【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】十一日目:時々強引、基本的には律儀で紳士

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「ふふ……」

 こぼれていた笑みが息ぴったりに重なった。それがまたおかしくて、お互いにまたくすくすと笑ってしまっていた。

 とはいえ、いつまでも続くことはなく、自然と収まっていく。残ったのは、何だか甘い空気。

 ぱちっと視線が合ったかと思えば、瞬間移動させられたみたい。体勢が逆転していた。逞しい長身に覆い被さられるようにベッドへと押し倒されていた。

 何も感じなかったんだけど? ひっくり返されたような感覚も、視界がブレたような感じも。

 俺の知らない術でも使われたんだろうか。驚きながらも納得しかけていると長い腕が腰に回されていた。触れてきた指先の動きは、明らかに少し前のひと時を思い出させるような。

「ん……ま、待って、バアル……」

「……お嫌でしたか?」

「う……いやじゃ、ないけど……」

「でしたら、んぐ」

 咄嗟に手で覆っていなければ、その形のいい唇は確実に俺の首元を狙おうとしていただろう。現にどこか不満そうな眼差しが、諦めきれないといった様子で俺の首をちらちらと見つめている。

 ……可愛い。このままじゃ、押し切られちゃいそう。

 後一押しだとバアルも分かっているんだろう。手首を優しく掴んできたかと思えば、バアルの方からより唇を近づけてきた。柔らかな温もりが強請るみたいに手のひらにすりすりと擦り寄ってきて。

「……だからっ、ちょっと待ってってば!」

「……畏まり、ました」

 甘やかしてしまいたくなる衝動を何とか堪えてお願いすれば、渋々ながらも了承してくれた。小さく頷いてから手首を離してくれたので、俺も彼の口元から手を離す。

 強引なところも時々あるが、基本的には律儀で紳士な彼は、ちゃんと俺の言葉を待ってくれている。腰を撫でる手つきも今は、背中の辺りがそわそわしてしまういやらしさはない。ただ優しいものに変わっていた。

 触角と背中の羽は、どこかしょんぼりしているというか。下がったり、縮んだりしてしまっているけれども。

 あからさまに残念そうにしている彼に対して心苦しく思うものの、俺にだってそれなりな理由はある。バアルもきっと分かってくれるだろう。

「いや、さ……明日には、もう帰るでしょ、俺達」

 時を忘れてしまうような、だなんてありきたりな言葉を使いたくなっちゃうほどに楽しかった新婚旅行も今日が実質の最終日。

 明日のお昼までには、こちらのホテルからチェックアウトして俺達が帰るべきところへ、ヨミ様達が待つお城へと帰る予定になっている。

「ええ、予定では。サタン様とヨミ様からは延長してもよいのではと、お好きなだけ此方で過ごしてもよいのだと、過分なるご厚意を頂いてはおりますが」

「うん。流石に、ね……」

 南エリアでの生活は魅力的だ。好きなだけバアルと二人っきりで過ごせるし。

 でも、やっぱり落ち着くのは、ふとした時に思い浮かぶのは、俺とバアルを待ってくれている皆さんとのお城での日々で。

 だからこそ、帰りたいなって思ったのだ。十分に楽しませてもらえたから。

「それに、ヨミ様曰く、これからは俺もバアルの……お、奥さんとして……バアルと一緒に表に立つ機会が増えるみたいだから、もっと頑張んなきゃだし」

 どこからどう頑張ったらいいのかは、まだイマイチ分かってはいないけれども。直近でのイベントの参加は、もう決まっちゃっているんだもんな。
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