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精霊の昔話
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魔幽魅は仰向けに寝そべって、ボンヤリと空を見上げていた……。
「……やられたぁぁ」
まさか、反物質とは……。対消滅に因る爆発の規模は核なんか目じゃない。
何しろ反物質とそれに反応する物質の両方が全てエネルギーに変換される、200%の大爆発だ……。
正直……そんなのまともに喰らって、よく生き残ったと思う……。まぁ、魔力はほぼ、空っぽになっちゃったけど……処で。
「…………ここ、何処?」
みんなの気配が自棄に遠い……。
相当な距離を飛ばされたらしい。てか、あの飛んでる首の長ぁぁいヤツ……ボフモル…じゃね?
つまり、ここは魔獣大陸って事になる。ああ、なんか振り出しに戻された感じ……。
さてさて、今現在どれ位の事が出来るのかな……? 試しに遠隔ハンドでボフモモを掴んでみると…………掴めた!
遠隔ハンドはあまり魔力を消費しないのかな? それとも周囲の魔力を使って発現する能力なのかな??
いずれにしても、この能力は普通に使える様だ。何かに襲われても大丈夫♡ てか、例え襲われても何も問題は無い様な気がしないでもない……。
掴んだバホモモを投げ捨てる。魔獣を食べれば多少魔力が回復するのだが……そもそも、ここには碌なのがいない。
お腹が減ったら考えよう……。
「バフモルがいきなり墜ちて来たぞ!!」
「どう言う事だ……誰か、何か見てないか??」
のおおぉ?!下に誰かいたの……!! しまったぁぁ、魔力が枯渇してて全然気が付かなかったぁぁ!
慌てて下を覗いてみれば、自分がいるのは結構高い大きな岩の上で……遥か下に十人位の人影が…。
だが、バホモモが墜ちているのはかなり離れた場所だった。ホッと胸を撫で下ろして、改めて周囲の様子を見回してみた。
どうやら自分が乗っているのは宙に浮かぶ大岩らしい……。あれれぇ?? どっかで見たぞ、この光景……。何処だっけなぁ…?
おお、いっちゃん最初の卵の間の上の浮かんでた、あの大岩じゃねぇぇ?? 見える景色もそれっぽい荒野だ……ちょっとウンザリする感じが懐かしい程に…。
いや、待てよ……あの大岩は王都建設の際に使っちゃって、もう無いんじゃなかった……?
じゃあ……ここは何処? 魔獣大陸な事はまず間違い無い……あんな変な魔獣はあそこにしかいないのだから……。
そこで、下に集まっている連中を見てみれば、何やら魔族っぽい様だ…。
う~ん、益々判らない……。魔獣大陸には、あんなに大勢の魔族はいなかった筈だぞ……?? ホントにここ何処?
「誰か上にいるよ!」
その中の一人が私を見て叫んだ。
「何?何処だ?」
「あんな所にか…??」
「……魔力は感じないが」
「あそこにいるじゃない。みんな、何処見てるの?」
なんか変だ……。私はかなり身を乗り出して、下を覗いてる……魔族の視力ならすぐに気が付きそうな筈……だけど。
あの娘以外、私に気付いていない様子。
やがて何人かが、上迄登って来た……てか、随分と時間が掛かってる、コイツ等あんま大した魔族じゃないな…。で、私の目の前迄やって来た訳だが……。
「……やはり誰もいないぞ」
「そうだな」
「気の迷いってヤツか? シーレにしては珍しいな」
「……」
やっぱり、コイツ等には私が見えていないらしい。
やがて、みんな下へ降りて行った……いや、一人残っていた、私に気付いた女性だ。
何処となくゼパルちゃんに似てる。ゼパルちゃんにもっとほんわか感を足して、髪を伸ばすとこんな感じになるのかな??
「……貴方は何? どうして他のみんなには見えないの?」
「…?!」
どうやら、私が見えている様だ……なので確かめてみた…。
「私が見えるの?」
「喋った…」
更に話も出来る様だ……。さて、どうしよう……取り敢えず適当に誤魔化しておくか…。
「フッフッフッ、実は私は精霊なの」
「精霊…!?」
「…どうやら貴方にだけは私の姿が見える様だけど」
「さっきにバフモルは貴方がやったの?」
「ええ、そうよ。故あって、少しばかり魔力が枯渇しているの。だから、今現在の力の程度をちょっと確認しようと思ってね…」
そう言って手を伸ばすと、もう一匹掴み落としてみせる。
「…?!」
これでビビって逃げ出すかな…?
「…何なの、貴方は…」
「……だから、精霊だって…。てか、貴方こそ、誰なの?」
「…私は」
下で再び騒ぎ始めると、彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「おい、大丈夫か? シーレ」
「そう、シーレって言うの」
「…なななんで、私の名前を」
「いや、今呼ばれたでしょう…」
「ええぇ…えと…」
この娘、かなり天然かな…。
「おい、どうした…?? シーレ?」
「……大丈夫よ、今行くわ。バレフォル」
バレフォル……?? ゼパルちゃんのお父さんの名前だ…。
下を覗き込んでみれば、ちょっと面影のある男性がいた。成る程、言われてみれば似てる様な…似てない様な…。
下を覗く私に慌てた様に…。
「彼に手を出したら、私が許さないわ!」
彼……ひょっとして、この娘がゼパルちゃんのお母さん…?!
「貴方の彼氏なの?」
「ななな何を根拠にぃそんな事ぉぉ…」
真っ赤になって狼狽えてる……実に判り易い。
試しに魔王眼で彼女を視てみれば、魔力の反応が二つ分あった。これはつまり…。
「……子供がいるの? 彼との間に…」
「え?え?え?えええ~~?!」
あ、やっぱりね、ホント判り易い……。
成る程成る程、私と繋がりのあるお腹の子(ゼパルちゃん)を通して私が見えると言う訳だ。
そして、ここは過去の世界……ゼパルちゃんがまだ生まれていない処をみても千年以上前の……。さてさて、参ったなぁ……これは…。
取り敢えず、あまり過去(彼女)に干渉するのはよくない、移動するか……。個人的にはゼパルちゃんのお母さんに興味があるんだけどね。翼を広げて舞い上がると、一言だけ付け加えておく。
「そうそう、一つ予言をしておくわね♡ 間も無く、ここに魔王卵が出現するわ。それはとてもとても特別な卵なの、だから誕生迄に驚く程の歳月が掛かるけど、見捨てずに守護してね♡」
「貴方…本当に……何なの?!」
「精霊だって言ったでしょう」
そう言って私はその場所を後にした。
※
私が空を飛び回っても、魔獣達は一向に気にも止めていない様子だ。つまり、私が見えていない……もっと言うと存在自体を確認出来ていない。
実際、今の私は幽霊の如き存在だ……。普通に魔獣の身体をすり抜けて進む事も出来る。なんとも、侘しい存在だ…誰にも気付かれないなんて…。
はてさて、一体全体どうしたものか…。取り敢えずは魔力を回復しない事には何も出来ない訳で…。
そうだ! 魔獣を食べて魔力が回復出来るなら、大きく深呼吸しても回復出来るんじゃね♡
早速、試してみる。
大きく息を吸い込む…吸い込む…吸い込む……あれ、吐いてない……。どうやら現状の身体では吸い込み続けても別段問題はないらしい。
「…………」
おお、少しずつだが回復してるんじゃね♡ よぉぉし、この調子で…って思った、その時…。
近くを飛んでた魔獣が次々落下し始めた……。
のおおぉ!?……ひょっとして私のせい??
五感をフル稼働して、ヤバイ事に気が付いた。
周囲の魔力がスゲー減っていた……どうやら私が吸い込み続けた結果らしい……。
不味い、このまま大陸中の魔力を吸い尽くして、魔獣大陸滅亡とか洒落になんないぞ!!
しょうがないので地道にちょっとずつ回復していくのを待とう……。てか、それって何十年掛かるんだぁ?
特にやる事もないのでプラプラする事にした……なんかユディみたいでヤダなぁ。
※
南の山脈を越えて文明圏に行ってみた。
千年後に比べると驚く程街が少ない……。頑張って勢力拡大していったんだろうなぁ…なんて、歳月に思いを馳せてみた。
暫く行くとキャラバン隊が魔獣に襲われていた…。
放っておこうかとも思ったのだが、ウサ耳が見えてラビちゃんを思い出したので助ける事にした。上空からデコピンするだけで魔獣は消し飛んでしまった。
何が起こったのか解らずに唖然とする一行の中から、真っ白な兎人の女性が進み出て、私に向かって頭を下げた。
ヤバイ、ラビちゃんの直系の先祖かも、一応手を振って応えるとその場を後にした……。
上空から今迄行った街…と言っても今は千年前だから、まだ行ってない事になるのだが……。ああ、なんかややこしい…。
とにかく、街を見て回った。
開拓村って感じの所が殆どだった……みんな懸命に頑張っていた。なので、魔獣に襲われていた所はそこそこ助け舟を出しておいた……。
ホントはダメなのかもしれないけど、何と無く助けなきゃって感じがしたので…。しかもそう言う所に限って、不思議と私の姿が見える者が必ずいた……。ひょっとすると千年後の私の周囲の誰かさんの祖先なのかもしれない。
或いは、これも駄女神調和の一環なのかも。
そんな事を繰り返している内にちょっと眠気に襲われた。多分魔力の枯渇が原因だ…。なので少しの間、山脈の上で眠る事にした。
※
目を覚ますと、鬱蒼とした木々の下にいた……。
おかしい、確か山脈の上には低木しか生えて無かった筈だが……?
ひょっとして、寝てる間に天変地異が……てか、それで起きなかった私って何?
早速、周囲の街を見て回れば……発展していた、それもかなりな勢いで…。
これは相当長い月日を眠っていたのでは……そう言えば結構魔力が回復しているぞ。
ちょっと気になったので比較対象を見に行ってみた。
そう、ゼパルちゃんのお母さんだ。
※
浮遊する大岩迄行ってみると、その下の岩山の入り口には見張りらしき魔族が立っていた。
どうやら私が生まれる予定の魔王卵が既に存在している様だ。
周囲を見回してみると、少し離れた所に結界で護られた小さな村らしきものがあった。
恐らく、あそこがゼパルちゃんの一族が住んでいた村なのかもしれない。近づき過ぎない様に距離を取りつつ接近する。
子供が結構いる、とその中にいた。青銀髪の子供が二人……。
あれがゼパルちゃんとペオルちゃんに違いない。十代前半位かな……。意外と時間は経っていないのかもと思い掛けて、アデム君の事を思い出した。そうだ、アデム君って十代位に見えて結構年喰ってたっけ?!
この世界の民族って見た目と年齢がかなり違うから……けど精神年齢は見た目とほぼ一緒だし、なんか色々ややこしい……。
魔族の成長スピードは妖精族より遅いと以前ゼパルちゃんから聞いた事がある。それを考慮に入れて考えれば、五十年……いや、百年位は経過しているのだろうか……。
「ちょっと、精霊さん」
「……にょ?」
いきなり、下から声を掛けられてビックリした。慌てて下を見下ろせば、そこにはゼパルちゃんのお母さんが立っていた。お父さんと一緒に……。
「……シーレだっけ?」
「あら、覚えててくれたんだ」
彼女の姿は殆ど変わっていなかった。
「……何だ…アレは」
私の方を見て驚いた様に言うバレフォル。
「貴方にも、彼女が見えるの?」
「……彼女?? いや、何か途轍もないモノがいるのは判るが」
どうやら、彼には私がはっきりとは認識出来ない様だった。
「まぁ、私にもはっきり見える訳じゃないんだけど……女だって事位は」
ふむ、彼女にも私がはっきりとは見えないらしい…。
ゼパルちゃんはどうなんだろう、どの程度私の姿を認識出来るのかな?
「処で貴方、あちこちで結構人助けしてるそうじゃない? でも最近めっきり姿を見ないって聞いたから、もういないのかと思った」
「まぁ、私にも色々と事情がね……それじゃまたね」
そう言って、その場を離れた……。
「あ~あ、行っちゃったぁぁ…もう少し話がしたかったんだけどなぁ…」
「何なんだ……アレは…?」
「精霊だってさ」
「……精霊ねぇ、だとしても神に近い様なとんでもない存在だぞ」
「確かにね…」
「母上ぇぇ」
ゼパルがシーレを見付けて駆け寄って来た。
「ただいま、ゼパル♡」
抱き上げて頬っぺたをスリスリする。
「フフ…首チョンパクイーンも娘には形無しだな」
「もぉぉ、その通り名、一体誰が付けたのよぉ!!」
「気に入らないか…?」
「当たり前でしょう」
「カッコいいよなぁ、ゼパル」
そう言ってゼパルの頬っぺたをつつくバレフォル。
「もぉ……ゼパルに変な教育しないで!」
「おお、怖い…」
「母上、さっきのお空にいた女の人は誰ですか?」
「ゼパル、あの精霊さんが見えたの?」
「精霊さん……スッゴクおっきな角とおっきな羽根が付いてました」
「「大きな角と羽根…」」
思わず顔を見合せるシーレとバレフォル、その特徴は正に大魔王その物だったからだ。
※
さて、港街ボンベンでは定期的にクリオネの襲撃を受けていた。お陰で街は繁栄しては滅亡寸前と言う様なサイクルをひっきりなしに繰り返している。
てか、なんだかクリオネが最初に見たヤツよりおっきい気がするぞ?! 私の気のせいか……?
とにもかくにも、このままではその内、港街が無くなりそうな感じだ……。
なので、クリオネを半分程握り潰しておいた。これで私が見たサイズに近づいた気がする。更に港街もおっきい城壁を造る時間が出来た様だ……メデタシメデタシ。
※
この頃、妖精族の保養地で列獣の研究が始まった。例のミミズみたいヤツは魔獣制御の実験材料として飼育されている様だった……。
はふぅ、ちょっと安心した。だが、タケノコみたいヤツとダチョウみたいヤツの研究動機は依然として不明瞭だ…。
まぁ、前世でも意外な処から思わぬ成功のヒントが得られる逸話とかあったし、一見してアホみたいに見えても後々役に立つのかも……。とか、最初の内は思ったんだけど…。
これがまたおんなじ様な失敗を何度となく繰り返しては、研究主任が変わっていた。
妖精族の王はアホなのか? これじゃいつまで経っても何も変わらないぞ……。
いい加減、呆れて来たのでちょっと変異体を造って実験材料の中に紛れ込ませておいた…。こうして、私のお陰で随分と研究が進んだ感じだ……よしよし♪
だが、ちょっと目を離すと、すぐに失敗して頓挫する……。
その度に主任が変えられて、ちっとも研究が前に進まない。ホント見ているこっちはかなりイライラする。
まずは、あのアホな王様を代えろ!
結局は失敗を繰り返す度に、私が密かに手を入れる……てな感じで列獣研究はノロノロと進んで行った……マジか。
このままだと最終的には列獣就航の功績は殆ど私のものになりそうだぞ…。
※
更に何より大変だったのが、城塞都市ヴェッズだ。
私が最初に訪れた時には、小さな砦を幾つもくっ付けた様な実に粗末な造りの城塞だった……。
しかも、それが魔獣の襲撃を受ける度にドンドンちっちゃくなっていった……。もぉホントどうしようもない位に…。
あまりにどうしようもないので、ちょっと天変地異的な魔法で小さな山脈と谷を造って、暫く魔獣が城塞都市に近づけない様にした。
斯くして、城塞都市は壊滅を免れたのだった……。
てか、私が何かしないとこの世界自体、ちっとも現在の状況に近づいていかない気がするぞ?!
ここって本当に私がいた世界の過去なのか?
※
後は山脈より南側を歩き回って、少し魔獣の数を間引いておいた…。これで他の国も何とか発展するだろう、やれやれ…これでやっと一段落。と、気が付けば百年が経過していた。
う~ん、もぉちょっとかなぁ……私の魔力。
処が、順調に文明圏が発展していくと……今度は私のする事がなくなって物凄く暇になってしまった。ガッティィム!!
※
あまりに暇だったので、仕方なく他の大陸も見て回る事にした。
何故ならば、私の魔力を回復するにはまだ数十年単位の時間が必要だと判明したから……。あ~あ、ホントにもぉお!
六大陸の位置と大魔王の配置に関してはリベルから聞いているので粗方判る……万が一迷ったとしても時間は腐る程あるから気長に行こう……。
まずはリベルの大陸から。まだラシュムナントカ言う大魔王が実権を握っていて、彼女は生まれてすらいなかった。まぁ、当たり前だけど……。
このラシュムナントカってヤツは結構人気がある上、治世能力も高いらしく大陸は大いに繁栄していた。
可哀想にコイツは例のビトルモンドとか言う人族の侵略戦争に巻き込まれて死んじゃう運命だ…。
だがしかし、コイツが死なない事にはリベルは転生して来られないので、ご冥福だけ祈っておこう……南~無~。
※
続いて、ダグエルムの大陸に行ってみた。ここもまだダグエルムは生まれていない……筈なのだが…。
彼そっくりの大魔王がいた……。名前はダグモンテ、なんか間違い探しでもしてる気分になる程そっくりなヤツだ。
正直違いが判らない……魔力の質迄そっくりなので、まるでアミュルとミミュルの様だ…。
試しに近づいてみたが、私に気付く事はなかった。連盟程度の関係とは言え、多少の繋がりはあるのだから、某かのリアクションはありそうなものだ…。やはり別人なのかな……。
因みに、現魔王と同じく人気と治世能力が高い。
コイツも人族の侵略戦争で死んじゃうらしい……いや、死ぬのはその前の流星雨の時だったか、一応冥福を祈っておこう……南~無~。
う~ん、やっぱりコイツ……ダグエルムなんじゃないのか?
ちょっと疑問を感じつつ、次の大陸へ向かった……。
※
次はシェドラエラ婆さんの大陸だ……いや、まだ婆さんじゃないか……。王城に行ってみると、おっきな鏡の前で頻りにポーズを取ってる女性がいた…。緩くウェーブの掛かった黒髪を腰の辺り迄伸ばして、ピチピチの黒いドレスを着ている。
誰だ?コイツ……なんて思っていたら、私に気が付いた?!
「誰?!」
おお、て事はコイツがシェドラエラ婆さん?? いや、婆さんじゃない…。
「フッフッフッ…私は予言の精霊…」
例に依って例の如くで対応した。
「予言の精霊……」
「…その通り」
「…て事は未来が分かるのよね!」
なんかエライ食い付いて来たぞ…。
「教えて!私の恋は実るの?」
「…………は?」
え~と……。
「貴方、大魔王でしょう…」
「何よ、魔王は恋をしちゃいけないの!!」
「……いや、そう言う決まりはないけど…」
てか、知らないし。大体、コイツ……誰に恋してるの……?
ちょっと心を読んでみた……すると、お相手はなんと、先程のダグモンテだった。
「う~ん、そもそも大魔王同士ってほぼほぼ無理じゃん?」
「ええ~~!! そこを何とかぁぁ!!」
「……いや、私は予言するだけで恋愛の神とかじゃないし……てか、彼もうすぐ、死んじゃうし……」
「ええ~~?!」
「残念だけど…」
「何で何で何で何で何でぇぇぇぇ?!」
物凄い剣幕で迫って来たが、生憎と私の方が身体能力が上なので巧みに往なしておいた。
「ゼー、ゼー……さすが精霊…捕らえ所がないぃ…」
「……」
ホントはちょっと違うんだけどね……。
「……どうして、死ぬの……?」
俯いたまま、理由を訊いてきた……少し肩が震えてる…。
さて、どうしよう……う~ん。
何と無く教えてもいい様な気がしたので…。
「間も無く、天より炎が雨霰と降り注ぐでしょう……その天変地異の最中に彼は命を落とします」
「……そう」
俯いたまま力無く返事をする…。
「……」
ちょっと可哀想かなぁ…なんて思っていると突然…。
「諦めて堪るもんですか! 運命を変えて、ついでに彼のハートもゲットしてやる!!」
スゲー、ポジティブ発言をぶっぱなしてきた。けど…。
「……そうね、諦めなけば運命も変わるかもしれない。頑張ってね」
自分に言い聞かせる様に彼女に言うと…。
「ありがとう」
シェドラエラは出掛けて行った。恐らく彼の元に向かったのだろう……。
ふぅ、運命かぁ……。私の相手は駄女神予定調和……手強いよねぇぇ…なんせモノホンの神だもの……ちょっとヤんなる。
さて、お次は…。距離的にエシェンバッハの所だな……。
アイツの何処となくネガティブな感じがヤなんだよね……いや、アイツもいないんだっけ……まだ。
※
エシェンバッハの大陸に着くと、何やらバカみたいに陽気な熱血漢がいた。風体からして間違いなく大魔王だ。
「だぁぁははははは~♪」
王宮の前で意味もなく笑ってる……うん、バカだ間違いない!
「さて、諸君!今年もドランドル王との頂上決戦の日時が近づいて来たぁぁ!!」
誰だ…ソレ…??
「今の処、197勝、197敗と、正に五分と五分だ!」
『『『おおおお!』』』
なんか分かんないけど、人気はありそうだ……この魔王。
「次の闘いで私は雌雄を決すると誓う!!」
いや、394回も闘って勝負が着かないのに、次で着く訳ないでしょうが……。
『ギンドバール王、ばんざぁーい!!』
『『『ギンドバール王、ばんざぁーい!!』』』
『『『ギンドバール♪ギンドバール♪』』』
「……」
なんか声援に合わせて、色々ポージングを始めたぞ、何なんだコイツ……。
てか、あのネガティブ魔王の前任者がこんなにも暑苦しいヤツだったとは……。違う意味で友達になりたくないな。
さて、誰かと闘う様な事を言ってたな……。大魔王の相手と言う事は向こうも当然大魔王の筈……。
残りはあのベルナントカとクアデムーラの前任者だが……。
順当に行けばクアデムーラの前任者って事なるな……。
てか、あの卑怯卑劣なベルナントカの筈がない!確実に!!
※
なので、クアデムーラの大陸に行ってみた。
すると、なんとも獣人族の国っぽい造りの街並みだった。
しっかりと円形闘技場迄あって年中闘技大会が開かれている処なんかも獣人族っぽい。
さてさて、ドランドルってのは何処かなぁ……てか、まず間違いなく円形闘技場だ、そこしかない!
『『『わあぁぁ~~!!』』』
闘技場内は暑苦しい程の熱気に包まれていた。ああ…ヤダ…。
恐らく、絶対、間違いなく、あの貴賓席中央に立っているヤツがドランドルだ…。
「どぁははははは~♪」
コイツも意味なく笑ってる……。
「聞けぇぇぇい!我が民達よぉぉ!……遂に、あのギンドバールと雌雄を決する時が来たぁ!!」
「……」
どうせ、同じ様な事を叫んでいるので、軽く聞き流した……。
『『『ドランドル♪ドランドル♪ドランドル♪』』』
「……」
その後の展開も同じなので再び聞き流した……。
要するに、この時代暑苦しい二人の魔王が常に闘技大会を開き捲っていた訳だ……。この二つの大陸に近づくのは金輪際よそう……。
※
最後は当然、ベルナントカの大陸だ……。アイツがいるのは解り切った事だが、そもそもアイツのせいで私はこんな処にいる訳だし……。ここは一発、パンチなりチョップなりを喰らわせておかないと精神衛生上よくなぁぁい!!
さぁぁ…何処だぁぁ~?何処にいる、ベルナントカァァ~!
悪趣味に飾り付けられた、王城の中をターゲットを求めて彷徨い歩く……。と、いたぞいたぞ、ベルナントカ~……?!
ヤツの隣に見覚えのある顔を発見した。それは人族のアイザックだった……。こんな前から……ビトルモンドの百年も前からグルだった?? てか、そんな前からこっちの世界に来てたのか、コイツは…。
て事はコイツが最初のクローン…?! それとも最初から人造人間だったのか…?!
いやいや年代的にみて、本物のアイザックかも?
残念ながら今の私は魔王眼が使えないので判別不可だ…。
何か、ベルナントカと話し合ってるぞ。どうせまた碌でもない事に決まってる…。聞き耳を立ててみれば…。
「…では、作戦の決行は半年後です」
「フフフ、遂に我が宿願が成就する時が来た…」
「お約束の方、呉々も宜しくお願い致します」
「解っておる、心配するな」
どうやら、半年後に何かやらかすつもりらしい……。
一々後を付けて話を盗み聞くのも面倒なので、魔王超演算を使って、瞬間的に二人の心を読み取る。
すると、どうやら人族の大進行作戦が半年後に行われるらしい。おかしいな、ビトルモンドとか言う人族の進行作戦は百年後じゃなかったっけ……?
だが、アイザックは確かに、半年後に決行する気だ。それも空から、数千万と言う大部隊で…。
空から…?! 例の流星雨って隕石じゃなくて、人族の大部隊なのか? いやいや、それはおかしいだろ。何処かの誰かさんが奇跡を起こして、流星雨を消し去るって話じゃなかったっけ?
何処の誰だか知らないが、幾ら何でも数千万の科学兵器を携えた大部隊を相手に何とか出来る筈がないだろう。私じゃないんだから…。私じゃ…。ええぇ~、ちょっとぉ!……私ぃ?? 何とかすんの私なのぉぉ?!
いや、冷静考えて、私しかいないじゃないか……そんな神業みたいな芸当。そもそも流星雨を消し去るって所業自体、私以外に到底出来そうもないぞ。
なんてこったい……。これからたった一人で史上最大の迎撃戦をやんなきゃなんないのかぁぁ?!
「ぐはぁあ!」
「ぐぎゃあ!」
ムカッ腹が立ったので二人にチョップを浴びせてから戻って来た。
※
さてさて、一体全体どうしたもんかな……。
取り敢えず、魔獣大陸へ戻ってあれこれ考えてみる。
てか、どうにもなんないぞ、これは…。
アイザックの作戦に依れば、全惑星規模で降下部隊が大気圏に突入して来るらしい……マジか。
全く、惑星の直径何千㎞あると思ってんだよ……とてもカバーし切れないぞ!
しかし、各大陸を巡り歩いたお陰で、最低でも大陸単位での転移は可能な訳だ……後は時間との勝負、如何に短縮するかだよねぇぇ……。
「ちょっと、精霊さん」
「のお?!」
またしても、隙を突かれた…この声はシーレだ。下を見下ろせば、彼女が笑顔で立っていた。
「よ♪」
「はふぅ……なぁに?」
「ちょっと話せない?」
「……」
しょうがない、ちょっとだけ……。私が下へ降りて行くと…。
彼女の影からゼパルちゃんが顔を見せた。
「…?!」
「ねぇ、ゼパル。精霊さんはどんな姿をしているの?」
「髪の長い女の人、スッゴクおっきな角と羽根が生えているの。それからね、服の模様が動いているの」
やられたぁ…彼女、私の正体に就いて、おおよその見当を付けてきたな。しょうがない、ホントの事を言うか…。
「貴方、精霊じゃないのよねぇ……恐らく」
「そう、私は貴方達が護っている、あの卵から生まれる魔王よ」
「やっぱり、そうなんだ……この大陸にも魔王様が」
手を上げて、彼女の言葉を遮ると…。
「…でも、それは遠い遠い未来の話、私はちょっとやそっとじゃ生まれないのよ。何しろ千年魔王なんだから」
「……千年…魔王」
「訳あって過去へ飛ばされて来たんだけど、これから大仕事をしなきゃいけないの」
「…大仕事?」
「半年後に天空から大部隊が降って来るんだけど、それを私一人で迎え撃たなきゃならないの」
「どうして?」
「私以外では手に負えない程強力な相手だから…」
「……大部隊って言ったけど…どれ位の数なの」
「数千万…魔王レベルの相手が」
「そんなの無理じゃない……どうにもならないでしょう!」
彼女の問いに無言で遠くの山を指差すと…。
そこへ爆裂魔法を撃ち込む。
凄まじい閃光と衝撃波が広がって、山が消えて無くなる。
「……ウソ…貴方がやったの?!」
「ええ、そうよ。連続で数万発撃ち込む事も出来るんだけど」
「……凄い」
「処が相手は全世界中一遍にやって来るの……どんなに強くてもそれだけの数を一度には倒せない。どうしても時間が掛かってしまうの」
「……」
「……だからその間、私の卵を護って。私が生まれる卵を」
「卵を壊されたら、どうなるの…?」
「私は生まれて来ない……多分この世界から消えてしまう」
「それは同時に貴方達の世界の終わりでもあるの……この敵は世界から魔力を消し去ってしまうつもりだから」
「魔力を消し去るって……魔力が無くなったら……命が」
「そう、命も無くなってしまう…この世界全ての」
「……解った、どんな事をしても護り抜くから」
チラッとゼパルちゃんを見て念話に切り替える。
((それから、もう一つ……この戦いで貴方は命を落とす事になるわ…))
「……どうして」
((私が生まれる未来には貴方がいないから…))
「……」
ゼパルを見るシーレ……。
「……ゼパルはいるのね」
「ええ、私の一番信頼する側近だもの」
「そう、そうなんだ」
「半年後…忘れないで」
そう言って私は二人から離れた……。
「ゼパル……これから剣の稽古付けてあげる」
「ホント、母上」
「ええ、本当よ…。貴方はこれから強くならなくてはいけないの…………誰よりも」
「……やられたぁぁ」
まさか、反物質とは……。対消滅に因る爆発の規模は核なんか目じゃない。
何しろ反物質とそれに反応する物質の両方が全てエネルギーに変換される、200%の大爆発だ……。
正直……そんなのまともに喰らって、よく生き残ったと思う……。まぁ、魔力はほぼ、空っぽになっちゃったけど……処で。
「…………ここ、何処?」
みんなの気配が自棄に遠い……。
相当な距離を飛ばされたらしい。てか、あの飛んでる首の長ぁぁいヤツ……ボフモル…じゃね?
つまり、ここは魔獣大陸って事になる。ああ、なんか振り出しに戻された感じ……。
さてさて、今現在どれ位の事が出来るのかな……? 試しに遠隔ハンドでボフモモを掴んでみると…………掴めた!
遠隔ハンドはあまり魔力を消費しないのかな? それとも周囲の魔力を使って発現する能力なのかな??
いずれにしても、この能力は普通に使える様だ。何かに襲われても大丈夫♡ てか、例え襲われても何も問題は無い様な気がしないでもない……。
掴んだバホモモを投げ捨てる。魔獣を食べれば多少魔力が回復するのだが……そもそも、ここには碌なのがいない。
お腹が減ったら考えよう……。
「バフモルがいきなり墜ちて来たぞ!!」
「どう言う事だ……誰か、何か見てないか??」
のおおぉ?!下に誰かいたの……!! しまったぁぁ、魔力が枯渇してて全然気が付かなかったぁぁ!
慌てて下を覗いてみれば、自分がいるのは結構高い大きな岩の上で……遥か下に十人位の人影が…。
だが、バホモモが墜ちているのはかなり離れた場所だった。ホッと胸を撫で下ろして、改めて周囲の様子を見回してみた。
どうやら自分が乗っているのは宙に浮かぶ大岩らしい……。あれれぇ?? どっかで見たぞ、この光景……。何処だっけなぁ…?
おお、いっちゃん最初の卵の間の上の浮かんでた、あの大岩じゃねぇぇ?? 見える景色もそれっぽい荒野だ……ちょっとウンザリする感じが懐かしい程に…。
いや、待てよ……あの大岩は王都建設の際に使っちゃって、もう無いんじゃなかった……?
じゃあ……ここは何処? 魔獣大陸な事はまず間違い無い……あんな変な魔獣はあそこにしかいないのだから……。
そこで、下に集まっている連中を見てみれば、何やら魔族っぽい様だ…。
う~ん、益々判らない……。魔獣大陸には、あんなに大勢の魔族はいなかった筈だぞ……?? ホントにここ何処?
「誰か上にいるよ!」
その中の一人が私を見て叫んだ。
「何?何処だ?」
「あんな所にか…??」
「……魔力は感じないが」
「あそこにいるじゃない。みんな、何処見てるの?」
なんか変だ……。私はかなり身を乗り出して、下を覗いてる……魔族の視力ならすぐに気が付きそうな筈……だけど。
あの娘以外、私に気付いていない様子。
やがて何人かが、上迄登って来た……てか、随分と時間が掛かってる、コイツ等あんま大した魔族じゃないな…。で、私の目の前迄やって来た訳だが……。
「……やはり誰もいないぞ」
「そうだな」
「気の迷いってヤツか? シーレにしては珍しいな」
「……」
やっぱり、コイツ等には私が見えていないらしい。
やがて、みんな下へ降りて行った……いや、一人残っていた、私に気付いた女性だ。
何処となくゼパルちゃんに似てる。ゼパルちゃんにもっとほんわか感を足して、髪を伸ばすとこんな感じになるのかな??
「……貴方は何? どうして他のみんなには見えないの?」
「…?!」
どうやら、私が見えている様だ……なので確かめてみた…。
「私が見えるの?」
「喋った…」
更に話も出来る様だ……。さて、どうしよう……取り敢えず適当に誤魔化しておくか…。
「フッフッフッ、実は私は精霊なの」
「精霊…!?」
「…どうやら貴方にだけは私の姿が見える様だけど」
「さっきにバフモルは貴方がやったの?」
「ええ、そうよ。故あって、少しばかり魔力が枯渇しているの。だから、今現在の力の程度をちょっと確認しようと思ってね…」
そう言って手を伸ばすと、もう一匹掴み落としてみせる。
「…?!」
これでビビって逃げ出すかな…?
「…何なの、貴方は…」
「……だから、精霊だって…。てか、貴方こそ、誰なの?」
「…私は」
下で再び騒ぎ始めると、彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「おい、大丈夫か? シーレ」
「そう、シーレって言うの」
「…なななんで、私の名前を」
「いや、今呼ばれたでしょう…」
「ええぇ…えと…」
この娘、かなり天然かな…。
「おい、どうした…?? シーレ?」
「……大丈夫よ、今行くわ。バレフォル」
バレフォル……?? ゼパルちゃんのお父さんの名前だ…。
下を覗き込んでみれば、ちょっと面影のある男性がいた。成る程、言われてみれば似てる様な…似てない様な…。
下を覗く私に慌てた様に…。
「彼に手を出したら、私が許さないわ!」
彼……ひょっとして、この娘がゼパルちゃんのお母さん…?!
「貴方の彼氏なの?」
「ななな何を根拠にぃそんな事ぉぉ…」
真っ赤になって狼狽えてる……実に判り易い。
試しに魔王眼で彼女を視てみれば、魔力の反応が二つ分あった。これはつまり…。
「……子供がいるの? 彼との間に…」
「え?え?え?えええ~~?!」
あ、やっぱりね、ホント判り易い……。
成る程成る程、私と繋がりのあるお腹の子(ゼパルちゃん)を通して私が見えると言う訳だ。
そして、ここは過去の世界……ゼパルちゃんがまだ生まれていない処をみても千年以上前の……。さてさて、参ったなぁ……これは…。
取り敢えず、あまり過去(彼女)に干渉するのはよくない、移動するか……。個人的にはゼパルちゃんのお母さんに興味があるんだけどね。翼を広げて舞い上がると、一言だけ付け加えておく。
「そうそう、一つ予言をしておくわね♡ 間も無く、ここに魔王卵が出現するわ。それはとてもとても特別な卵なの、だから誕生迄に驚く程の歳月が掛かるけど、見捨てずに守護してね♡」
「貴方…本当に……何なの?!」
「精霊だって言ったでしょう」
そう言って私はその場所を後にした。
※
私が空を飛び回っても、魔獣達は一向に気にも止めていない様子だ。つまり、私が見えていない……もっと言うと存在自体を確認出来ていない。
実際、今の私は幽霊の如き存在だ……。普通に魔獣の身体をすり抜けて進む事も出来る。なんとも、侘しい存在だ…誰にも気付かれないなんて…。
はてさて、一体全体どうしたものか…。取り敢えずは魔力を回復しない事には何も出来ない訳で…。
そうだ! 魔獣を食べて魔力が回復出来るなら、大きく深呼吸しても回復出来るんじゃね♡
早速、試してみる。
大きく息を吸い込む…吸い込む…吸い込む……あれ、吐いてない……。どうやら現状の身体では吸い込み続けても別段問題はないらしい。
「…………」
おお、少しずつだが回復してるんじゃね♡ よぉぉし、この調子で…って思った、その時…。
近くを飛んでた魔獣が次々落下し始めた……。
のおおぉ!?……ひょっとして私のせい??
五感をフル稼働して、ヤバイ事に気が付いた。
周囲の魔力がスゲー減っていた……どうやら私が吸い込み続けた結果らしい……。
不味い、このまま大陸中の魔力を吸い尽くして、魔獣大陸滅亡とか洒落になんないぞ!!
しょうがないので地道にちょっとずつ回復していくのを待とう……。てか、それって何十年掛かるんだぁ?
特にやる事もないのでプラプラする事にした……なんかユディみたいでヤダなぁ。
※
南の山脈を越えて文明圏に行ってみた。
千年後に比べると驚く程街が少ない……。頑張って勢力拡大していったんだろうなぁ…なんて、歳月に思いを馳せてみた。
暫く行くとキャラバン隊が魔獣に襲われていた…。
放っておこうかとも思ったのだが、ウサ耳が見えてラビちゃんを思い出したので助ける事にした。上空からデコピンするだけで魔獣は消し飛んでしまった。
何が起こったのか解らずに唖然とする一行の中から、真っ白な兎人の女性が進み出て、私に向かって頭を下げた。
ヤバイ、ラビちゃんの直系の先祖かも、一応手を振って応えるとその場を後にした……。
上空から今迄行った街…と言っても今は千年前だから、まだ行ってない事になるのだが……。ああ、なんかややこしい…。
とにかく、街を見て回った。
開拓村って感じの所が殆どだった……みんな懸命に頑張っていた。なので、魔獣に襲われていた所はそこそこ助け舟を出しておいた……。
ホントはダメなのかもしれないけど、何と無く助けなきゃって感じがしたので…。しかもそう言う所に限って、不思議と私の姿が見える者が必ずいた……。ひょっとすると千年後の私の周囲の誰かさんの祖先なのかもしれない。
或いは、これも駄女神調和の一環なのかも。
そんな事を繰り返している内にちょっと眠気に襲われた。多分魔力の枯渇が原因だ…。なので少しの間、山脈の上で眠る事にした。
※
目を覚ますと、鬱蒼とした木々の下にいた……。
おかしい、確か山脈の上には低木しか生えて無かった筈だが……?
ひょっとして、寝てる間に天変地異が……てか、それで起きなかった私って何?
早速、周囲の街を見て回れば……発展していた、それもかなりな勢いで…。
これは相当長い月日を眠っていたのでは……そう言えば結構魔力が回復しているぞ。
ちょっと気になったので比較対象を見に行ってみた。
そう、ゼパルちゃんのお母さんだ。
※
浮遊する大岩迄行ってみると、その下の岩山の入り口には見張りらしき魔族が立っていた。
どうやら私が生まれる予定の魔王卵が既に存在している様だ。
周囲を見回してみると、少し離れた所に結界で護られた小さな村らしきものがあった。
恐らく、あそこがゼパルちゃんの一族が住んでいた村なのかもしれない。近づき過ぎない様に距離を取りつつ接近する。
子供が結構いる、とその中にいた。青銀髪の子供が二人……。
あれがゼパルちゃんとペオルちゃんに違いない。十代前半位かな……。意外と時間は経っていないのかもと思い掛けて、アデム君の事を思い出した。そうだ、アデム君って十代位に見えて結構年喰ってたっけ?!
この世界の民族って見た目と年齢がかなり違うから……けど精神年齢は見た目とほぼ一緒だし、なんか色々ややこしい……。
魔族の成長スピードは妖精族より遅いと以前ゼパルちゃんから聞いた事がある。それを考慮に入れて考えれば、五十年……いや、百年位は経過しているのだろうか……。
「ちょっと、精霊さん」
「……にょ?」
いきなり、下から声を掛けられてビックリした。慌てて下を見下ろせば、そこにはゼパルちゃんのお母さんが立っていた。お父さんと一緒に……。
「……シーレだっけ?」
「あら、覚えててくれたんだ」
彼女の姿は殆ど変わっていなかった。
「……何だ…アレは」
私の方を見て驚いた様に言うバレフォル。
「貴方にも、彼女が見えるの?」
「……彼女?? いや、何か途轍もないモノがいるのは判るが」
どうやら、彼には私がはっきりとは認識出来ない様だった。
「まぁ、私にもはっきり見える訳じゃないんだけど……女だって事位は」
ふむ、彼女にも私がはっきりとは見えないらしい…。
ゼパルちゃんはどうなんだろう、どの程度私の姿を認識出来るのかな?
「処で貴方、あちこちで結構人助けしてるそうじゃない? でも最近めっきり姿を見ないって聞いたから、もういないのかと思った」
「まぁ、私にも色々と事情がね……それじゃまたね」
そう言って、その場を離れた……。
「あ~あ、行っちゃったぁぁ…もう少し話がしたかったんだけどなぁ…」
「何なんだ……アレは…?」
「精霊だってさ」
「……精霊ねぇ、だとしても神に近い様なとんでもない存在だぞ」
「確かにね…」
「母上ぇぇ」
ゼパルがシーレを見付けて駆け寄って来た。
「ただいま、ゼパル♡」
抱き上げて頬っぺたをスリスリする。
「フフ…首チョンパクイーンも娘には形無しだな」
「もぉぉ、その通り名、一体誰が付けたのよぉ!!」
「気に入らないか…?」
「当たり前でしょう」
「カッコいいよなぁ、ゼパル」
そう言ってゼパルの頬っぺたをつつくバレフォル。
「もぉ……ゼパルに変な教育しないで!」
「おお、怖い…」
「母上、さっきのお空にいた女の人は誰ですか?」
「ゼパル、あの精霊さんが見えたの?」
「精霊さん……スッゴクおっきな角とおっきな羽根が付いてました」
「「大きな角と羽根…」」
思わず顔を見合せるシーレとバレフォル、その特徴は正に大魔王その物だったからだ。
※
さて、港街ボンベンでは定期的にクリオネの襲撃を受けていた。お陰で街は繁栄しては滅亡寸前と言う様なサイクルをひっきりなしに繰り返している。
てか、なんだかクリオネが最初に見たヤツよりおっきい気がするぞ?! 私の気のせいか……?
とにもかくにも、このままではその内、港街が無くなりそうな感じだ……。
なので、クリオネを半分程握り潰しておいた。これで私が見たサイズに近づいた気がする。更に港街もおっきい城壁を造る時間が出来た様だ……メデタシメデタシ。
※
この頃、妖精族の保養地で列獣の研究が始まった。例のミミズみたいヤツは魔獣制御の実験材料として飼育されている様だった……。
はふぅ、ちょっと安心した。だが、タケノコみたいヤツとダチョウみたいヤツの研究動機は依然として不明瞭だ…。
まぁ、前世でも意外な処から思わぬ成功のヒントが得られる逸話とかあったし、一見してアホみたいに見えても後々役に立つのかも……。とか、最初の内は思ったんだけど…。
これがまたおんなじ様な失敗を何度となく繰り返しては、研究主任が変わっていた。
妖精族の王はアホなのか? これじゃいつまで経っても何も変わらないぞ……。
いい加減、呆れて来たのでちょっと変異体を造って実験材料の中に紛れ込ませておいた…。こうして、私のお陰で随分と研究が進んだ感じだ……よしよし♪
だが、ちょっと目を離すと、すぐに失敗して頓挫する……。
その度に主任が変えられて、ちっとも研究が前に進まない。ホント見ているこっちはかなりイライラする。
まずは、あのアホな王様を代えろ!
結局は失敗を繰り返す度に、私が密かに手を入れる……てな感じで列獣研究はノロノロと進んで行った……マジか。
このままだと最終的には列獣就航の功績は殆ど私のものになりそうだぞ…。
※
更に何より大変だったのが、城塞都市ヴェッズだ。
私が最初に訪れた時には、小さな砦を幾つもくっ付けた様な実に粗末な造りの城塞だった……。
しかも、それが魔獣の襲撃を受ける度にドンドンちっちゃくなっていった……。もぉホントどうしようもない位に…。
あまりにどうしようもないので、ちょっと天変地異的な魔法で小さな山脈と谷を造って、暫く魔獣が城塞都市に近づけない様にした。
斯くして、城塞都市は壊滅を免れたのだった……。
てか、私が何かしないとこの世界自体、ちっとも現在の状況に近づいていかない気がするぞ?!
ここって本当に私がいた世界の過去なのか?
※
後は山脈より南側を歩き回って、少し魔獣の数を間引いておいた…。これで他の国も何とか発展するだろう、やれやれ…これでやっと一段落。と、気が付けば百年が経過していた。
う~ん、もぉちょっとかなぁ……私の魔力。
処が、順調に文明圏が発展していくと……今度は私のする事がなくなって物凄く暇になってしまった。ガッティィム!!
※
あまりに暇だったので、仕方なく他の大陸も見て回る事にした。
何故ならば、私の魔力を回復するにはまだ数十年単位の時間が必要だと判明したから……。あ~あ、ホントにもぉお!
六大陸の位置と大魔王の配置に関してはリベルから聞いているので粗方判る……万が一迷ったとしても時間は腐る程あるから気長に行こう……。
まずはリベルの大陸から。まだラシュムナントカ言う大魔王が実権を握っていて、彼女は生まれてすらいなかった。まぁ、当たり前だけど……。
このラシュムナントカってヤツは結構人気がある上、治世能力も高いらしく大陸は大いに繁栄していた。
可哀想にコイツは例のビトルモンドとか言う人族の侵略戦争に巻き込まれて死んじゃう運命だ…。
だがしかし、コイツが死なない事にはリベルは転生して来られないので、ご冥福だけ祈っておこう……南~無~。
※
続いて、ダグエルムの大陸に行ってみた。ここもまだダグエルムは生まれていない……筈なのだが…。
彼そっくりの大魔王がいた……。名前はダグモンテ、なんか間違い探しでもしてる気分になる程そっくりなヤツだ。
正直違いが判らない……魔力の質迄そっくりなので、まるでアミュルとミミュルの様だ…。
試しに近づいてみたが、私に気付く事はなかった。連盟程度の関係とは言え、多少の繋がりはあるのだから、某かのリアクションはありそうなものだ…。やはり別人なのかな……。
因みに、現魔王と同じく人気と治世能力が高い。
コイツも人族の侵略戦争で死んじゃうらしい……いや、死ぬのはその前の流星雨の時だったか、一応冥福を祈っておこう……南~無~。
う~ん、やっぱりコイツ……ダグエルムなんじゃないのか?
ちょっと疑問を感じつつ、次の大陸へ向かった……。
※
次はシェドラエラ婆さんの大陸だ……いや、まだ婆さんじゃないか……。王城に行ってみると、おっきな鏡の前で頻りにポーズを取ってる女性がいた…。緩くウェーブの掛かった黒髪を腰の辺り迄伸ばして、ピチピチの黒いドレスを着ている。
誰だ?コイツ……なんて思っていたら、私に気が付いた?!
「誰?!」
おお、て事はコイツがシェドラエラ婆さん?? いや、婆さんじゃない…。
「フッフッフッ…私は予言の精霊…」
例に依って例の如くで対応した。
「予言の精霊……」
「…その通り」
「…て事は未来が分かるのよね!」
なんかエライ食い付いて来たぞ…。
「教えて!私の恋は実るの?」
「…………は?」
え~と……。
「貴方、大魔王でしょう…」
「何よ、魔王は恋をしちゃいけないの!!」
「……いや、そう言う決まりはないけど…」
てか、知らないし。大体、コイツ……誰に恋してるの……?
ちょっと心を読んでみた……すると、お相手はなんと、先程のダグモンテだった。
「う~ん、そもそも大魔王同士ってほぼほぼ無理じゃん?」
「ええ~~!! そこを何とかぁぁ!!」
「……いや、私は予言するだけで恋愛の神とかじゃないし……てか、彼もうすぐ、死んじゃうし……」
「ええ~~?!」
「残念だけど…」
「何で何で何で何で何でぇぇぇぇ?!」
物凄い剣幕で迫って来たが、生憎と私の方が身体能力が上なので巧みに往なしておいた。
「ゼー、ゼー……さすが精霊…捕らえ所がないぃ…」
「……」
ホントはちょっと違うんだけどね……。
「……どうして、死ぬの……?」
俯いたまま、理由を訊いてきた……少し肩が震えてる…。
さて、どうしよう……う~ん。
何と無く教えてもいい様な気がしたので…。
「間も無く、天より炎が雨霰と降り注ぐでしょう……その天変地異の最中に彼は命を落とします」
「……そう」
俯いたまま力無く返事をする…。
「……」
ちょっと可哀想かなぁ…なんて思っていると突然…。
「諦めて堪るもんですか! 運命を変えて、ついでに彼のハートもゲットしてやる!!」
スゲー、ポジティブ発言をぶっぱなしてきた。けど…。
「……そうね、諦めなけば運命も変わるかもしれない。頑張ってね」
自分に言い聞かせる様に彼女に言うと…。
「ありがとう」
シェドラエラは出掛けて行った。恐らく彼の元に向かったのだろう……。
ふぅ、運命かぁ……。私の相手は駄女神予定調和……手強いよねぇぇ…なんせモノホンの神だもの……ちょっとヤんなる。
さて、お次は…。距離的にエシェンバッハの所だな……。
アイツの何処となくネガティブな感じがヤなんだよね……いや、アイツもいないんだっけ……まだ。
※
エシェンバッハの大陸に着くと、何やらバカみたいに陽気な熱血漢がいた。風体からして間違いなく大魔王だ。
「だぁぁははははは~♪」
王宮の前で意味もなく笑ってる……うん、バカだ間違いない!
「さて、諸君!今年もドランドル王との頂上決戦の日時が近づいて来たぁぁ!!」
誰だ…ソレ…??
「今の処、197勝、197敗と、正に五分と五分だ!」
『『『おおおお!』』』
なんか分かんないけど、人気はありそうだ……この魔王。
「次の闘いで私は雌雄を決すると誓う!!」
いや、394回も闘って勝負が着かないのに、次で着く訳ないでしょうが……。
『ギンドバール王、ばんざぁーい!!』
『『『ギンドバール王、ばんざぁーい!!』』』
『『『ギンドバール♪ギンドバール♪』』』
「……」
なんか声援に合わせて、色々ポージングを始めたぞ、何なんだコイツ……。
てか、あのネガティブ魔王の前任者がこんなにも暑苦しいヤツだったとは……。違う意味で友達になりたくないな。
さて、誰かと闘う様な事を言ってたな……。大魔王の相手と言う事は向こうも当然大魔王の筈……。
残りはあのベルナントカとクアデムーラの前任者だが……。
順当に行けばクアデムーラの前任者って事なるな……。
てか、あの卑怯卑劣なベルナントカの筈がない!確実に!!
※
なので、クアデムーラの大陸に行ってみた。
すると、なんとも獣人族の国っぽい造りの街並みだった。
しっかりと円形闘技場迄あって年中闘技大会が開かれている処なんかも獣人族っぽい。
さてさて、ドランドルってのは何処かなぁ……てか、まず間違いなく円形闘技場だ、そこしかない!
『『『わあぁぁ~~!!』』』
闘技場内は暑苦しい程の熱気に包まれていた。ああ…ヤダ…。
恐らく、絶対、間違いなく、あの貴賓席中央に立っているヤツがドランドルだ…。
「どぁははははは~♪」
コイツも意味なく笑ってる……。
「聞けぇぇぇい!我が民達よぉぉ!……遂に、あのギンドバールと雌雄を決する時が来たぁ!!」
「……」
どうせ、同じ様な事を叫んでいるので、軽く聞き流した……。
『『『ドランドル♪ドランドル♪ドランドル♪』』』
「……」
その後の展開も同じなので再び聞き流した……。
要するに、この時代暑苦しい二人の魔王が常に闘技大会を開き捲っていた訳だ……。この二つの大陸に近づくのは金輪際よそう……。
※
最後は当然、ベルナントカの大陸だ……。アイツがいるのは解り切った事だが、そもそもアイツのせいで私はこんな処にいる訳だし……。ここは一発、パンチなりチョップなりを喰らわせておかないと精神衛生上よくなぁぁい!!
さぁぁ…何処だぁぁ~?何処にいる、ベルナントカァァ~!
悪趣味に飾り付けられた、王城の中をターゲットを求めて彷徨い歩く……。と、いたぞいたぞ、ベルナントカ~……?!
ヤツの隣に見覚えのある顔を発見した。それは人族のアイザックだった……。こんな前から……ビトルモンドの百年も前からグルだった?? てか、そんな前からこっちの世界に来てたのか、コイツは…。
て事はコイツが最初のクローン…?! それとも最初から人造人間だったのか…?!
いやいや年代的にみて、本物のアイザックかも?
残念ながら今の私は魔王眼が使えないので判別不可だ…。
何か、ベルナントカと話し合ってるぞ。どうせまた碌でもない事に決まってる…。聞き耳を立ててみれば…。
「…では、作戦の決行は半年後です」
「フフフ、遂に我が宿願が成就する時が来た…」
「お約束の方、呉々も宜しくお願い致します」
「解っておる、心配するな」
どうやら、半年後に何かやらかすつもりらしい……。
一々後を付けて話を盗み聞くのも面倒なので、魔王超演算を使って、瞬間的に二人の心を読み取る。
すると、どうやら人族の大進行作戦が半年後に行われるらしい。おかしいな、ビトルモンドとか言う人族の進行作戦は百年後じゃなかったっけ……?
だが、アイザックは確かに、半年後に決行する気だ。それも空から、数千万と言う大部隊で…。
空から…?! 例の流星雨って隕石じゃなくて、人族の大部隊なのか? いやいや、それはおかしいだろ。何処かの誰かさんが奇跡を起こして、流星雨を消し去るって話じゃなかったっけ?
何処の誰だか知らないが、幾ら何でも数千万の科学兵器を携えた大部隊を相手に何とか出来る筈がないだろう。私じゃないんだから…。私じゃ…。ええぇ~、ちょっとぉ!……私ぃ?? 何とかすんの私なのぉぉ?!
いや、冷静考えて、私しかいないじゃないか……そんな神業みたいな芸当。そもそも流星雨を消し去るって所業自体、私以外に到底出来そうもないぞ。
なんてこったい……。これからたった一人で史上最大の迎撃戦をやんなきゃなんないのかぁぁ?!
「ぐはぁあ!」
「ぐぎゃあ!」
ムカッ腹が立ったので二人にチョップを浴びせてから戻って来た。
※
さてさて、一体全体どうしたもんかな……。
取り敢えず、魔獣大陸へ戻ってあれこれ考えてみる。
てか、どうにもなんないぞ、これは…。
アイザックの作戦に依れば、全惑星規模で降下部隊が大気圏に突入して来るらしい……マジか。
全く、惑星の直径何千㎞あると思ってんだよ……とてもカバーし切れないぞ!
しかし、各大陸を巡り歩いたお陰で、最低でも大陸単位での転移は可能な訳だ……後は時間との勝負、如何に短縮するかだよねぇぇ……。
「ちょっと、精霊さん」
「のお?!」
またしても、隙を突かれた…この声はシーレだ。下を見下ろせば、彼女が笑顔で立っていた。
「よ♪」
「はふぅ……なぁに?」
「ちょっと話せない?」
「……」
しょうがない、ちょっとだけ……。私が下へ降りて行くと…。
彼女の影からゼパルちゃんが顔を見せた。
「…?!」
「ねぇ、ゼパル。精霊さんはどんな姿をしているの?」
「髪の長い女の人、スッゴクおっきな角と羽根が生えているの。それからね、服の模様が動いているの」
やられたぁ…彼女、私の正体に就いて、おおよその見当を付けてきたな。しょうがない、ホントの事を言うか…。
「貴方、精霊じゃないのよねぇ……恐らく」
「そう、私は貴方達が護っている、あの卵から生まれる魔王よ」
「やっぱり、そうなんだ……この大陸にも魔王様が」
手を上げて、彼女の言葉を遮ると…。
「…でも、それは遠い遠い未来の話、私はちょっとやそっとじゃ生まれないのよ。何しろ千年魔王なんだから」
「……千年…魔王」
「訳あって過去へ飛ばされて来たんだけど、これから大仕事をしなきゃいけないの」
「…大仕事?」
「半年後に天空から大部隊が降って来るんだけど、それを私一人で迎え撃たなきゃならないの」
「どうして?」
「私以外では手に負えない程強力な相手だから…」
「……大部隊って言ったけど…どれ位の数なの」
「数千万…魔王レベルの相手が」
「そんなの無理じゃない……どうにもならないでしょう!」
彼女の問いに無言で遠くの山を指差すと…。
そこへ爆裂魔法を撃ち込む。
凄まじい閃光と衝撃波が広がって、山が消えて無くなる。
「……ウソ…貴方がやったの?!」
「ええ、そうよ。連続で数万発撃ち込む事も出来るんだけど」
「……凄い」
「処が相手は全世界中一遍にやって来るの……どんなに強くてもそれだけの数を一度には倒せない。どうしても時間が掛かってしまうの」
「……」
「……だからその間、私の卵を護って。私が生まれる卵を」
「卵を壊されたら、どうなるの…?」
「私は生まれて来ない……多分この世界から消えてしまう」
「それは同時に貴方達の世界の終わりでもあるの……この敵は世界から魔力を消し去ってしまうつもりだから」
「魔力を消し去るって……魔力が無くなったら……命が」
「そう、命も無くなってしまう…この世界全ての」
「……解った、どんな事をしても護り抜くから」
チラッとゼパルちゃんを見て念話に切り替える。
((それから、もう一つ……この戦いで貴方は命を落とす事になるわ…))
「……どうして」
((私が生まれる未来には貴方がいないから…))
「……」
ゼパルを見るシーレ……。
「……ゼパルはいるのね」
「ええ、私の一番信頼する側近だもの」
「そう、そうなんだ」
「半年後…忘れないで」
そう言って私は二人から離れた……。
「ゼパル……これから剣の稽古付けてあげる」
「ホント、母上」
「ええ、本当よ…。貴方はこれから強くならなくてはいけないの…………誰よりも」
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