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【新婚旅行編】十一日目:俺にとっては嬉しい、無自覚な変化
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まるで歓迎を示してくれているような。そんな踊りに加わってきたのは小さなオレンジ。丸っこいフォルムをした魚が緑の魚にじゃれるように彼の周りをくるり、くるりと舞い始めたのだ。
緑の魚もそのお誘いに応えるようにヒレを揺らして、今度は二匹でくるり、くるり。
戯れ合うように舞い踊っている内に俺達のことなどすっかり忘れてしまったのだろう。そのまま楽しそうに踊るように泳ぎながら二匹は去っていく。寄り添い合いながら、ぼんやりと明るい夜空へと向かって。
「ふふ」
ついこぼれていた笑みが重なる。釣られて横を向けば、バアルも小さく笑っていた。
「何か、俺とバアルみたいな魚だったね」
「ええ、色も似ておりました」
「この泡も、魚もテーマパークで見たのとおんなじ術なのかな? あのサターン様とヨミーン様みたいな」
テーマパークに入ってすぐ、お客さん達を歓迎してくれるように現れたサターン様とヨミーン様の立体映像。淡く輝いていた彼らもまた生きているみたいに動いていたし、映像なのに触ることが出来たっけ。
「ええ、恐らくは。此方の術の方は、明かりを灯すことに重きを置いているようではございますが。サターン様とヨミーン様の映像は、対話機能に特化しておられるようでした故」
「スゴ……そんなことまで分かるの?」
「はい」
瞳を細めて頷くバアルは、これくらいなんてことはないとばかり。俺だったらつい得意気になっちゃったり、褒めて欲しいなって思ったりしそうな。結構、いやかなりスゴいことをサラッとこなしちゃっていると思うのだけれども。
バアルにとっては注意深く周囲を見渡すレベルだったりするのかな。
たった一人で、一番危険な場所へと何度も儀式に向かっていたくらいだ。周囲の状況くらい簡単に把握出来なければ、やっていけなかったのかもしれない。
「……やっぱり、俺のバアルはスゴいね」
自然と伸ばしていた手のひらが白い頬へと届く前にバアルの方から擦り寄ってきてくれた。真っ直ぐに伸びた背筋を屈めて、頬に添えた俺の手に手を重ねてくる。
「……スゴいですか?」
「うんっ、スゴい。尊敬してる。流石、俺の先生っ」
「……カッコいい、ですか?」
尋ねてきた声は少しおどけているようだった。けれども見つめてくる眼差しは、気恥ずかしそうにしながらも期待に満ちていて。
「っ、か、カッコいい! カッコいいよ、バアル!」
前のめりで応えながら、俺はもう片方の手も伸ばしていた。彼の滑らかな頬を包み込みながら、思いっきり撫で回してしまっていた。
照れ臭そうに細められていた瞳が僅かに見開いて、ゆるりと微笑む。ふわふわのお髭も、綻んだ唇と一緒に笑っていた。
「ふふ……ありがとう、アオイ」
「っ……!」
まさか追撃を受けてしまうとは。
優しい笑顔による衝撃だけでも、俺の心のグラフは急上昇。逆上せたかのように顔が熱くなり、鼓動がはしゃいでしまっていた。そこに、トドメの五文字。なんてことはない些細な感謝の言葉にここまで心を掴まれるとは。
バアルは……また、気付いていないみたいだな。
息を呑んだまま俺が固まってしまっていても、もはや彼にとってはよくあることになってしまったらしい。二本の触角を揺らしながら、透き通った羽をはためかせながら、俺の手のひらに擦り寄ってくれている。
結構、効果があったのかな。言葉遣いを真似てみるってのも。
俺にとっては嬉しい傾向だ。自覚があろうが無かろうが。さっきみたいな、ほんの一言だったとしても。俺だけにしか見せないであろう変化が嬉しい。
「アオイ……? 何だか、ご機嫌そうですね」
「うんっ、俺のバアルがカッコよくて可愛いから!」
「そう、ですか……」
バアルはまた照れたように長い睫毛を伏せたものの、それ以上は特に気にしているような様子はない。俺に撫でられるがまま、少し大きく広がった羽をぱたぱたはためかせていた。
緑の魚もそのお誘いに応えるようにヒレを揺らして、今度は二匹でくるり、くるり。
戯れ合うように舞い踊っている内に俺達のことなどすっかり忘れてしまったのだろう。そのまま楽しそうに踊るように泳ぎながら二匹は去っていく。寄り添い合いながら、ぼんやりと明るい夜空へと向かって。
「ふふ」
ついこぼれていた笑みが重なる。釣られて横を向けば、バアルも小さく笑っていた。
「何か、俺とバアルみたいな魚だったね」
「ええ、色も似ておりました」
「この泡も、魚もテーマパークで見たのとおんなじ術なのかな? あのサターン様とヨミーン様みたいな」
テーマパークに入ってすぐ、お客さん達を歓迎してくれるように現れたサターン様とヨミーン様の立体映像。淡く輝いていた彼らもまた生きているみたいに動いていたし、映像なのに触ることが出来たっけ。
「ええ、恐らくは。此方の術の方は、明かりを灯すことに重きを置いているようではございますが。サターン様とヨミーン様の映像は、対話機能に特化しておられるようでした故」
「スゴ……そんなことまで分かるの?」
「はい」
瞳を細めて頷くバアルは、これくらいなんてことはないとばかり。俺だったらつい得意気になっちゃったり、褒めて欲しいなって思ったりしそうな。結構、いやかなりスゴいことをサラッとこなしちゃっていると思うのだけれども。
バアルにとっては注意深く周囲を見渡すレベルだったりするのかな。
たった一人で、一番危険な場所へと何度も儀式に向かっていたくらいだ。周囲の状況くらい簡単に把握出来なければ、やっていけなかったのかもしれない。
「……やっぱり、俺のバアルはスゴいね」
自然と伸ばしていた手のひらが白い頬へと届く前にバアルの方から擦り寄ってきてくれた。真っ直ぐに伸びた背筋を屈めて、頬に添えた俺の手に手を重ねてくる。
「……スゴいですか?」
「うんっ、スゴい。尊敬してる。流石、俺の先生っ」
「……カッコいい、ですか?」
尋ねてきた声は少しおどけているようだった。けれども見つめてくる眼差しは、気恥ずかしそうにしながらも期待に満ちていて。
「っ、か、カッコいい! カッコいいよ、バアル!」
前のめりで応えながら、俺はもう片方の手も伸ばしていた。彼の滑らかな頬を包み込みながら、思いっきり撫で回してしまっていた。
照れ臭そうに細められていた瞳が僅かに見開いて、ゆるりと微笑む。ふわふわのお髭も、綻んだ唇と一緒に笑っていた。
「ふふ……ありがとう、アオイ」
「っ……!」
まさか追撃を受けてしまうとは。
優しい笑顔による衝撃だけでも、俺の心のグラフは急上昇。逆上せたかのように顔が熱くなり、鼓動がはしゃいでしまっていた。そこに、トドメの五文字。なんてことはない些細な感謝の言葉にここまで心を掴まれるとは。
バアルは……また、気付いていないみたいだな。
息を呑んだまま俺が固まってしまっていても、もはや彼にとってはよくあることになってしまったらしい。二本の触角を揺らしながら、透き通った羽をはためかせながら、俺の手のひらに擦り寄ってくれている。
結構、効果があったのかな。言葉遣いを真似てみるってのも。
俺にとっては嬉しい傾向だ。自覚があろうが無かろうが。さっきみたいな、ほんの一言だったとしても。俺だけにしか見せないであろう変化が嬉しい。
「アオイ……? 何だか、ご機嫌そうですね」
「うんっ、俺のバアルがカッコよくて可愛いから!」
「そう、ですか……」
バアルはまた照れたように長い睫毛を伏せたものの、それ以上は特に気にしているような様子はない。俺に撫でられるがまま、少し大きく広がった羽をぱたぱたはためかせていた。
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