R18 異世界で恋戦鬼

カヨワイさつき

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プロローグ

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「ねーちゃん、今までありがとう。」
「親代わりであり、ねーちゃんであり、
口うるさくて、つい反発ばっかりしたけど、
感謝してます。ありがとう。
これからもよろしく。」

私、木村七緒29歳は、弟のムカつくような、
可愛くない言い方なのに
思わず、うるうるしてしまいました。

「早く、前のを忘れて新しい男
たくさん作ってね~。」
えっ?

「前の人、男?いないよ?男友達はいたけど、
彼氏できた事ないわよ。しかも彼氏とかは、
たくさんはいらないかな?」
「ねーちゃん……。」
弟が盛大にため息をついた。

「あんたねぇ~明日結婚式なのに、ため息
つかないようにしなさいよ~。あと、
好きな人は一人でいいし、彼氏いたことないよ。
こんなチビで、ぶっさいくなのは誰も
相手してくれないよ。」

「前の男うじゃうじゃいたじゃん。ねーちゃん、
わかってないなぁ。かわいそうに。」

女扱いじゃなくて、ゲームの話や好きな
アイドルの話、下ネタまで平気でする友達。

変に気を使わないから楽だけど、たまには
大人の包容力ある人に、頼りたいし、
後ろからぎゅーって抱きしめられたい。

はぁ~あっ、ため息ついちゃった。
弟にバレてない。ヨシっ。

「ねーちゃんと俺、同じような顔の作りで、
童顔だし、下手したら10代にみられるよ。
さっき俺に言ってんのに、ねーちゃんも、
ため息ついてるじゃん。」

…ため息、バレてた。

「身内びいき、欲目だよ。ありがと。
お世辞でも嬉しいわ。」

「ちげーって、マジで。ねーちゃんは…。」
「ハイハイありがと。」


弟の七海(ななみ)21歳が
明日結婚式をします。

派遣先で知り合った25歳の愛ちゃんを、
妊娠させてしまった。

"好きだからしょうがない。"
"恋は止められない。"
2人に言われ、好きならいいっかぁって
私は思ったんだけど、愛ちゃんの両親には
かなり反対されました。

正社員の愛ちゃんはギリギリまで働くらしく
産休を取る予定だそうです。

童顔の七海は派遣社員。
これが一番の反対理由にされました。

あとはうちには、両親がいない事。
10年前交通事故でなくなってしまいました。

私たちは、頼れる親戚もおらず、
高校卒業後、私はバイトを掛け持ちし、
今ではファミレスのバイトあがりの正社員です。
木村七緒(ななお)29歳。

七海と愛ちゃんは2人で一緒に暮らす場所もなく、
愛ちゃんの両親を説得し、両親が残した我が家で
一緒に住むことにしました。
先月入籍してから、3人暮らししてます。

ここなら家賃もかからないから 
弟にはいいかもしれない。
でも彼女にとっては小姑付き。

どんなに仲は良くても、他人は他人。
弟のあれこれ、これからの家族計画に
水を差さないよう、私は明日、
出て行くつもり。

安いワンルームで家具付き。
今の職場からも近いし、
少ない荷物もこっそり運び
終わっていた。

明日は式に出た後、身一つで出るだけ。
置き手紙も準備オッケー。

朝起きて、2人を送り出した後、
置き手紙を置き、玄関を出ました。

『玄関に向かい2人、もうすぐ3人を
よろしくおねがいします。』

心の中で思い頭を下げました。


神社で式を挙げて、二次会でレストランパーティ
の予定です。私は式だけ出席予定です。


2人がキラキラ輝いていました。
まだ小さいお腹の中の2人の赤ちゃんにも
幸せになってねって言ってから、
神社を後にしました。


階段を下りていたら、グニャっと
足元が崩れるような感じがしたと思ったら、
暗闇に吸い込まれるように、引っ張られ、
私は意識を手放しました。
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