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これからの事、話そう。

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「うるさい。」
「話しかけるな。」
父だった人の声がした。
思わず身構えた。何も起こらない?
「汚いわねー。」
「…くさい。」
「君の親御さんは、どこかなぁ?」
「…汚れ…ここも、破けてるし、小さな
シャツやズボンは脱いでこちらの服に、
お着替えしましょうね。」
あれ?これは、小さな頃か?
お腹が空いて、家を出た時だ。
また、場面が変わった。
「おとなしいね。はい、ちょっとチクッとするよ。」
「可哀想に……。」
「今時、栄養失調ですって。」
「あの子のメモに、"クズ、これでなんか買え"
って、何枚か同じように、書かれていたわ。」
「手持ち金は、130円…。」
「決まりだな。」
小さな頃から、施設に預けられ、学校に
通っていた頃にもイジメにあい、その
場面も次々に人ごとのように、眺めていた。

そして先程起こった出来事…。
自分の65回目の最後の誕生日。

「黒江鈴太(くろえ りんた)様、度重なる
ご不運、まことに残念でございました。」
あっ!!さっきの赤いハッピを着込んだ
テンションが高い男性店員さんだ。
「…ゴホッ。」

テンションが高い店員さんは、咳払いをした。
俺の状況確認。只今、今日何もない白い部屋?
さっきぶつかって死んだはずなのに
なぜか、痛みなし。
目の前には、テンションが高い男性の店員。
顔は、女性社員が騒ぎそうなまあまあの
イケメン。
「…まあまあのイケメン…。それに、
テンションが高いって…僕、盛り上げてみた
だけなのに酷いよ。」
「……。」
俺は、口に出して言ったのか?
歳をとり口が軽くなってしまったのか?
「どちらでもないよ。この優秀な私が、
黒江鈴太様の考えを読んでるだけです。」
「……。」
「何か言って下さい。もしくは、何か
考えて下さい。」
「…これからどうなるんですか?」
「えーっ。神様すごいっとか、神様、
なんで、なんでとか騒がないんですか?」
「なぜ?騒いだ方が嬉しいんですか?」
「えっえぇーと、嬉しくわ……。」

「わあい。わあい。なんで。なんで。
あーどうしよう。」
「……すごい、棒読みですよね。」
「はい、特に感情を入れる必要性を
感じなかったので、神様が喜ぶと思い
言葉を選んでみました。」
「……え、選んでくれたんだ…。」
「はい。どうでしたか?」
「……あ、ありがとう。言葉を選んでくれて
ありがとう、うれしいよ。
でも、もう少し感情的に言ってくれたら
かなり場が盛り上がってたかもね。」
「……。」

「あっ、ごめんごめん。えーと、そろそろ
時間がなくなってきたから、ざっと説明するね。」
「はい。」
「異世界にご招待します。」
「はい。」
神様はなぜか涙目で見てきた。
「どうしましたか?」
「……驚いたり、説明短いって、ツッコミないの?」
「突っ込みはしたことないのですが、すみません。
した方がいいですか?」
「場がノリツッコミで盛りあるはずだから、
もう一度いいますね。」
「はい。」

「な、なんと今、亡くなったばかりの黒江様を、
異世界にご招待します。ゴフッ。」
黒江鈴太は、神様の脇腹に手でチョップした。
「イダァァァ。何ずるんでずかぁぁ……。」
かなり痛かったのか神様は泣いていた。

「これが、ノリとツッコミかあ。大丈夫ですか?
声が大きくなったので、盛り上がったという
事でしょうか?」
「ちがーぁう。こんなの、ノリとツッコミじゃ
なぁいですっ。絶対にちがいます。」
「すみません。勉強しなおします。」
パァ~と表情が明るくなった神様は、
「勉強しなおせぃー。宿題じゃ。」
いきなり口調が変わった神様に驚きながらも
黒江は表情を変えないまま、
「わかりました。いつまでに宿題の
提出したらいいでしょうか?」
なぜか、ガクッと項垂れた神様……。
感情の起伏が激しいなあっと思いながらも、
楽しい人?神様だと思った。

「今から異世界に行ってもらいます。
色々、調べなければならない事もあるので
忙しいから、おいおーい、お手紙や
色々お知らせしますね。ご希望は、
何かありますか?」
「……今は、思いつかない。」
「わかりました。"思いつかない"ですね。
……はい。えっ?あっ。」

何かを唱えながら、目の前にいた神様は、
焦った顔をしたまま消えていった。
なぜか、ド派手な赤いハッピが残されていた。

「俺は自分の誕生日に……。すごい?
人生だったよ。」
なぜか、笑ってしまいたくなりながらも
見た目は無表情。
赤いハッピに手を伸ばすと、バランスを
崩したのか急な浮遊感に包まれ気を失ってしまった。

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