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深淵に向かって
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目を覚ますと…目の前にデネブがいた。
優しく私を抱きかかえて。
「おはようございます、アーヤ様♡」
デネブの笑顔が嬉しい。
手の届く所にちゃんとデネブがいる。それがとっても嬉しい。
思わずデネブの胸に顔を擦り付けて匂いと感触を確かめる。
「…でゅ♡」
本物だ…夢じゃない。凄く嬉しい♡
「まあ、アーヤ様ったら♡」
いつもより甘える私にデネブも嬉しそうにしてる感じ♡
「ああ~、またデネブばっかり~!!」
後ろでスピカが騒いでる声がする。
「「「「おはようございます、アーヤ様♡」」」」
デネブの後ろからみんなが顔を覗かせる。
ちゃんとみんなもいる、凄く凄く嬉しい♡
「でゅでゅ♡」
現在、私たちは崩落した所…というか、崩落させちゃった場所にいる。一旦戻って、みんなと一緒に朝ごはんにする為。
何せ、群れの規模が大きい。総勢97名にもなっている。
階段のある広間以外全員が入り切れないのだ。
ちなみに食材は瓦礫の下敷きになってたエビみたいなやつ。尻尾がいっぱいあって、ちょっとお得な感じ。味付けはポテチバーベキュー味。
「はい、アーヤ様…アーン♡」
「アーン♡」
いつものようにデネブに食べさせてもらう。
「美味しいですか?」
「でゅでゅ♡」
凄く美味しい、やっぱりゴハンはみんな一緒でないと♡
「ああ~…私も、私にもぉ~!!」
「でゅ♡」
たまにはスピカにも甘えてみたいな。そんな事を思っていたら…。
「仕方ないですね…♡」
珍しく、デネブがスピカに譲った…私の想いを察したのかもしれない。こんなとこが、私がデネブをママと思う由縁。
「やったぁぁ♡♡」
スピカがスッゴク嬉しそう♡
「あ、ボクも♡ボクも♡」
「たまには私も♪」
「俺も…」
「…………」
「やれやれ、しょうがないやつらが…」
「そんな事言って、レグルスもちゃっかり混じってんじゃん♡」
「うるさい!!」
他のみんなも寄って来て、自分たちそっちのけで私に構ってくれる♡
前世であまり両親に構ってもらえなかった反動からか、今は凄くみんなに甘えたい衝動がある。
赤ちゃんなので、それを許容してもらえるのがまた嬉しい♪
うん♡赤ちゃんっていいな…凄くいい♡
……それに。
やっぱり、みんなと一緒が一番だ♪
そんな至福の朝ごはんを済ませて、再び進軍開始。
例のとうせんぼしてたイソギンチャクはいなくなっていた。
ダンジョンマスターが退かしてくれたのか、単に何処かへ行っちゃっただけなのか…とにかくいなくなってた。
お陰で先に進める。
31階層より下は完全に魔物の種類が違っていた。もっとも、5階分は私が壊しちゃってよく分かんないんだけどね…。
とにかく、ゴブリンが出て来なくなった。
上の階ではあんなにワラワラと出て来たのに、この辺りではすっかりと鳴りを潜めている。
「でゅどぉだぁ…(ゴブリンいないね…)」
「そうですね…我々の同胞もいないようです」
ノームたちもいなくなった。
お陰で群れの人数は増えなくなったんだけど……道案内もいなくなってしまった。
罠に注意しながら慎重に進む。
多分、人間たちにやられていたゴブリンは上の階層から降りて来たんだと思う。数も少なかったし。
あのオッサン大蛇の一幕ではかなり大事になってしまったから。その様子を見に来たゴブリンが下の階で冒険者たちと鉢合わせにでもなったのだろう。
その点ではあの冒険者たちは運がいい。この階層本来の魔物は上と比べて格段に強い、一般ノームたちでは手に負えないぐらいに。
おまけに瓦礫の下敷きになった魔物は少ない。これは危機察知能力に優れ、素早く行動出来るという証。
とてもではないけど、人間の冒険者風情ではどうにもならないレベルだ。
事実、7人の仲間以外に出番はない。
正にダンジョンの深淵に足を踏み入れたって感じ。
てか、これがこのダンジョン本来の姿なのかもしれない。
ゴブリンとかノームは後からやって来たって話だし。
……それにしても。
「でゅどぉどぉ?(どうやって、地下10階層より下にノームが行けたの?)」
「ムベンベは眠っている時もよくあったので、その際に地下に降った仲間もいたのでしょう」
「でゅどぉ(そうなんだ)」
「ノームは他の群れの事関しては基本的に干渉しないのでよく分かりませんが…」
「でゅでゅ」
……なるほど。
でも、20階より下にもノーム居たよね。
あのミミズムカデも寝るのかなぁ…。ひょっとしたらダンジョンマスターが気まぐれにゴブリンやノームたちを下の階層に移したのかもしれない。
なんか気晴らしとか言ってたし…あんな凄い力があるなら簡単だよね~♪
もっとも、壊されちゃうと修繕には時間が掛かるらしい…。
……ホント、ごめんなさい。
「それにしても、さすがアーヤ様です。ダンジョンマスターと直接お話になるとは」
「でゅどぉだぁ?(みんなは話した事ないの?)」
「……まさか」
「我々にとって、もはや伝説上の存在ですから」
「いるかどうかすらも分かんなかったしね」
「…でゅ」
なんかスピカがとんでもない事言ったぞ。
いるかどうかも分かんないって…そんなんでよく私に話振ったよね。ダンジョンマスターに会えば何とかなるとか…。
「ハハハ…それについてはなんとも…」
「そもそもが外に出る手段など、他に方法がなかったもので…」
「そうそう」
「それに、ムベンベを簡単に倒してしまうほどの方なら…何とかなると」
「そうだよね~♪」
……なんか、今さらだけど。地下に降りた理由が結構行き当たりばったりでいい加減だな…。
まあ、他に方法がなかったのは事実だし…こうして、新しい家族も出来た事だ。結果オーライとしとこう♪
……でも、私が下を目指す必要がなくなっちゃった気がする。
何故なら、ノームたちは基本的に外に出ないとか。
みんなは日光が苦手らしい…ノームに限らず、ゴブリンたちも同じみたいだけど。
ゴブリンたちは悪食で獲物を求めて夜な夜な外に出掛けるそうだ。
……だけど、みんなにはそんな必要はない。
別に食べ物に困ってる訳じゃないし…あえて、外に出る理由がない…。
そうなると私も外に出る意味がない…今の家族と別れてまで外に出たいとは思わないから。
結果、下に行く必要はなくなっちゃう。
……う~ん。
けど…ダンジョンマスターにはお呼ばれしてる事だし、ちょっとは外の様子も見てみたい気もする。
なので、やっぱり最下層を目指そうと思う。
「でゅ♡」
そんな事を考えつつ、デネブの胸に顔を埋める♡
私は以前よりみんなに甘えている。家族に遠慮するのはおかしいと思ったし……何より、赤ちゃんだから♡
「ああ、何でいつもデネブばっかり~?!」
「でゅ♡」
それはデネブが私のママだから♡
…って、言おうと思ったのに。
「それはおまえに十分な胸がないからだろう!!」
「そうそう!!」
「胸は大切!」
「うんうん♡」
「何で~~?!」
「ふふふふ♡」
「……でゅ」
いや、違うから……母性愛の問題だよ。みんな相変わらず勘違いしてない?
てか、何で男ってば胸の話しかしないの?
そんなこんなで、最下層に向けて順調に行進が続く。
相変わらず、人間たちは後を付けて来てるみたい。彼らの姿を目撃したノームの話しによるとやっぱり冒険者らしい。そんな格好をしていたとか。
まあ、ゴブリンを倒している時点で一般人ではないよね。
だけど…この辺りはかなり気を付けないと危ない。それこそ…即、死に繋がってしまうぐらいに。
……人間は弱いから。
言ってくれれば、群れの末席にでも加えてあげなくもないのに…。もうノームはいないから群れの数は増えない。7人ぐらいなら余裕な感じ。
でも、わざわざこっちから誘うほどでもない。あくまでも少しの好意程度…。
こういうさばさばしたとこは前世とあまり変わらない気がする。
最も彼らは冒険者、自分たちの意志でここにやって来たんだから…そこら辺は自己責任というもの。
私にとって大切なのは家族と仲間たちだけ……他はどうでもいいの。
階段のある広間に到着した。
この下は40階層、領域支配者のエリアだ。
なので、今日はここで一泊して…明日、改めて中ボスに望もうと思う。
雑魚の魔物も強くなってる事だし、万全の体制で望みたいから。みんなには特大ポテチを大盤振る舞い。どうせ、ポテチポイントは一晩寝ると回復するんだし、前祝いだ♡
こういう事はモチベーションが大事、上げ上げで行かないとね♪
それは広間の真ん中にいた……というか、あった。
巨大なオッサンの顔面のモニュメント。
なんか表面が煤けて黒っぽい…まるで長い間動いてなかったみたいな、そんな感じ。
それにしても、オッサン好きだな…。ひょっとして、ダンジョンマスターの趣味なの?
「あれが領域支配者なのですか?」
「でゅどぉだぁ…(多分そうだと思う…)」
今まで領域支配者の間には他に何も無かった。ただボスモンスターがいるだけで。
なら、あれがボスキャラって事になるんだけど…。
ブシュゥゥ!
巨大なオッサンの顔の隙間から蒸気みたいなものが激しく吹き出した。
すると、表面の黒っぽい外皮が剥がれ落ちて、眩い黄金色の輝きが。
マジか、こいつ金属製なの?
てか、メカ?!
だとしたら…まっずい肝を食べなくて済むね~♡
そんな事を考えていたら、みんなが露骨に嫌な顔してる。
「……生き物ではなさそうですね」
「ええ~マジ?!」
「肝食べらんないの?」
「……残念」
……いや、みんな…そんなにあのまっずい肝食べたかったの。
私はオッサンの肝はノーサンキュウだよ?!
…ゴゴゴゴゴゴ!!
オッサン顔がゆっくりと動き出した。
180度回転して後ろを向くと…そこにはカニみたいなモンスターの姿が。
どうやら、オッサンの顔面はカニモンスターの甲羅だったらしい。
という事はやっぱり生き物?
てか、金属製の生き物っているの??
そういえば、深海に鉄の鱗が生えてる貝がいたっけ?
なら金属製の甲羅のカニがいても不思議じゃないけど…。
……そんな事を思っていたら。
「「「「おお~~♪」」」」
みんなから歓声が…。
「どうやら、生き物のようだ」
「おお~肝が食べれそう♡」
「良かった♪良かった♪」
…………。
うん、みんな嬉しそうだね~……良かったねぇ~。
……私は全然嬉しくないけど…。
巨大なカニモンスターには短い脚が何本も付いているんだけど…動作は非常にゆっくりだ。
ズシン!ズシン!ズシン!
…と、かなり重そうな足音。
うん、あれは重いな…スゲー重い…多分、おそらく、確実に。
純金製だとしたら、表面だけでも相当な重量になるはず。
ちょっと気になるのは…カニには定番のハサミが無かった事だ。
代わりに丸くてトゲトゲの付いたフレイルのようなモノが2つ、ハサミの位置にある。
……アレって、ひょっとしたら飛んで来んじゃね?
ロケットパンチみたいに。
そう思ってたら…。
ブシュゥゥ!
オッサンガニから再び蒸気が激しく吹き出した。
「でゅどぉ~!!(みんな避けて~!!)」
ズドォォン!!
私の予想通り、凄い爆音と同時に片方のフレイルが発射された。勿論、こっちに向かって。
てか、速っ?!…マジで速っ!!
これは避け切れない。
「どすこぉぉぉい!!」
アンタレスの連続張り手で僅かに軌道が変わった。
ズドゴォォン!
フレイルが壁に激突した。
……いや、めり込んだ。スゲー破壊力!!
領域支配者の広間は通路より遥かに頑丈に出来てるはずなのに、そこにめり込んだ。
まあ、重さ=破壊力だもんね……金なら最強かな。
てか、ダンジョン壊れてない?…あれぐらいなら、いいの??
ダンジョンマスターに怒られない?
私の疑問はさて置き。みんな、ギリギリのところで回避出来たようだ。
「でゅどぉどぉ~♡(やったね、アンタレス♡)」
「ごっつぁんです♪」
バシュシュシュ~!!
「でゅ?!」
何の音かと振り返ってみれば。
オッサンガニの方から音がしている。
フレイルにはロープみたいなものが繋がっていたんだけど、それが凄い勢いで巻き上げられてゆく音だ。
ビィィン!!
ロープが張り詰めると。
ゴバァァ…。
壁にめり込んでいたフレイルが引き剥がされ…。
ビュォォ~ン!!
今度は勢いでフレイルが戻ってゆく。飛んで来た時と同じぐらいのスピードで。
……マジか?!
ガッシュン!!
フレイルが本体に再装填された。
「……なんと?!」
「速っ…!!」
ヤバい、本体の遅さを十二分にカバー出来るほどのスピードだ。
てか、速過ぎじゃね?!
戻ってきたフレイルを見た感じ、全然変形もしてなければキズひとつない。あれって金じゃなかったの?…ひょっとして合金?…10金とか18金とかいうやつ。……確か、24が純金だっけ?
とか考えいたら。
ブシュゥゥ!!
再び激しく蒸気が…マジかい、連射も可能なの?
ズドドォォン!!
今度は2つ同時発射された…。一発は私たちに向けて、もう一発は他のノームに向かってゆく。
ガギャァァン!!
私の方はリゲルがすでに結界を張っているので防ぎ切った。
けど、あっちは遠い…結界の範囲外だ。
「どぉりゃぁぁ~!!」
アンタレスが横っ飛びでフレイルに体当たりをかました!
ガギャァァン!!
弾け飛ぶフレイルとアンタレス。
「くぉぉ~!!」
着地してもなお、床の上を滑ってゆく。
その間に巻き上げられるフレイル。
てか、オッサンガニの体の中って一体どうなってんの?
中身半分ぐらいはロープで埋まってね?
結構な距離届いてんぞ…あれ。
ガッシュシュン!!
もう再装填完了してるし。
「どすこぉぉぉい!」
アンタレスも体勢を立て直したようだ。
「いいぞぉ~アンタレス~!彼女が見てるぞぉ~♪」
「…でゅ?!」
スピカが変な事を言った。
……彼女…??…アンタレスに…??
「でゅでゅどぉ?(アンタレス、彼女いるの?)」
ちょっと気になったのでデネブに訊いてみた。
「はい、あそこに♡」
デネブが指差す方にノームの女の子がかたまっていた…。
「右から二番目のちょっと可愛い子です♡」
「……でゅ??」
5人ぐらいいるけど、判別不能…。多分、あの肩を小突かれてる子だと思うんだけど…やっぱり判別出来ない。
その他大勢のノームも進化して人間みたいな顔になってるけど…何と言うか個性が無い。……みんな同じ顔に見える。
いや、ちょっと違う感じかな…?
視力アップして確認する…。
う~ん、遠目で見るとほとんど同じ……でも、近づいて見ると微妙に違う。……そんな程度。
「でゅ~」
むしろ、魔力で区別した方が分かり易いかな…そうしよう。アンタレスの彼女だし…。
てか、いつの間に付き合ってたの?
全然気が付かなかった…。
いやいや、待てよ…。そういえば、特大サイズのポテチをもらった後…どっかに行ってたな。
みんなの前で自慢気に食べるのを嫌がってたのかと思ってたけど…。こっそり、二人で食べてたのかな♡
ブシュシュゥゥ!!
再び、蒸気の吹き出す音が…。
ヤバい、また飛んで来る。
ズドドォォン!!
今度は二つ共、私たちに向かって飛んで来た。
バッキャァァン!!
ガラスが砕けるような音がして、文字通り結界が砕け散った。
「でゅどぉどぉ~!!(超硬重ポテチ~!!)」
超硬質重量級ポテチを目の前に出してロケットフレイルに対抗する。
ドドォォ~ン!!
すんでのとこで防ぎ切った。さすが超硬重ポテチだ。ポテチポイント40も使うだけの事はある。
「助かりました、アーヤ様」
「でゅでゅ♪」
バシュシュシュ…。
再び、フレイルが巻き上げられる。
「そうはさせん!」
レグルスが槍でロープ状の部位を突いたけど。
ギィィン!!
やはりというか当然というか、あっさりと弾き返されてしまった。
「…ぐぅ!!」
あのロープ状の部位も装甲と同じ材質らしい。
ガシュシュン!!
もう装填完了だ。ホントにもう!!
ブシュゥゥ~!!
さらに再びの発射体勢…。
オッサン大蛇も大概だったけど……こいつもかなりなもんだぞ。なんでオッサンシリーズはこんな大概なやつばっかりなの?!
……てか、オッサン好きだな、ダンジョンマスター。
ズドドォォン!!
「…でゅ?!」
今度は何故か上に向けてフレイルが射ち出された。
しかも、僅かに発射のタイミングにズレがある。
フレイルが同士が天井近くで空中衝突。ひとつは天井にめり込んだけど、もうひとつはこっち向かって飛んで来る。しかも衝突の反動なのか、スゲー速い!!
これを狙ってたの?
オッサンのくせに小賢しいやつ!!
「でゅどぉどぉ~!!(超硬重ポテチ~!!)
さらに超硬質重量級ポテチを出して防ぐ。
ドォォン!
今のは危なかった…ギリギリのとこ。
バシュシュシュ…。
またしても、フレイルが巻き上げられる。
「させるか~~!!」
アンタレスがフレイルにしがみついた。
「アンタレス?!」
「ムチャだ!」
必死に踏ん張るアンタレス……けれど、健闘空しくそのまま引きずられてゆく…。
ガシュシュン!!
アンタレスをくっ付けたまんまフレイルが再度装填される。
……そして。
ブシュゥゥ~!!
またまたの発射体勢。
ヤバい、あのまま発射されたらアンタレスが…。
「でゅでぃだぁ!!(デネブお願い!!)」
「承知致しました!」
デネブが私を投げる。
ズドドォォン!!
アンタレス付きのフレイルが発射される。
「でゅでゅ~!!」
マックスのひとつ下のギアチェンで超ローリングアタック!!
ガァゴォォォン!!
かなりの勢いで衝突したのだが…硬い。いや、ちょっと違う。なんと言うか…ただ硬いだけでなく少し弾力性もある。
金属なら凹むはずだが…ちょっと押し返された。こいつの甲羅はアワビみたいに何層にもなってるのかも。硬くて柔軟性があるやつ、前に…てか、前世のテレビでそんなの見た気がする。
でも、十分反動でオッサンガニはひっくり返えった。
ビィィーン!!
ロープが引っ張られてフレイルが空中で停止した。
てか、そのまま落ちる。
「「「「アンタレス~!!」」」」
「どすこぉ~い!!」
すぐさまフレイルから離れ床に着地するアンタレス。
「…ふぅ」
「危なかった…」
「ムチャ過ぎだぞ、アンタレス!」
「すまん…」
バシュシュシュ…。
倒れたまんまでフレイルを巻き戻すオッサンガニ。
「でゅ~!!(全くもう~!!)」
猛ダッシュでみんな所に戻ると。
ズドドォォン!!
またまた、発射音が。振り返ると、フレイルが二つ同時に天井に向けて射ち出されるとこ。
今度は同じくタイミングでしかも少し離れて。
またまた何か企んでる感じ!!
ドゴガガァァ~ン!!
「でゅ~?!」
天井をぶち破った。
バシュシュシュ!!
フレイルが穴の向こう側なのに凄い勢いで巻き取られてゆく。
ドゴゴォォン!!
向こう側で引っ掛かる音が。
「でゅ~♪(やったね~♪)」
引っ掛かかってやんの♪
何を企んでたか知んないけど大失敗♪
……ところが!
ビビィィ~ン!!
さらに引っ張ってる。
「…でゅ?!」
ミシミシミシミシ!!
スッゲーやな音がする…こいつ、ひょっとして。
ドゴガァァ~~ン!!
天井が剥がれた。
「でゅ~~?!」
最初っから天井盤をひっぺがすのが目的だった?!
……てか。
「でゅどぉだぁ~!!(ダメでしょう~!!)」
そんなに壊したら、ダンジョンマスター怒るよ?!
…て、言ってる間に天井盤が落ちて来た。
あいつ、このまま私たちを下敷きするつもりだ。
「でゅどぉどぉ~!!(超超硬質ポテチ~!!)」
すでに出してあった超硬質重量級ポテチの上に、さらに超超硬質ポテチを重ねて天井盤を防ぐ。
ズドガァラガッシャァァン!!
またまたギリギリで防ぎ切った。
……ところが。
「「「「うわぁぁぁ~~?!」」」」
「…でゅ?!」
天井盤の瓦礫と一緒に人間まで降って来た。
「でゅでゅ??(何で??)」
……しかも落ちた所が私たちの真ん前。
「……何とまあ」
「タイミングの悪い…」
「…運のない連中」
みんなも少し呆れてる……確かに間が悪い。
上を見上げてみれば、二階分ぐらいぶち抜いてた。
ああ、これじゃ…しょうがないよね~。ちゃんと付かず離れず距離を取ってたのに…。
人間は弱いし、すっとろいから…。
「でゅどぉだぁ(とりあえず、助けといて)」
せっかく、遭遇したんだし…後で外の話でも聞こう。
「畏まりました、アーヤ様」
人間たちの前にもリゲルが結界を張った。けど、あくまで一時しのぎ過ぎない。早くこっちに連れて来ないと。
バシュシュシュ!!
その間にもフレイルが巻き取られてゆく。
ホントに、このカニは!
「そこの人間!死にたくなければ早くこちらへ来なさい!」
デネブの言葉を聞くと…人間たちがこっちに向かって走って来た。
「…でゅ??」
ノームの言葉が分かるのかな?…さすが冒険者。
一方、オッサンガニはといえば。
ギシガコギコギシ…。
「…………」
一向に立ち上がらない。
フレイルは戻したようだけど……何かジタバタしてる。
ひょっとして……立ち上がれないの…??
ギシガコギコギシ!!
やっぱり、立ち上がれない。これはチャンス♪
「だぁどぉだぁ!!(今の内に魔法攻撃して!!)」
「「畏まりました、アーヤ様」」
リゲルとデネブが火炎と氷結の魔法を交互に放つ。どんなに頑丈な金属でも加熱と冷却を繰り返せば脆くなるはず…。
が…。
ズドドォォン!!ズドドォォン!!ズドドォォン!!
「「おおおお…?!」」
こいつ、やたらめったらフレイルを乱れ射ちしてきた。
「不味いです、アーヤ様。こうも連続で攻撃されては魔法が使えません」
「でゅ~」
ホントに鬱陶しいやつ!!
「うぉぉぉお!!」
「なんのぉ~!!」
「しゃらくせぇ~!!」
「このカニ~!!」
アンタレスとレグルスで防御に徹して、スピカとカペラで牽制してるけど…。
ズドドォォン!!ズドドォォン!!ズドドォォン!!
いかんせん、あまりにも連射が激しい。
とにもかくにも、あのフレイルを何とかしないと…。その内、オッサンガニが立ち上がっちゃう。
よぉ~し、みてろよ。
リゲルに土魔法でオッサンガニを取り囲むように壁を作ってもらうと。
壁の内側を全力でローリングダッシュ!
「どぉだぁだぁ!!」
何度も何度もオッサンガニの周囲を超高速で旋回し続ける。
やがて、オッサンガニがひっくり返ったまま回り始める。
このまま、回転速度を上げていけば…遠心力が掛かって容易にはフレイルを回収出来なくなるはず。
ズドドォォォン!!
こちらの意図を理解したのか、今度は私に狙いを絞ってフレイルを撃ち出して来た。
……でも。
ひっくり返しになったまま、しかも回転してる状態で高速移動している私に当てられるはずがない。
ザマミ~♪
「だぁどぉぉ!!(まだまだぁぁ!!)」
さらにさらにローリングダッシュ。
オッサンガニがぐるぐると高速回転。
次第に連射速度が遅くなってゆく。
ついには撃ち出したフレイルが遠心力で回収出来なくなってきた。
「でゅだぁぁ!!(今だぁ、魔法攻撃再開!!)」
「「畏まりました、アーヤ様!!」」
再び二人の魔法攻撃が炸裂する。
と、ここで…私はスタミナが尽きたので、一旦離れてポテチタイム。
ホント、赤ちゃんってスタミナがない。器用さの無さに加えスタミナまでないとか……縛りがいっぱいだよね。
とか、思っていたら。
ボッゴォォオン!!
偶さか…飛んできたオッサンガニのフレイルが私にぶち当たった。
「でゅどぉ~!!」
油断したぁ~!!
てか、飛ばされたぁぁ!!
「「「「アーヤ様ぁぁ!!」」」」
「でゅだぁぁ!!(全くもぉぉ!!)」
赤ちゃんは視界も狭い。ホントに縛り多過ぎ!!
ギアチェンしてるから、実害はないけど…。ぶっ飛ばされるのは気分が良くなぁ~い!!
ぶっ飛ばされつつもポテチを頬張る。
何とかスタミナも補給も終えたので、飛ばされた勢いのまま再びローリングトルネイド作戦続行だ!!
「でゅだぁだぁぁ~!!」
さらに高速回転するオッサンガニ。
魔法による加熱と冷却の繰り返しで徐々に甲羅の輝きが失せてゆく…。
てか、オッサンガニそのものも、かなりぐったりしてきた様子。
ジタバタする脚も緩慢になってきた。
そろそろいいかな?
「だぁでゅ~!!」
旋回しながら、オッサンガニに体当たりを食らわせる。
甲羅は凹み、すっかり弾性が失わていた。
てか、反撃する余力もない様子。
「でゅでゅ~!!」
とどめをさすべく、旋回しながらオッサンガニの真上に移動。そこで超硬重ポテチを出して、それを重しに一気に体当たり!!
「でゅだぁぁ!!」
ボッゴォォオン!!
オッサンガニの甲羅を突き破った。
「でゅどぉ~♪(やったね~♪)」
頭脳戦の勝利。
今回は相当疲れた。やっぱり、赤ちゃんに持久戦はきつい。
オッサンガニは中身もカニ風味だった。
てか、カニみそっぽい。
しかも、ほどほど火が通ってていい感じ♡
おなかがすいているので凄く美味しそうな匂い♡
「でゅ~♡」
でも、私まで全身カニみそ風味なのはちょっとヤダ…。焼きガニに埋もれてる気分…。
てか、誰か早く回収して。
…………。
…………。
「でゅどぉどぉ?!(人間がいなくなった?!)」
「申し訳ありません」
「我らが目を離した僅かな隙に…」
「でゅ…」
外の話が聞けるかと思ったけど。
「「「「…………」」」」
何かみんながシュンとしてる…。
「だぁでゅ♡(大丈夫だよ♡)」
「「「「アーヤ様…」」」」
別に大した問題じゃない。
そもそもが物のついでぐらいだったしね。
今の私は正直、あんま人間に興味ない。
それにしても、何でいなくなったのかな?
私たちといた方が安全なのに…。
「それは多分…私たちが怖かったのだと思います」
「そうそう、特にアーヤ様とか♡」
「でゅ…?!(何で…??)」
「勿論、アーヤ様がお強いからです♡」
「さらに言うなら、人間が弱いからです」
「あいつら弱っちいから、アーヤ様に頭を撫でられただけで死ぬじゃねぇ?」
「でゅでゅ?!」
いや、ちょっと待って。確かに私はダンジョンの壁を壊せるけど…それはギアチェンして能力上げた時だけだよ。
普段は至って普通の赤ちゃんだし。
「まあ、彼らはその事を知らないので仕方がないでしょう」
「うんうん♡」
いやいや、それってちょっと不味くね…。
誤解されたまま、あの冒険者一行が人間社会に戻ったら…。
それこそ、私は『モンスター赤ちゃん』ってレッテルを貼られちゃうんじゃね?!
……まあ、いっか。
どうせまだ外には出られないんだし。その時が来たら、誤解を解けばいい。
今はそんな事を気にしててもしょうがない。後、10階層も残ってるんだから。
とにもかくにも、テンション上げて行こう♪
「でゅでゅ~♪」
「「「「おお~~~~♪」」」」
ちなみに…オッサンガニの肝はやっぱり不味かった。密かにカニみそ味を期待したんだけど…匂いだけ。
……世の中そんなに甘くない。
オッサンガニ本体がカニ風味だったのがせめてもの救いだ。
優しく私を抱きかかえて。
「おはようございます、アーヤ様♡」
デネブの笑顔が嬉しい。
手の届く所にちゃんとデネブがいる。それがとっても嬉しい。
思わずデネブの胸に顔を擦り付けて匂いと感触を確かめる。
「…でゅ♡」
本物だ…夢じゃない。凄く嬉しい♡
「まあ、アーヤ様ったら♡」
いつもより甘える私にデネブも嬉しそうにしてる感じ♡
「ああ~、またデネブばっかり~!!」
後ろでスピカが騒いでる声がする。
「「「「おはようございます、アーヤ様♡」」」」
デネブの後ろからみんなが顔を覗かせる。
ちゃんとみんなもいる、凄く凄く嬉しい♡
「でゅでゅ♡」
現在、私たちは崩落した所…というか、崩落させちゃった場所にいる。一旦戻って、みんなと一緒に朝ごはんにする為。
何せ、群れの規模が大きい。総勢97名にもなっている。
階段のある広間以外全員が入り切れないのだ。
ちなみに食材は瓦礫の下敷きになってたエビみたいなやつ。尻尾がいっぱいあって、ちょっとお得な感じ。味付けはポテチバーベキュー味。
「はい、アーヤ様…アーン♡」
「アーン♡」
いつものようにデネブに食べさせてもらう。
「美味しいですか?」
「でゅでゅ♡」
凄く美味しい、やっぱりゴハンはみんな一緒でないと♡
「ああ~…私も、私にもぉ~!!」
「でゅ♡」
たまにはスピカにも甘えてみたいな。そんな事を思っていたら…。
「仕方ないですね…♡」
珍しく、デネブがスピカに譲った…私の想いを察したのかもしれない。こんなとこが、私がデネブをママと思う由縁。
「やったぁぁ♡♡」
スピカがスッゴク嬉しそう♡
「あ、ボクも♡ボクも♡」
「たまには私も♪」
「俺も…」
「…………」
「やれやれ、しょうがないやつらが…」
「そんな事言って、レグルスもちゃっかり混じってんじゃん♡」
「うるさい!!」
他のみんなも寄って来て、自分たちそっちのけで私に構ってくれる♡
前世であまり両親に構ってもらえなかった反動からか、今は凄くみんなに甘えたい衝動がある。
赤ちゃんなので、それを許容してもらえるのがまた嬉しい♪
うん♡赤ちゃんっていいな…凄くいい♡
……それに。
やっぱり、みんなと一緒が一番だ♪
そんな至福の朝ごはんを済ませて、再び進軍開始。
例のとうせんぼしてたイソギンチャクはいなくなっていた。
ダンジョンマスターが退かしてくれたのか、単に何処かへ行っちゃっただけなのか…とにかくいなくなってた。
お陰で先に進める。
31階層より下は完全に魔物の種類が違っていた。もっとも、5階分は私が壊しちゃってよく分かんないんだけどね…。
とにかく、ゴブリンが出て来なくなった。
上の階ではあんなにワラワラと出て来たのに、この辺りではすっかりと鳴りを潜めている。
「でゅどぉだぁ…(ゴブリンいないね…)」
「そうですね…我々の同胞もいないようです」
ノームたちもいなくなった。
お陰で群れの人数は増えなくなったんだけど……道案内もいなくなってしまった。
罠に注意しながら慎重に進む。
多分、人間たちにやられていたゴブリンは上の階層から降りて来たんだと思う。数も少なかったし。
あのオッサン大蛇の一幕ではかなり大事になってしまったから。その様子を見に来たゴブリンが下の階で冒険者たちと鉢合わせにでもなったのだろう。
その点ではあの冒険者たちは運がいい。この階層本来の魔物は上と比べて格段に強い、一般ノームたちでは手に負えないぐらいに。
おまけに瓦礫の下敷きになった魔物は少ない。これは危機察知能力に優れ、素早く行動出来るという証。
とてもではないけど、人間の冒険者風情ではどうにもならないレベルだ。
事実、7人の仲間以外に出番はない。
正にダンジョンの深淵に足を踏み入れたって感じ。
てか、これがこのダンジョン本来の姿なのかもしれない。
ゴブリンとかノームは後からやって来たって話だし。
……それにしても。
「でゅどぉどぉ?(どうやって、地下10階層より下にノームが行けたの?)」
「ムベンベは眠っている時もよくあったので、その際に地下に降った仲間もいたのでしょう」
「でゅどぉ(そうなんだ)」
「ノームは他の群れの事関しては基本的に干渉しないのでよく分かりませんが…」
「でゅでゅ」
……なるほど。
でも、20階より下にもノーム居たよね。
あのミミズムカデも寝るのかなぁ…。ひょっとしたらダンジョンマスターが気まぐれにゴブリンやノームたちを下の階層に移したのかもしれない。
なんか気晴らしとか言ってたし…あんな凄い力があるなら簡単だよね~♪
もっとも、壊されちゃうと修繕には時間が掛かるらしい…。
……ホント、ごめんなさい。
「それにしても、さすがアーヤ様です。ダンジョンマスターと直接お話になるとは」
「でゅどぉだぁ?(みんなは話した事ないの?)」
「……まさか」
「我々にとって、もはや伝説上の存在ですから」
「いるかどうかすらも分かんなかったしね」
「…でゅ」
なんかスピカがとんでもない事言ったぞ。
いるかどうかも分かんないって…そんなんでよく私に話振ったよね。ダンジョンマスターに会えば何とかなるとか…。
「ハハハ…それについてはなんとも…」
「そもそもが外に出る手段など、他に方法がなかったもので…」
「そうそう」
「それに、ムベンベを簡単に倒してしまうほどの方なら…何とかなると」
「そうだよね~♪」
……なんか、今さらだけど。地下に降りた理由が結構行き当たりばったりでいい加減だな…。
まあ、他に方法がなかったのは事実だし…こうして、新しい家族も出来た事だ。結果オーライとしとこう♪
……でも、私が下を目指す必要がなくなっちゃった気がする。
何故なら、ノームたちは基本的に外に出ないとか。
みんなは日光が苦手らしい…ノームに限らず、ゴブリンたちも同じみたいだけど。
ゴブリンたちは悪食で獲物を求めて夜な夜な外に出掛けるそうだ。
……だけど、みんなにはそんな必要はない。
別に食べ物に困ってる訳じゃないし…あえて、外に出る理由がない…。
そうなると私も外に出る意味がない…今の家族と別れてまで外に出たいとは思わないから。
結果、下に行く必要はなくなっちゃう。
……う~ん。
けど…ダンジョンマスターにはお呼ばれしてる事だし、ちょっとは外の様子も見てみたい気もする。
なので、やっぱり最下層を目指そうと思う。
「でゅ♡」
そんな事を考えつつ、デネブの胸に顔を埋める♡
私は以前よりみんなに甘えている。家族に遠慮するのはおかしいと思ったし……何より、赤ちゃんだから♡
「ああ、何でいつもデネブばっかり~?!」
「でゅ♡」
それはデネブが私のママだから♡
…って、言おうと思ったのに。
「それはおまえに十分な胸がないからだろう!!」
「そうそう!!」
「胸は大切!」
「うんうん♡」
「何で~~?!」
「ふふふふ♡」
「……でゅ」
いや、違うから……母性愛の問題だよ。みんな相変わらず勘違いしてない?
てか、何で男ってば胸の話しかしないの?
そんなこんなで、最下層に向けて順調に行進が続く。
相変わらず、人間たちは後を付けて来てるみたい。彼らの姿を目撃したノームの話しによるとやっぱり冒険者らしい。そんな格好をしていたとか。
まあ、ゴブリンを倒している時点で一般人ではないよね。
だけど…この辺りはかなり気を付けないと危ない。それこそ…即、死に繋がってしまうぐらいに。
……人間は弱いから。
言ってくれれば、群れの末席にでも加えてあげなくもないのに…。もうノームはいないから群れの数は増えない。7人ぐらいなら余裕な感じ。
でも、わざわざこっちから誘うほどでもない。あくまでも少しの好意程度…。
こういうさばさばしたとこは前世とあまり変わらない気がする。
最も彼らは冒険者、自分たちの意志でここにやって来たんだから…そこら辺は自己責任というもの。
私にとって大切なのは家族と仲間たちだけ……他はどうでもいいの。
階段のある広間に到着した。
この下は40階層、領域支配者のエリアだ。
なので、今日はここで一泊して…明日、改めて中ボスに望もうと思う。
雑魚の魔物も強くなってる事だし、万全の体制で望みたいから。みんなには特大ポテチを大盤振る舞い。どうせ、ポテチポイントは一晩寝ると回復するんだし、前祝いだ♡
こういう事はモチベーションが大事、上げ上げで行かないとね♪
それは広間の真ん中にいた……というか、あった。
巨大なオッサンの顔面のモニュメント。
なんか表面が煤けて黒っぽい…まるで長い間動いてなかったみたいな、そんな感じ。
それにしても、オッサン好きだな…。ひょっとして、ダンジョンマスターの趣味なの?
「あれが領域支配者なのですか?」
「でゅどぉだぁ…(多分そうだと思う…)」
今まで領域支配者の間には他に何も無かった。ただボスモンスターがいるだけで。
なら、あれがボスキャラって事になるんだけど…。
ブシュゥゥ!
巨大なオッサンの顔の隙間から蒸気みたいなものが激しく吹き出した。
すると、表面の黒っぽい外皮が剥がれ落ちて、眩い黄金色の輝きが。
マジか、こいつ金属製なの?
てか、メカ?!
だとしたら…まっずい肝を食べなくて済むね~♡
そんな事を考えていたら、みんなが露骨に嫌な顔してる。
「……生き物ではなさそうですね」
「ええ~マジ?!」
「肝食べらんないの?」
「……残念」
……いや、みんな…そんなにあのまっずい肝食べたかったの。
私はオッサンの肝はノーサンキュウだよ?!
…ゴゴゴゴゴゴ!!
オッサン顔がゆっくりと動き出した。
180度回転して後ろを向くと…そこにはカニみたいなモンスターの姿が。
どうやら、オッサンの顔面はカニモンスターの甲羅だったらしい。
という事はやっぱり生き物?
てか、金属製の生き物っているの??
そういえば、深海に鉄の鱗が生えてる貝がいたっけ?
なら金属製の甲羅のカニがいても不思議じゃないけど…。
……そんな事を思っていたら。
「「「「おお~~♪」」」」
みんなから歓声が…。
「どうやら、生き物のようだ」
「おお~肝が食べれそう♡」
「良かった♪良かった♪」
…………。
うん、みんな嬉しそうだね~……良かったねぇ~。
……私は全然嬉しくないけど…。
巨大なカニモンスターには短い脚が何本も付いているんだけど…動作は非常にゆっくりだ。
ズシン!ズシン!ズシン!
…と、かなり重そうな足音。
うん、あれは重いな…スゲー重い…多分、おそらく、確実に。
純金製だとしたら、表面だけでも相当な重量になるはず。
ちょっと気になるのは…カニには定番のハサミが無かった事だ。
代わりに丸くてトゲトゲの付いたフレイルのようなモノが2つ、ハサミの位置にある。
……アレって、ひょっとしたら飛んで来んじゃね?
ロケットパンチみたいに。
そう思ってたら…。
ブシュゥゥ!
オッサンガニから再び蒸気が激しく吹き出した。
「でゅどぉ~!!(みんな避けて~!!)」
ズドォォン!!
私の予想通り、凄い爆音と同時に片方のフレイルが発射された。勿論、こっちに向かって。
てか、速っ?!…マジで速っ!!
これは避け切れない。
「どすこぉぉぉい!!」
アンタレスの連続張り手で僅かに軌道が変わった。
ズドゴォォン!
フレイルが壁に激突した。
……いや、めり込んだ。スゲー破壊力!!
領域支配者の広間は通路より遥かに頑丈に出来てるはずなのに、そこにめり込んだ。
まあ、重さ=破壊力だもんね……金なら最強かな。
てか、ダンジョン壊れてない?…あれぐらいなら、いいの??
ダンジョンマスターに怒られない?
私の疑問はさて置き。みんな、ギリギリのところで回避出来たようだ。
「でゅどぉどぉ~♡(やったね、アンタレス♡)」
「ごっつぁんです♪」
バシュシュシュ~!!
「でゅ?!」
何の音かと振り返ってみれば。
オッサンガニの方から音がしている。
フレイルにはロープみたいなものが繋がっていたんだけど、それが凄い勢いで巻き上げられてゆく音だ。
ビィィン!!
ロープが張り詰めると。
ゴバァァ…。
壁にめり込んでいたフレイルが引き剥がされ…。
ビュォォ~ン!!
今度は勢いでフレイルが戻ってゆく。飛んで来た時と同じぐらいのスピードで。
……マジか?!
ガッシュン!!
フレイルが本体に再装填された。
「……なんと?!」
「速っ…!!」
ヤバい、本体の遅さを十二分にカバー出来るほどのスピードだ。
てか、速過ぎじゃね?!
戻ってきたフレイルを見た感じ、全然変形もしてなければキズひとつない。あれって金じゃなかったの?…ひょっとして合金?…10金とか18金とかいうやつ。……確か、24が純金だっけ?
とか考えいたら。
ブシュゥゥ!!
再び激しく蒸気が…マジかい、連射も可能なの?
ズドドォォン!!
今度は2つ同時発射された…。一発は私たちに向けて、もう一発は他のノームに向かってゆく。
ガギャァァン!!
私の方はリゲルがすでに結界を張っているので防ぎ切った。
けど、あっちは遠い…結界の範囲外だ。
「どぉりゃぁぁ~!!」
アンタレスが横っ飛びでフレイルに体当たりをかました!
ガギャァァン!!
弾け飛ぶフレイルとアンタレス。
「くぉぉ~!!」
着地してもなお、床の上を滑ってゆく。
その間に巻き上げられるフレイル。
てか、オッサンガニの体の中って一体どうなってんの?
中身半分ぐらいはロープで埋まってね?
結構な距離届いてんぞ…あれ。
ガッシュシュン!!
もう再装填完了してるし。
「どすこぉぉぉい!」
アンタレスも体勢を立て直したようだ。
「いいぞぉ~アンタレス~!彼女が見てるぞぉ~♪」
「…でゅ?!」
スピカが変な事を言った。
……彼女…??…アンタレスに…??
「でゅでゅどぉ?(アンタレス、彼女いるの?)」
ちょっと気になったのでデネブに訊いてみた。
「はい、あそこに♡」
デネブが指差す方にノームの女の子がかたまっていた…。
「右から二番目のちょっと可愛い子です♡」
「……でゅ??」
5人ぐらいいるけど、判別不能…。多分、あの肩を小突かれてる子だと思うんだけど…やっぱり判別出来ない。
その他大勢のノームも進化して人間みたいな顔になってるけど…何と言うか個性が無い。……みんな同じ顔に見える。
いや、ちょっと違う感じかな…?
視力アップして確認する…。
う~ん、遠目で見るとほとんど同じ……でも、近づいて見ると微妙に違う。……そんな程度。
「でゅ~」
むしろ、魔力で区別した方が分かり易いかな…そうしよう。アンタレスの彼女だし…。
てか、いつの間に付き合ってたの?
全然気が付かなかった…。
いやいや、待てよ…。そういえば、特大サイズのポテチをもらった後…どっかに行ってたな。
みんなの前で自慢気に食べるのを嫌がってたのかと思ってたけど…。こっそり、二人で食べてたのかな♡
ブシュシュゥゥ!!
再び、蒸気の吹き出す音が…。
ヤバい、また飛んで来る。
ズドドォォン!!
今度は二つ共、私たちに向かって飛んで来た。
バッキャァァン!!
ガラスが砕けるような音がして、文字通り結界が砕け散った。
「でゅどぉどぉ~!!(超硬重ポテチ~!!)」
超硬質重量級ポテチを目の前に出してロケットフレイルに対抗する。
ドドォォ~ン!!
すんでのとこで防ぎ切った。さすが超硬重ポテチだ。ポテチポイント40も使うだけの事はある。
「助かりました、アーヤ様」
「でゅでゅ♪」
バシュシュシュ…。
再び、フレイルが巻き上げられる。
「そうはさせん!」
レグルスが槍でロープ状の部位を突いたけど。
ギィィン!!
やはりというか当然というか、あっさりと弾き返されてしまった。
「…ぐぅ!!」
あのロープ状の部位も装甲と同じ材質らしい。
ガシュシュン!!
もう装填完了だ。ホントにもう!!
ブシュゥゥ~!!
さらに再びの発射体勢…。
オッサン大蛇も大概だったけど……こいつもかなりなもんだぞ。なんでオッサンシリーズはこんな大概なやつばっかりなの?!
……てか、オッサン好きだな、ダンジョンマスター。
ズドドォォン!!
「…でゅ?!」
今度は何故か上に向けてフレイルが射ち出された。
しかも、僅かに発射のタイミングにズレがある。
フレイルが同士が天井近くで空中衝突。ひとつは天井にめり込んだけど、もうひとつはこっち向かって飛んで来る。しかも衝突の反動なのか、スゲー速い!!
これを狙ってたの?
オッサンのくせに小賢しいやつ!!
「でゅどぉどぉ~!!(超硬重ポテチ~!!)
さらに超硬質重量級ポテチを出して防ぐ。
ドォォン!
今のは危なかった…ギリギリのとこ。
バシュシュシュ…。
またしても、フレイルが巻き上げられる。
「させるか~~!!」
アンタレスがフレイルにしがみついた。
「アンタレス?!」
「ムチャだ!」
必死に踏ん張るアンタレス……けれど、健闘空しくそのまま引きずられてゆく…。
ガシュシュン!!
アンタレスをくっ付けたまんまフレイルが再度装填される。
……そして。
ブシュゥゥ~!!
またまたの発射体勢。
ヤバい、あのまま発射されたらアンタレスが…。
「でゅでぃだぁ!!(デネブお願い!!)」
「承知致しました!」
デネブが私を投げる。
ズドドォォン!!
アンタレス付きのフレイルが発射される。
「でゅでゅ~!!」
マックスのひとつ下のギアチェンで超ローリングアタック!!
ガァゴォォォン!!
かなりの勢いで衝突したのだが…硬い。いや、ちょっと違う。なんと言うか…ただ硬いだけでなく少し弾力性もある。
金属なら凹むはずだが…ちょっと押し返された。こいつの甲羅はアワビみたいに何層にもなってるのかも。硬くて柔軟性があるやつ、前に…てか、前世のテレビでそんなの見た気がする。
でも、十分反動でオッサンガニはひっくり返えった。
ビィィーン!!
ロープが引っ張られてフレイルが空中で停止した。
てか、そのまま落ちる。
「「「「アンタレス~!!」」」」
「どすこぉ~い!!」
すぐさまフレイルから離れ床に着地するアンタレス。
「…ふぅ」
「危なかった…」
「ムチャ過ぎだぞ、アンタレス!」
「すまん…」
バシュシュシュ…。
倒れたまんまでフレイルを巻き戻すオッサンガニ。
「でゅ~!!(全くもう~!!)」
猛ダッシュでみんな所に戻ると。
ズドドォォン!!
またまた、発射音が。振り返ると、フレイルが二つ同時に天井に向けて射ち出されるとこ。
今度は同じくタイミングでしかも少し離れて。
またまた何か企んでる感じ!!
ドゴガガァァ~ン!!
「でゅ~?!」
天井をぶち破った。
バシュシュシュ!!
フレイルが穴の向こう側なのに凄い勢いで巻き取られてゆく。
ドゴゴォォン!!
向こう側で引っ掛かる音が。
「でゅ~♪(やったね~♪)」
引っ掛かかってやんの♪
何を企んでたか知んないけど大失敗♪
……ところが!
ビビィィ~ン!!
さらに引っ張ってる。
「…でゅ?!」
ミシミシミシミシ!!
スッゲーやな音がする…こいつ、ひょっとして。
ドゴガァァ~~ン!!
天井が剥がれた。
「でゅ~~?!」
最初っから天井盤をひっぺがすのが目的だった?!
……てか。
「でゅどぉだぁ~!!(ダメでしょう~!!)」
そんなに壊したら、ダンジョンマスター怒るよ?!
…て、言ってる間に天井盤が落ちて来た。
あいつ、このまま私たちを下敷きするつもりだ。
「でゅどぉどぉ~!!(超超硬質ポテチ~!!)」
すでに出してあった超硬質重量級ポテチの上に、さらに超超硬質ポテチを重ねて天井盤を防ぐ。
ズドガァラガッシャァァン!!
またまたギリギリで防ぎ切った。
……ところが。
「「「「うわぁぁぁ~~?!」」」」
「…でゅ?!」
天井盤の瓦礫と一緒に人間まで降って来た。
「でゅでゅ??(何で??)」
……しかも落ちた所が私たちの真ん前。
「……何とまあ」
「タイミングの悪い…」
「…運のない連中」
みんなも少し呆れてる……確かに間が悪い。
上を見上げてみれば、二階分ぐらいぶち抜いてた。
ああ、これじゃ…しょうがないよね~。ちゃんと付かず離れず距離を取ってたのに…。
人間は弱いし、すっとろいから…。
「でゅどぉだぁ(とりあえず、助けといて)」
せっかく、遭遇したんだし…後で外の話でも聞こう。
「畏まりました、アーヤ様」
人間たちの前にもリゲルが結界を張った。けど、あくまで一時しのぎ過ぎない。早くこっちに連れて来ないと。
バシュシュシュ!!
その間にもフレイルが巻き取られてゆく。
ホントに、このカニは!
「そこの人間!死にたくなければ早くこちらへ来なさい!」
デネブの言葉を聞くと…人間たちがこっちに向かって走って来た。
「…でゅ??」
ノームの言葉が分かるのかな?…さすが冒険者。
一方、オッサンガニはといえば。
ギシガコギコギシ…。
「…………」
一向に立ち上がらない。
フレイルは戻したようだけど……何かジタバタしてる。
ひょっとして……立ち上がれないの…??
ギシガコギコギシ!!
やっぱり、立ち上がれない。これはチャンス♪
「だぁどぉだぁ!!(今の内に魔法攻撃して!!)」
「「畏まりました、アーヤ様」」
リゲルとデネブが火炎と氷結の魔法を交互に放つ。どんなに頑丈な金属でも加熱と冷却を繰り返せば脆くなるはず…。
が…。
ズドドォォン!!ズドドォォン!!ズドドォォン!!
「「おおおお…?!」」
こいつ、やたらめったらフレイルを乱れ射ちしてきた。
「不味いです、アーヤ様。こうも連続で攻撃されては魔法が使えません」
「でゅ~」
ホントに鬱陶しいやつ!!
「うぉぉぉお!!」
「なんのぉ~!!」
「しゃらくせぇ~!!」
「このカニ~!!」
アンタレスとレグルスで防御に徹して、スピカとカペラで牽制してるけど…。
ズドドォォン!!ズドドォォン!!ズドドォォン!!
いかんせん、あまりにも連射が激しい。
とにもかくにも、あのフレイルを何とかしないと…。その内、オッサンガニが立ち上がっちゃう。
よぉ~し、みてろよ。
リゲルに土魔法でオッサンガニを取り囲むように壁を作ってもらうと。
壁の内側を全力でローリングダッシュ!
「どぉだぁだぁ!!」
何度も何度もオッサンガニの周囲を超高速で旋回し続ける。
やがて、オッサンガニがひっくり返ったまま回り始める。
このまま、回転速度を上げていけば…遠心力が掛かって容易にはフレイルを回収出来なくなるはず。
ズドドォォォン!!
こちらの意図を理解したのか、今度は私に狙いを絞ってフレイルを撃ち出して来た。
……でも。
ひっくり返しになったまま、しかも回転してる状態で高速移動している私に当てられるはずがない。
ザマミ~♪
「だぁどぉぉ!!(まだまだぁぁ!!)」
さらにさらにローリングダッシュ。
オッサンガニがぐるぐると高速回転。
次第に連射速度が遅くなってゆく。
ついには撃ち出したフレイルが遠心力で回収出来なくなってきた。
「でゅだぁぁ!!(今だぁ、魔法攻撃再開!!)」
「「畏まりました、アーヤ様!!」」
再び二人の魔法攻撃が炸裂する。
と、ここで…私はスタミナが尽きたので、一旦離れてポテチタイム。
ホント、赤ちゃんってスタミナがない。器用さの無さに加えスタミナまでないとか……縛りがいっぱいだよね。
とか、思っていたら。
ボッゴォォオン!!
偶さか…飛んできたオッサンガニのフレイルが私にぶち当たった。
「でゅどぉ~!!」
油断したぁ~!!
てか、飛ばされたぁぁ!!
「「「「アーヤ様ぁぁ!!」」」」
「でゅだぁぁ!!(全くもぉぉ!!)」
赤ちゃんは視界も狭い。ホントに縛り多過ぎ!!
ギアチェンしてるから、実害はないけど…。ぶっ飛ばされるのは気分が良くなぁ~い!!
ぶっ飛ばされつつもポテチを頬張る。
何とかスタミナも補給も終えたので、飛ばされた勢いのまま再びローリングトルネイド作戦続行だ!!
「でゅだぁだぁぁ~!!」
さらに高速回転するオッサンガニ。
魔法による加熱と冷却の繰り返しで徐々に甲羅の輝きが失せてゆく…。
てか、オッサンガニそのものも、かなりぐったりしてきた様子。
ジタバタする脚も緩慢になってきた。
そろそろいいかな?
「だぁでゅ~!!」
旋回しながら、オッサンガニに体当たりを食らわせる。
甲羅は凹み、すっかり弾性が失わていた。
てか、反撃する余力もない様子。
「でゅでゅ~!!」
とどめをさすべく、旋回しながらオッサンガニの真上に移動。そこで超硬重ポテチを出して、それを重しに一気に体当たり!!
「でゅだぁぁ!!」
ボッゴォォオン!!
オッサンガニの甲羅を突き破った。
「でゅどぉ~♪(やったね~♪)」
頭脳戦の勝利。
今回は相当疲れた。やっぱり、赤ちゃんに持久戦はきつい。
オッサンガニは中身もカニ風味だった。
てか、カニみそっぽい。
しかも、ほどほど火が通ってていい感じ♡
おなかがすいているので凄く美味しそうな匂い♡
「でゅ~♡」
でも、私まで全身カニみそ風味なのはちょっとヤダ…。焼きガニに埋もれてる気分…。
てか、誰か早く回収して。
…………。
…………。
「でゅどぉどぉ?!(人間がいなくなった?!)」
「申し訳ありません」
「我らが目を離した僅かな隙に…」
「でゅ…」
外の話が聞けるかと思ったけど。
「「「「…………」」」」
何かみんながシュンとしてる…。
「だぁでゅ♡(大丈夫だよ♡)」
「「「「アーヤ様…」」」」
別に大した問題じゃない。
そもそもが物のついでぐらいだったしね。
今の私は正直、あんま人間に興味ない。
それにしても、何でいなくなったのかな?
私たちといた方が安全なのに…。
「それは多分…私たちが怖かったのだと思います」
「そうそう、特にアーヤ様とか♡」
「でゅ…?!(何で…??)」
「勿論、アーヤ様がお強いからです♡」
「さらに言うなら、人間が弱いからです」
「あいつら弱っちいから、アーヤ様に頭を撫でられただけで死ぬじゃねぇ?」
「でゅでゅ?!」
いや、ちょっと待って。確かに私はダンジョンの壁を壊せるけど…それはギアチェンして能力上げた時だけだよ。
普段は至って普通の赤ちゃんだし。
「まあ、彼らはその事を知らないので仕方がないでしょう」
「うんうん♡」
いやいや、それってちょっと不味くね…。
誤解されたまま、あの冒険者一行が人間社会に戻ったら…。
それこそ、私は『モンスター赤ちゃん』ってレッテルを貼られちゃうんじゃね?!
……まあ、いっか。
どうせまだ外には出られないんだし。その時が来たら、誤解を解けばいい。
今はそんな事を気にしててもしょうがない。後、10階層も残ってるんだから。
とにもかくにも、テンション上げて行こう♪
「でゅでゅ~♪」
「「「「おお~~~~♪」」」」
ちなみに…オッサンガニの肝はやっぱり不味かった。密かにカニみそ味を期待したんだけど…匂いだけ。
……世の中そんなに甘くない。
オッサンガニ本体がカニ風味だったのがせめてもの救いだ。
応援ありがとうございます!
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