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上子村
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太郎は、いくつかあったきび団子を全部サスケに食べられました。数を把握していませんでしたが、残っていたのは奇数だったようです。サスケは喋られなくなりました。喋られなくなっても言葉はしっかりと理解できるようで、太郎が「盗み食いしたから、村に着いてからも何か手伝うこと」と言うと「キキッ!」と返事をして首を縦に何度も振りました。
この日も朝から歩き続けた太郎達は、山賊を避ける事ができ元々通るはずだった道に戻りました。その道をしばらく歩いて行くと、少しずつ民家が見えてきたので、太郎達の足取りは軽くなりました。そして、その勢いのまま進みほぼ予定通りの巳の刻に上子村に辿り着きました。この村には嵐の影響は無いようで、損壊している家などは見当たりません。上子村は海が近い村であまり人は多くなくゆったりとした時間が流れているようでした。その空気となじむようにゆっくりと歩いていると、ハナが立ち止まりました。
「太郎はん。団子の匂いがするで」
「ほんまに?」太郎は辺りを見ながら鼻をスンスンしましたが全くわかりませんでした。
「こっちや」そう言ってハナが歩き出したので、太郎とサスケは後をついて行きました。民家の横を抜けて少し歩くとハナが太郎の方を見ました。
「この家から匂いがする」
「ここか」太郎がその家を見ると白い煙がモクモクと上がっていて、何かを調理しているようでした。扉が少しだけ開いていて隙間があったので、太郎はそこから様子を見ようとしました。すると、そのタイミングで中から40歳くらいの女が出てきました。
「あら」
「あ、こんにちは」太郎は首だけ下げて挨拶しました。
「こんにちは。見ない顔やね。旅の方?」
「はい。剣の修行に」
「あ、そうなん。丁度ええわ。お団子とおはぎあるから食べていき」
「ええんですか?」
「ええよ。ご近所さんと皆で食べる為に作ってるからね。旅でお腹も空いてるやろうし」
「ありがとうございます。朝も食べてないんで助かります」太郎が頭を下げると、女は家に入って行きました。
「お前らは、少し外で待っててや。ちゃんと貰ってくるから」
「わかった。頼むで」
「キキッ」
太郎は開いている扉から中に入りました。中は割と広く、チラッと見渡してみると小槌や大槌があり、入って右手には火床がありました。太郎が何かを作る所なのかなと思っていると、女があんこのおはぎと串にささった草団子を持ってきました。
「ここに座ってゆっくりしてええよ」そう言って女はおはぎと団子が乗った皿を、腰かけられる高さの畳の上に置きました。
太郎は皿にある1本の団子を手に取ると、「この団子、外の奴らに食わしていいですか?」と女に聞きました。
「それやったら、こっちに串に刺さってない団子あるからそれあげるで。あんたは全部食べ」
「ありがとうございます」太郎がそう言うと、女はすぐに奥から団子を持ってきて、ハナたちに食べさせました。その様子を太郎は見つつ、団子とおはぎを食べました。美味しそうに食べるハナとサスケの様子を太郎が見ていると、女はお茶を2つ持ってきました。
「どうぞ」
「ありがとうございます」そう言って太郎はお茶を受け取り飲みました。女も太郎の横に座り、お茶を少し飲みました。
「さっき剣の修行言うてたけど、用があるのは道場なんか?」
「はい、そうです。松川殿に会いに来ました」
「そうか。あの男知ってんの?」
「いえ、名前しかわかりません」
「せやったら、忠告しといたる」
「え?」
「道場開いて、入門したモンをいじめて楽しんどったいう噂や。威張り散らしてる性格の悪い男や言うて、弟子になってたモンはみんな辞めてしもうた。今は道場に1人しかおらへん。せやから、もうすぐこの村を出て行くらしいわ」
「そうなんですか」太郎は持っていた湯呑を置きました。
「せや。そんな男に会うて意味あるんか?」
「性格の事はようわかりません。でも、師範が会ってこいと言うからには理由があるはずです。剣の腕が良いのであれば会う意味はあります」
「なるほどなぁ。立派な理由や。道場はそこを出て左に歩いて行けばある。遠ないし、迷う事もないはずや」
「何から何までありがとうございます」そう言って太郎は立ち上がりました。「会うた事もないのにこんなに良うしてもうて」
「いえいえ。ちょっとでも喜んでくれたらこっちも嬉しいからな。頑張って修行してき」
女と太郎は外へ出てました。「お前らもお礼しーや」太郎はハナとサスケに言いました。
「キキッ」とサスケが言い「ごちそうさんでした」とハナが言いました。
「おりこうさんやねぇ」と女はしゃがんでハナたちに言いました。
「え、驚かないんですか?」太郎が聞きます。
「何を?」
「犬が喋ったんですよ?」
「喋った?キキッとワンワン言うただけやないの」
「え・・・?ちょっと、ハナ何か喋ってみて」
そう言われたハナは「さっきの粉のかかった団子もっと食べたい」と言いました。
女は怪訝な顔をして「ワンワン言うてるだけにしか聞こえんけど、何か言うてんの?」と太郎に聞きました。
「・・・いえ、何かオレの勘違いやったみたいです。変な事言うてすみません」
太郎はもう1度女に礼を言うと道場へ向けて歩き出しました。
この日も朝から歩き続けた太郎達は、山賊を避ける事ができ元々通るはずだった道に戻りました。その道をしばらく歩いて行くと、少しずつ民家が見えてきたので、太郎達の足取りは軽くなりました。そして、その勢いのまま進みほぼ予定通りの巳の刻に上子村に辿り着きました。この村には嵐の影響は無いようで、損壊している家などは見当たりません。上子村は海が近い村であまり人は多くなくゆったりとした時間が流れているようでした。その空気となじむようにゆっくりと歩いていると、ハナが立ち止まりました。
「太郎はん。団子の匂いがするで」
「ほんまに?」太郎は辺りを見ながら鼻をスンスンしましたが全くわかりませんでした。
「こっちや」そう言ってハナが歩き出したので、太郎とサスケは後をついて行きました。民家の横を抜けて少し歩くとハナが太郎の方を見ました。
「この家から匂いがする」
「ここか」太郎がその家を見ると白い煙がモクモクと上がっていて、何かを調理しているようでした。扉が少しだけ開いていて隙間があったので、太郎はそこから様子を見ようとしました。すると、そのタイミングで中から40歳くらいの女が出てきました。
「あら」
「あ、こんにちは」太郎は首だけ下げて挨拶しました。
「こんにちは。見ない顔やね。旅の方?」
「はい。剣の修行に」
「あ、そうなん。丁度ええわ。お団子とおはぎあるから食べていき」
「ええんですか?」
「ええよ。ご近所さんと皆で食べる為に作ってるからね。旅でお腹も空いてるやろうし」
「ありがとうございます。朝も食べてないんで助かります」太郎が頭を下げると、女は家に入って行きました。
「お前らは、少し外で待っててや。ちゃんと貰ってくるから」
「わかった。頼むで」
「キキッ」
太郎は開いている扉から中に入りました。中は割と広く、チラッと見渡してみると小槌や大槌があり、入って右手には火床がありました。太郎が何かを作る所なのかなと思っていると、女があんこのおはぎと串にささった草団子を持ってきました。
「ここに座ってゆっくりしてええよ」そう言って女はおはぎと団子が乗った皿を、腰かけられる高さの畳の上に置きました。
太郎は皿にある1本の団子を手に取ると、「この団子、外の奴らに食わしていいですか?」と女に聞きました。
「それやったら、こっちに串に刺さってない団子あるからそれあげるで。あんたは全部食べ」
「ありがとうございます」太郎がそう言うと、女はすぐに奥から団子を持ってきて、ハナたちに食べさせました。その様子を太郎は見つつ、団子とおはぎを食べました。美味しそうに食べるハナとサスケの様子を太郎が見ていると、女はお茶を2つ持ってきました。
「どうぞ」
「ありがとうございます」そう言って太郎はお茶を受け取り飲みました。女も太郎の横に座り、お茶を少し飲みました。
「さっき剣の修行言うてたけど、用があるのは道場なんか?」
「はい、そうです。松川殿に会いに来ました」
「そうか。あの男知ってんの?」
「いえ、名前しかわかりません」
「せやったら、忠告しといたる」
「え?」
「道場開いて、入門したモンをいじめて楽しんどったいう噂や。威張り散らしてる性格の悪い男や言うて、弟子になってたモンはみんな辞めてしもうた。今は道場に1人しかおらへん。せやから、もうすぐこの村を出て行くらしいわ」
「そうなんですか」太郎は持っていた湯呑を置きました。
「せや。そんな男に会うて意味あるんか?」
「性格の事はようわかりません。でも、師範が会ってこいと言うからには理由があるはずです。剣の腕が良いのであれば会う意味はあります」
「なるほどなぁ。立派な理由や。道場はそこを出て左に歩いて行けばある。遠ないし、迷う事もないはずや」
「何から何までありがとうございます」そう言って太郎は立ち上がりました。「会うた事もないのにこんなに良うしてもうて」
「いえいえ。ちょっとでも喜んでくれたらこっちも嬉しいからな。頑張って修行してき」
女と太郎は外へ出てました。「お前らもお礼しーや」太郎はハナとサスケに言いました。
「キキッ」とサスケが言い「ごちそうさんでした」とハナが言いました。
「おりこうさんやねぇ」と女はしゃがんでハナたちに言いました。
「え、驚かないんですか?」太郎が聞きます。
「何を?」
「犬が喋ったんですよ?」
「喋った?キキッとワンワン言うただけやないの」
「え・・・?ちょっと、ハナ何か喋ってみて」
そう言われたハナは「さっきの粉のかかった団子もっと食べたい」と言いました。
女は怪訝な顔をして「ワンワン言うてるだけにしか聞こえんけど、何か言うてんの?」と太郎に聞きました。
「・・・いえ、何かオレの勘違いやったみたいです。変な事言うてすみません」
太郎はもう1度女に礼を言うと道場へ向けて歩き出しました。
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