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49、おっチャンは……。

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2つのタマゴにヒビが入った時、
ガァーちゃんとガァーちゃんの番の
黒い竜がいた。
俺たちはガァーちゃんたちの邪魔に
ならないように、そっと見ていた。
大きなタマゴは、音をたてながら
少しずつ割れていき、中にいる竜が
動いているのがわかる位になってきた。
ガァーちゃんと黒い竜は、ずっと見守り
殻が割れるのを見守っていた。
時折、割れるのを手伝おうとした
ガァーちゃんが母竜としてなのか
夫を叱る妻のように、尻尾でバシッと
した後、グルルル…と威嚇するように
何か言っていた。
見守るだけの父、ガァちゃんは、
オロオロしながらも殻が割れるたび
嬉しそうにしていた。
最後の一欠片を頭から取り除いた子竜は
母竜に似た黒竜、お尻についた欠片を蹴り
よろめいたのはガァちゃんに似た濃い目の
赤い子竜だった。
大きさ的には大人の猫位の大きさだが、
羽をパタパタさせ、大きな目、しっかりした足は
立派な竜であり、尻尾も大きく立派だった。
ガァーちゃんと母竜に甘える姿は可愛すぎて
見飽きなかった。
声をかけられた俺たちは、食欲のそそる
いい香りにお腹が空いたことに気づかされ
ふかふかのパンにスープ、サラダと何かの
お肉を堪能していた。
「あと数日で子竜は飛べると思うが、皆は
どぉする?」
いきなりハロルドは皆に問いかけできたのだった。
「ここまで来たし、せっかくだから私は
最後まで付き合うよ。」
ピロロ団長もナバナ団長の言葉に頷き
1人もかけずに、最後まで魔王のもとに
子竜が飛べるまで見守ったのだった。
                ***
「さあ、サボった分働け!!」
少なくとも帰ってきたハロルドの溜まりに
溜まった仕事がへるはずもなく、
少なくとも1週間は執務室に篭ることになった。
その間、ナオキはガァーチャンの赤ちゃん竜、
名前はキューちゃん…を見ていた。
父竜としてのガァーちゃんはハロルドさんに
似ているのが、過保護すぎたのだった。
例えば、飛び方が危ういキューちゃんが
一メールもない高さから、ポテッと
地面に落ちた事が何度かあったのだが、
その度、ガァーちゃんが助け起こそうと
していたのだ。
2~3回目まではキューちゃんも父竜から
かまってもらえたからか喜んでいたのだが
だんだんと自我が芽生えたのか、母竜の
血も受け継いでるからか、助けに来ようとする
ガァーちゃんに威嚇する様になったのだ。
言葉はわからないが、明らかにショックを
受けているガァーちゃんを慰めたり
ちゃんと飛べたキューちゃんを一緒に
褒めたりしているうちに、ハロルドさんが
いない間も楽しく、また忙しい毎日を
過ごしていたのだった。

ハロルドは寝る暇を惜しみながらも
早く逢いたい一心で仕事を片付けていた。
「ナオキ……。」
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