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第2話 非日常へ

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筋肉モリモリの、たくましい男性に、
口と、手をしっかり抑えられ、馬車に
乗せられました。
逃げれない。
一応、無駄な抵抗も、試みましたが、
やはり、無駄で、手も、縛られは
してないけど、しっかりとした、
筋肉モリモリの手に掴まれてます。
両隣と目の前に一人、筋肉質の
男性三人に、囲まれました。

これから、私は、どうなるんだろ?
男の子に、間違えられてれば、貞操の
危機は、まだ薄まる?
相手が変態、変質者じゃなければ、
大丈夫かなぁ。
日頃から、この格好で、良かったかも?
でも、怖い、顔上げれない。

「泣かないで下さい。ただ、叫ぶのは、
やめて下さい。お願いします。」
恐々、男性を見上げると、一瞬、はっと
した表情で、にっこり笑ってくれました。
お父さんに似た、ステキな笑顔。
でも、この人は、優しい笑顔だけど、
人さらいだわ。ダメダメ。
私は、首を振ろうとしましたが、
出来ませんでした。
頷く事も出来ず、手も動かせない。
見上げれたのが、奇跡的なくらいでした。
なんだか、また、泣けてきた。

「隊長、泣いてますよ。呼吸しにくそうだし
外してあげては、どうですか?」
「あぁ。すまない。本当に、叫ばないで、
下さいね。」
力が緩むと、必死に首を、縦に振りました。
「もう、逃げれませんよ。あと、
数日後ですから、覚悟してください。」

なにが、数日後?
私を売る日?
馬車を、降りる瞬間…。逃げれないよね。
私より、力強いし、走るのも、早いよね。
死んだフリ?病気のフリ?
通じないよね。ダメ、涙止まらないわ。
どうしよう。恐い。

「隊長、力強いから、あーぁ、可愛そうに、
かわいい顔に、手の跡が、あーぁ。」
「大丈夫ですか?」
左端の方と、目の前の人は、隊長さんを、
おちょくるように、言っていた。
2人とも、カラダを鍛え上げたように、
力強い人だった。
「すまない。思ったより、柔らかな
ほっぺで、力、入れすぎた。すまん。」

「柔らかなほっぺ?あっ本当だ。プニプニ
気持ちいい、ほっぺ、いいね。」
二人に、ほっぺをぷにぷに、
つんつんされてました。
「おい、お前ら、失礼な事はやめろ。」
「えー、ずっと触ってるの、隊長だけ
ずるーい。今も、手握ったままだし、
そーゆー趣味だったんだ。」
「そーゆー趣味。隊長、やーらし。」
「う、うるさい、これは、安全の為、
逃げないようにだ。」
私の手をブンブン振り回して、痛い。
身長差もあり、釣り上げられたような
状態に、なり、私の体制が、崩れ、
隊長さんの、ひざの上に、座る形に、
なってしまいました。

「ご、ごめんなさい。」
しばらく、固まっていた隊長さんは、
「揺れるから。危ないから。着くまで、
ここにいたらいい。」
「「はっ?」」
「隊長。やはり……。」
……。
「違う、何を、勘違いしてるだ。」
「俺は、やましい気持ちはなく、
じゅ、純粋な気持ちで、危ないから、
安全の為、そうだ、安全確保の為
俺の膝に、乗せてるだけだ。」
「うわぁー。」
「隊長、色々、アウトです。」
「ち、違う。第一、この方は…。」
「この方は?」
「このお方は、男だ。」
護衛の、2人は、気まづい顔をしていました。

しばらく、隊長さんのひざの上に座らされ
手は前で繋がれた状態で、いました。
好みの男性に、されていれば、ドキドキの
状況でしたが、実際には、
売られるか、売られないかの、瀬戸際で、
複雑な心境、その上、私は、
ガチガチに緊張した状態です。

それなのに、前夜は、仕上げ作業して、
朝早くから、教会で売り子をしていたので、
眠くなりました。
ガタガタガタガタ……。

規則正しい馬車の揺れと音。
久々の、人の温もりと心臓の音。
いつのまにか眠ってしまいました。
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