行動を起こさない限りは、ただの像のままかと」

 俺を甘やかす手は止めないまま、バアルは鋭く細めた瞳で二体の像を見つめた。まるで、何かを見極めているかのような……ああ、そうだった。

 うっかり忘れそうになっていたが、俺達が参加しているアドベンチャーコースは、知恵と勇気、それから術を使って古代のお宝を見つけ出すというものだ。

 つまりは、色々なところに何らかの術を用いて解除出来るような仕掛けが施されているということで。優秀な術士であるバアルには、俺にはまだ上手く見ることが出来ない魔力の流れというか、どういう術が施されているのかが見えているんだろう。

「しかし、あちらの入り口と連動しているようですので、どうにか像を動かさなければそもそも遺跡の中へは入れないかと」

「扉と……じゃあ、泥棒相手の迎撃システムみたいな感じじゃないんだ?」

「恐らくは……ですが……もし、私達が解除のやり方を誤ってしまえば、襲いかかってくるやもしれませんが」

「ひぇ……」

「まぁ、それはそれで。手間が省けるというものでは? 返り討ちにしてしまえば、扉も開くやもしれません」

 誤ってしまえばだなんて、あっけらかんと言っただけのことはある。頼もしすぎる。

 バアルだったら、その拳一つで簡単にピンチを打破してしまいそう。ご自身よりも遥かに大きな石像でも、呆気なく壊してしまいそうだ。
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