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出会い
第18話 木人形
しおりを挟む――ハンプ山は木々が生い茂り、昼間だと言うのに薄暗かった。
シキとアカは周囲を警戒しながら、山道を進んでいた。
「ズックさーん。いますかー?」
「ズックさーん。」
アカが呼びかけても返事はなかった。
「もっと上の方かな?」
「そうだろうな。下の方まで来てたんなら、街に降りてくるだろ。」
2人は上へ上へと進んでいった。
山の中腹あたりに来た時、木々の後ろから何かが出てきた。
「シキ、あそこ何かいる。」
「あぁ、あっちにもいるぞ。」
2人が様子を見ていると、人の形をした木が2人に向かってゆっくりと近づいてきた。
「あれが、木人形ってやつか。」
「ん~…不気味だね~…」
「動きは鈍いみたいだな。」
2人は木人形から目を離さずに進んでいく、後ろから様子を伺うように木人形たちもついてきている。
2人は山道に沿って歩き続けた。登るに連れ木人形たちも増えていった。山頂に近づいた時、前方から現れた木人形たちが、2人を取り囲むように立ちはだかった。
「ん~…これはまずいよね。」
「そろそろ、対処しないとな」
2人は木人形へと向かって走り出した。
前方にいた木人形たちを、投げつつ進んでいく。
木人形たちは、構える様子もなく、ただゆっくりとついてくる。
投げ倒した、木人形たちも、ゆっくりと起き上がり2人についてきていた。
「投げても意味ないみたいだね~。」
「触った感じも木みたいだったし、痛みとかないんだろうな。」
2人は現れる木人形たちを投げつつ、頂上へ向けて走った。
幸い、木人形たちは、動きが遅く徐々に距離を離し、見えなくなっていった。
気づけば、2人は山頂付近に到達していた。
「ズックさーん!」
アカが呼びかけている。
シキも周りに注意しながら、進んでいると洞穴を見つけた。
「…アカ、あそこ。あの洞穴の前、焚き火の痕があるぞ。」
「ほんとだね。ザックさんいるかも…」
2人は洞穴に近づき、呼びかけた。
「ズックさーん!いますかー?」
耳を澄ますと、奥の方でパチパチと焚き火の音が聞こえた。
2人は洞穴の奥へと急いだ。奥には、体格のいい男性が焚き火の側に横たわっていた。
アカが慌てて近寄り、声をかけた。
「ズックさん!ズックさんですか?大丈夫ですか?」
「……何だ?」
「あなたを探しにきました!一緒に山を降りましょう。」
「……余計な世話だ。木人形たちは落ち着いたのか?」
「いや、まだまだいたぞ。でも、大丈夫だ。一緒に行こう。」
シキがそう伝えると、ズックは再び横になった。
「おい、おっさん。下りるぞ?」
「……まだ駄目だ。木人形たちが落ち着くまで、ここにいろ。」
「そんなこと言って、ここにきたらどーすんだよ。」
「……大丈夫だ。あいつらは基本的に火があるとこには近づいてこん。」
そう言いながら、ズックは酒瓶を取り出し飲み始めた。
「何だよ、この酔っ払い。別に大丈夫そうじゃねーか。」
「シキ、そんなこと言わない。リンネル君、心配してたんだから、無事で何よりだろ。」
「そりゃ、そーだけどさ。」
2人が離している横で、ズックは焚き火に薪を加えた。
――コツンと入り口の方から音が聞こえた。
2人が入り口の方に目をやると、再び音が聞こえた。
「おっさん…。火があれば大丈夫なのか?」
「……大丈夫だ。」
「でも、何かが近づいて来てるぞ。」
「……」
ズックもゆっくりと身を起こした。3人に緊張感が走った。
入り口の方から、音が近づいてくる。音は1つじゃない。
「おい、おっさん。荷物急いでまとめろ。」
ズックはカバンに酒瓶を入れ、火のついた薪を手に持った。
焚き火の光が届くギリギリに、影が見えた。
木人形がいる。1体じゃない――
木人形たちがゆっくりと近づいてくる。
「おっさん…。火、意味ねーみたいだぞ?」
「……」
「アカ、おっさん。走るぞ!」
3人は木人形たちに向けて走り出した。
シキとアカが先に行き、木人形たちを投げながら進んでいく。
ズックも倒れた木人形たちを避けながら、2人の後をついて走った。
3人が外に出ると、木人形たちが洞穴を取り囲むように立っていた。
「…こいつらが、集団で動くことも、火に近づいてくることもありえん。」
「ありえなかろーが、今そうなってんだろ!」
「シキ、とりあえず進むしかないよ!」
「そうだな。いくぞアカ!おっさんついてこいよ。」
3人は再び駆け出した。シキとアカが投げ、ズックが倒れた木人形に火を押し付けていく。
火を押し付けられた木人形たちは、燃えながら動かなくなっていった。
「なるほどな。所詮は木か、燃やせばいいわけだ。」
「ズックさん!あたしたちが、倒していくからどんどん燃やしていって!」
3人は投げ、燃やしながら、山を降っていく。下に近づくに連れて、木人形たちの数は増えていった。
(……こんなに大量発生するとは。それに、なぜ集団行動している。)
ズックは木人形の、異変が気になりつつも懸命に2人の後をついていった。
麓近くまで来ると、木人形たちは、シキたちを追うのをやめ、ハンプ山へと消えていった。
「――ふぅ。とりあえずは助かったな。」
「よかったよ~。てか、疲れた…」
「……お前さんたち、すまんな。助かった。」
「別に、いいさ。礼ならリンネルって奴に言いな。」
「……リンネルが。」
「そーだよー。リンネル君、一生懸命助けを求めてたんだから!」
「……」
3人はハンプ山を後にした。
3人の姿を見た警備の男たちが、声をかけた。
「無事で何よりだ。だが、君たちは規則を破った。上と掛け合って、明日には話を聞きにいく。」
「――わかったよ。とりあえず、おっさんを連れて帰るからまた、後でな。」
「君たちはどこに宿を取るんだ?」
「あー…、それは…」
「…俺の家だ。今日は俺の家に泊まる。」
「わかった。では、明日ズックの家に伺うからな。」
男たちはその場を離れ、警備へと戻っていった。
「いいのかよ、おっさん。」
「…構わん。礼もかねて泊めてやる。」
「ありがと~。あんまりお金もないからね。」
「言うんじゃねーよ!アカ。」
「……」
3人はズックの家へ向かった。ズックの家に着くと、たくさんのキャンバスを見てシキが騒いだ。アカは風呂に入れて喜んでいた。
ズックは3人分の食事を用意して、3人で食卓を囲った。
その夜、ズックは久しぶりに酒を飲むことなく眠りについた――
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