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逃げてきた男
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太郎の返答を聞いた吉之助は再び座り、「3日で作りましょう。柄と鞘はその刀のモンを使われますか?」と言いました。
「ええ、これでお願いします」太郎は刀を吉之助に渡しました。
吉之助が刀を受け取った時、いきなりマルが鳴きました。太郎はビクッとなりましたが、他の3人は全く動じませんでした。
「餌くれと言うとるんでしょう。はつ、いつものをあげなさい」吉之助は言いました。
「はい」はつは返事をすると奥へ行き、椀に入った穀物を持ってきました。吉之助の前にその椀を差し出すと、吉之助は穀物をひと掴みしマルの前に出しました。するとマルは勢いよく食べだしました。
「ハヤブサは鳥やネズミなどを食べると聞きますが、コイツは小さい鳥が食べるようなモンも食べるんです。粥にする為に置いてあったモンを食べてみたら口にあったんでしょう」吉之助はマルを見つめながら言いました。
「太郎、稽古だ」餌を食べるマルの様子を太郎が見ていると一斉が言い、扉から出ていきました。
「では、3日後に」そう言うと太郎も一斉の後を追いました。
外にいたハナとサスケも合流し道場に向かって歩いていると、前から男が走ってきました。男は太郎達の前まで来ると、地面に膝をつき四つん這いの体勢になりました。呼吸は激しく汗はポタポタと落ち、土の色を変えていきます。
「なんやあんたは」一斉が見下ろしながら言いました。
「あ・・・お、お・・・」男はなかなか声を発せず、表情は恐怖に染まっています。
一斉はしゃがみ込み、男の肩に両手を置きました。「慌てるな。息をゆっくり吐け」
そう言われた男は咳こみながらも息を吐き、一斉に促されながら3度深呼吸をし少し落ち着きを取り戻しました。
「話せるか?」一斉が男に聞きました。
男は頷くと一斉の目を強く見つめて、「鬼に・・・襲われました」と言いました。
驚いた太郎はしゃがみ込み男と目線を合わせました。「どこに、鬼が出たんですか!?」
「一ノ江村・・・です」
「あの村には漁師と農家しかおらんはず。誰も戦えん。他の街や村には助けを求めてるんか?」一斉が聞きました。
「わかりません・・・。遠くから鬼がひ、人を殺してるのを・・・見て、逃げてきた」
「太郎!急いで道場戻るぞ!」一斉は走り出しました。
「松川殿!」太郎も後を追い走り2人は道場へ戻ってきました。
「支度が出来たらオレは一ノ江村に向かう。お前は刀が完成するまではここを守れ」一斉は言いました。
「1人で鬼と戦うのは無茶です!」
「見くびられたモンやな。それに、他にも助けを求めに行ってるんやったら1人やない可能性はある」
「でも!あの男だけの可能性もあります!」
「なら、オレが行かんと誰も抵抗できず皆殺しにされるんとちゃうか」
「・・・」太郎の頭に母の記憶がよみがえります。逃げ惑う人たち。燃える家。倒れた父と目の前に現れた赤い鬼・・・。
「お前はここを守れ。今は木刀しかないから無理はするな。真剣が完成し、この村に変化が無ければ追って来い。ええな」
一斉は簡単な準備を済ませるとすぐに出発しました。太郎は一斉を見送ると道場に戻り木刀を振りました。今できる事は、ただ己を鍛えることだけでした。ハナとサスケも戦う気は十分で、それぞれで特訓したり、お互いに組み合ったりして鍛錬をしました。その間、村は静かでいつもと変わらない時間が流れました。
そして、吉之助と約束をした日がやってきました。
「ええ、これでお願いします」太郎は刀を吉之助に渡しました。
吉之助が刀を受け取った時、いきなりマルが鳴きました。太郎はビクッとなりましたが、他の3人は全く動じませんでした。
「餌くれと言うとるんでしょう。はつ、いつものをあげなさい」吉之助は言いました。
「はい」はつは返事をすると奥へ行き、椀に入った穀物を持ってきました。吉之助の前にその椀を差し出すと、吉之助は穀物をひと掴みしマルの前に出しました。するとマルは勢いよく食べだしました。
「ハヤブサは鳥やネズミなどを食べると聞きますが、コイツは小さい鳥が食べるようなモンも食べるんです。粥にする為に置いてあったモンを食べてみたら口にあったんでしょう」吉之助はマルを見つめながら言いました。
「太郎、稽古だ」餌を食べるマルの様子を太郎が見ていると一斉が言い、扉から出ていきました。
「では、3日後に」そう言うと太郎も一斉の後を追いました。
外にいたハナとサスケも合流し道場に向かって歩いていると、前から男が走ってきました。男は太郎達の前まで来ると、地面に膝をつき四つん這いの体勢になりました。呼吸は激しく汗はポタポタと落ち、土の色を変えていきます。
「なんやあんたは」一斉が見下ろしながら言いました。
「あ・・・お、お・・・」男はなかなか声を発せず、表情は恐怖に染まっています。
一斉はしゃがみ込み、男の肩に両手を置きました。「慌てるな。息をゆっくり吐け」
そう言われた男は咳こみながらも息を吐き、一斉に促されながら3度深呼吸をし少し落ち着きを取り戻しました。
「話せるか?」一斉が男に聞きました。
男は頷くと一斉の目を強く見つめて、「鬼に・・・襲われました」と言いました。
驚いた太郎はしゃがみ込み男と目線を合わせました。「どこに、鬼が出たんですか!?」
「一ノ江村・・・です」
「あの村には漁師と農家しかおらんはず。誰も戦えん。他の街や村には助けを求めてるんか?」一斉が聞きました。
「わかりません・・・。遠くから鬼がひ、人を殺してるのを・・・見て、逃げてきた」
「太郎!急いで道場戻るぞ!」一斉は走り出しました。
「松川殿!」太郎も後を追い走り2人は道場へ戻ってきました。
「支度が出来たらオレは一ノ江村に向かう。お前は刀が完成するまではここを守れ」一斉は言いました。
「1人で鬼と戦うのは無茶です!」
「見くびられたモンやな。それに、他にも助けを求めに行ってるんやったら1人やない可能性はある」
「でも!あの男だけの可能性もあります!」
「なら、オレが行かんと誰も抵抗できず皆殺しにされるんとちゃうか」
「・・・」太郎の頭に母の記憶がよみがえります。逃げ惑う人たち。燃える家。倒れた父と目の前に現れた赤い鬼・・・。
「お前はここを守れ。今は木刀しかないから無理はするな。真剣が完成し、この村に変化が無ければ追って来い。ええな」
一斉は簡単な準備を済ませるとすぐに出発しました。太郎は一斉を見送ると道場に戻り木刀を振りました。今できる事は、ただ己を鍛えることだけでした。ハナとサスケも戦う気は十分で、それぞれで特訓したり、お互いに組み合ったりして鍛錬をしました。その間、村は静かでいつもと変わらない時間が流れました。
そして、吉之助と約束をした日がやってきました。
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