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最後の笑顔
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「洸、お父さんとお母さんに触れたいなら触れていい。」俺は言った。
「ダメだよ!僕が触ったらボロボロになっちゃうんでしょ?」
「うん。たぶん。だけど、また話せるようになる。」
「ホントに?」
「魂を引っ張り出せば、2人と洸は会って話せる。」
「ずっと一緒にいられるの?」
「それはわからない。どれくらいの時間3人でいられるかは。」
もし魂を抜き出す事が出来るなら、洸は両親とまた会う事が出来る。だけど、すぐに陰キャゼミみたいに成仏してしまう可能性が無いとは言えない。
それに、魂を抜き出せば、洸の両親は死ぬ。そんな事はわかってるけど、きっと洸は両親と会いたい、話したい、抱きしめて欲しいと思ってる。
だから洸はまだここにいるんだ。夏の思い出なんかよりも欲しいものがあるんだ。もし両親がすぐに成仏したとしても、この世界に両親がいなくなれば洸も成仏できると思う。
「洸、1階に降りよう。」
俺がそう言うと、洸は小さく頷いて歩き出した。扉をすり抜け階段を降り、また2人がいるリビングに行った。
2人を前にして正直俺はちょっと戸惑った。洸の為って思うけど、それが正しいのかわからないし、うまくいく保証もない。それに2人を殺してしまう可能性がある。
それでも、両親の憔悴した姿や成仏できない洸を見ると、きっとこれが正しいんだって思った。3人がまた一緒になれれば成仏できなかったとしても幸せだろうって。
洸が俺の方を見たから、俺は全身を使って頷いた。洸はゆっくりと歩き出し、母親の座る椅子の横に立った。そして右手を伸ばし触れようとした時、その手はピタっと止まり、その後ゆっくりと体の横に下りた。
「洸…?」
「セミさん…。」洸は背を向けたまま続けた。「セミさんは、生まれ変わったって言ってたよね?人間だったって言ってたよね?」
「うん」
「人間は、人間に生まれ変わる事は出来る?」
わからない。俺が次何に生まれ変わるのかもわからない。
「ねぇ、セミさん!」
知らない。わからないことだらけなんだ。
「僕はまた、人間になれる!?」
もしそうなれば、俺も嬉しいよ。
「また、お父さんとお母さんの子供に生まれたい!」
こちらを振り向いた洸の目は赤くなっていたけど、強い決意のような大きな思いを感じた。
そうか。一緒に死ぬ事じゃなく、また一緒に生きたいって思ったのか。こっち側じゃなくて、あっちの世界でまた生きたいって思ったんだな。
俺は、洸を成仏させてあげる事しか考えてなかった。魂があの世に行かなくちゃいけないなら、3人まとめてなんて酷いこと考えてたもんだ。
何もわからないし、幽霊に詳しくも無いし、生まれ変わりもよくわからない。でも、洸が望んでるようになってほしいと俺は思った。
「洸、なれるよ。またお父さんとお母さんの子に。」
「ホントに!?」
「うん。だって、洸がこんなにも強く願ってて、お父さんとお母さんは、こんなにも辛くて悲しいって思って、洸に会いたくて会いたくて仕方がないんだ。絶対に大丈夫。またここに戻って来れる。」
洸は笑った。その笑顔と同時に涙が落ちて、その涙は床に落ちるとスーッと消えた。涙が成仏したみたいだった。
そして洸はまた振り返ってお母さんの方を向いた。洸が両手を伸ばそうとした。
「ダメだよ洸!」俺は叫びながら洸の方へ飛んだ。
「あ、そうだ。抱きつこうとしちゃった。」そう言うと、洸は父親の前まで移動し、しゃがみ込んで顔をしばらく見ていた。
無言のまま数分が過ぎた時、何かを決意したように立ち上がると、洸は2人の丁度真ん中くらいに移動した。左右を見てブツブツ言いながら微調整して、父と母と同じ距離のポイントを見つけたようだった。そして、
「お父さんもお母さんもどっちも大好き。」洸は満面の笑みで言った。
「え?」両親が2人とも声を合わせ立ち上がった。
2人の反応にびっくりして、俺も「え?」ってなった。
「洸?いるのか」父親はそう言って部屋を見回した。母親も同じように壁や天井を見た。
だけど、洸はもういなくなってた。俺には何も言わずにあいつは消えた。まったく、最近の若いモンは礼の1つも言えんのかって思ったよ。いい顔で消えやがってよ。
「ダメだよ!僕が触ったらボロボロになっちゃうんでしょ?」
「うん。たぶん。だけど、また話せるようになる。」
「ホントに?」
「魂を引っ張り出せば、2人と洸は会って話せる。」
「ずっと一緒にいられるの?」
「それはわからない。どれくらいの時間3人でいられるかは。」
もし魂を抜き出す事が出来るなら、洸は両親とまた会う事が出来る。だけど、すぐに陰キャゼミみたいに成仏してしまう可能性が無いとは言えない。
それに、魂を抜き出せば、洸の両親は死ぬ。そんな事はわかってるけど、きっと洸は両親と会いたい、話したい、抱きしめて欲しいと思ってる。
だから洸はまだここにいるんだ。夏の思い出なんかよりも欲しいものがあるんだ。もし両親がすぐに成仏したとしても、この世界に両親がいなくなれば洸も成仏できると思う。
「洸、1階に降りよう。」
俺がそう言うと、洸は小さく頷いて歩き出した。扉をすり抜け階段を降り、また2人がいるリビングに行った。
2人を前にして正直俺はちょっと戸惑った。洸の為って思うけど、それが正しいのかわからないし、うまくいく保証もない。それに2人を殺してしまう可能性がある。
それでも、両親の憔悴した姿や成仏できない洸を見ると、きっとこれが正しいんだって思った。3人がまた一緒になれれば成仏できなかったとしても幸せだろうって。
洸が俺の方を見たから、俺は全身を使って頷いた。洸はゆっくりと歩き出し、母親の座る椅子の横に立った。そして右手を伸ばし触れようとした時、その手はピタっと止まり、その後ゆっくりと体の横に下りた。
「洸…?」
「セミさん…。」洸は背を向けたまま続けた。「セミさんは、生まれ変わったって言ってたよね?人間だったって言ってたよね?」
「うん」
「人間は、人間に生まれ変わる事は出来る?」
わからない。俺が次何に生まれ変わるのかもわからない。
「ねぇ、セミさん!」
知らない。わからないことだらけなんだ。
「僕はまた、人間になれる!?」
もしそうなれば、俺も嬉しいよ。
「また、お父さんとお母さんの子供に生まれたい!」
こちらを振り向いた洸の目は赤くなっていたけど、強い決意のような大きな思いを感じた。
そうか。一緒に死ぬ事じゃなく、また一緒に生きたいって思ったのか。こっち側じゃなくて、あっちの世界でまた生きたいって思ったんだな。
俺は、洸を成仏させてあげる事しか考えてなかった。魂があの世に行かなくちゃいけないなら、3人まとめてなんて酷いこと考えてたもんだ。
何もわからないし、幽霊に詳しくも無いし、生まれ変わりもよくわからない。でも、洸が望んでるようになってほしいと俺は思った。
「洸、なれるよ。またお父さんとお母さんの子に。」
「ホントに!?」
「うん。だって、洸がこんなにも強く願ってて、お父さんとお母さんは、こんなにも辛くて悲しいって思って、洸に会いたくて会いたくて仕方がないんだ。絶対に大丈夫。またここに戻って来れる。」
洸は笑った。その笑顔と同時に涙が落ちて、その涙は床に落ちるとスーッと消えた。涙が成仏したみたいだった。
そして洸はまた振り返ってお母さんの方を向いた。洸が両手を伸ばそうとした。
「ダメだよ洸!」俺は叫びながら洸の方へ飛んだ。
「あ、そうだ。抱きつこうとしちゃった。」そう言うと、洸は父親の前まで移動し、しゃがみ込んで顔をしばらく見ていた。
無言のまま数分が過ぎた時、何かを決意したように立ち上がると、洸は2人の丁度真ん中くらいに移動した。左右を見てブツブツ言いながら微調整して、父と母と同じ距離のポイントを見つけたようだった。そして、
「お父さんもお母さんもどっちも大好き。」洸は満面の笑みで言った。
「え?」両親が2人とも声を合わせ立ち上がった。
2人の反応にびっくりして、俺も「え?」ってなった。
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