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甘い地獄の始まり
男に囚われてから数日が過ぎた。
男は私を部屋から出そうとはせず、毎晩部屋を訪れては、私の身体を弄んだ。その行為はただの拷問ではなく、甘い毒のように私の体を染め上げていく。
男は毎晩、少しずつ私の弱点を暴いていった。ある日は指を一本一本丁寧に撫でられた。ある日はひたすら耳や首筋を責められた。
男は一つ一つ、私の身体の主導権を奪うように、私の反応を見て、触れる場所や触れ方を変えた。そのせいで、男の触れ方がより私の官能を呼び起こすようになってきていた。
恋人のことを思うたび罪悪感が募るのに、身体は素直に男が与える快感を刻み込まれてしまっている。
その夜もいつものように男が部屋に入ってきた。
私は触れられたくなくて、ベッドの隅で身を固くする。男はそんな私を見て、私の抵抗を嘲笑うかのようにふっと息を吐くと、規則正しい足音を立てて近づいてきた。
「来ないで!もう触らないで!」
「あなたにそうやって抵抗されるとますます触れたくなる。……あなたが嫌がることが私を喜ばせること、まだ分かりませんか?」
男の影が私に重なる。私は必死に壁に背中を押し付けた。
「それとも……わざと私を誘うために言っているのですか?」
「……っ!そんなわけない!」
男がベッドの隅に立って手を伸ばす。指が私の髪に触れる。
「……嫌っ!」
私の拒絶を気に留める様子もなく、男の手が私の髪をゆっくりと梳く。時々男の指が首元を掠めてくすぐったい。触れ方は優しいのにどこか支配的だ。
部屋は薄暗く、蝋燭の灯りが男の顔を妖しく照らす。白い肌が柔らかく輝き、鋭い紫の瞳が私を捉える。
「……今日は一つ、あなたに大切なことを伝えておきましょう。」
「……何?」
身を震わせながら、私は聞き返す。
「あなたをここへ連れてきた日、貴女の力が欲しいと言いましたね。でも、それだけじゃないんですよ。」
男の声は低く、いつになく真剣だった。私は嫌悪感に顔を歪めたまま、警戒しながら聞き入る。
男の指が私の髪を絡めとる。私は思わず身を引こうとするが、男は決して逃がさない。
男はそのまま私の耳元まで唇を近づけると、甘い声で、地獄のような宣告をした。
「私の本当の目的は……貴女の血を継ぐ子を作ることです。貴女のような力を持った子を。」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
ーーー血? 子?
私は目を見開いたまま、動けなくなる。男の紫の瞳が私を射抜き、唇の端に妖しい笑みが浮かぶ。この完璧な顔立ちで、そんな恐ろしい言葉を吐くなんて、信じられない。
「貴女の血統は特別だ。私の力と混ざれば、完璧な子が生まれる。……貴女は私の子を孕むための、最高の器なんですよ。」
ようやく言葉の意味が理解できてきた。
――子どもを作る? この男と?
そんなの、絶対に嫌だ。恋人がいるのに、そんなことを……。
言葉すら出ない。体が震え、反射的に男を突き飛ばそうとする。手を振り上げ、男の胸を押す。心臓の鼓動が速くなり、喉が乾く。
「ふざけないで!そんな冗談……」
やっと言葉を絞り出せた。男を睨みつけようとして、男と目が合う。その目を見て分かった。この男は本気で言っている。
背筋が凍りついた。
「嫌! そんなの、絶対に……! やめて、離して!」
本気で抵抗しようとした。体をよじり、ベッドから逃れようとする。だが、男は動じず、私の手首を優しく、しかし強く掴む。
紫の瞳が輝き、まるで獲物を捕らえた獣のように私を見下ろす。力の差が歴然で、逃げられない。
「嫌がる貴女も、可愛いらしいですね。……でも、無駄ですよ。」
男は淡々と私の抵抗を抑えながら言葉を繋げる。
「彼の命は、私が握っていることを忘れましたか? 貴女が拒否すれば、彼の運命は……わかりますよね?」
恋人の顔が脳裏に浮かぶ。あの不器用な笑顔、温かな抱擁を思うと、体から力が抜ける。
「この……!卑怯者!」
私は男に両手を握られたまま、できるだけの憎しみを込めて男を睨んだ。視線で人を殺せるならとっくにこの男に亡き者にしている。悔しくて悔しくて仕方がなくて、目から涙が溢れた。
「何とでも言ってください。何を叫ぼうと、喚こうと、どうせ貴女の状況は変わらない。」
男は私の両手首を掴んだまま、ゆっくりと私をベッドに押し倒す。男はそのまま私の体の上に覆い被さってきた。
「やめて……お願い……そんなこと、したくない……妊娠なんて、絶対に嫌……」
涙が頰を伝う。男の目的が明らかになった今、これはもはやただの屈辱的な行為ではない。妊娠を強いられるなんて、耐えられない。
男はそんな私の言葉を気にも止めない様子で私の下腹部を撫でる。まるで愛しい恋人に触れるような手つきで。
「貴女の恋人が守りたかったその清らかな身体が、私の子供を育む器に変わっていく。素晴らしいと思いませんか?」
「……っ!」
もし、本当に子供ができてしまったら。 私は一生、この男から逃げられない。その子は私と彼との絆を永遠に断ち切り、この男と私を、呪われた血の鎖で繋ぎ止める楔になる。
「彼に、……彼に合わせる顔が……」
「合わせる必要はありませんよ。あなたはこのままあの男のことは忘れて、この部屋で私の側にいればいい。」
絶望が、冷たい泥のように私の肺に流れ込んできた。男と身体を重ねるたびに、私は彼を助けているのだと言い聞かせてきた。けれど、その行為そのものが、彼との未来を永遠に殺すための準備だったなんて。
「さぁ、始めましょうか。大丈夫です。丁寧にゆっくりと進めるので。」
言葉は柔らかいが、徹底的に追い詰めるという意味だ。
男は私が暴れるのをやめたのを見て、私の両手を解放すると私の頬に手を伸ばす。そのまま頬に伸びた手は下へ。
首筋を羽で撫でるように軽く掠める。本気で嫌なのに、毎日男に触れられた身体は裏切るようにぞくりとした快感を拾い始める。
「……日に日に感じやすくなっていますね。私の触れ方を覚え始めている。」
男の低い声が耳元で囁かれる。男の指が首筋から耳の下へと移動するたび、微かな震えが体全体に広がり、息を詰まらせる。
男の指は鎖骨まで下りてまた首筋へ上る。うなじをくすぐるように撫でて、耳の裏へ。喉が震えて、身体が熱を持ち始める。
「…やめて…しつこく触らないで…」
「言ったでしょう?丁寧に進めると。私としても、あなたの身体にきちんと準備をさせた後に受け入れさせたいので。
……あぁ、もちろんそちらの方があなたが嫌がると分かっているからですよ?」
男の声音は優しいのに慈悲なんて一滴も入っていない。
「あなたにできることは、私の触れ方で感じないようにして、それまでの時間を伸ばすことくらい。
せいぜい頑張ってください。」
男はそう言うと、今度はわざとらしく時間をかけて、私の胸を手の平全体で圧迫するように揉みしだいた。指の間からこぼれる柔らかな肉を慈しむように、けれど確実に支配を刻み込むような強さで。
「あ……く、んんっ……」
感じたくないのに身体は少しも言うことを聞いてくれない。
押さえ込もうとした声が漏れてしまう。
「そう、声をもっと聞かせてください。貴女が感じれば感じるほど、身体は受け入れやすくなる。」
男の指が、立ち上がった突起を執拗に転がし、弾く。突起から手を離したと思うと胸全体をなぞるように円を描き今度は頂きを爪で擦る。執拗な繰り返しで、脳を痺れさせるような感覚が走り、悔しさで涙が滲む。
「…あぁっ!やめて!」
男が私の頼みを聞き入れるはずもなく、容赦なく次の場所へと手を伸ばした。
「ここも、ずいぶんと私に慣らされましたね。」
男はそう言って私の腰骨の辺りに手を伸ばし敏感な部分を避けつつ焦らすように触れる。
「…んっ、やだっ……気持ち悪い…」
「気持ち悪い?ふふっ、相変わらず言葉だけは生意気ですね。では、もっと気持ち良くなってもらうように努めましょうか。」
男はそう言うと薄いワンピースの裾を少しずつ捲り上げ、素肌を露出させては掌全体で撫で回し、内腿の柔らかな肉を優しく揉みしだく。
男の手が敏感なところに迫ってくる感触に私の腰がビクビクと跳ね始める。
「嫌だ、嫌だと言葉では言いながら貴女の体は正直ですね。甘い声を上げて身体を震わせて……誰があなたが嫌がってるなんて、信じられるんでしょうね?」
「違う!ほんとに、嫌なの…ひゃ!」
男の指が私の秘部を下着の上からすっと撫でる。
「気持ち良さそうな声を出して……恥ずかしくないんですか?私の目的を知って、それでも感じてしまう淫らな自分が。」
「…っ!この!」
「そんなに真っ赤になった顔で睨みつけられても、説得力がありませんよ。」
ぐりっと潰すようにまた秘部に触れる。
「…あぁっ!」
「貴女のここ、熱く濡れている。まるで私の精を欲しがっているみたいですね。」
耳を食まれそうな距離で男が囁いた。男の息が耳を掠める感触に、またこぽりと蜜が出てしまう。
「嫌がっているのに、こんなに蜜を溢れさせて…貴女がどんなに心で抗っても、本能はわかっているんですよ。私を受け入れ、子を孕む喜びを。」
男はゆっくりと下着を下にずらすと指で直接熱い蕾に触れる。下から擦り上げるように、私が感じやすい触れ方で。
男がそんなことさえ把握していることが悔しくて仕方がない。
「ふっ、はぁ…!」
腰が一際大きく跳ねて、甘い痺れが全身に広がる。
男の指先が、すでに蜜で湿り始めた秘部の入り口をなぞった。
「いやっ……それ以上は!」
「それ以上は?まだまだこれからですよ。しっかりと準備をしなければいけませんからね。貴女が私の子供を宿すために。」
男の指が入ってくる。私の中の形さえ覚えたその指はまっすぐに私が弱いところへ。
「…ひぁぁ!!」
悲鳴のような声を上げてしまう。
「ふふっ、物欲しそうな声を出して。もう一本入れてあげますよ。」
男は二本目の指を、抵抗もできないほど柔らかくなった私の中へと、ゆっくりと、けれど深々と沈めていった。
「ひ、あぁっ!……やっ!」
「ああ……熱い。まるで私を歓迎しているようだ。……ほら、ここですか? ここを突かれると、貴女は彼のことなんてどうでも良くなるんでしょう?」
男は私の中にある、自分でも直視したくないほど敏感な一点を、逃げ場を塞ぐようにして何度も突き上げた。
「や、あ! そこ、だめ……っ、ああああ!」
腰が勝手に浮き、男の指を締め付ける。頭の中が真っ白になり、彼との思い出も、自分自身の誇りも、すべてが快楽の濁流に飲み込まれていく。
「そうです、もっと私を感じなさい。貴女のすべてを私に明け渡すのです。」
男の低い声が鼓膜を震わせる。絶望的な快楽の中で、私は自分が一歩ずつ、人間から「男の所有物」へと作り変えられていくのを感じた。
「……準備は整ったようですね。貴女の身体は熱く私のものを求めている。」
男の声は低く、獲物を追い詰めた猛獣のような冷徹さと、隠しきれない熱情を帯びていた。私の中をかき回していた指が引き抜かれると、一瞬の虚脱感と共に、内側の粘膜が男の熱を求めてひくついた。
自分でも信じられない。あんなに憎かったはずの男の感触が消えたことに、身体が寂しさを覚えているなんて。
「あ……っ、はぁ、はぁ……」
息を荒げる私の膝を、男は強引に左右へと割り広げた。曝け出された私の最も恥ずかしい部分は、すでに男が望んだ通り、滴るほどの蜜に濡れ、無防備に開かれている。
「見てごらんなさい。こんなにも物欲しげに震えて。貴女が守りたかった純潔も、今はただ私に貫かれるのを待っているだけだ。」
男は自らの衣類を撥ね退けると、私の身体を逃がさないよう、その重みで圧し潰すように覆いかぶさってきた。太腿の付け根に、熱く、硬い塊が押し当てられる。それがこれから自分を男の所有物に変えるための凶器なのだと理解し、私は全身の毛穴が逆立つような恐怖に襲われた。
「待って!……それだけは、本当に!お願い……っ!」
「お願い、ですか。それは私を受け入れるから優しくしてくれ、という意味に聞こえますが?」
男は耐えきれずに暴れようとした私の両手を片手でまとめて掴み、逃げ道を完全に断った。そして、潤んだ私の秘部の入り口に、その先端をあてがう。
「さあ、刻み込みましょう。貴女が誰の女になり、誰の子を産むのかを。」
「あ、あああ……っ!!」
一気に貫かれた衝撃に、私は声を上げることさえ忘れ、背中を大きく反らせた。 異物が、身体の奥深く、今まで誰も触れたことのなかった聖域までをも暴力的に蹂ぐ。痛みと、それを塗りつぶすような圧倒的な熱。
「……っ、ふ……っ、くっ…んっ……いやぁ……」
「……狭い。やはり処女ですね。まだ誰の形も知らない貴女のここを、私専用にしてあげますよ。」
男は悦びに歪んだ顔を私の首筋に埋め、容赦なく腰を動かし始めた。突き上げられるたび、私の内側は男の存在感に支配され、自分の輪郭が溶けていくような感覚に陥る。
「嫌っだ、やっ、あ、あぁっ!」
「嘘をつかなくていい。貴女のここが、こんなにも私を強く締め付けている。彼との、子供ごっこのキスとは違うのでしょう?」
男の言葉の一つ一つが、私の心を切り裂く。けれど、身体は男が与える暴力的な快楽に忠実に反応し、逃げ場のない快感に腰を跳ねさせてしまう。
「ひ、ぐ……あ、ああああ!」
男の動きが激しさを増し、私の中の最も深い場所を執拗に叩く。
それは、まるで彼との幸せな未来を粉々に砕く音。 そして、この憎い男との「地獄の始まり」を告げる鐘の音のようだった。
「……い、やっ、!ほんとうに……もう抜いてっ!」
私は身を捩り逃げようとするが男に覆い被さられたまま、ほとんど動くことができない。腰を捻ったことで男の熱いものが中で擦れて、その感触にまた声を上げそうになってしまう。
男が私の顎を強く掴み、顔を上向かせる。熱を帯びた妖しい男の笑みで視界が埋め尽くされる。
「逃がしませんよ。貴女の最深部に、私のすべてを注ぎ込むまで。」
絶頂へと向かう男の瞳に、私は自分のすべてが塗り替えられていくのを見た。
「……っ、あああああぁぁぁっ!」
胎内の最奥、最も届いてはならない場所に、熱く、重苦しい衝撃が奔った。 男が私の中に、逃げ場のない「支配」を流し込んでいる。その感覚は永遠に続くかのように長く、私の身体の隅々までを犯し、汚し、書き換えていく。
男が私の上に乗ったまま、荒い吐息を私の首筋に吹きかけた。私の中には、たった今、憎い男のすべてが吐き出されたという取り返しのつかない事実だけが横たわっている。
「……はぁ、……っ、あ……」
私の目からは、もはや涙すら出なかった。ただ、空虚な瞳で天井を見つめる。 守り抜きたかった、彼のための「私」は今、完全に死んだのだ。私の内側にはもう、この男の痕跡が深く、淀むように溜まっている。
「……よく、頑張りましたね。」
男はゆっくりと私の中から離れると、信じられないほど慈しみに満ちた声で囁いた。 まるでお気に入りの壊れ物を扱うような手つきで私を抱き寄せた。
「嫌……触らないで……」
「あなたに拒否権はありませんよ。あなたはもう私のものだ。子を孕むまで、毎晩続けましょう。」
男は私の頬をなぞり、そっと唇を重ねた。それは嬲るようなキスではなく、深い情愛を込めた、逃げ場のないほど「恋人」らしいキスだった。それが何よりも恐ろしく、私の心を粉々に砕いていく。
「見てください。貴女のここには、今、私の愛が満ちている。」
男の手が、まだ小刻みに震えている私のお腹に、包み込むように置かれた。
私の目が絶望に染まっていく。これからこの男は、私を「敵」としてではなく、「恋人」として、「母」として、執拗に愛で続けるつもりなのだ。
「……あ、あぁ……」
私は、男の胸の中に閉じ込められたまま、声を上げずに泣いた。 憎い男の腕の中で、愛を注がれ、子供を宿し、そうして生きていく。 それは、死よりも残酷で、甘やかな地獄の始まりだった。
男は私を部屋から出そうとはせず、毎晩部屋を訪れては、私の身体を弄んだ。その行為はただの拷問ではなく、甘い毒のように私の体を染め上げていく。
男は毎晩、少しずつ私の弱点を暴いていった。ある日は指を一本一本丁寧に撫でられた。ある日はひたすら耳や首筋を責められた。
男は一つ一つ、私の身体の主導権を奪うように、私の反応を見て、触れる場所や触れ方を変えた。そのせいで、男の触れ方がより私の官能を呼び起こすようになってきていた。
恋人のことを思うたび罪悪感が募るのに、身体は素直に男が与える快感を刻み込まれてしまっている。
その夜もいつものように男が部屋に入ってきた。
私は触れられたくなくて、ベッドの隅で身を固くする。男はそんな私を見て、私の抵抗を嘲笑うかのようにふっと息を吐くと、規則正しい足音を立てて近づいてきた。
「来ないで!もう触らないで!」
「あなたにそうやって抵抗されるとますます触れたくなる。……あなたが嫌がることが私を喜ばせること、まだ分かりませんか?」
男の影が私に重なる。私は必死に壁に背中を押し付けた。
「それとも……わざと私を誘うために言っているのですか?」
「……っ!そんなわけない!」
男がベッドの隅に立って手を伸ばす。指が私の髪に触れる。
「……嫌っ!」
私の拒絶を気に留める様子もなく、男の手が私の髪をゆっくりと梳く。時々男の指が首元を掠めてくすぐったい。触れ方は優しいのにどこか支配的だ。
部屋は薄暗く、蝋燭の灯りが男の顔を妖しく照らす。白い肌が柔らかく輝き、鋭い紫の瞳が私を捉える。
「……今日は一つ、あなたに大切なことを伝えておきましょう。」
「……何?」
身を震わせながら、私は聞き返す。
「あなたをここへ連れてきた日、貴女の力が欲しいと言いましたね。でも、それだけじゃないんですよ。」
男の声は低く、いつになく真剣だった。私は嫌悪感に顔を歪めたまま、警戒しながら聞き入る。
男の指が私の髪を絡めとる。私は思わず身を引こうとするが、男は決して逃がさない。
男はそのまま私の耳元まで唇を近づけると、甘い声で、地獄のような宣告をした。
「私の本当の目的は……貴女の血を継ぐ子を作ることです。貴女のような力を持った子を。」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
ーーー血? 子?
私は目を見開いたまま、動けなくなる。男の紫の瞳が私を射抜き、唇の端に妖しい笑みが浮かぶ。この完璧な顔立ちで、そんな恐ろしい言葉を吐くなんて、信じられない。
「貴女の血統は特別だ。私の力と混ざれば、完璧な子が生まれる。……貴女は私の子を孕むための、最高の器なんですよ。」
ようやく言葉の意味が理解できてきた。
――子どもを作る? この男と?
そんなの、絶対に嫌だ。恋人がいるのに、そんなことを……。
言葉すら出ない。体が震え、反射的に男を突き飛ばそうとする。手を振り上げ、男の胸を押す。心臓の鼓動が速くなり、喉が乾く。
「ふざけないで!そんな冗談……」
やっと言葉を絞り出せた。男を睨みつけようとして、男と目が合う。その目を見て分かった。この男は本気で言っている。
背筋が凍りついた。
「嫌! そんなの、絶対に……! やめて、離して!」
本気で抵抗しようとした。体をよじり、ベッドから逃れようとする。だが、男は動じず、私の手首を優しく、しかし強く掴む。
紫の瞳が輝き、まるで獲物を捕らえた獣のように私を見下ろす。力の差が歴然で、逃げられない。
「嫌がる貴女も、可愛いらしいですね。……でも、無駄ですよ。」
男は淡々と私の抵抗を抑えながら言葉を繋げる。
「彼の命は、私が握っていることを忘れましたか? 貴女が拒否すれば、彼の運命は……わかりますよね?」
恋人の顔が脳裏に浮かぶ。あの不器用な笑顔、温かな抱擁を思うと、体から力が抜ける。
「この……!卑怯者!」
私は男に両手を握られたまま、できるだけの憎しみを込めて男を睨んだ。視線で人を殺せるならとっくにこの男に亡き者にしている。悔しくて悔しくて仕方がなくて、目から涙が溢れた。
「何とでも言ってください。何を叫ぼうと、喚こうと、どうせ貴女の状況は変わらない。」
男は私の両手首を掴んだまま、ゆっくりと私をベッドに押し倒す。男はそのまま私の体の上に覆い被さってきた。
「やめて……お願い……そんなこと、したくない……妊娠なんて、絶対に嫌……」
涙が頰を伝う。男の目的が明らかになった今、これはもはやただの屈辱的な行為ではない。妊娠を強いられるなんて、耐えられない。
男はそんな私の言葉を気にも止めない様子で私の下腹部を撫でる。まるで愛しい恋人に触れるような手つきで。
「貴女の恋人が守りたかったその清らかな身体が、私の子供を育む器に変わっていく。素晴らしいと思いませんか?」
「……っ!」
もし、本当に子供ができてしまったら。 私は一生、この男から逃げられない。その子は私と彼との絆を永遠に断ち切り、この男と私を、呪われた血の鎖で繋ぎ止める楔になる。
「彼に、……彼に合わせる顔が……」
「合わせる必要はありませんよ。あなたはこのままあの男のことは忘れて、この部屋で私の側にいればいい。」
絶望が、冷たい泥のように私の肺に流れ込んできた。男と身体を重ねるたびに、私は彼を助けているのだと言い聞かせてきた。けれど、その行為そのものが、彼との未来を永遠に殺すための準備だったなんて。
「さぁ、始めましょうか。大丈夫です。丁寧にゆっくりと進めるので。」
言葉は柔らかいが、徹底的に追い詰めるという意味だ。
男は私が暴れるのをやめたのを見て、私の両手を解放すると私の頬に手を伸ばす。そのまま頬に伸びた手は下へ。
首筋を羽で撫でるように軽く掠める。本気で嫌なのに、毎日男に触れられた身体は裏切るようにぞくりとした快感を拾い始める。
「……日に日に感じやすくなっていますね。私の触れ方を覚え始めている。」
男の低い声が耳元で囁かれる。男の指が首筋から耳の下へと移動するたび、微かな震えが体全体に広がり、息を詰まらせる。
男の指は鎖骨まで下りてまた首筋へ上る。うなじをくすぐるように撫でて、耳の裏へ。喉が震えて、身体が熱を持ち始める。
「…やめて…しつこく触らないで…」
「言ったでしょう?丁寧に進めると。私としても、あなたの身体にきちんと準備をさせた後に受け入れさせたいので。
……あぁ、もちろんそちらの方があなたが嫌がると分かっているからですよ?」
男の声音は優しいのに慈悲なんて一滴も入っていない。
「あなたにできることは、私の触れ方で感じないようにして、それまでの時間を伸ばすことくらい。
せいぜい頑張ってください。」
男はそう言うと、今度はわざとらしく時間をかけて、私の胸を手の平全体で圧迫するように揉みしだいた。指の間からこぼれる柔らかな肉を慈しむように、けれど確実に支配を刻み込むような強さで。
「あ……く、んんっ……」
感じたくないのに身体は少しも言うことを聞いてくれない。
押さえ込もうとした声が漏れてしまう。
「そう、声をもっと聞かせてください。貴女が感じれば感じるほど、身体は受け入れやすくなる。」
男の指が、立ち上がった突起を執拗に転がし、弾く。突起から手を離したと思うと胸全体をなぞるように円を描き今度は頂きを爪で擦る。執拗な繰り返しで、脳を痺れさせるような感覚が走り、悔しさで涙が滲む。
「…あぁっ!やめて!」
男が私の頼みを聞き入れるはずもなく、容赦なく次の場所へと手を伸ばした。
「ここも、ずいぶんと私に慣らされましたね。」
男はそう言って私の腰骨の辺りに手を伸ばし敏感な部分を避けつつ焦らすように触れる。
「…んっ、やだっ……気持ち悪い…」
「気持ち悪い?ふふっ、相変わらず言葉だけは生意気ですね。では、もっと気持ち良くなってもらうように努めましょうか。」
男はそう言うと薄いワンピースの裾を少しずつ捲り上げ、素肌を露出させては掌全体で撫で回し、内腿の柔らかな肉を優しく揉みしだく。
男の手が敏感なところに迫ってくる感触に私の腰がビクビクと跳ね始める。
「嫌だ、嫌だと言葉では言いながら貴女の体は正直ですね。甘い声を上げて身体を震わせて……誰があなたが嫌がってるなんて、信じられるんでしょうね?」
「違う!ほんとに、嫌なの…ひゃ!」
男の指が私の秘部を下着の上からすっと撫でる。
「気持ち良さそうな声を出して……恥ずかしくないんですか?私の目的を知って、それでも感じてしまう淫らな自分が。」
「…っ!この!」
「そんなに真っ赤になった顔で睨みつけられても、説得力がありませんよ。」
ぐりっと潰すようにまた秘部に触れる。
「…あぁっ!」
「貴女のここ、熱く濡れている。まるで私の精を欲しがっているみたいですね。」
耳を食まれそうな距離で男が囁いた。男の息が耳を掠める感触に、またこぽりと蜜が出てしまう。
「嫌がっているのに、こんなに蜜を溢れさせて…貴女がどんなに心で抗っても、本能はわかっているんですよ。私を受け入れ、子を孕む喜びを。」
男はゆっくりと下着を下にずらすと指で直接熱い蕾に触れる。下から擦り上げるように、私が感じやすい触れ方で。
男がそんなことさえ把握していることが悔しくて仕方がない。
「ふっ、はぁ…!」
腰が一際大きく跳ねて、甘い痺れが全身に広がる。
男の指先が、すでに蜜で湿り始めた秘部の入り口をなぞった。
「いやっ……それ以上は!」
「それ以上は?まだまだこれからですよ。しっかりと準備をしなければいけませんからね。貴女が私の子供を宿すために。」
男の指が入ってくる。私の中の形さえ覚えたその指はまっすぐに私が弱いところへ。
「…ひぁぁ!!」
悲鳴のような声を上げてしまう。
「ふふっ、物欲しそうな声を出して。もう一本入れてあげますよ。」
男は二本目の指を、抵抗もできないほど柔らかくなった私の中へと、ゆっくりと、けれど深々と沈めていった。
「ひ、あぁっ!……やっ!」
「ああ……熱い。まるで私を歓迎しているようだ。……ほら、ここですか? ここを突かれると、貴女は彼のことなんてどうでも良くなるんでしょう?」
男は私の中にある、自分でも直視したくないほど敏感な一点を、逃げ場を塞ぐようにして何度も突き上げた。
「や、あ! そこ、だめ……っ、ああああ!」
腰が勝手に浮き、男の指を締め付ける。頭の中が真っ白になり、彼との思い出も、自分自身の誇りも、すべてが快楽の濁流に飲み込まれていく。
「そうです、もっと私を感じなさい。貴女のすべてを私に明け渡すのです。」
男の低い声が鼓膜を震わせる。絶望的な快楽の中で、私は自分が一歩ずつ、人間から「男の所有物」へと作り変えられていくのを感じた。
「……準備は整ったようですね。貴女の身体は熱く私のものを求めている。」
男の声は低く、獲物を追い詰めた猛獣のような冷徹さと、隠しきれない熱情を帯びていた。私の中をかき回していた指が引き抜かれると、一瞬の虚脱感と共に、内側の粘膜が男の熱を求めてひくついた。
自分でも信じられない。あんなに憎かったはずの男の感触が消えたことに、身体が寂しさを覚えているなんて。
「あ……っ、はぁ、はぁ……」
息を荒げる私の膝を、男は強引に左右へと割り広げた。曝け出された私の最も恥ずかしい部分は、すでに男が望んだ通り、滴るほどの蜜に濡れ、無防備に開かれている。
「見てごらんなさい。こんなにも物欲しげに震えて。貴女が守りたかった純潔も、今はただ私に貫かれるのを待っているだけだ。」
男は自らの衣類を撥ね退けると、私の身体を逃がさないよう、その重みで圧し潰すように覆いかぶさってきた。太腿の付け根に、熱く、硬い塊が押し当てられる。それがこれから自分を男の所有物に変えるための凶器なのだと理解し、私は全身の毛穴が逆立つような恐怖に襲われた。
「待って!……それだけは、本当に!お願い……っ!」
「お願い、ですか。それは私を受け入れるから優しくしてくれ、という意味に聞こえますが?」
男は耐えきれずに暴れようとした私の両手を片手でまとめて掴み、逃げ道を完全に断った。そして、潤んだ私の秘部の入り口に、その先端をあてがう。
「さあ、刻み込みましょう。貴女が誰の女になり、誰の子を産むのかを。」
「あ、あああ……っ!!」
一気に貫かれた衝撃に、私は声を上げることさえ忘れ、背中を大きく反らせた。 異物が、身体の奥深く、今まで誰も触れたことのなかった聖域までをも暴力的に蹂ぐ。痛みと、それを塗りつぶすような圧倒的な熱。
「……っ、ふ……っ、くっ…んっ……いやぁ……」
「……狭い。やはり処女ですね。まだ誰の形も知らない貴女のここを、私専用にしてあげますよ。」
男は悦びに歪んだ顔を私の首筋に埋め、容赦なく腰を動かし始めた。突き上げられるたび、私の内側は男の存在感に支配され、自分の輪郭が溶けていくような感覚に陥る。
「嫌っだ、やっ、あ、あぁっ!」
「嘘をつかなくていい。貴女のここが、こんなにも私を強く締め付けている。彼との、子供ごっこのキスとは違うのでしょう?」
男の言葉の一つ一つが、私の心を切り裂く。けれど、身体は男が与える暴力的な快楽に忠実に反応し、逃げ場のない快感に腰を跳ねさせてしまう。
「ひ、ぐ……あ、ああああ!」
男の動きが激しさを増し、私の中の最も深い場所を執拗に叩く。
それは、まるで彼との幸せな未来を粉々に砕く音。 そして、この憎い男との「地獄の始まり」を告げる鐘の音のようだった。
「……い、やっ、!ほんとうに……もう抜いてっ!」
私は身を捩り逃げようとするが男に覆い被さられたまま、ほとんど動くことができない。腰を捻ったことで男の熱いものが中で擦れて、その感触にまた声を上げそうになってしまう。
男が私の顎を強く掴み、顔を上向かせる。熱を帯びた妖しい男の笑みで視界が埋め尽くされる。
「逃がしませんよ。貴女の最深部に、私のすべてを注ぎ込むまで。」
絶頂へと向かう男の瞳に、私は自分のすべてが塗り替えられていくのを見た。
「……っ、あああああぁぁぁっ!」
胎内の最奥、最も届いてはならない場所に、熱く、重苦しい衝撃が奔った。 男が私の中に、逃げ場のない「支配」を流し込んでいる。その感覚は永遠に続くかのように長く、私の身体の隅々までを犯し、汚し、書き換えていく。
男が私の上に乗ったまま、荒い吐息を私の首筋に吹きかけた。私の中には、たった今、憎い男のすべてが吐き出されたという取り返しのつかない事実だけが横たわっている。
「……はぁ、……っ、あ……」
私の目からは、もはや涙すら出なかった。ただ、空虚な瞳で天井を見つめる。 守り抜きたかった、彼のための「私」は今、完全に死んだのだ。私の内側にはもう、この男の痕跡が深く、淀むように溜まっている。
「……よく、頑張りましたね。」
男はゆっくりと私の中から離れると、信じられないほど慈しみに満ちた声で囁いた。 まるでお気に入りの壊れ物を扱うような手つきで私を抱き寄せた。
「嫌……触らないで……」
「あなたに拒否権はありませんよ。あなたはもう私のものだ。子を孕むまで、毎晩続けましょう。」
男は私の頬をなぞり、そっと唇を重ねた。それは嬲るようなキスではなく、深い情愛を込めた、逃げ場のないほど「恋人」らしいキスだった。それが何よりも恐ろしく、私の心を粉々に砕いていく。
「見てください。貴女のここには、今、私の愛が満ちている。」
男の手が、まだ小刻みに震えている私のお腹に、包み込むように置かれた。
私の目が絶望に染まっていく。これからこの男は、私を「敵」としてではなく、「恋人」として、「母」として、執拗に愛で続けるつもりなのだ。
「……あ、あぁ……」
私は、男の胸の中に閉じ込められたまま、声を上げずに泣いた。 憎い男の腕の中で、愛を注がれ、子供を宿し、そうして生きていく。 それは、死よりも残酷で、甘やかな地獄の始まりだった。
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