十二食堂

カヨワイさつき

文字の大きさ
上 下
7 / 7

電話

しおりを挟む
いつもの商店街、スーパーをのぞき
我が小さなお城、十二食堂にたどり着いた、
そしてしばらくした時、1本の
電話がかかってきた。
初めての電話。
料理の手を止め、かかってきた
電話の対応の対応に早や数時間。
いや、1本の電話は、ズグ終わったのだ。
対応を誤った、この私が悪かった……。

「ブツは手に入った。すぐそちらに向かう。」
ブチッ。
店長の言葉も出ないまま切られた
電話相手に望みを託した。
開店時間まで後わずか……。
ドキドキと高鳴る心音。
柄にもなく、神様、仏様、よろずの神様
世界中のあらゆる神様に願ったわ。

コンコン。
「……間に合ったか?」
自分なりに設定した開店時間3分前。
「神様に見えるわ!!」
「アホさらせ!」
ブツを渡され、いつもの定位置に行く
常連化した男性。
「持つべきは友達の友達の嫁さんよねぇ。」
「……。」
「ごめんねぇ。疲れたでしょ。特別に
特大サービスチキンオムライスよ。
はい、どうぞお召し上がり!!」
「眠くて……。」
目を閉じたままの男性の目の前に
置かれた、たまご6つを使った
ふわぁとろ~のチキンオムライス。
鼻をくんくんさせていた。
そして、ほぼ目を閉じたまま
次々と口に放り込んでいた。
すごい、勢いでなくなる今日の
巨大ふわトロチキンライス。
毎日食べてるのに、飽きないのか?
と思いながら、開店から早くも
数週間経っていた。
「季節外れだけど、ビニール様さまね。」
昨日の特集番組と、毎朝の番組で
取り上げられていた為、スーパーなどは
もちろん、近所の買える場所、はたまた
食品をおろしてもらっている取引先、
当たったが、当然ながらなかった。
私とした事が、昨日の特集を見逃した上
今朝の番組は寝ていたので見逃したのだった。
毎日録画にしていたから、実家で
ざっとみたが、これは……。
「食べたい。」

    ***

「いらっしゃいませ。」
続々と常連も含んだお客様が来店し
あらかじめ用意された、本日のお品書きの
煮物や、魚料理、その他もろもろ
注文した。
オムライスもなんだかんだで、
定番化していた。
そして、ご予約いただいたお客様4名
プラス昨日の主役。

「……昨夜、深夜1時11分、婚姻届
市役所に提出してきました。」
「「「「「「「!!!!」」」」」」」
「だれが、誰と、どないやねん?!」
衝撃?!電撃結婚の電撃報告。
「は?」
「おめでとう!!」
「いつのまに?」
「やる事やったのか?」
お客様の祝いの言葉と悪友の魚屋の息子、
そして傍らには、数日前にケリが着いた
女性たちのうちの1人。
「出会ってまだ、ひと月も経ってないし
年の差ありすぎやろ。」
「年の差っていっても12歳か
そこらやから、おれらの愛の前に、
年の差なし。それよりも、
可愛い子まで授かったし、
怖いもんなしや。あっ、幸せ過ぎて
怖いかも知らんわ!!」
と笑う顔がとろけきった友人。
「おお!!」
「じゃあ、今日おまえのおごりな!!」
「なんでやねん。俺らが祝われる
はずやのに、入籍記念になんか
奢ってぇや!!」

昨夜の突然の驚き報告。
お客様第1号、魚屋の息子と入籍し
2号は2人の子どもとなった。
魚が好きな子どもに、魚屋の息子が
張り切り、あれこれ世話をしたそうだ。

しかも、せいちゃんや釣り仲間たちを
巻き込み裏通りのお店、ぼったくりと
風俗営業法、諸々で通報され、
通報する前に辞めた4人は無事。
そのうちの1人が子持ちの彼女だった。

「それにしても、20歳の嫁に4歳の
可愛い娘、うわぁ、犯罪チック。」
彼女たちは、働きながら資格が
取れると言うよくある手口にひっかかり、
風俗込みのマッサージを仕込まれ、
強制されたそうだ。
安アパートの一室に、数人の女の子と
派遣され性的なマッサージを売りにした
悪質な店だった。
そのうちの1人が孕んでしまい、
おろすこともできないまま
産んだのが、この可愛い4歳の子だった。
幸い戸籍はあったそうで、どこに行くにも
影がつきまとっていたらしい。

「せいちゃんの強面も、たまには
役に立つんやねー。」
「人のこと言えるかよ。」
「私は、か弱くておしとやかな店長よ。
まだ、少しオトコっぽいけどね。」
「どっちでもいい……。」

せいちゃんたちが、裏から?なんらかの
手を使い4人を無事保護し、
店を辞めさせることに成功。
うち、1人は無事自国に帰国。
女の子たちの元職場は、未成年に
対しての強要、恐喝、風俗、漢字が
ずら~って並ぶ犯罪で摘発、
お取り潰しとなりました。

めでたし、めでたし?

その電撃結婚、入籍で
お店はほぼ貸し切り状態で盛り上がり
酒こそなかったが、店の在庫
根こそぎなくなるくらいまで
朝まで盛り上がった。
子どもはそうそうに2階の、
休憩?ほぼ自宅ですやすや寝ていた。
母親も深夜3時頃には子どもと寝ていた。

そして遅くまで騒ぎお客様を見送ったため
いつものチェックを怠り、眠気満開で
受け取った電話につい、二つどころか
一つ返事で答えてしまった。

「美味しい。」
「最高!!」
「こんなの初めて。」
「おっきい。」

大きなジョッキーで作った
ジャンボイチゴパフェ。

このイチゴが曲者だった。
隣町まで取り扱いしてそうなお店を
数十件探したが売り切れ、
もしくは、季節外の為取り扱いなし。
困り果てた頃、神様はひょっこり
現れた。
「アソコならあるかも……。」
その男がケータイを操作し、話が
着いたらしい。
「行ってくる。」
どこに?
何も言えないうちに、言葉と同時に
動くオトコ、せいちゃん。
不安な時間が過ぎた。
そして数分後、果物も取り扱っている
八百屋の息子、悪友からの電話。
「せいちゃんが、取りに行ってくれてるから
往復4時間ってとこかな?」
高速も使うとしても100キロ以上ある
道のりを、言葉少なく取りに行って
くれたらしい。

超ちょー高級な苺パフェ。
本日の裏メニュー。
お値段は、うふふ……。

ここは、とある場所にある
十二食堂。店長とユニークな常連客が
あなた様のご来店、心より
おまち申し上げております。
むちゃなもんでない限り、
裏メニュー、イケます。
あっ!承ります。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

双葉なおき
2021.05.26 双葉なおき

おー期待感(^^♪ 読みやすい、理解しやすい

カヨワイさつき
2021.05.27 カヨワイさつき

いつもありがとうございます💖あたたかいご感想、1番のり、すごい、めっちゃうれしいです💕

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。