【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】十日目:空気の読める小さな従者

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 たちまち疑問符でいっぱいになってしまった頭がフリーズを起こしてしまう。真っ直ぐで真剣なその眼差しを受け止めるだけで精一杯になってしまっていると、しなやかな指が絡んできた。重ねられて、繋がれた手のひらが熱い。

「愛しい貴方様に触れさせて頂いても? 暫しの間だけで構いません故」

「あ、ぅ……」

 熱のこもった眼差しを向けてくれながら、そこまで言ってもらえてようやくだった。彼も同じ気持ちだったんだって気付けたのは。

「いい、よ……その代わりに、俺も……バアルを撫でたいんだけど……?」

 繋いでいる手にそっと力を込めながら高い鼻先へとキスするように鼻を寄せれば、風を切るようにはためく羽の音が聞こえてきた。

「ええっ……ええ、大歓迎致します……っ」

 宝石よりもキレイな目を輝かせながらバアルが頷く。その声はいつもの平静さを保とうとしていたけれども。

「是非……貴方様の愛らしい御手で、この老骨めを愛でて下さい……」

 俺にはちょっぴり弾んでいるように、喜びが滲んでいるように聞こえたんだ。

 瞳を細めながらバアルが頬を擦り寄せてきてくれる。柔らかい肌と一緒にふわふわとしたお髭もくっつけてきてくれて擽ったい。俺からもお返しをと指通りのいい髪を撫でれば、嬉しそうに笑みを深めてくれた。

 甘くなった空気を読んでくれたのか、気がついた時にはコルテは消えていた。俺達を優しく照らす明かりだけを残して。


 コルテが現れたのは、俺達がお互いにお互いを存分に充電することが出来た頃。そろそろ先に行こうかと、話していたところで見計らっていたように、さあ、行こう! とばかりにチリリリリンと羽音を鳴らしたのだ。

 あまりのタイミングの良さに俺どころかバアルまで珍しく顔を赤く染めていた。いいものを見れたな。

 今までと同じように先を照らしてくれるコルテに導かれながら次の部屋へと。そこも何かの冒険物の映画やアニメ、またはゲームで見たような。

 今回、明らかに何らかの仕掛けが施されていそうに見えたのは床だった。

 俺達が今立っている入ったばかりのところ。そこは何も変わらない石畳だった。レンガで作ったみたいに、いくつもの長方形が規則正しく並んでいる。

 けれども、数歩先は違っていた。敷き詰められている石畳が方眼用紙のように四角いマス目になっていた。まぁ、それだけならば不思議には思っても、さほどは警戒しないのかもしれない。

 でも、一つ一つのマス目ごとに異なるマークが描かれていたら?

「絶対に何かあるヤツじゃん……間違ったのを踏んじゃったらさ……」

「成る程。では、此方の仕掛けは正解のマークだけを踏みながら向こうの扉を目指す……ということで宜しいのでしょうか」

 ご自身のシャープな顎へと長い指を添えながら、バアルは部屋の奥へと視線を向けた。俺も釣られるように視線を向けていた。

 マークが描かれたマス目の先には、俺達が踏みしめているのと同じ長方形の石畳が。そして次へと進む大きな扉も見えた。

 マークの形は様々。丸に三角、四角、星、しずくの形。トランプでお馴染みのハート、スペード、クラブにダイヤ。それから太陽に、もくもくしてるのは雲かな。だとすれば、ぱっと見クモの巣みたいに見えたのは雪の結晶なのかも。

「うん、多分ね。俺が知っている通りなら、すぐ近くにヒントがあるハズなんだけど」

 手狭な安全スペースを見渡していたところでコルテがチリンと知らせてくれた。小さな彼が瞬きながら飛んでいるまさにそこ、俺達から見て左の壁に何やら文字が刻まれている。
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