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君と、もう一度、、、
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「じゃあ、今すぐ大願公園に来て。私もすぐに向かうから。」
蒼空からの返信メールにはそう書かれていた。どうやら彼女は僕にもう一度チャンスをくれたらしい。
良かった、本当に、、、
もう一生会ってすらくれないんじゃないか、とすら思っていた。実際そうされても仕方ない事を僕は彼女にしたんだから。
僕は、スマホの画面下部を押し、猛スピードで彼女に返事のメールを返信した。
「ありがとう。今すぐ行く。」
と...
~ A little time later~
僕は公園に到着した。ここまで走ってきた為息が切れて辛い。深呼吸をしながら、公園内を見回す。まだ蒼空は来ていないらしい、どこにも彼女の姿が見当たらない。
途端、一つの考えが頭の中をチラつき始める。彼女は途中で来るのをやめてしまったのではないか、という不安だ。
僕は急いで首を左右に振って、その考えを払拭する。そんな事彼女がする訳ない。
すると、ふと近くの噴水が目についた。この際、縋れるものには、何にでも縋りたい。僕は噴水の方へ歩きながら、ポケットから財布を出し、小銭を一つを掴む。そして願いを言う。
「 。」
言い終わると拳の中の小銭を噴水へと投げ込んだ。
それはポチャンという水音を立てると、そのままユラユラと沈んでいった。
それから数分後
「サクくん!」
ベンチに座っていると、後ろから大きな声で呼ばれる。蒼空の声だ。僕はものすごい勢いで立ち上がって後ろを見る。そこには彼女がいた。来てくれた、こんな、僕のために。
「ごめんね!待たせちゃって。」
それに、返事はしない。僕はなりふり構わず、彼女の元へ走り出した。そして彼女を抱きしめる。もう彼女を絶対に離したりしない。
数秒後、
「サクくん、流石にちょっと痛いよ。」
彼女にそう言われる。それでやっと自分があまりに全力で抱きついてしまっていた事に気づいた。力を緩める。
「ご、ごめん。」
僕はそう言って、腕の力を緩める。すると彼女も僕の背中に両手を回してきた。
ところで、抱きついたは良いが、これからどうすれば良いかがわからない。まずは彼女に自分の今までの愚かな行いを謝るべきなのだろうか、それともそんな事はせず、このまま愛を囁くべきなのだろうか。二つに一つだ。
選べ、選ぶんだ、僕。
決めた。今までの事を謝ろう。
「なぁ、蒼空、、、」
「どうしたの?」
彼女はその真ん丸い目で、僕の顔を見上げるように見つめる。
「ごめん、この前の事。君は僕を助けようとしてくれたのに、感謝どころかあんな、、、」
だが途中で口に人差し指を当てて止められてしまった。選択を間違えたのか。彼女が話し出す。
「サクくんは、子どもの頃からちっとも、変わって無いね。そのどこまでも真っ直ぐなところとか。
私ね、サクくんの事、怒ってなんか無いよ。私だって、赤人の事、サクくんに相談もせず決めちゃったし。
確かに、サクくんに酷いこと言われた時は傷ついたよ。でもね、私、わかってた。本心じゃ無いって。私をこれ以上傷つけない為、だったんでしょ?」
言い終わると、蒼空は僕の口から人差し指を戻した。どうやら彼女には僕の魂胆なんて初めから全てお見通しだったようだ。とは言えどう答えれば良いかが、本格的にわからなくなってしまった。
それからお互い抱き合ったまま、少しの沈黙が続く。その沈黙を破ったのは蒼空だった。
「、、しようか。」
初めの部分がなんと言ったか聞きとれなかった。不粋とは知りつつも聞き返す。
「え、何て?」
「キス しようか。」
キ、キスだって、思わず心臓が口から飛び出しそうになる。まだ正式に付き合ってもいない女子とキスなんて。しかしもう蒼空は目を閉じて僕のキスを待っていた。
こうなったらもう、どうにでもなれ。
僕は目を閉じて、彼女の唇に優しく、自分の唇を合わせる。
それから僕は一分近く、彼女とキスをした。
しかし、いつも通り、幸せはそう長く続かない。聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい、お前ら、そこで何してる?」
僕と蒼空はキスをやめ、ほぼ同時に声のした方を見る。
赤人だ。
彼は、すごい勢いで、僕の胸倉を掴んで来る。そしてこれまたすごい剣幕で僕を怒鳴りつけた。
「お前!今度こそ本気で殺してやる!!よりにもよって、俺の女に、手を出しやがって!!」
彼の顔は今にも噴火しそうなくらい真っ赤になっていた。ここまでキレた赤人を見るのは初めてだ。
とは言え、僕の誓いはまだ有効だ。もうこんな奴には臆さない。
「赤人、君の負けだ。」
僕は赤人にそう言ってやった。赤人は今にも増して尚更真っ赤になる。そこへ蒼空が止めに入ってきた。
「やめてよ、二人とも。」
すると赤人は僕の胸ぐらから手を離して、その蒼空の顔面を引っ叩いた。
「うるせぇ、お前は黙ってろ。だいたいなぁ、お前が悪いんだよ。どんな男にも媚びやがって。」
そして今度は彼女の胸ぐらを掴む。
止めないと、それだけは何としても。
とっさに僕は赤人を後ろから蹴り飛ばした。初めてだ、僕から赤人に攻撃するなんて。
赤人が体制を崩して、顔から地面に倒れ込む。
「殺してやる。」
赤人がボソッとそう呟きながら、立ち上がる。顔にはいくつも擦り剥いた痕ができ、血が出ていた。そして僕と蒼空を見て、今度はもっとハッキリと言う。
「殺してやる、お前ら二人とも!!」
そしてすぐ、赤人が凄い勢いで僕に殴りかかってきた。避けるなんて芸当、僕に出来るはずが無い。
ガンッと、嫌な音が僕の頭の中でこだまし、頬の辺りに鈍い痛みが走った。僕は背中から地面に倒れ込んだ。
「サクくんっ!」
蒼空が叫ぶ。次に赤人は僕の上に跨り、顔を何度も何度も殴り出す。
蒼空が止めようと僕の元に駆け寄ってくる。
「やめろ、来るな。」
なんとか僕は喉から声を絞り出した。僕を助けに来たら。また彼女が赤人に殴られる。二度もコイツに彼女を殴らせははしない。
「オラ、オラ、俺の女に手を出した上に、蹴飛ばしやがって。顔に傷がついたじゃねえか。」
その間も赤人は怒りを撒き散らしながら、容赦無く僕の顔面を殴り続ける。
僕は赤人を押し返そうと、胸元をずっと両手で押している。だが赤人はびくともしない。このまま押していても体力を消耗するだけだ。
なんとか対抗する方法を考えないと。ふと昔見た映画の技を思い出す。こんな状況の主人公が使っていた技だ。これしか無い。僕はそう直感する。
綺麗に決まれば、一気に形勢を逆転できる。
チャンスは一度きり。二度目からは警戒されてしまう。タイミングを見計らわないと。
その数秒後、
「おいおい、こんなもんか?さっきの蹴りの割にショボいなぁ。」
赤人が急に殴るのを止め。僕に話しかける。
今だ。
僕は赤人の胸元を掴んだ手を軸に赤人に全力の頭突きをする。
ゴンッ
辺りに硬い物同士がぶつかるかなり大きな音が響く。
赤人は僕に跨ったまま、フラフラと地面に背中を着いた。頭突きが、綺麗に決まったらしい。
僕は赤人の下から這い出る。そして今度は僕が赤人の上に跨る。
それぐらいでやっと赤人の目が真っ直ぐになった。その時、赤人が浮かべた表情は、恐怖だった。
明確な恐怖、まるで今、まさにこれから捕食されようとしている草食動物のような、、、
僕は赤人の胸ぐらを左手で掴み上げる。そして、もう一方の手を振り上げ、全力で振り下ろす、何度も、何度も、何度も。
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
赤人は口から血を吐き始めた。まるで少し前の僕のように。無論、殴る手を緩めはしない。
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
「よせ、やめてくれ。頼む。俺が悪かった。」
赤人は今度は懇願し始める、やめてくれ、と。僕もいつもしていた、聞き入れられた試しは一度も無いが。今回だって、勿論、拒否だ。
ガンッ、ガンッ、ガシッ、、、、、
ところが、途中でその手を何者かの両手にがっしりと掴まれてしまっている。僕は急いで、掴んでいる手の持ち主を確認する。
「蒼空、、」
それは蒼空だった。
「やめて。」
彼女が言ってくる。どうしてだ。蒼空だって、さっきコイツに叩かれ、殴られそうにまでなったのに。疑問でしか無い。
すると蒼空は僕が聞く前に理由を続ける。僕の顔から、僕の考えを察したのだろう。
「だって、これ以上したら。サクくん、同じになっちゃう、彼と、、、」
僕が、コイツと同じ。
ふと今の自分を振り返る。赤人の上に跨り、怒りに任せて、拳を振り下ろす。
言われてみれば、今の自分の姿は全く同じだった。よりにもよって、誰よりも憎んでいた、赤人と。
気付いた途端、さっきまでの怒りも興奮も熱も、全てがサーッと引いていってしまう。残された僕は頭の中が真っ白になった。
僕が呆然としていると、何かが顔に触れた。見ると、蒼空がハンカチを持って僕の顔についた血を拭ってくれていた。蒼空、僕の愛しの人。僕はその手を軽く掴み立ち上がる。
「ありがとう、僕に気づかせてくれて。」
蒼空が居なければ、まだ僕は赤人のを殴り続けていただろう。それこそ殺してしまっていたかもしれない。
「いや、いいよ。それに、殴り合ってた時のサクくんも、男らしくて、とってもかっこ良かったよ!」
僕が、男らくてかっこいい、、、
大好きな人に褒められて、言葉が詰まる。人間にとって、これ以上に嬉しい事なんか有るだろうか。
そろそろ、さっき赤人のせいで途中だった事の続きをしよう。
僕は蒼空から二メートルほど後ろに下がる。そして気を付けの姿勢を取った。胸の高鳴りを感じる。
それから、僕は大きく息を吸ってから...
「蒼空!! ずっと、ずっと昔から!君が大好きでした!僕と...」
一瞬言葉が詰まった、だが、言わなければならない。紡げ、自分の思いを、最愛の、彼女へ!
届け!僕の想いよ!
そして、僕は、言葉を振り絞って...
「僕と、付き合ってください!!」
そう、言うのだった...
こうして、一人の死ぬはずだった少年は喜びを掴み取り、未来を切り拓いていくのであった。
thank you for reading.
蒼空からの返信メールにはそう書かれていた。どうやら彼女は僕にもう一度チャンスをくれたらしい。
良かった、本当に、、、
もう一生会ってすらくれないんじゃないか、とすら思っていた。実際そうされても仕方ない事を僕は彼女にしたんだから。
僕は、スマホの画面下部を押し、猛スピードで彼女に返事のメールを返信した。
「ありがとう。今すぐ行く。」
と...
~ A little time later~
僕は公園に到着した。ここまで走ってきた為息が切れて辛い。深呼吸をしながら、公園内を見回す。まだ蒼空は来ていないらしい、どこにも彼女の姿が見当たらない。
途端、一つの考えが頭の中をチラつき始める。彼女は途中で来るのをやめてしまったのではないか、という不安だ。
僕は急いで首を左右に振って、その考えを払拭する。そんな事彼女がする訳ない。
すると、ふと近くの噴水が目についた。この際、縋れるものには、何にでも縋りたい。僕は噴水の方へ歩きながら、ポケットから財布を出し、小銭を一つを掴む。そして願いを言う。
「 。」
言い終わると拳の中の小銭を噴水へと投げ込んだ。
それはポチャンという水音を立てると、そのままユラユラと沈んでいった。
それから数分後
「サクくん!」
ベンチに座っていると、後ろから大きな声で呼ばれる。蒼空の声だ。僕はものすごい勢いで立ち上がって後ろを見る。そこには彼女がいた。来てくれた、こんな、僕のために。
「ごめんね!待たせちゃって。」
それに、返事はしない。僕はなりふり構わず、彼女の元へ走り出した。そして彼女を抱きしめる。もう彼女を絶対に離したりしない。
数秒後、
「サクくん、流石にちょっと痛いよ。」
彼女にそう言われる。それでやっと自分があまりに全力で抱きついてしまっていた事に気づいた。力を緩める。
「ご、ごめん。」
僕はそう言って、腕の力を緩める。すると彼女も僕の背中に両手を回してきた。
ところで、抱きついたは良いが、これからどうすれば良いかがわからない。まずは彼女に自分の今までの愚かな行いを謝るべきなのだろうか、それともそんな事はせず、このまま愛を囁くべきなのだろうか。二つに一つだ。
選べ、選ぶんだ、僕。
決めた。今までの事を謝ろう。
「なぁ、蒼空、、、」
「どうしたの?」
彼女はその真ん丸い目で、僕の顔を見上げるように見つめる。
「ごめん、この前の事。君は僕を助けようとしてくれたのに、感謝どころかあんな、、、」
だが途中で口に人差し指を当てて止められてしまった。選択を間違えたのか。彼女が話し出す。
「サクくんは、子どもの頃からちっとも、変わって無いね。そのどこまでも真っ直ぐなところとか。
私ね、サクくんの事、怒ってなんか無いよ。私だって、赤人の事、サクくんに相談もせず決めちゃったし。
確かに、サクくんに酷いこと言われた時は傷ついたよ。でもね、私、わかってた。本心じゃ無いって。私をこれ以上傷つけない為、だったんでしょ?」
言い終わると、蒼空は僕の口から人差し指を戻した。どうやら彼女には僕の魂胆なんて初めから全てお見通しだったようだ。とは言えどう答えれば良いかが、本格的にわからなくなってしまった。
それからお互い抱き合ったまま、少しの沈黙が続く。その沈黙を破ったのは蒼空だった。
「、、しようか。」
初めの部分がなんと言ったか聞きとれなかった。不粋とは知りつつも聞き返す。
「え、何て?」
「キス しようか。」
キ、キスだって、思わず心臓が口から飛び出しそうになる。まだ正式に付き合ってもいない女子とキスなんて。しかしもう蒼空は目を閉じて僕のキスを待っていた。
こうなったらもう、どうにでもなれ。
僕は目を閉じて、彼女の唇に優しく、自分の唇を合わせる。
それから僕は一分近く、彼女とキスをした。
しかし、いつも通り、幸せはそう長く続かない。聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい、お前ら、そこで何してる?」
僕と蒼空はキスをやめ、ほぼ同時に声のした方を見る。
赤人だ。
彼は、すごい勢いで、僕の胸倉を掴んで来る。そしてこれまたすごい剣幕で僕を怒鳴りつけた。
「お前!今度こそ本気で殺してやる!!よりにもよって、俺の女に、手を出しやがって!!」
彼の顔は今にも噴火しそうなくらい真っ赤になっていた。ここまでキレた赤人を見るのは初めてだ。
とは言え、僕の誓いはまだ有効だ。もうこんな奴には臆さない。
「赤人、君の負けだ。」
僕は赤人にそう言ってやった。赤人は今にも増して尚更真っ赤になる。そこへ蒼空が止めに入ってきた。
「やめてよ、二人とも。」
すると赤人は僕の胸ぐらから手を離して、その蒼空の顔面を引っ叩いた。
「うるせぇ、お前は黙ってろ。だいたいなぁ、お前が悪いんだよ。どんな男にも媚びやがって。」
そして今度は彼女の胸ぐらを掴む。
止めないと、それだけは何としても。
とっさに僕は赤人を後ろから蹴り飛ばした。初めてだ、僕から赤人に攻撃するなんて。
赤人が体制を崩して、顔から地面に倒れ込む。
「殺してやる。」
赤人がボソッとそう呟きながら、立ち上がる。顔にはいくつも擦り剥いた痕ができ、血が出ていた。そして僕と蒼空を見て、今度はもっとハッキリと言う。
「殺してやる、お前ら二人とも!!」
そしてすぐ、赤人が凄い勢いで僕に殴りかかってきた。避けるなんて芸当、僕に出来るはずが無い。
ガンッと、嫌な音が僕の頭の中でこだまし、頬の辺りに鈍い痛みが走った。僕は背中から地面に倒れ込んだ。
「サクくんっ!」
蒼空が叫ぶ。次に赤人は僕の上に跨り、顔を何度も何度も殴り出す。
蒼空が止めようと僕の元に駆け寄ってくる。
「やめろ、来るな。」
なんとか僕は喉から声を絞り出した。僕を助けに来たら。また彼女が赤人に殴られる。二度もコイツに彼女を殴らせははしない。
「オラ、オラ、俺の女に手を出した上に、蹴飛ばしやがって。顔に傷がついたじゃねえか。」
その間も赤人は怒りを撒き散らしながら、容赦無く僕の顔面を殴り続ける。
僕は赤人を押し返そうと、胸元をずっと両手で押している。だが赤人はびくともしない。このまま押していても体力を消耗するだけだ。
なんとか対抗する方法を考えないと。ふと昔見た映画の技を思い出す。こんな状況の主人公が使っていた技だ。これしか無い。僕はそう直感する。
綺麗に決まれば、一気に形勢を逆転できる。
チャンスは一度きり。二度目からは警戒されてしまう。タイミングを見計らわないと。
その数秒後、
「おいおい、こんなもんか?さっきの蹴りの割にショボいなぁ。」
赤人が急に殴るのを止め。僕に話しかける。
今だ。
僕は赤人の胸元を掴んだ手を軸に赤人に全力の頭突きをする。
ゴンッ
辺りに硬い物同士がぶつかるかなり大きな音が響く。
赤人は僕に跨ったまま、フラフラと地面に背中を着いた。頭突きが、綺麗に決まったらしい。
僕は赤人の下から這い出る。そして今度は僕が赤人の上に跨る。
それぐらいでやっと赤人の目が真っ直ぐになった。その時、赤人が浮かべた表情は、恐怖だった。
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僕は赤人の胸ぐらを左手で掴み上げる。そして、もう一方の手を振り上げ、全力で振り下ろす、何度も、何度も、何度も。
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
赤人は口から血を吐き始めた。まるで少し前の僕のように。無論、殴る手を緩めはしない。
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
「よせ、やめてくれ。頼む。俺が悪かった。」
赤人は今度は懇願し始める、やめてくれ、と。僕もいつもしていた、聞き入れられた試しは一度も無いが。今回だって、勿論、拒否だ。
ガンッ、ガンッ、ガシッ、、、、、
ところが、途中でその手を何者かの両手にがっしりと掴まれてしまっている。僕は急いで、掴んでいる手の持ち主を確認する。
「蒼空、、」
それは蒼空だった。
「やめて。」
彼女が言ってくる。どうしてだ。蒼空だって、さっきコイツに叩かれ、殴られそうにまでなったのに。疑問でしか無い。
すると蒼空は僕が聞く前に理由を続ける。僕の顔から、僕の考えを察したのだろう。
「だって、これ以上したら。サクくん、同じになっちゃう、彼と、、、」
僕が、コイツと同じ。
ふと今の自分を振り返る。赤人の上に跨り、怒りに任せて、拳を振り下ろす。
言われてみれば、今の自分の姿は全く同じだった。よりにもよって、誰よりも憎んでいた、赤人と。
気付いた途端、さっきまでの怒りも興奮も熱も、全てがサーッと引いていってしまう。残された僕は頭の中が真っ白になった。
僕が呆然としていると、何かが顔に触れた。見ると、蒼空がハンカチを持って僕の顔についた血を拭ってくれていた。蒼空、僕の愛しの人。僕はその手を軽く掴み立ち上がる。
「ありがとう、僕に気づかせてくれて。」
蒼空が居なければ、まだ僕は赤人のを殴り続けていただろう。それこそ殺してしまっていたかもしれない。
「いや、いいよ。それに、殴り合ってた時のサクくんも、男らしくて、とってもかっこ良かったよ!」
僕が、男らくてかっこいい、、、
大好きな人に褒められて、言葉が詰まる。人間にとって、これ以上に嬉しい事なんか有るだろうか。
そろそろ、さっき赤人のせいで途中だった事の続きをしよう。
僕は蒼空から二メートルほど後ろに下がる。そして気を付けの姿勢を取った。胸の高鳴りを感じる。
それから、僕は大きく息を吸ってから...
「蒼空!! ずっと、ずっと昔から!君が大好きでした!僕と...」
一瞬言葉が詰まった、だが、言わなければならない。紡げ、自分の思いを、最愛の、彼女へ!
届け!僕の想いよ!
そして、僕は、言葉を振り絞って...
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