箱庭魔女の魔王奮戦記

遮具真

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アグルの民

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 ……まったく。
 どうして、いつもいつもアルベルトと一緒な訳…。おかしいでしょうが!!
 さっさと終わらせてエブリンのお菓子を食べに行きましょう。それがいいわ、絶対!
「……ご機嫌斜めだね」
 ジロッ!!
「いや、何でも…」
 まったく、誰のせいで不機嫌だと思ってるのよ!!
 そんな最悪の気分のまま、目的地に到着。
 ……一見何も無い場所……て、いうか。
 ただの平原。ただの荒れ地。魔族領の外れにある不毛の地。
 草木の代わりに変な魔草が点々と生えているだけ。いや、動いているから生えているとは言い難い。玉サボテンみたいで、目玉がついてる…。そんなモノがゴソゴソ動き回ってる。
『……ホントにここなの?』
 魔サボテンを蹴っ飛ばしながらアルベルトに訊いてみた。
「間違いはないよ。言い伝えよると魔神の残骸が埋まっているとか…。探知機にも、この下にかなり大きなモノの反応があるしね♪」
『……どれどれ?』
 アルベルトの持っている探知機を見てみれば確かに何か大きな反応が。
『……お母様の探知機なら間違いないか…』
「そもそもオブジェクトは魔力反応が無いからね」
 本当にね、その点が厄介なのよ……まったく。
『まあ、引っ張り出してみればわかるか…』
《気をつけて。他の場所ではもう動き始めてるわ》
『…そうなの?』
《それにオブジェクトの能力は一つだけではないようよ》
『ええ?!』
 今さらそんな事言う?すでに足の下だってのに。
 ……って?!
 下に僅かなエネルギー反応が。
 ……ズズズズ。
 同時に足元にも振動が伝わってきた。
『こっちも動き出したみたい』
 ズズズズ。
 ……速い?!…何でこんな速く地面の中を進めるの?
『気をつけて、アルベルト。相手はかなり速いわ』
「そのようだね」
 ズズズズズ…。
 相変わらず感じるのは僅かな振動だけ…。なのに相手はもの凄い勢いで上昇して来る。
『どうやったらそんな真似が出来…?!』
 足が…地面に沈む…!!
『そうか、振動波で…地面を液状化して』
「……それで地中を進んでいるって訳かい」
 慌てて、重力魔法で地面から離れる。
「危うく地面に沈むところだったね」
『……どうやら、ただ地震を起こすだけの相手じゃなさそうね…』
 ズズズズズズ。
 オブジェクトが地面から姿を現した。まるで水の中から出て来るように。
『これは…』
 完全に地面の上には出て来ない。半分くらいは埋まったままだ。全面に丸い凹みのようなものがついている。おそらく、アレが振動波を出す部位。
 さぁて、どうしようか…。このままにらみ合いを続けて、また地面に潜られても厄介だし。
『……先手必勝で行くわ』
「オッケー♪」
 二人同時に魔法攻撃を発動。
 だが、地中に沈み込むオブジェクトの方が速い。爆裂魔法が空しく地面の上で炸裂する。
「あらら…。予想通りとはいえ、これは少し…」
『相性が悪いわね…』
 これではダメージを与えられない。
 対抗手段としては重力魔法で地中から引きずり出す他ない。
 ……けど。
『エレノア辺りじゃないとかなりキツイわね』
 再び、オブジェクトが地面の上に姿を見せた。
 …と。
 キュィィイイン!!
『…くっ!!』
 超音波攻撃…?!
「……今度はそっちの番って訳かい…」
『…手が…震え…?!』
 ……違う。手だけじゃない…全身が震え…。これは共振?!
『まずい!…離れて、アルベルト!!』
「…くっ…これは…」
 一旦、振動波が届かない距離まで離れて様子をみる。
「……今のは何だい?…まだ手が痺れているよ」
『……共振よ』
「……共振?」
『物質にはそのものを振動させる固有の周波数があるの。それを増幅させるとどんなに強硬なモノでも破壊出来てしまうのよ』
「……じゃ、あのままあそこにいたら」
『今頃ミンチになっていたわ』
「……これは…想像以上に厄介だね」
 しゃくだけど、アルベルトの言う通り…。少しどころか、かなり厄介な相手…。
 ズズズズズズ…。
「……また、地面に沈んだね」
『……今度は何を企んで…?!』
 違う、私たちを無視して移動を始めた。
「向こうは王都のある方角だよ」
『まったく!!…追うわよ、アルベルト』
「了解…これは中々大変そうだ」
 ……速い。地面の中だっていうのになんて速さなの!!
 とにかく、前を抑えて動きを止めないと…。
 ロックランサーを次々放って、オブジェクトの前に即席の壁を造る……が。
 ボフォオオ…。
 あっさりと岩の壁が共振波で壊されてしまう。
『こんなに簡単に…』
「……参ったね、これは」
 相手は地面の下…。おまけに動きを封じる事も出来ない。
 ……事もないか。
 壊されないモノで前方を塞げば。
『砂鉄よ…。あいつの周りに砂鉄を集めれば速度を落とせる』
「なるほど…それならいけそうだね」
『少しキツイけど、やるわよ』
「仕方ないよ」
 二人で磁力魔法を発動。周囲の地中から砂鉄を吸い寄せて付着させてゆく。
 全体から振動波を出している訳ではない…。発生装置以外の部分には砂鉄が吸着させられるはず。
『……よし』
 少しずつ砂鉄が吸着して速度が落ちていく。
『このまま、付着した砂鉄を通してエネルギーを外部に放出させるわ』
「大変そうだ」
『文句言わないの。別な案があるなら聞くけど?』
「……頑張りましょう」
 ジワジワとエネルギーを外部に放出させてゆく。徐々にだが確実に減っている……けど。
「……あれを停止させるまで結構な時間がかかりそう」
『仕方ないわ…。エレノアならもっと効率良く出来るんだろうけど…』
「…根比べになりそうだ」
『……まったくね』
 効率を上げる為に接近すれば共振攻撃をして来るし。
 さらに地面に沈まないように浮遊して後を追わなければならない。
 つかず離れず、常に絶妙な距離でエネルギーを抜いてゆく。ホント、疲れる作業…。私の担当が一番大変なんじゃないの?
 ……それでも、王都に達する前には何とかなりそう。
 ………。
 ………。
 だいぶ速度が落ちてきた。
 ほとんど地面にも潜れていない。
 ……にもかかわらず、こいつは進むのを止めようとしない。
 たぶん、単純な命令しか与えられていないのだろう。それでいて、いざ戦闘になると実に多彩な攻撃をしてくる。
 本当にオブジェクトというモノは矛盾に満ちた存在だ。
 こんなものを造ったやつの顔が見てみたい。
「……そろそろ、いい頃合いかな?」
『そうね、接近して一気にかたをつけるわ。いい加減こっちも疲れて来たし』
「同感」
 二人で両側から挟み込むように接近する。私の方に共振攻撃をしてきた。たぶん、私の方が魔力が高いからだろう。
 いい判断と言いたいところだけど、あなたはもう手詰まり。
 砂鉄で盾を造って、さらに接近。音波攻撃の欠点は障害物の真後ろにまでは届かないところ。
 砂鉄の盾はもろいけど…音波を防ぐには十分。
 さぁ、これでチェックメイト。
 十分に接近したところで一気に残りのエネルギーを拡散させる。
 ギュゥゥゥ…ン…。
 苦労させられた割には呆気ない最後…。
「ミランダ!」
『…え?!』
 アルベルトが私を突飛ばして…。
 胸から血しぶきが…。
 ……攻撃?……どこから?!
『…!!』
 視界の隅に人型をした真っ白な異形の存在が。
 ……しまった、気づけなかった。
 ほとんど魔力を感じない。
 何だ、アレは…。
『アルベルトォォ!!』
 落下する前に彼を抱きしめ、異形の人型から距離をおく。
『アルベルト』
「………」
 返事がない…。いつも減らず口が返って来ない。
 まずい、致命傷だ…。胸の魔核が砕けている。
『アルベルトォ!!』
「……やぁ…耳元で…叫ばないで……欲しい…ね」
 ああ、まだ生きていた…。相変わらずの減らず口だ。今なら間に合う、早く箱庭に連れて行けば…。あそこなら、どんな致命傷でも…例え死んでいたって治せる。
 ……だが。 
 異形の人型が増えている。私たちを取り囲むように下にも上にも…。ワラワラといる。
 こいつら…いったいどこから…。
 さらに、いく人もの人型が空宙から姿を現わす。
 ……光の屈折を利用した簡単なカムフラージュ。魔力がほとんど無かったとはいえ。そんなものにさえ気づけなかったとは……完全に私のミスだ。
『……アルベルト』
「あれは…ヤバそうだ……私を置いて…」
『うるさい!』
『何で私をかばった!この身体は壊れたって替えが…』
「そんな…物みたいな事を…言うよ…」
『………何を』
「君が……キズつく…のを…見たく…なかっ…」
『喋るな、バカ!!』
 そう叫びつつ、人型に向かって攻撃魔法を放ったが…。
 効果がない…。くそ、こいつら特殊なフィールドを張ってる。直接攻撃でないと効かないのか。
 さっきから、お母様との念話も通じない…。
『アルベルト!』
 ダメだ…。もう息が…今、手を放したら魂が四散してしまう。
 くそ、くそ、くそ、クソベルトのくせに…。よけいな真似をして…。
『何とかしてよ、お母様ぁああ!!』
『ダァラッシャァア~~!!』
 目の前の人型がまとめて吹き飛ばされると、代わりに見知った人物が立っていた。
『頼りになるラキお姉さん参上ぉぉ!』
『ラキ♡』
《どうやら、間に合ったみたいね》
『お母様』
『フハハハハ、来ぉぉい。白塗りお化けどもぉぉ♪』
 私たちの前に立ちはだかって、ラキが張り切ってる。ホント頼りなるお姉さん。
《さぁ、ラキが時間を稼いでる内にアルベルトを早く…》
『ダメよ!そんな事したら…。お母様に頼ったら、こいつに借りを作っちゃうじゃない!!』
《……はぁ?何を言ってるの。借りも何もあなたは私でしょう》
『こいつには違うの。お母様と私は別なの!!』
《……よくわかんないんだけど…?》
『とにかく、アルベルトは私が治すわ!!』
《……どうやって?彼はもう死んでるのよ》
『こうするの!!』
 直接魔力を送り込んで魂を元通りに定着させればいい。
《……わぉ♡…あなた、アルベルトは嫌とか言って。キスはするのね》
『……こいつに借りを作るよりはマシだわ』
《………よくわからない論理ね。まあいいわ》
『ダァラッシャァァ~!!』
 ラキが戦ってる、どうやら相手は魔法を使わないらしい。魔力もほとんど感じないし…使わないんじゃなくて、使えないの?
『ウラウラウラ!!』
 それでも、ラキのパンチで倒れない。かなり頑丈なやつ。
《まあまあ、硬いわね。でもまあ…魔法を使えないならラキでも問題…》
 人型の一体が身体を縦に分割させた。中に訳わかんない輝く球体が…。
 そこからビームが出てラキを直撃した。
『ウボヘ…!!』
《……あるかも》
『お母様!!』
 ラキが吹き飛ばされて、地面を転げ回ってる。
《大丈夫、ラキは頑丈だから…。あのくらいじゃ、びくともしないわ》
 …と、すぐに飛び起きるラキ。
『……びっくりした!!』
 ……ホントだ。我が姉ながらちょっと引くぐらいの丈夫さ…。さすが初期の分身体。
『お母様、話が違うじゃない!!』
《しょうがないでしょう、未知の相手なんだから》
 二人のやり取りに気を取られていると…。
「……ミランダ…??」
 アルベルトの声が…。
 無事に意識が戻ったのね。
『……アルベルト』
 良かった、間に合った…。魔核も再生してる。もう大丈夫だ。
「……どうやら…助けられたみたいだね」
『これで貸し借りは無しだから』
「…ふ、君らしいね」
《……さて、問題は片づいたみたいね。後始末をお願い》
『わかったわ』
 勿論、このまま済ませるつもりはない。
《ああ…それ、必要でしょう?》
 私の手の中に双刃剣が…お母様特製の高性能のやつ。これなら、あんな連中…敵じゃない。
『ありがとう、お母様♡』
《サンプルはちゃんと取って来てね》
『わかってるわ♪』
 ラキの方を見れば、縦横無尽に暴れ回ってる。
『ダラッシャ!ダラッシャ!ダラッシャァァ!!』
 まさにタコ殴り、スピードは圧倒的ラキの方が上のようね。
 ……それでも手こずってる様子。
『……っつ、硬ぃぃい。こいつら中身が硬ぃい!!』
《たぶん、骨格は金属製よ。こいつらゴーレムの類いね》
『生き物じゃない訳ぇぇ、通りでキモいと思ったぁ…』
《いいえ、半分は生体組織で出来てるみたい》
『半分は生きてんの?!…よけいにキモいじゃん。何かノッペリしてるし、あちこちチカチカ光ってるし…オマケに縦に割れてビーム出すし!!』
『ラキ、交代よ!!』
『……もういいの?…なんなら、もうしばらくキスしてても…』
『どぉぁああ~~!!』
 何、よけいな事言ってんの!
「ええ?…そんな事が…。覚えてないよ、残念…」
 何かアルベルトが嬉しそうな残念そうな顔してる。
『覚えてなくって、いいのぉぉ!!』
 ああああ…こっちは思い出して気分が悪くなってきたぁ。
 おまえらのせいで…おまえらのせいでぇぇ~!!
 斬ってやる。片っ端から斬ってやるぅぅ!!
 ズバ!ドバ!ズバババ!!
『おお、さすが…剣だとよく斬れる~♪』
《……何か、当たり散らしてるわね》
『照れ隠しじゃないの?』
《………やっぱり、よくわかんないわ》
 ………。
『ゼー…ゼー…』
 思いっ切り、ぶった斬って…息が。
《……何もそんなになってまで斬らなくたって》
『いいの!!』
『……お母様、こいつら腐ってきたよぉぉ』
《……え、もぉ?》
『ほら…』
 ……確かに。ラキが手にした人型の足はすでに形が崩れかかっている。
《……アポトーシスね、おそらく残骸から情報を得られないようにしてるのよ》
『……用意周到ね』
 影に隠れて、こっちの隙を突いてきたりとムカつく連中。
《急いで持って来て、完全に細胞が死滅したら復元出来なくなるわ》
『了解♪……じゃ、お姉さんは帰るから後は仲良くね♡』
『…はぁ?!』
『バイバァァイ♪』
 そんな聞き捨てならない言葉を残してラキとオブジェクトは転移していった。
「…………」
『…………』
「……何か食べにでも行く?」
『……言っておくけど』
「わかってるよ。……ただ、君に助けてもらえた事が嬉しくてね」
 そう言ってアルベルトは笑った。……いつもの胡散臭い顔とは違う表情で。
「……そんな顔で笑う事も出来るのね』
「……え?」
『何でもない……そうね、一番高い店がいいわ♡』
「了解、お嬢様♡」

 ※

 箱庭内の保管庫にはズラリとオブジェクトが並んでる。ちょっと壮観な眺め。
 とりあえず、オブジェクト回収作戦は無事完了。
 色々予定外の事態はあったけど、何とか全部回収出来て良かったってとこかしら。
 討伐軍の方もそこそこ時間稼ぎ出来たようだし、これで一安心かな。
 ……さて、お次は。
「……この想定外の乱入者の正体を暴かないとね…。まあ、おおよその見当はつくんだけど…問題はこいつらがどこから来たかって事…」
 培養ケースの中には半分崩れかかった白い足が浮かんでる。何とか組織崩壊は避けられた…。後は元通りに復元するだけ。
 何かこそこそと私の娘を狙って、ただでは済まさないわ。
 そんな私の思いをよそに。
『いや~~大漁大漁♡』
 何かピトリリンがホクホクの笑顔で戻って来た。
『見て見て、お母様♡…こんなにお宝が♪』
 ぎっしりと袋に詰まった鉱石が…いや、その袋って保管庫と同じ仕組みだったよね。そこにぎっしりって、どんだけ採ってきたの…あんた。
『ほえでおひほほはおひまひ?』
 こっちは口いっぱいにお肉を頬ばりながらラキが。
 てか、食べ終わってから喋れ。
『私だって頑張ったんだから~~!!』
 そんな事言いながら、シュッシュッシュッなんてパンチをくり出してる、ロリアーナ。
『だから、お菓子♡お菓子♡』
『あ、あたしも~♡』
『ほはひ~♡』
「ハイハイハイ、ちょっとエブリン~~?」
 何はともあれ、オブジェクト回収ミッションはコンプリートと。

 ※

 エブリンたちを連れて箱庭内実験ラボの一角に私はいる。
 実はちょっと悩んでたりする。
「……う~ん」
 と、そこにロアンナがやってきた。
『……どうかしたのですか?…お母様』
「ちょうどいいわ。あなたもちょっと見てくれる?」
『……はい』
 私たちは目の前には培養された肉の塊がある。かなり大きいがただの肉の塊。
『……あの白い人型ですか?』
「……そう、微弱な魔力はあるけど…。これ、形成に魔法を使っていないようなの」
 私の言葉に少し首を傾げるロアンナ。でもすぐに思い当たったようで。
『……特定の手順通りに造らないと再現出来ない…と?』
「……さすがロアンナ」
 そう、DNA 通りに復元しても元通りにならなかった。
 つまり、これはパーツであり…組み立てる順序があるのだ。骨格が金属製である事はわかっていたけど…。実に複雑な製造行程があるらしい。
『ありがとうございます』
 嬉しそうに言うロアンナの頭の上には色違いのモヘちゃんがいる。
 最近大活躍の彼女にご褒美をあげようと思って、何がいいか訊いたら『お母様とおそろいがいいです』って言われたので、モヘちゃんクローンと私とおそろいのローブを作ってあげた。
 それを羨ましそうに見ているエブリンと例の二人。……いや、おまえらモヘちゃんで野球してたろ。
 なので、三人にモヘちゃんクローンを造ってあげるかどうかは現在検討中である。
 ……にしても。
「もう~めんどくさいな。何でこんなめんどくさい事するかな。魔法を使えば簡単なのに。オブジェクトも色々と矛盾が多いし…。これを造った連中って、いったい何を考えてるの…」
『……お母様が優秀過ぎるのでは?』
 ロアンナが意外な一言を。
「……そぉ?」
『他の人はもっといい加減で無駄が多いです。お母様のような合理的な頭を持っていません』
 ……そんなもんかなぁ…。まあ、無駄も大事だってアンジェラ先生も言ってた気がする。アンジェラは初めて魔法を教わった冒険者のお姉さん。お礼に錬金術で金塊を造ってあげたら冒険者をやめて、どこかの町でマジックアイテムのお店を開いてるとか。元気にしてるかな?
 ……さて、となると。
「……もっと回りくどいやり方をしないとダメか…。もう一度最初から検討してみましょう」
 ……たぶんにオブジェクトと白い人型は同じ技術で造られている。魔法に頼らない技術…というより魔法が使えない技術体系と考えた方がいい。
 何故、魔法を使わないのか…。可能性はいくつかあるけど、一番高いのは魔法そのものが存在しないという考え。
 私たちが当たり前のように使ってる魔法だけど、他の世界には存在しない技術なのかもしんない。
 あるいは危険過ぎて、魔力というものが活用出来ないのかも…。この世界でも高魔力地帯に普通の生き物は居ない。すぐに魔獣に食われてしまうから居ないのかと思っていたんだけど。そもそもが生息出来ないのかも…。
 そう考えると…モヘちゃんなんかは敵陣に放り込む自爆兵器みたいなもんなのか…。
 う~ん、いずれにしろ情報不足…。今は地道に白いのを復元するしかないかな…。
 そんな事を考えつつ、ロアンナとエブリンたちを連れてラボを後にする。
『……お母様はウィル様の結婚式にはお出になられないのですか?』
 ロアンナがそんな事を尋ねてきた。
「……ん?」
 ……そうだった。来週にはウィルの結婚式があるんだっけ、何か色々あったけど…。アデリナとめでたくゴールインするらしい。あくまでもらしい…なぜなら。
「オフェリアがいるじゃない」
 そう、ウィルの事はオフェリアに任せっきりにしてるから。両親も含めて。
『それはそうですが』
「……それに娘が二人もいたら母上が驚くでしょう」
 ……いや、驚かないかもしんない。あの母上だし…。
 逆にお見合いする娘が増えて喜ぶかも…。そんなぶっ飛んでる母上だから会いに行かないのだ。めんどくさい。
「それなら、オフェリア様の隠し子としてご出席なされてはいかがでしょう?」
「………」
 ……また。何を名案みたく言うかな、この子は…。おまえらも何をウンウン頷いてんの。
『それは色々問題です、エブリン』
「ロアンナの言う通り」
「ええ~~?!」
 ……ええ~…じゃない。おまえらも真似してショック受けたようなリアクションすんな。まったく。
 何はともあれ、あれから三ヶ月……世界は平和だ。
 このまま、平和だといいんだけど。
 ……そういえば、リビアーネがまだ戻ってないな…。あの子、いったいどこで何してんのかしら?

 ※

 そして、やって来ました…ウィルの結婚式。
 私は箱庭でお茶しながらその様子を見てる。
 何か、魔族の王様まで出席するとか…。ウィルもすっかり有名人になったよね。オフェリアが大変そう。
《……そう思ったのなら少しは手伝ってください、お母様》
 あなたがする事なんて少ないでしょう?
 ウィルも今や大貴族なんだし。
《気苦労が多いんです》
 そうなんだ。頑張ってね♡
《ヒドォォイ!!》
 祝いの品は沢山用意したじゃない。珍しい物ばっかだし、何で文句言うかな。
《あれは元々、お母様が箱庭用に集めた物でしょう?》
 ……そうだっけ?
 とにかく私の代わりに頑張ってね~~♡
 以上、通信終わり!
《あ、ちょっと…》
『……いいのですか?…お母様』
「いいの、いいの、その為のオフェリアなんだから♪」
《お母様!!》
 ……む?!
 またなの、意外にしつこい……って。
「あなた、リビアーネ?」
『リビアーネお姉様?』
《ああ、やっと…つながった。良かったぁぁ♡》
「今までどこにいたの?」
《わかんなぁぁい!!》
 何か、泣きそうな感じ。ホントにしょうがない子。
「そのまま、念をつなげといて。今、居場所を探るから…」
《……うん》
 ……ええと、西かな…?
 …………ずいぶん遠いな。
 ………………あれ、ちょっと遠過ぎないか…これ。
 ……………………あれれれれ??
「……あなた、何で地平線の先に居るの??」
《……わかんないよぉぉ》
「……わかんないって、この先には何も…」
 西の彼方に目を凝らせば……あった。
 そこにはお月様が。
「あなた、何で月面に居るの!!」
『……月面?』
《……何か、ヘッペル海平原に変な遺跡があって、そこにティティリナと行ったら…こんな何もないとこにぃぃ》
「ああ、もう…わかったから。今、迎えを行かせるから…泣かないの」
《……うん》
 ……ホント。
 ……てか、遺跡?
 ひょっとして、あの白い連中はそれを使ってやって来た?
 だとすると、連中はお月様からやって来たの?
 ……いや、何かもう一つ大事な事を言ってた気が。
 ……ティティリナ…と行った??
「……は?……ひょっとして、ティティリナも一緒なの?」
《……うん、ティティリナ死にそう》
「そりゃ死にそうにもなるわ、お月様には水も空気もないんだから!!」
 頑丈に出来てるリビアーネとは違って、ただの人魚。
 ヤバい、このままだとティティリナが人魚のミイラに…。てか、今までよく持たせてたな…逆に偉いぞ、リビアーネ。
《……しかもおっきなオブジェクトが近くにあるんだよ》
「………………は?」
 さらに衝撃の発言が。
 月面にオブジェクトがある…??
 ……まさか。
「ちょっと、そのオブジェクトの方を見て」
 リビアーネに同調して視界を共有すると…。
 そこには超巨大オブジェクトが…。デカイ…デカ過ぎる。今までのオブジェクトがミニチュアサイズに見えてくるほど、バカデカイ…。まるで大陸サイズ……大陸?
 ………。
「……ラフツール見~っけ♡」
 今までどこにあるかと思っていたら……まさか月面とはね。
 となると…あの白い連中はアグルの民!!
 私の娘を狙って、どうしてくれようか…。
 いやいや、今はリビアーネとティティリナを一刻も早く回収しないと。
「ロアンナ、すぐにリビアーネのところに…」
『お母様!!』
「…え?」
 めったに叫ばないロアンナが…。いったい何が??
 リビアーネとの同調を切って視界を戻すと…。
 箱庭上空に巨大なオブジェクトが。
「……は?」
 その周りに次々と姿を現すオブジェクトの大群。
「………」
 さすがに私も声を失った。

 この日、全世界の上空を無数のオブジェクトが覆い尽くした。
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