箱庭魔女の魔王奮戦記

遮具真

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精霊騎士現る

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 穏やかな午後のひととき、寛ぎのティータイム♪
《もへー》
「…よしよし♡」
 …モヘちゃんごはんだよぉ~♡
 真なる魔王(仮)こと、モヘちゃんにゴハン(グランドワーム)をあげる。
 モヘちゃんのお食事風景を眺めながらマッタリとお茶を飲むのが、ここ最近のマイブーム…♡
「美味しい?モヘちゃん♡」
《もへー》
 うん、可愛い♡……このサイズなら見てて、とっても微笑ましい…。ジタバタしてる姿もすっごくラブリー♡
「……ウフフフフ♪」
 ……私は今、幸せ真っ盛り……何故かといえば…。
 世間一般の関心はもっぱら魔王に集中しているからぁ~~♡
「……フッ♪」
 ……全ては私の計画通り~♪
 後は大迷宮さえ完成してしまえば、もう誰も魔王を倒せない。てか、魔王のとこまでたどり着く事さえ出来ない…。
『……フッフッフッ♡』
 ……やったねぇ~♪オフェリアちゃん、えら~い♡
 …オフェリアちゃん、賢ぉぉ~い♡
 …オフェリアちゃん…。
「マスター問題が発生致しました」
『………』
 ………ええ~~~~?!
 穏やか午後のひととき……私のテンションは駄々滑り…。

 …んでもって、ここは技巧の間。色んな機器の設計とか完成品の分析とかする所…。
 頭の上にモヘちゃんを乗っけて実況見聞中。私にすっかりなついたのか、最近ではここがモヘちゃんの指定席だ。
《もへー》
 ……で。
「………」
 ………何んなの、これ…??
 私の目の前にはなんとも不可思議な物体の立体映像が表示されている。
 ………丸いな…。
 ………んでもって、平べったいな…。
 ………んでもって、バカでかいな…。
 ……妙にノッペリしてて凹凸が少ないな…。
「………」
 ………何処にあるの?……コレ…。
 エブリンが画像を切り替えて現在製作中の地下ダンジョンの全景を映し出した。
「エンギル台地の地下、7千メートルの地点です」
「……深!!」
 ……そんなに深く掘ったんかい?!
「はい、広大な地下迷宮をご所望との事でしたので♪」
「………」
 ………確かに、広い方がいいとは言ったけどさぁ……限度ってものが…。まあ、いいか……で?
「コレ何で出来てるの?」
 再び、映像が未確認物体に切り替わる。
「成分は只今解析中ですが…概ね金属で出来ているかと…」
「……金属ねぇ」
 ………直径15キロの金属製円盤…。まあ、確実に人工物だよねぇ…何なのか、さっぱりだけど…。
「……何か反応ある?」
「……いいえ、何もありません。おそらくは機能停止状態かと推測されます」
 ……機能停止状態か…。生き物でない以上、再起動する可能性もあるかも…。
 ……う~ん。
「……とりあえず」
 ……このまま発掘作業を続けて…。可能なら、そのままウチの保管庫に転送しといて。
「承知致しました」
「……ふぅ」
 ……問題が一つ解決したばっかなのに…。
 ………いやホント、何なのコレ…。
《もへー》

 ※

 魔族領、アルベルト邸。
『……ふぅ』
 ソファーに腰かけながら思わずため息をもらした…。
「…おや、浮かない顔だね? 計画は順調なのだろう…?」
 のんびりとお茶を飲みながら尋ねてくるアルベルト。
 ……こいつに言ってもしょうがないのだが、一応は協力者だ…。
『……問題が発生した』
「……何処で?」
『…エンギル台地』
「…ダンジョンに行き詰まったとか?」
 ……そんなの問題にならんだろ…!!
『……地下に変なモノが埋まっている』
「変なモノ…??」
『……人工物だ…直径15キロもある』
「それはまた……面白い♪」
 なんて……近寄って来て、悪そうな顔で言ってくる…。
 ……てか、何が面白いか…何が!!
 ジロッ!!
「睨まない♪睨まない♪」
『………』
 ………ホントにこいつは…。
「それで……どうするのかな?」
『………例によって……ウチの保管庫行きだ…が』
「……まだ何かあるの?」
『……おかしいと思わない?』
 ……偶然にしろ何にしろ…魔王の伝承がある所ばかり。
「……それは確かに。カルカベールにでも聞いてみるかい♪」
『………』
 ………う~ん、あいつかぁ…。あのニヤケ顔はアルベルトに通じるところがある…。
『………まだ、止めておく……あいつはあなたと同じくらい信用ならないから…』
「それはヒドイなぁ~♡」
『………』
 ……いや、向こうも絶対同じように思ってる。
「……それで、一つ目のオーパーツは?」
 ………アレのどこがオーパーツか…。
『…モヘちゃんならすっかり本体になついてる』
「……おお、さすがだねぇ~♪」
 ……何がさすがなんだか…。
「…ところでエサとか、どうしてるのかな?」
『ダクマントン大砂海でグランドワームを取って来させてる…』
「……エブリンが?」
『……そ』
「でも、アレってさぁ…7、8キロメートルはなかった…?」
『…エブリンは《小箱》を内蔵してる、問題ない……それに』
「……それに?」
『……ああいうの意外と好き…』
「……そうなんだぁ…ハハ…」
 珍しくアルベルトがひいてる……意外にミミズ系は苦手なのか?
『……フッ♡』
 ………使えるかも♡
「………嫌な笑いだね…」
『………』
 ………にしても、モヘちゃんとあの巨大円盤には類似性が見出だせない…。やはり別物か…?
 世界中にある魔王のおとぎ話は基が一つだと思っていたんだけど違うのかもしれない…。
『………』
 ……魔王の逸話に関するモノって…。
『……何か他にある…?』
「……そうだねぇ…四天王を倒した地ってところがあるね」
『………』
 ……四天王か…となると4ヵ所もあるのか…。
「……まあ、2ヵ所だけど」
『……何で?』
 ……四天王なのに2ヵ所…??
「そんな事を私に訊かれてもねぇ……まとめて倒したのかもしれないし……あるいは…」
『………』
 ………すでに伝承が失わてるのか…。
「……まあ、私が知っているのはこの程度…かな」
『………』
 ………しょうがないな…。
『………気は進まないが…』
 ……やはりカルカベールに訊くか…。
「……そうだね、彼は封印守護の一族だからね♪その方が手っ取り早いだろうね」
『……話せる?』
「任せて♪…但し…」
『………?!』
「楽しい事をする時は私を除け者しない事……これが条件♪」
『……わかった……てか、私は楽しくないんだけど……全然!!』
「それはよくないなぁ……人生は楽しまなきゃ♪」
『………!!』
 ………だから、楽しくないっつーの!
 オマエとは絶対価値観合わないな…。

 ※

 次の日、アルベルトに案内された場所は王都の東側にある大きな湖。ここでカルカベールと落ち合う予定なのだとか…。
 てか、話をした翌日って……オマエら、そろいもそろってどんだけヒマなんだよ?
『キシン…バ……湖…』
 古びた石碑に名前が刻まれている。
 ………キシンバ…?…キシンブ……確か魔族の古語で…忘れ得ぬ…いや、忘れるなかれ……だったか…?
『……ん~~??』
 ……湖の由来について何か書いてあるのだが、かすれててよく判別出来ない…。
「四天王の封印されし場所…って書いてあるんだよ♪」
『…………』
 …………は?!
『…おい!』
 また、オマエはなんつー所で落ち合う約束したんだよ!
 後ろに諜報員の方たち数名が隠れていらっしゃるんだぞ!!
 つーか、封印って何だよ?倒されたんじゃなかったのか?!
「まーまーまー♡…観光地としては結構有名なところだよ。まあ、みんな名前の由来までは知らないらしいけど♪」
『……あなたねぇ』
「……お、カルカベールが来たようだねぇ♪」
『………』
「…♡」
 あいつはあいつで笑顔で手を振ってるし……オマエら絶対、わざとだろ!!
「やーやーやー♪君の方から声をかけてくれるなんて嬉しいね♪」
『……はぁ』
 ……オマエらやっぱり同類だな。

 話を聞いてみると守護の一族は今、上を下への大騒ぎらしい。そりゃそうだろうねぇ……代々封印を守ってきた訳だし…。
 てか、あれ偽者なんだけどねぇ~……ま、いっか。
 そんなこんなで今後の身の振り方で色々ともめているとか……まあ、私には関係ないけど…。
 …え?無責任…何それ?結局はみんな自分が大事なだけ、私の知ったこっちゃない。そもそも私の平穏を脅かす方が悪い!!
 ……で、ここからが本題。
 やはり守護の一族は何が封印されているのか一切知らないらしい。
 いい加減な…てか、それほどの年月が経過してると考えるべきかな…。数百年…あるいは千年以上かも…。
 カルカベールは、そんな由来もわからない一族の掟に嫌気がさしているそうで、少し距離をおいているらしい。
 ただ、彼自身もそうだが彼の家系も他の封印の一族とは距離をおいているらしい。理由までは知らないそうだが…。
 ふむ、彼の家系には何かあるのかな…?
 まあ、何にせよ……私には都合がいい。カルカ一人なら秘密もばれやしないだろう。
 そこら辺を踏まえて、他の伝承の地について尋ねてみた。
「ん~、他の伝承の場所ねぇ……ここもそうだけど?」
『………それは…さっき、こいつから聞いた…』
「ああ、なるほど…さっき聞いた訳ね」
「……♪」
『………はぁ…』
「まあまあ、表向きは観光地だから、そんなに気にする事はないよ♪」
『……表向きはね』
 裏の真実を知ってる連中は警戒するだろうが…。
「四天王が封印された場所はちゃんと四ヵ所あるよ。一般には忘れ去られているけどね」
「へぇ~律儀だねぇ…君の一族は♪ 私なら適当なところで放棄するけど」
『………あなたはね』
 王都の立体地図を出して、場所の確認してみると…。
『……キレイにダキュラ山を囲んでいるわね』
 四天王が封印された場所はダキュラ山からキッチリと等間隔で四方に位置していた。これって封印する者が立つ場所じゃないの…そこに封印??
「……確かに、キレイに配置されてる感があるね」
「ホントだね……こうして地図上で見るとあまりにもキレイ過ぎて、これも含めて封印みたいな感じ」
 ………?!
『………今、なんて』
「……キレイ過ぎだって」
『そこじゃなくて、その先』
「ここまで全部が封印なんじゃないのかな…って」
『………!!』
 ………しまった、封印が雑なのは二重になってたから…。封印を封印で補完してたから……てか、そんな無理くりな方法聞いた事もないぞ。魔族って無理くり好きなの?
 いやいや、そもそもそれをするには全部いっぺんにやんないと無理だぞ??
 魔王と四天王をいっぺんに封印…??
 いやいや、無理でしょう。いくらモヘちゃんとはいえ封印されるまでおとなしくしてる訳がない…。てか、あの図体じゃ、ちょこっと動いただけで封印出来ない……なんだこれ、いったいどんな事すれば封印出来んの?? ロストテクノロジー…??
「…って事はここまでがダキュラ山の封印って事…??」
『……違う、ダキュラの封印とこの四ヵ所の封印は互いに補完し合ってる……』
「………それって…」
「………ヤバくない?」
『…………』
 ………ヤバい、絶対ヤバい。片方の封印が解かれたらもう片方の封印が維持出来ない…。
 って事は…。
 ゴゴゴゴ…!!
『……?!』
「「……?!」」
『………ヤバ…』
 ……この地鳴りは…?!
「……魔力が…」
「…高くなってるね♪」
 二人の言う通り湖一帯の魔力が上昇してる……それも凄い勢いで…。不味いぞ、このままだと封印が…。
「「…♡」」
 てか、オマエら何を面白そうに…。
 バキッバキッバキッ…と氷が割れるような音が響いてきた。
 あ~あ~あ~あ…手遅れぇ~♪
「……これって…」
『……封印が砕ける音!!』
「……わぉ…♪」
 凄まじい勢いで水面が激しく波立つと…湖の中央に大きな渦が発生した。
 ゴォォオオ…!!
 ドンドンと渦が大きく深くなってゆく…。やがて、大渦が湖底にまで達すると…。
 その中から水色の甲冑に身を包んだ騎士がゆっくりと浮かび上がって来た…。
『………これは』
 ………あれか?……やっぱ、四天王ってやつ…?
「なんだか面白そうな雰囲気だね~♪」
「うんうん♪」
『………』
 ………オマエら、この状況わかってんのか…。
 これじゃあ…まるで私が呼び出したみたいに見えるじゃないか。まあ、結果的にはそうなんだけどぉ…。
 後ろに隠れてる諜報員とかは絶対、私が直で呼び出したって思うよね~…。ダメじゃん、ソレ!!
 水柱の台座に立つかのようにして、四天王(仮)が私達を見下ろしている。ちょっとワナワナと震えてる…これは何だ…ゲキオコな感じ…??
《許さんぞぉぉ~~貴様らぁぁ~~!》
『……あ~あ~』
 ……やっぱり…てか、開口一番がそれかい。
「「おお~♪」」
『………』
 ………何がおお~だ!面白がってんじゃないぞ!! このままじゃ私の平穏が…。
《よくも…よくも…騙してくれたなぁ~~!!》
『……は??』
 ……騙した?……何が?……ひょっとして騙くらかされて封印されたのか?
 だとしたら、結構お間抜けなやつ…。
《精霊騎士たる我らを裏切って…ただではおかんぞぉ~~!!》
「………」
「………」
『………』
『「「……は?」」』
 ………精霊騎士…??
 ……何、その聞いた事もないワードは?
『……四天王じゃないの?』
「……いや、私もてっきり四天王かと…」
「……これはビックリだ…」
 て、カルカベールが何か知ってるような口ぶり…。
『知ってるの?!』
「精霊騎士っていうのは魔王を封印した四人の魔人の事だよ」
『……は??』
 ……話おかしくね?
「……その命と引き換えに世界を救った…って、そういう話だったんだけど…」
『………』
 いやいや、目の前の激怒した騎士様を見る限り、それはないな…。そもそも裏切ったとか言ってるし…。
「どうやら、かなり口伝と違うみたいだね…」
 ああ~そうかぁ~そういう事かぁ~。
「どっちかというと一緒に封印されたって感じかな……厄介払いされたみたいにね…」
『………やっぱ…そうだよね~』
 ………それが答え…。
 こいつ…いや、こいつらを騙してモヘちゃん(魔王)を封印……力を使い果たしたところで人柱に仕立てて、相互封印完了って訳…。うっわ~やる事悪どいわ~♪
 ……てか、厄介払いされた方は堪ったもんじゃないぞ……当然。
 ギロッ!!
 おお~睨んでる、睨んでるよぉ~!!
「……何でこっちを睨むのかな…」
『……そんなの決まってるでしょう…』
「……僕たち魔族だものねぇ…」
《魔族…皆滅ぶべし!!》
『……!!』
 ……ヤバい、何かのモーションに入ったぞ?!
 凄まじい勢いで魔力が上がってく…!!
『カルカ…!』
「♪」
 私の警告に親指を立てて了承するカルカベールを見届けると…すぐ様転移魔法を発動した。騎士の後方上空に転移。
 同時に激しい閃光と凄まじい爆音が。
 間一髪、私達のいた場所が跡形なく吹き飛んだ。後方の街も少し被害を受けた……が幸い死者は出てない様子だ。
 諜報員は……吹き飛ばされている。かなりの重症だ、ピクリとも動かない。ちょっとヤバいかな…?
 カルカベールは少し離れたところに浮んでる。こっちは無事に転移したようだ。
 …てか。……何なの、今の…?!
 魔法じゃない、違う何かだ…。直接魔力を放出したって感じ。
 いやいや、そもそも内包している魔力量と破壊力が全然釣り合わないぞ。どっかから魔力が供給されてる…??
「……いやはや、凄い破壊力だね~♪」
 私に抱きかかえられたまま、楽しそうに言うアルベルト。
『………』
 ちょっと呆れたので無言で手を放した…。
「…わわわ」
「ヒドイなぁ~、手を放すなら一言いって欲しいよ」
 重力魔法で浮かびながら文句を言うアルベルト。
『……む』
 助けてやっただけでもありがたいと思え。
「ん~、いきなりのデストロイだね~♪」
 こちらも重力魔法で飛んで来たカルカベール。
『……全く』
 オマエら、他人事みたいに楽しんでる場合か…。
『…あいつは私らを狙ったんだぞ!!』
「……ああ、そうだったねぇ♪」
「そうそう♪」
《…むう、転移で逃れたか……小賢しいやつらめ…!!》
 後ろを振り返って、忌々しそうにそう呟く騎士。
「今のは何?」
「魔法じゃなかったよね?」
『………ん』
 ……精霊騎士…精霊…う~ん…。
『……たぶん、あいつ…エレメントと共生している』
「わぉ、それは凄い♪……って事は魔法というよりブレスに近いのかな…?」
「ロストマジックってやつか♪」
 ……全く、こいつらは…。だが、アルベルトの見解は的を射てる。あいつは自由自在に息を吐くように魔力を放出出来る、しかも…。
『…あの足元にある水の台座……おそらく、あそこから直接魔力を供給されている…』
「それだと無尽蔵に魔力が使えるんじゃない?…ちょっとズルくない♪」
「厄介だね~♪」
『……オマエら真面目にやれ』
 エレメントは同属性の物質から魔力を供給出来る……なら、水がある限りあいつは無敵だぞ…。なんつーめんどくさいやつ。
 何とか話し合いで解決出来ないかなぁ?……無理かなぁ?
『……あ~もしもし、精霊騎士さん……ちょっとでいいから、こっちの話を聞いて…』
《我が怒りを知れぇい!我が無念を知るがいい~~!!》
『………あ~…』
 ……無理でした。予想はしてましたけどぉ。
「……全然聞く気はないみたい」
「怒り心頭ってやつかな」
 うっわぁ~迷惑ぅぅ~…。てか、末代まで子々孫々ってやつぅ~??…私、関係ないじゃん。魔族の話だしぃ~!!
「……こうなっては仕方ないね」
「…うん、黙って殺られる訳にはいかないからねぇ」
 こいつらやる気満々だよ…。
『………マジか』
《ウギガガアゲゴォオオ~~!!》
『……もはや、言葉にすらなってないし…』
 騎士が訳わかんない絶叫を放つと湖面が大きくうねり出し、まるで竜巻みたいに水流が鎌首を持ち上げた。
『……我を忘れてる割りに…』
「魔力のコントロールは正確だね~♪」
「……無意識かな、さすがエレメント共生体♪」
 水流の先端が大きく開く。あ…ヤバい……これ絶対何か飛ばして来るパターンだ…。
『…来るぞ!!』
 私の警告と同時にビームが…マジか?!
 よりにもよってビームかい!!
 一条の閃光が空を切り裂き、そのまま遠くの山まで到達する。
『………?!』
 ドドォォ~ン!!
 なんて、大爆音と共にビームの直撃を受けた山が半分吹き飛んだ。
 なんつー出力…。この分身体でも直撃を受けたらヤバいぞ。小箱の出力でギリ相殺出来るかどうかってレベルだ…。
 何でいきなり、こんなのが出て来んだよ!!
『……!!』
 ビーム直後の僅かな隙をついてアルベルトとカルカベールが攻撃魔法を放った。さすがにこの辺は十士族、抜けめない。
 ……が。
 アルベルトの火炎魔法もカルカベールの雷撃魔法も大した効果がない。マジか…今の二人の魔法にはかなりの量の魔力がこもってたはず…。
「参ったねぇ、ちょっとごり押ししてみるかい?」
「それしか方法なさそうだね」
 連続で魔法を放つ二人。だが、効果が薄い……いや、それどころか半分ぐらいは魔法が吸収されている。
 マジか、ひょっとして……あいつ、鎧そのものがエレメントじゃね?
 ええと…確か、エレメントは魔法を分解吸収する事も可能……だったっけ?
 いやいや…ヤバいじゃん、それ!!
《……あぁ?!》
 あ…さらにヤバそう…。今ので正気に戻った感じ…。
《ぬう~~、まぁだ生きているのかぁ~!! 貴様らぁぁぁあ!》
 怒号と共に水柱の鎌首が何本も持ち上がる。
「……あ、ヤバいかも」
「……言えてる」
《死ねぇぇ~~い!》
 いくつも閃光がやたらめったら四方八方に放たれた。
『……こいつ』
 ……正気な方がメチャクチャだ。
 ビームの直撃を受けた周囲の建物が次々と崩壊してゆく。
「これは…」
「思いの外、大事になって来たねぇ…」
『大事過ぎるわ!』
 その時、閃光がカルカベールを直撃した。
『…カルカ…?!』
 まぶしい閃光がおさまると…。
「……いやぁ~危ない危ない」
 結構けろっとした顔でカルカベールが姿を現した。
『……?!』
 今の攻撃を相殺したのか?……いや、水のベールがカルカベールを包んでる。こいつ…。
《貴様!その技をどこで?》
「僕の一族の秘伝♪」
《何だと…?!》
 ……やっぱり、カルカベールもエレメントを操れるのか…。この手の魔法はかなり特殊だ、初めて見たぞ。
 確か、エレメントは同属性の攻撃を吸収出来る……つまり、カルカベールにあいつの攻撃は通用しない。おお、一筋の光明が…。
 てか、よく考えてみたら同じようにカルカベールの攻撃もあいつには通用しない…。
 あ~…それってダメじゃん…意味ないじゃん。いつまで経っても勝負つかないパターンじゃん。
 てか、魔力の総量からみて、カルカの方が先にバテるな…。
《そんなバカな事が…そんな事……あって堪るかぁああ!!》
 何でか錯乱し始めたぞ??
 んでもって、再びのビーム一斉乱射。こいつ……いくら魔力が使い放題だからって、ほどってもんがあるだろーが!
『……くそ』
 ローブ形態を解除して自在群体を戦闘モードに移行させる。
『………拡散』
 自在群体でビームの軌道を変えて、空の彼方に飛ばす。
 相殺は難しいがこれぐらいなら、何とか…。
《……ぬう?!》
「おお、出ました自在群体♪」
「この前のあれか♪」
 自在群体を最大まで拡散させて、次々と放たれるビームを軌道変更…。
 させてるんだけど……全然間に合わね~!!
 ビームの出力がデカ過ぎて軌道変更が追いつかねぇ~!!
《…こしゃくな!!》
 うわぁ~止めれ!! これ以上撃つなっつーの!ギリなんだからギリィ~~!!
 建物が道路が次々と崩壊していく…。
『……あ~あ~あ~あ~…』
 何してくれちゃってんだよ、こいつ~!!
 そしてついに、ビームが士族館の建物にまで到達した。
『………!!』
 うっわぁ~止めれ~!! これ以上、私の平穏を乱すなぁ~バカタレェ!!
 《小箱》を開いて、大出力のマグマ弾を放つ。
 奥の手だけどしょうがない…とりあえず、蒸発しとけ!!
 ドジュボボォォオ~~ン!!
《ぐおぁぁあ~~!!》
 凄まじい爆音と共に膨大な水蒸気が辺り一帯を覆い尽くした…。
「「……おお♪」」
『………』
 結構痛そうな声が…少しはダメージがあったか?
 水魔法なら相関的にみて、かなりの有効打なのだが…。
 風の魔法で水蒸気を吹き飛ばすと…。
《おのれぇぇ…》
 一回り小さくなった精霊騎士が姿を現した。
 やっぱり……あの鎧、エレメントで出来てるな…。少し蒸発して、縮んだぞ。
 ……けど。
「さすが、ミランダ♪」
「いや~今のは凄かったねぇ♪」
『まだよ!』
 ダメージは多少あったようだが、魔力的には全然減ってない……って事は…。
《かぁあああ!!》
 今度はかけ声と共に水蒸気が吸収されてゆく。みるみる膨れ上がってゆく精霊騎士。
 さすがエレメント共生体、気化させたぐらいじゃびくともしない。エレメントは単に水だけじゃなくて、水の三体全てに作用出来るならなぁ…。
 まあ、一時的には攻撃をキャンセル出来たけど…。分身体の出力じゃ時間稼ぎがせいぜいだ。この分だと凍らせてもムダっぽい…。
 とにかく、この水をどうにかしないとらち開かないぞ。
 水蒸気が晴れてきた……てか、でっかいシルエットがぁ…。
 ヤバいだろ、これ。
《ふはははは、少しはやるようだが……しょせん我が敵ではないな!》
 湖の水を全て吸収して超巨大化した騎士が立っていた。
『………』
 ………でけぇ~。てか、なんで次から次へとバカみたいにデカイやつばっかなんだよ!!
「「………」」
 二人も見上げて、呆れてるぞ…。
『………』
 けど、かなり形が崩れてる……やはり共生体では出力に限界があるのか…。動きも緩慢な感じになってるし…いけそうかな?
 ……ああ…でも、反対に耐久力はバカ上がってる感じ…。
「……これはちょっとマズイかな…」
「……もはや打つ手無しみたいな感じ…」
《貴様…先ほどの技の出所は後でゆっくりと聞かせてもらおう》
『……?!』
 ……妙にエレメント魔法にこだわるな…こいつ。
《………》
『………』
 しかも、なんかちょっと神妙な顔になった…。
《………!!》
 何かを振り払うように首を振ると…。
《だが!その前にこの都市を灰塵に帰してくれるわ!!》
 とんでもない事を宣言しやがった!!
 こらぁ~勝手に灰塵に帰すな!私のせいにされたらどうすんだ!!
 ……いや、少し責任はあるんだけど…。
『……しょうがない』
 ここで、これ以上こいつに暴れ回られるのはマズイ…絶対。さっさと退場してもらおう。
「お♡奥の手出すの♪」
「…奥の手? さっきの以上の手段がまだあるの?」
『………使いたくはなかったけど、ガーディアンを呼ぶ…』
「おお~♡アレかぁ~♪」
「……何??何??」
 幸い運び易いように一塊になってくれた…。この機を逃す手はない。
『エッブリィィ~ン!』
「はいはいはぁ~い!呼ばれて飛び出て、エブリンちゃん参上~~♪」
 私の呼び声と共にエブリンが上空に転移。
「……彼女はあの時の…」
《…ぬう?!》
「テトラグラマトン発動~~♪」
 メイドの神器を掲げて魔法を発動するエブリン。
 精霊騎士を囲むように宙に六つの魔法陣が現れ、そこから巨大なゴーレムが出現する。
《…何??》
『………』
 でっかくて派手だから……なるべく使いたくはなかったんだけど、背に腹は替えられない。
 上下四方を取り囲み空間断層で精霊騎士を隔離する。
《……これは…一体…??》
『エブリン撤収~~!!』
「ラジャ~~♪」
 再び神器を掲げると巨大な光の輪が幾重にも断層空間を包み込む。そして断層空間ごと精霊騎士を強制転移する。
 光の輪が急速に収縮すると転移終了。
 ズズゥゥン…!!
 かなり質量を転移させたので、反動で少し振動が…。まあ、それでも無事に退場していただいた。後は本体の方で何とかしてくれるだろう。あの程度なら箱庭で十分対処出来る。
『……ふぅ』
 パチパチパチパチ…。
「やあやあ、さすがさすが…♪」
 なんて、アルベルトが拍手喝采してる。
『……全く』
「言っておくけど、今回の一件は想定外だからね」
『………』
 ……どうだか。
「……信用ないなぁ~」
『……む』
 ……普段が普段だからだろ!
「……驚いたね…あの質量を簡単に転移させるなんて…」
『……まあ…ね』
 ……奥の手だし…。
「……一体どこへ転移させたの?」
『………』
 ちょっと考えて…。
『……迷いの森』
 まあ、こいつには話してもいいだろう。他の一族とは少し距離をおいてるみたいだし、色々と聞きたい事もあるしね…。
「…やっぱり君はあの魔女の関係者なんだ」
『……まぁね。いずれ近い内に私の箱庭に招待するから、詳しい話はそこで…』
「それは楽しみ♪」
「私は??」
『……あなたは呼ばれなくても勝手に来るでしょう!』
「て事は…行ってもいいと♪」
『………』
 ……こいつは。
「やっぱり彼氏なんだ♡」
『……は?!』
 ……オマエ、何言ってんの?!
 やっぱり、こいつはぶん殴っとこう!!
 そう思ってたら…。
「そうそう♡」
 なんてアルベルトが私の肩に手を回して微笑んできた…オイ!
『……ち・が・う!』
 ゴキャ…!!
「…あだ!!」
 アルベルトの顔あさっての方にねじ曲げて、否定しといた。
「……冷たいなぁ」
『あなたに暖かくするいわれはない!』
「…フフフ」
 なんて、カルカベールが笑ってる。
 ……なんだその意味深な笑いは…。
「まあ、とりあえず……後始末はしておかないとねぇ…」
 すぐに気を取り直したのか、アルベルトがそんな事を言った。
『………』
 ………確かに。湖(元)の周辺は一面瓦礫の山だ…。諜報員はピクリとも動かないし……他にも瓦礫の下敷きなって、死にかかってる連中が大勢いる。幸い死者は居なさそうだが、早いとこ治療しとかないとヤバい感じ……あ~あ。
「大変そうだ…」
 カルカベールがしみじみと言った…。
『………はぁ』
 ホントに大変だよねぇ……でも、仕方ない。
『……やるか…』
「「……おお…」」
 やる気のない男どもの返事を聞きつつ、私は後始末に取りかかった…。
 ……しかも。
 これが終わったら、残りの精霊騎士も目を覚ます前にお持ち帰りしなければならない…。ホント、やる事山積みだよ~!!
 何でこうなった??

 ※

《………》
 広く真っ白な空間に我はいた…。
 再び、封印されてしまったのか…。まあ、それも仕方ないか。あの時出現したゴーレムは信じられないほどの力を内包していた…我などでは到底太刀打ち出来ないほど。
 それにあの若者……我が一族の力を使っていた…。
 そういえば……思い返してみるとあの時、魔族の女が話し合いがどうとか言っていた気が…。
 ひょっとして、早合点していたのか……てっきり、我が子の力を奪われたのかと思っていたのだが…。あの顔…どことなくディームに似ていた…。
《………》
 ……おかしいな……我は未だに、思考出来ているぞ?
 ここは封印空間の中ではないのか?……封印内では時が止まっているはずだが…。
《………》
 ふむ、亜空間などではないな…れっきとした通常空間だ…が。
 我の知る世界でもない…。
 となれば、異世界にまで飛ばされたのか…。
 うむ、あのゴーレムの力ならばそれもあり得るか…。
《……さて》
 ……どうしたものか…。
「……気分はどうかしら?」
《…?!》
「少しは頭が冷えた?」
 いつの間にか足元に小さな女の子がいた。こちらを見上げている。大きな帽子とローブに身を包んだ、可愛いらしい顔をした少女……。
《……?!》
 ……いや、違う…!!
 あれはそんな存在ではない。先ほどのとんでもないゴーレムすら、かすんで見えてしまうほどの…。ひょっとして、この空間は…。
《…ここは貴殿の世界か?》
「私の《箱庭》へようこそ、精霊騎士さん』
《……箱庭…??》
 そんなレベルのモノではないだろう…この空間は。
『あ…名前があるなら教えてちょうだい♡」
 敵意の全くない笑顔…。我と敵対する気はないらしい……いや、そもそも我なぞ問題にもならんか…。
《我は水の騎士…ウェルド》
「そう♪私はオフェリア、よろしくね♡」
 そう言って微笑む姿は可愛いらしい少女そのものだ。
《もへー》
《……?!》
 ……あれは?!
 彼女の帽子の下からとんでもないものが顔を覗かせた。我ら精霊騎士一堂が力を合わせようやく封印する事が出来た…。
《大魔獣ギドルバンデンスバッチ!!》
「………」
《もへー》
「もへちゃん、そんな名前だったの?」
《もへー》
《…フフフ》
 あの大魔獣をペットのごとく扱うとは…つくづくとんでもない存在のようだ…。
「…それじゃウェルドさん、お茶でも飲みながら少しお話しでもしない?」
《……フフ、それはいいな。我も色々と聞きたい事があってな》
 エレメントの力を縮小すると水が体を離れた…が。その場に浮かび続けていた。
「…不思議な空間だ」
「……ここは保管庫なの。色々と入れておけるわ、リバイアサンを飼えるぐらい」
「……それはまた」
 どうやら、ずいぶんと時が経ったようだ……こんな神がかった存在が生まれるほど…。
「そうそう、お友達もじきに来る予定だから…悪いんだけど…。その時は説得をお願いね♡」
「承知した……最も貴殿の前では皆もおとなしくなろう」
「そう…なら、いいんだけど♡」
 そう言って微笑む姿は実に可愛いらしかった。
 さて、何十年かぶり…いや、何百年かな?
 とにかく、久しぶりのお茶を楽しむとしよう。
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