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14、3日後

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"後日迎えに来る"
という言葉、明日、明後日、1週間?
数年単位?引っかかる言葉に、
普段は、おとなしいフィリーが
泣きながらライトに問いかけた。
「上辺だけの言葉はいりません。
私のことが、気に入らなければ、
そのまま捨ておいてください。」
「……ち、ちがっ。」
「あやふやな言葉で、待ち続けるのは
もう不安で、苦しくて、嫌なんです。
はっきり、おっしゃって下さい。
私の事が、お嫌いっておっしゃって下さい。」
「フィリーお嬢様が、好きだ。
俺は、フィリーお嬢様を愛してる。
一目惚れしたのは君…フィリー
君だけなんだ!!」
叫ぶように、ライトはフィリーを
抱き締めていた。

両家の両親たちが話し合った結果
2日後ライトはフィリーを迎えに行き
婚姻証書を、両家とともに教会に
提出し受理されたのだった。

田園地帯を抜けた先に大きな屋敷。
薔薇を模したような飾りのある鉄柵。
広い庭園に、植えたばかりのような
可憐な色とりどりの小さな花の苗。
形よく剪定された植木がバランスよく
庭園には、お洒落なガーデニング
テーブルやチェアーなどが配置されていた。

ライトのエスコートでフィリーは
馬車から降りた。
「ようこそ、おいでくださいました。
旦那様、奥様。」
「あ、ありがとうございます。」
「奥様、私どもに頭を下げないで下さい。」
出迎えてくれた執事がかしこまって言い、
大きな屋敷の大きな扉の向こうへいざなった。
玄関ホールには、使用人が並び
ライトとフィリーを出迎えてくれたのだった。
「旦那様、奥様お疲れ様です。
お食事の準備とお湯の準備も整っています。」
屋敷の中は眩いくらいのあかりと、
両脇に飾られた可愛い花たちの
甘い香りと、お腹をくすぐるような
いい香りが部屋の奥から、漂っていた。
「フィリー、先にお風呂に入るか?」
「えっ?」
婚姻の儀式が終えた2人は、先日の様に
婚姻の衣装を身につけていた。
日差しは柔らかい1日だったが、
いつもよりしっかりした服装、
緊張からか汗ばむ馬車。
数時間馬車で揺られ、少し疲れていた
フィリーは、今夜が初夜だということを
思い出してしまったのだ。
「ひ、1人で入れます!!」
「……。」
ライトの驚いた顔をみたフィリーは、
初夜は旦那様にお任せしなさいと
言う母からの教えを思い出したのだった。
「す、すみません。ラ、ライト様の
お好きなように、洗って下さいませ。」
「ブホッ、ゴホッ、ゴホッ。」
突然の言葉にライトは、まだ何も
飲まないうちからむせてしまったのだ。
「だ、大丈夫ですか?ライト様。」
心配する様に寄り添うフィリー。
ライトとフィリーの身長差から、
押し付けられたフィリーの胸から
目を晒してしまった。
(流行りのドレスは、胸回りが
大きく、谷間をのぞかせている
タイプのドレスだった。)

「た、食べる、食べてから、
お、俺と……。」
「…不束者ですが、よろしくお願いします…
あ、ア、ナ、タ…。」
「う"っ!」

2人のやり取りに生暖かい目が
注がれ、同時に安心する使用人一同だった。

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