前世の記憶を持つセミの幽霊と少年の夏

なおちか

文字の大きさ
4 / 9

夏休み開始!

しおりを挟む
俺は洸の言葉を聞いていたから、色んな所に行きたいと思ってたことを知ってる。

去年の夏入院して遊べなかった時、来年は元気になってるからたくさん遊びに行こうなんて親と計画を立てていたのかもしれない。それを励みに頑張ってきたのかもしれない。

その思いを果たす事が出来れば洸の魂はあの世に行けるかもしれない。

俺の「夏の思い出作らないか?」っていう提案に洸は、「作る!作りたい!」と悩む事なく元気に返事した。

そんな洸を見ると俺も嬉しくなって、「よし!行こう!」って元気に羽をパタパタさせて洸の前を飛び回った。

こうしてセミの幽霊と人間の幽霊の夏休みが始まった。

この街の事は知らなかったけど、高く飛んで見渡せば遊園地とかプールとか見つかるんじゃないかと思って俺は飛び上がった。

10メートル上がったところで後ろを見ると洸がいない。下を見ると洸は口をポカンと開けて見上げて立っていた。

「洸?どうした、行かないのか?」俺は戻って来て洸に言った。

「飛べないよ。」

「幽霊って浮けるんじゃないの?ジャンプしてみな?」

洸が飛ぼうとすると、足は地面から離れるが、頭の位置は変わらない奇妙なジャンプだった。何度飛んでみても同じで、透明な板が頭の上にあるようだった。

「無理か。じゃあ、俺が飛んで何か見つけてくるから。」俺はそう言って飛ぼうとした時、洸が両手で俺のお腹をつまんだ。

「僕も飛びたい」洸は真っ直ぐな目で見つめてきた。俺はこの目に弱い。

でも、さすがにセミが人間を持ち上げるのは不可能だ。精一杯頑張ってる姿を見せて無理なら諦めてくれるだろう。

そう考えて俺は飛んだ。浮いた。全く重さを感じないまま昇っていける。

洸は「うわー」とか「すごい」とか言って興奮してた。

「洸!腕、辛くないか?」俺は一応確認した。

「全然大丈夫!片手の指1本でもいけるよ!」

その言葉を聞いた俺は高く舞い上がった。

世界中のセミがこんな高さまで来た事ないだろう。真っ白な雲を突き抜けて前進していく。

下を見ると車が米粒よりも小さく見える。青白い空がどこまでも続いていて地球はとてつもなく広い事を実感した。

「あ!前!」洸が突然叫んだ。

上や横を見てた俺がその声で前を見ると、大きな飛行機が向かって来ていた。

「うわあああああ」と1人と1匹が叫び、その声と同時に飛行機は抜けて行った。

一瞬の間があって俺たちは笑った。

透けていくのがわかってるはずなのにめちゃくちゃ怖くて、その後来る安堵感が面白くてしばらく笑い続けた。

洸がまたやりたいと言うのでそれから飛行機を探したけど、遠くに1機見ただけで同じ体験は出来なかった。

幽霊はワープする事は出来ないし、移動速度も走る速さくらいまでが限界で、「飛行機貫通ゲーム」が出来るかどうかは運次第だった。

そうやって空を飛び回っていると、前方に観覧車が見えた。すぐ横にはジェットコースターも見える。

これは!と思って近付いてみると、プールも併設された遊園地があった。

「洸!遊園地もプールもあるぞ!どっち先に行きたい?」俺は聞いた。

「プール見に行きたい!」

「よし!まずはプールだ!」俺は全力で突っ込んで行って飛び込んでやろうと思ったけど、水面が近付いてきた時、洸が叫んだ。

「ちょっと待って!」俺は水面ギリギリで浮き上がりプールサイドに着地した。

「なんだどうした?」

「泳げないから怖くて…。」

「おいおい。プールに行きたいんじゃなかったのか?俺たちは貫通できるんだぜ?無敵だぞ。それに、息しなくていいから苦しくない」

「それはわかってるんだけど…。」

「溺れた事でもあるのか?」俺はまた洸の右肩に止まった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...