奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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見回り

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久しぶりに再開したカリナンと話していると第七班の人達が戻ってきた。戻ってきた人達は見回り組の人達で一度休憩を取るために戻ってきたらしい。聞けば、早朝四時頃からずっと見回りをしていたとか。

でも、見回りをやめるわけにもいかないので交代として私達が行く事になった。因みにカリナン達第三班は今から書類整理だとか。
書類整理も立派な業務の一つ…とはいえ、体力や精神力が削られる見回りや訓練などに比べれば多少は楽。その代わり集中力がめっちゃいるが。
準備をして見回りに出掛ける。一緒について来たのはキーカル先輩とガリウス先輩、それと第七班の人達が十人程度。ここから二人グループないしは三人グループに別れて見回りをする。

もうだいぶ日も暮れてきて辺りも薄暗くなってきた。夜の森は危険が一発だが、だからこそ不法侵入者が沢山捕まるのも夜。決して気を抜いてはいけない。

「取り敢えず俺らは拠点から大体半径15kmを担当するから、気配察知Maxにして、見つけたらもう確保していいから。報告は魔道具でしてくれればいい」

「わかりました」

人数が少ないため、担当区域は広い。元々一緒に拠点を出た第七班の人達以外の第七班の人達が20人程度で見回りをしていたが、それでも見回りできる範囲は全体の五割程度。
本当はもっと人数が欲しいのだが、これ以上増やすと業務が回らない。
それに、グラード王国の以外にもターリスク王国の周りには隣国がある。そこの国境にも第七班は拠点を持っていて警戒しないといけない。
今はグラード王国との関係悪化によりグラード王国の国境付近に駐屯している騎士が多いが、だからといって他のところの警戒を疎かにしていい筈がない。今は他の班から応援を貰って何とかやりくりしている状況らしい。

そう考えると班員80人程度って少ないから増やせばいいのに…とも思うが、国境付近の警備は王都警備と同じぐらい重要性が高い、第七班が潰れれば、かなりの違法物や犯罪者がターリスク王国に流れ込んでくるだろう。
そう考えるとむやみやたらに増やして警備を甘くするぐらいだったら少数精鋭でいった方がいいのかもしれない…が、これではあまりにも班員の仕事がブラック過ぎるということで、最近では少しずつ班員を増やしているらしい。まあ、その割にはあまり増えていないが。

「第七班も結構優秀な奴が集まってるからな~新人入れるにしても、国境付近ってなるとどうしても慎重になるんだよな…」

「新人が外部に情報を漏らす可能性も捨てきれませんからね…外国の人と一番接するのは第七班ですから…」

「外国に情報流されたら、情報によっては国潰れる可能性があるからね…というか、私達が派遣されたのって第三班の人達の纏まりがなくて困ってるってことじゃなかったですか?」

「ああ…ライは訂正、聞いてないんだっけ?それ実は、全くの嘘なんだよ」

「え?…でもカール班長から聞いた情報ですよ?」

「いや~何か、第三班の人達を送ってくれたのはいいものの、それでも人不足解消されなくてさ…第七班の人達も他の班が人手不足ってことは知ってたから堂々とまた送って…って言えなかったらしくてさ~」

「…そんなの…まあ、確かにそうですが…その情報はもうカール班長は知ってるんですか?」

「うん。さっき魔道具で連絡しておいた」

「まあ、第七班は通常勤務の時でさえ忙しいからな…最近は更に忙しさ増してるし、いつかここの奴ら揃って倒れるぞ?」

「…話しここまで…静かに。声聞かれたら終わりだよ」

「はい」

一応気配は探ってるものの、気配遮断の魔法使いを使われたら察知するのは困難。黙って警戒する。必要最低限の報告を合図で行う。

正直、こういった見回りは体力あるなしに関わらず精神力がないだけで体が持たない。ただ、虫の鳴き声と自分達の息づかいしか聞こえない状況でただ気配を探りまくって変化を探るなんて誰でも気が滅入る。精神力がなかったら五分ぐらいで飽きてやる気がなくなるだろう。
第七班の騎士はこの訓練を主にやっていて正直、騎士団の中で一番人気がないといっても過言ではないと思う。

改めて第七班の凄さを実感していると、前方5km先に人間の気配が。移動速度がかなり速いので多分馬に乗ってるな…
先輩達が馬を走らせ追いかける。私は馬を置いてきたので、走って向かう。といっても半獣化して走るので速さ的にはそんなに変わらない。地面を走ると葉っぱの音がして場所がばれるのでサウンド・フローフリングを自分達の周りに発動して音を殺す。気配は当然のように消している。
もう少しでその人影が見えそう、というところでいきなりスピードを上げられた。

「…ちっ!」

「ライ!獣化して行け!」

「了解です!」

魔術を発動してるので普通に話す。獣化して追いかけるも、元々道が狭いこともあり、草木が邪魔して最高速度に乗ることができない。それでもスピードが上がったことには変わらず、どんどん距離が縮まる。

「見えました!…って、は!?」

人影が見えると思わず叫んでしまった。
でも仕方ない。その人の来ていた服についていたバッチはあり得ない…ここにある筈のないものだったのだから。
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