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行方不明事件⑮
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部屋の中には班長達がいたのだが……その姿は変わり果てていた。カール班長は獣化していることもあり、そこまで傷は負っていなかったが第4班のリン班長、第7班のハールド班長は人族のため、傷がかなり深く入っている。
騎士団でもトップクラスの実力を誇る班長達がここまでボロボロになる理由。それは班長達が磔にされている壁にあった。
それは一見壁に見えるものの、その正体は大きな魔道具。それに触れた人は種族関係なく、内部から体が壊されていくもの。危険すぎるので世界的に使用、生産が禁止されている。さっきの感じたことのない魔力の波長もこの魔道具から放たれているもののようだ。
一体どうやって班長達をここまで連れてきたのかは知らないが、班長達が危ないということは分かる。
この魔道具は内部から体を壊すもの。それなのに一目して傷付いているとわかるということは内部は相当壊れている。一刻も早く、班長達を魔道具から離さなければならない。……これ、私一人で救出できないやつだ。
先輩達もそれが分かったようで一瞬にして2手に別れ、敵に攻撃する側と班長達を救出する側に別れた。
私はというと、邪魔にならないように扉のほうに縮こまっている。何だかんだ魔術を連発したり、怪我を放置して動き回ったりして体力がもう限界なのだ。さっきから眠気が収まらない。立っているだけで精一杯だ。極めつけなのは、常時発動しているディステート·スペースだ。奴隷のチョーカーを隠すために常時発動しているのだが、そのせいで体力が少しずつではあるが減っている。体力がつきかけている今、相当な痛手だ。倒れそうになるのを根性で押さえる。こんなに消耗するのは奴隷時代でも数えるぐらいしかない。
速く終わってくれ…と思いながらも立っていると、敵が襲ってきた。どうやら先輩達を掻い潜り、一番体力が消耗している私を標的にしたのだろう。班長達はなんとか救出できたものの、それに安心した先輩達が少しの油断を生んでしまったのだろう。
慌ててこちらに向かってくる先輩達を尻目に、私の体は吹っ飛ばされた。幸いにもナイフで刺されたりはされていないようで、単純に魔術で強化された体で体当たりされたようだ。私にはもう防御する気力も攻撃する気力もなく、ただ体当たりを受ける他なかった。仮にそれらをする気力があったとしても、体が追い付かなかっただろう。立って、ディステート·スペースを維持するのですらギリギリの状態だったのだから。
壁に激突して、煙が上がる。うっすらと目を開けると、私の体に跨がり剣を振りかざしている敵と、その腕を掴んでいる先輩がいた。この短時間で視界が制限された中、私を助けてくれたのかと驚いていると、そのまま先輩は戦闘を始めてしまった。生憎助ける余裕もなく、ただ体が悲鳴を上げて意識が朦朧とするのを無理やり覚醒することしかできなかった。
その状態が十数分続き、敵は倒された。最後は先輩の闇魔術によって影から伸びる無数の手に掴まれ、そのまま影に引きずり込まれた。
安心したいが、私にはこれから本部に戻るという任務がある。空間魔術をかけている以上、人前で意識を失うことなど言語道断。一瞬だけならまだしも、30分、1時間、2時間…そんな時間も意識を失うわけにはいかない。となると、必然的に自分で動くしかなくなる。いつもより思考回路が薄い中、なんとか頭を働かし、体の悲鳴を無視して立ち上がって一歩を踏み出す。
二歩目を踏み出そうとしたとき、私の腕が誰かに掴まれた。
騎士団でもトップクラスの実力を誇る班長達がここまでボロボロになる理由。それは班長達が磔にされている壁にあった。
それは一見壁に見えるものの、その正体は大きな魔道具。それに触れた人は種族関係なく、内部から体が壊されていくもの。危険すぎるので世界的に使用、生産が禁止されている。さっきの感じたことのない魔力の波長もこの魔道具から放たれているもののようだ。
一体どうやって班長達をここまで連れてきたのかは知らないが、班長達が危ないということは分かる。
この魔道具は内部から体を壊すもの。それなのに一目して傷付いているとわかるということは内部は相当壊れている。一刻も早く、班長達を魔道具から離さなければならない。……これ、私一人で救出できないやつだ。
先輩達もそれが分かったようで一瞬にして2手に別れ、敵に攻撃する側と班長達を救出する側に別れた。
私はというと、邪魔にならないように扉のほうに縮こまっている。何だかんだ魔術を連発したり、怪我を放置して動き回ったりして体力がもう限界なのだ。さっきから眠気が収まらない。立っているだけで精一杯だ。極めつけなのは、常時発動しているディステート·スペースだ。奴隷のチョーカーを隠すために常時発動しているのだが、そのせいで体力が少しずつではあるが減っている。体力がつきかけている今、相当な痛手だ。倒れそうになるのを根性で押さえる。こんなに消耗するのは奴隷時代でも数えるぐらいしかない。
速く終わってくれ…と思いながらも立っていると、敵が襲ってきた。どうやら先輩達を掻い潜り、一番体力が消耗している私を標的にしたのだろう。班長達はなんとか救出できたものの、それに安心した先輩達が少しの油断を生んでしまったのだろう。
慌ててこちらに向かってくる先輩達を尻目に、私の体は吹っ飛ばされた。幸いにもナイフで刺されたりはされていないようで、単純に魔術で強化された体で体当たりされたようだ。私にはもう防御する気力も攻撃する気力もなく、ただ体当たりを受ける他なかった。仮にそれらをする気力があったとしても、体が追い付かなかっただろう。立って、ディステート·スペースを維持するのですらギリギリの状態だったのだから。
壁に激突して、煙が上がる。うっすらと目を開けると、私の体に跨がり剣を振りかざしている敵と、その腕を掴んでいる先輩がいた。この短時間で視界が制限された中、私を助けてくれたのかと驚いていると、そのまま先輩は戦闘を始めてしまった。生憎助ける余裕もなく、ただ体が悲鳴を上げて意識が朦朧とするのを無理やり覚醒することしかできなかった。
その状態が十数分続き、敵は倒された。最後は先輩の闇魔術によって影から伸びる無数の手に掴まれ、そのまま影に引きずり込まれた。
安心したいが、私にはこれから本部に戻るという任務がある。空間魔術をかけている以上、人前で意識を失うことなど言語道断。一瞬だけならまだしも、30分、1時間、2時間…そんな時間も意識を失うわけにはいかない。となると、必然的に自分で動くしかなくなる。いつもより思考回路が薄い中、なんとか頭を働かし、体の悲鳴を無視して立ち上がって一歩を踏み出す。
二歩目を踏み出そうとしたとき、私の腕が誰かに掴まれた。
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