1,352 / 1,566
【新婚旅行編】十一日目:ただの薄っぺらい板よりも、私の方が
声を弾ませるアオイが指差す先。リンゴくらいの大きさの泡の中に、そのアクリルスタンドとやらがあった。
薄い板状に加工してある魔宝石の表面に、私の写真を印刷してあるようだ。長方形のままではなく、私の形に合わせて綺麗にくり抜かれている。スタンドと名が付くだけあって、立てて飾れるように台座が付いていた。
使われている写真には見覚えがあった。ヨミ様から、我らが民とも共有したいっ、此方もグッズとして利用しても良いだろうか? と尋ねられたものだ。元々の写真は確か……頬を赤く染めてはにかむアオイが私を見上げてくれながら、私の手を。
……アオイは? 何故、私だけ? 何故、そのままを使わない? 何故、わざわざ私とアオイを引き離した?
それも、あたかも元から私の隣にはアオイが居なかったかのような加工までして。私達は手を繋ぎ、寄り添い合っていたというのに。いや、そもそも写真なのだから。
アオイが心惹かれるのは、目の前に居る私で良いのでは?
ぬいぐるみはまだ良い。そもそものデザインが物語に出てくるキャラクターのようにデフォルメ調であるし、作り手によって雰囲気が変わる。私と同じ特徴を持ち、私と同じ衣装を纏った別物として見ることが出来る。だが、単に写真を印刷しただけでは。
そのような薄っぺらい板よりも、明らかに私の方が、何もかもが勝っているではないか。
ただの板が、アオイが大好きだと言ってくれるサンドイッチを作れるのか? アオイ好みの紅茶を淹れることが出来るのか? アオイが甘えたくなった時に、抱き締めて差し上げられるのか? 頭を撫でることが出来るというのか? 出来る筈がない……!!
「へへ、ヨミ様にダメ元で頼んでみて良かった。彫像も良いけど、やっぱり推しのアクリルスタンドは欲しかったんだよね」
今、何と? 聞こえてきてしまった言葉の通りならば、アオイがあのようなグッズが欲しいとヨミ様に提案していたということになるが。
「……アオイが、あちらのグッズの提案を?」
「うんっ! あのサイズのアクリルスタンドだったら、何処でも連れて行くことが出来るし。一緒に写真を撮ったら、バアルと撮ってるみたいになるでしょ?」
ですから、私で良いのでは? いつ如何なる時もお側におりますし、いくらでもご一緒に写真を撮りますが? 衣装だってアオイがお望みのものを、いくらでも着こなしてみせますが?
アオイは、あの薄い板を本当に良いものだと思っていらっしゃるようだ。澄んだ琥珀色の瞳を、それはそれは憧れの品でも見つめているかのように煌めかせている。
私にその眼差しを向けてくれればいいのに。あれは私の写真を使っているだけなのだから。
「……ところでアオイ」
「ん? どうしたの、バアル」
「……私を見て、何も思いませんか?」
薄い板状に加工してある魔宝石の表面に、私の写真を印刷してあるようだ。長方形のままではなく、私の形に合わせて綺麗にくり抜かれている。スタンドと名が付くだけあって、立てて飾れるように台座が付いていた。
使われている写真には見覚えがあった。ヨミ様から、我らが民とも共有したいっ、此方もグッズとして利用しても良いだろうか? と尋ねられたものだ。元々の写真は確か……頬を赤く染めてはにかむアオイが私を見上げてくれながら、私の手を。
……アオイは? 何故、私だけ? 何故、そのままを使わない? 何故、わざわざ私とアオイを引き離した?
それも、あたかも元から私の隣にはアオイが居なかったかのような加工までして。私達は手を繋ぎ、寄り添い合っていたというのに。いや、そもそも写真なのだから。
アオイが心惹かれるのは、目の前に居る私で良いのでは?
ぬいぐるみはまだ良い。そもそものデザインが物語に出てくるキャラクターのようにデフォルメ調であるし、作り手によって雰囲気が変わる。私と同じ特徴を持ち、私と同じ衣装を纏った別物として見ることが出来る。だが、単に写真を印刷しただけでは。
そのような薄っぺらい板よりも、明らかに私の方が、何もかもが勝っているではないか。
ただの板が、アオイが大好きだと言ってくれるサンドイッチを作れるのか? アオイ好みの紅茶を淹れることが出来るのか? アオイが甘えたくなった時に、抱き締めて差し上げられるのか? 頭を撫でることが出来るというのか? 出来る筈がない……!!
「へへ、ヨミ様にダメ元で頼んでみて良かった。彫像も良いけど、やっぱり推しのアクリルスタンドは欲しかったんだよね」
今、何と? 聞こえてきてしまった言葉の通りならば、アオイがあのようなグッズが欲しいとヨミ様に提案していたということになるが。
「……アオイが、あちらのグッズの提案を?」
「うんっ! あのサイズのアクリルスタンドだったら、何処でも連れて行くことが出来るし。一緒に写真を撮ったら、バアルと撮ってるみたいになるでしょ?」
ですから、私で良いのでは? いつ如何なる時もお側におりますし、いくらでもご一緒に写真を撮りますが? 衣装だってアオイがお望みのものを、いくらでも着こなしてみせますが?
アオイは、あの薄い板を本当に良いものだと思っていらっしゃるようだ。澄んだ琥珀色の瞳を、それはそれは憧れの品でも見つめているかのように煌めかせている。
私にその眼差しを向けてくれればいいのに。あれは私の写真を使っているだけなのだから。
「……ところでアオイ」
「ん? どうしたの、バアル」
「……私を見て、何も思いませんか?」
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
トイレで記憶を失った俺は、優しい笑顔の精神科医に拾われる
逆立ちのウォンバット
BL
気がつくと、俺は駅のトイレで泣いていた。
自分の名前も、どうしてここにいるのかも分からない。 財布の学生証に書かれていた名前は、“藤森双葉”。
何も分からないまま駆け込んだ総合病院で、混乱する俺に声をかけてくれたのは、優しい笑顔の精神科医・松村和樹だった。
「大丈夫ですよ」
そう言って、否定せず、急かさず、怖がる俺を受け止めてくれる先生。
けれど、失った記憶の奥には、思い出したくない“何か”があるようで――。
記憶を失った大学生と、穏やかな精神科医の、静かな救済の話。
※第一部完結済
双葉の“失われた時間”については、まだ何も分かっていない。
続きを書くとしたら、また彼らの日々をかけたらと思っています。
もしこの先も見守りたいと思っていただけたら、とても嬉しいです。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
呪われ薬師、最強の仲間たちと旅に出る~美味しそうだと思っているのは秘密です~
なーのなー
BL
10年前、禁じられた呪術を執り行ったダークエルフの村が滅んだ。
「食らいなさい。死にたくなければ、食らい続けるの。」
生き残ったただひとりの少年が、アイザックだった。
時は流れ、アイザックは魔王城へ向かう旅に出る。人間化してしまったこの体を戻す薬を作るため、材料となる魔物を狩りに行くのだ。だが、戦闘のできない非力な人間になったアイザックひとりでは厳しい。
冒険者として登録し、パーティーメンバーを募ることにしたのだった。
0時更新
以前pixivで掲載していた『背徳gluttony』マオルートの加筆、完結版になります。
二章から腐ります。
三章から少しシリアス魔獣編。
ちゃんとハッピーエンドなのでご安心を。2026/4/21の投稿で完結予定。
2026/3/29 表紙画像 変更
登場人物
アイザック・スティール
今や人間の薬師。訳あって魔王城を目指す。
ジュアン・パインリブ
ギルドで暇を持て余す少年。まだまだ未熟な魔族。アイザックの最初のパーティーメンバー。
魔王ハーゲン(マオ)
次代の魔王。暇を持て余していたところ、アイザックたちに出会い、旅に同行する。
亡霊ハロ
災厄の魔女の弟子。アイザックの呪いや振る舞いに興味を持ち、パーティーに加わる。変態。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~
志麻友紀
BL
学園のプリンス(19)×落ちこぼれガイドのメガネ君(18)
卵から男しか産まれず、センチネルという魔法の力がある世界。
ここはそのセンチネルとガイドの才能ある若者達が世界中から集められるフリューゲル学園。
新入生ガイドのフェリックスははっきり言って落ちこぼれだ。ガイドの力を現すアニマルのペンギンのチィオはいつまでたっての灰色の雛のまま。
そのチィオがペアを組むセンチネルを全部拒絶するせいで、マッチングがうまく行かず学園の演習ではいつも失敗ばかり。クラスメイト達からも“落ちこぼれ”と笑われていた。
落ちこぼれのフェリックスの対極にあるような存在が、プリンスの称号を持つセンチネルのウォーダンだ。幻想獣サラマンダーのアニマル、ロンユンを有する彼は、最強の氷と炎の魔法を操る。だが、その強すぎる力ゆえに、ウォーダンはいまだ生涯のパートナーとなるガイドを得られないでいた。
学園のすべてのセンチネルとガイドが集まっての大演習で想定外のSS級魔獣が現れる。追い詰められるウォーダン。フェリックスが彼を助けたいと願ったとき、チィオの身体が黄金に輝く。2人はパーフェクトマッチングの奇跡を起こし、その力でSS級の魔獣を共に倒す。
その後、精神だけでなく魂も重なり合った二人は、我を忘れて抱き合う。フェリックスはウォーダンの運命のボンドとなり、同時にプリンセスの称号もあたえられる。
ところが初めてペアを組んで挑んだ演習でウォーダンは何者かの策略にはまって魔力暴走を起こしてしまう。フェリックスはウォーダンを救うために彼の精神にダイブする。そこで強いと思っていた彼の心の弱さ知り、それでも自分が一緒にいるよ……と彼を救い出す。
2人の絆はますます強くなるが、演習で最下位をとってしまったことで、2人のプリンスとプリンセスの地位を狙う生徒達の挑戦を受けることになり。
運命の絆(ボンド)が試される、ファンタジー・センチネルバース!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。