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第3章
(51)こっそり、こっそり。⑤
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最後の試合だからかな?国王様がいる方に向かって2人とも礼をして構える。なんか見覚えのある騎士さんは軽く構えてるけど……
「緊張してるのかな?あの騎士さん構えてるけど剣先が震えてる」
大丈夫かな?何か起きなきゃいいけど……
「始め!」
「わああああぁっ!!」
あっ、後先考えずに出ちゃった。今までの騎士さんまでの経験者じゃないんだろうだね。
「くっ!!」
剣が弾かれちゃった……それにしても、見覚えのある騎士さんは一体どこで見たんだっけ?髪は紺……いや、黒かな?肌も褐色だね……避ける動きも速いしすぐ体勢を立て直せるし……なんか優しそう?
「(え、優しそうって何で?)」
「うぁっ!!」
あっ、剣が飛んで行っちゃった!ってことはあの見覚えのある騎士さんの勝ち──
「こうなったら…………はあああっ!!」
緊張気味の騎士さんが魔力を集めだしたよ?あの騎士さん魔法も使えるんだね!
「なんだが様子がおかしい……」
シェラが眉をひそめて言う。ソフィアも妙な魔力の集まり方に違和感を感じ、“魂の可視化”で騎士を視た。
「(周りに色んな濃い霧が騎士さんを軸にして渦巻いてる……!それに、あの騎士さん自身も赤黒い何かが心臓あたりに光ってるし、血の流れみたいに身体全体を回ってる)」
「シェラさん……これはかなり危険かもしれません!」
シェラさんははじめ、驚いた顔で私の方を見たけど頷いて指笛を吹く。
「うっ……ぐぅっ……!!」
あの騎士さん辛そう……見覚えのある騎士さんも全く手出し出来ないみたい。
「シェラさん、ハンネちゃん!」
ミラさんが駆けつけて来たよ。多分ミラさんも何かあの騎士さんの雰囲気が違うのに気づいたみたい。そこにジャックさんとアルフさんが駆けつけたよ!
「ハンネちゃん無事?」
「はい!大丈夫です」
「炎よ!!この地の果てまで燃やし尽くせ……」
「(この地の果てまで……!?)」
すると、エルブとアズルが元の大きさに戻る。
『あれは禁忌の魔法!?いけない!!』
『火と闇の複合魔法……!!あの人間、死んでしまうわ!』
止めないと客席にまで被害が…… !!
「ジャック、止めるぞ!!」
「了解っす!」
2人は全速力で騎士を止めに走る。騎士はニヤリと笑った。
「止められてたまるか……!」
「──エルブ、アズル!結界を客席に!!」
『『うん!!』』
客席の最前列に上昇気流を圧縮したような風の壁と水の結界が張られて、状況をいまいち把握出来ていない観客は妙な緊張感が高まっていた。
「もう遅い!!」
フィールドの大半を埋めつくす、極黒の炎が騎士の遥か頭上に出来ていた。
「「(間に合わない!)」」
「((お願い、やめて……!))」
「ヘルフレイムゥゥゥァ!!!!」
そのとき、その場にいた騎士や観客は一瞬にして死を覚悟した──
「────セイクリッドレイン!!」
刹那、試合会場の上空全体を巨大な魔法陣が覆い──ぽつり、ぽつりと雫が降ってきた。
「──雨?」
1人の騎士が気付き、途端に大雨が降り出した。上空が晴れているために生温いかと思いきや、ひんやり冷たく気持ち悪さも感じない。それどころか、自分たちの恐怖や絶望感すら浄化してしまうような居心地の良い雨。あの騎士が生み出した黒い炎はたちまちかき消されてあたり一面を霧が立ち込めた。
「くそっ……!一体何が?!」
不審な騎士は周囲を見回すが霧のせいで全く見えなかった。
「こうなったら、もう一度……!」
騎士がまた唱えようとするが魔力が溜まらず散霧してしまう。
「何故だ!」
騎士が叫ぶとパチンと指を鳴らした音が聞こえて一気に霧が晴れた。そして目の前にには───小さな天使がいた。
「……騎士さん」
「天使……」
騎士は一瞬、目の前の神々しい天使に目を奪われた。
「じ、邪魔だ!どけ!」
天使は首を横に振る。
「……無理しないで?」
「……!!」
「試合の順番が最後で緊張したよね……いっぱい訓練しても中々思うように行かなくて辛いときもあるし、他のみんなが出来て自分が出来なかったらもっと焦っちゃうもん。大変だったよね」
騎士は正気に戻り、話し出した。
「僕には、なんの取り柄もなくて……ただ剣が上手くできなくても、魔法の知識さえあればって……」
「ここであんなに大きな魔法が出せたもん。すごいよ!剣だけじゃなくて魔法も使えるって、騎士さんは魔法剣士になれるってことじゃないかな?それってまだまだ伸びしろがあるってことだよね?」
「“魔法剣士”の伸びしろ……」
天使はうんうんと頷く。
「成長は人それぞれだから、焦らずにこつこつ訓練だよ」
観客の所まで完全に霧が晴れると、会場に歓声と拍手が鳴り止まなかった。
「ソフィアちゃん!!」
「まじで、翼生えてんのか……?」
アルフとジャックもその場に立ち尽くす。ソフィアは元の髪・目の色に戻り、地上に降りると同時に翼も消滅した。
「ソフィア…………様?」
ふと横を見ると、そこにはあの見覚えのある──ジェイコブが騎士姿で立っていた。
「えっ、ジェイコブさん!?」
だから見覚えがあったんだね!ってあれ……なんか目立ってる?
「やはりソフィア様は天使だ!」
「我らを救って下さった!」
「「「「「天・使!天・使!」」」」」
「私、天使じゃありませんよぉ……」
よく見るとエリックさんは頭を抱えて項垂れてるし、国王様御家族は苦笑い……シェラさん達は呆気に取られてるよ。あはは……あはははは……
「………………やっちゃった」
◇◆◇◆◇
お久しぶりです。いつも見て下さる方も、ちらっと見てみて下さった方もありがとうございます!
最近は投稿する頻度が少なくなってしまい、待って下さっている方々には本当に申し訳なく思います。
少しずつの投稿ですがよろしくお願いします!
「緊張してるのかな?あの騎士さん構えてるけど剣先が震えてる」
大丈夫かな?何か起きなきゃいいけど……
「始め!」
「わああああぁっ!!」
あっ、後先考えずに出ちゃった。今までの騎士さんまでの経験者じゃないんだろうだね。
「くっ!!」
剣が弾かれちゃった……それにしても、見覚えのある騎士さんは一体どこで見たんだっけ?髪は紺……いや、黒かな?肌も褐色だね……避ける動きも速いしすぐ体勢を立て直せるし……なんか優しそう?
「(え、優しそうって何で?)」
「うぁっ!!」
あっ、剣が飛んで行っちゃった!ってことはあの見覚えのある騎士さんの勝ち──
「こうなったら…………はあああっ!!」
緊張気味の騎士さんが魔力を集めだしたよ?あの騎士さん魔法も使えるんだね!
「なんだが様子がおかしい……」
シェラが眉をひそめて言う。ソフィアも妙な魔力の集まり方に違和感を感じ、“魂の可視化”で騎士を視た。
「(周りに色んな濃い霧が騎士さんを軸にして渦巻いてる……!それに、あの騎士さん自身も赤黒い何かが心臓あたりに光ってるし、血の流れみたいに身体全体を回ってる)」
「シェラさん……これはかなり危険かもしれません!」
シェラさんははじめ、驚いた顔で私の方を見たけど頷いて指笛を吹く。
「うっ……ぐぅっ……!!」
あの騎士さん辛そう……見覚えのある騎士さんも全く手出し出来ないみたい。
「シェラさん、ハンネちゃん!」
ミラさんが駆けつけて来たよ。多分ミラさんも何かあの騎士さんの雰囲気が違うのに気づいたみたい。そこにジャックさんとアルフさんが駆けつけたよ!
「ハンネちゃん無事?」
「はい!大丈夫です」
「炎よ!!この地の果てまで燃やし尽くせ……」
「(この地の果てまで……!?)」
すると、エルブとアズルが元の大きさに戻る。
『あれは禁忌の魔法!?いけない!!』
『火と闇の複合魔法……!!あの人間、死んでしまうわ!』
止めないと客席にまで被害が…… !!
「ジャック、止めるぞ!!」
「了解っす!」
2人は全速力で騎士を止めに走る。騎士はニヤリと笑った。
「止められてたまるか……!」
「──エルブ、アズル!結界を客席に!!」
『『うん!!』』
客席の最前列に上昇気流を圧縮したような風の壁と水の結界が張られて、状況をいまいち把握出来ていない観客は妙な緊張感が高まっていた。
「もう遅い!!」
フィールドの大半を埋めつくす、極黒の炎が騎士の遥か頭上に出来ていた。
「「(間に合わない!)」」
「((お願い、やめて……!))」
「ヘルフレイムゥゥゥァ!!!!」
そのとき、その場にいた騎士や観客は一瞬にして死を覚悟した──
「────セイクリッドレイン!!」
刹那、試合会場の上空全体を巨大な魔法陣が覆い──ぽつり、ぽつりと雫が降ってきた。
「──雨?」
1人の騎士が気付き、途端に大雨が降り出した。上空が晴れているために生温いかと思いきや、ひんやり冷たく気持ち悪さも感じない。それどころか、自分たちの恐怖や絶望感すら浄化してしまうような居心地の良い雨。あの騎士が生み出した黒い炎はたちまちかき消されてあたり一面を霧が立ち込めた。
「くそっ……!一体何が?!」
不審な騎士は周囲を見回すが霧のせいで全く見えなかった。
「こうなったら、もう一度……!」
騎士がまた唱えようとするが魔力が溜まらず散霧してしまう。
「何故だ!」
騎士が叫ぶとパチンと指を鳴らした音が聞こえて一気に霧が晴れた。そして目の前にには───小さな天使がいた。
「……騎士さん」
「天使……」
騎士は一瞬、目の前の神々しい天使に目を奪われた。
「じ、邪魔だ!どけ!」
天使は首を横に振る。
「……無理しないで?」
「……!!」
「試合の順番が最後で緊張したよね……いっぱい訓練しても中々思うように行かなくて辛いときもあるし、他のみんなが出来て自分が出来なかったらもっと焦っちゃうもん。大変だったよね」
騎士は正気に戻り、話し出した。
「僕には、なんの取り柄もなくて……ただ剣が上手くできなくても、魔法の知識さえあればって……」
「ここであんなに大きな魔法が出せたもん。すごいよ!剣だけじゃなくて魔法も使えるって、騎士さんは魔法剣士になれるってことじゃないかな?それってまだまだ伸びしろがあるってことだよね?」
「“魔法剣士”の伸びしろ……」
天使はうんうんと頷く。
「成長は人それぞれだから、焦らずにこつこつ訓練だよ」
観客の所まで完全に霧が晴れると、会場に歓声と拍手が鳴り止まなかった。
「ソフィアちゃん!!」
「まじで、翼生えてんのか……?」
アルフとジャックもその場に立ち尽くす。ソフィアは元の髪・目の色に戻り、地上に降りると同時に翼も消滅した。
「ソフィア…………様?」
ふと横を見ると、そこにはあの見覚えのある──ジェイコブが騎士姿で立っていた。
「えっ、ジェイコブさん!?」
だから見覚えがあったんだね!ってあれ……なんか目立ってる?
「やはりソフィア様は天使だ!」
「我らを救って下さった!」
「「「「「天・使!天・使!」」」」」
「私、天使じゃありませんよぉ……」
よく見るとエリックさんは頭を抱えて項垂れてるし、国王様御家族は苦笑い……シェラさん達は呆気に取られてるよ。あはは……あはははは……
「………………やっちゃった」
◇◆◇◆◇
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