【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。

N2O

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番外編

お出掛けのはなし

「活気ありますね~!あ!あっちも見ましょう!」

「ちょっ、キ、キイチ!人多いんだから、うわっ!すまん!ぶつかって、ぐえっ、」

「やっぱ抱っこしていいですか?他の男に触られるの嫌なんで。」

「だ、駄目に決まってんだろ!!!もっと、ゆっくり歩け!!お前と足の長さ違うんだぞ!!」

「・・・じゃあ、もっとくっつきましょ。」



今日、ノクスは非番。
キイチと一緒に街へお出掛けである。


ちょうど休日ということもあり、商店が並ぶ通りは人でごった返していた。

小柄なノクスは人混みですぐに見えなくなってしまうので(ディトが言ったら殴られそう)、ぎゅっとキイチに手を握られ街を歩いていたが、すれ違った男と接触。

その後すぐ腰に手を回され、ピタッと寄り添う形で歩き始めた。


そんな恋人達は無数にいるので、特に気に留める者もいないのだが、ノクスはこの密着した体勢が堪らなく恥ずかしいのである。

キイチはそのノクスの顔を堪能するように、顔を時々覗き込むが、その度足を蹴られていた。


ノクスはそもそも街に、あまり出向かない。
趣味はもっぱら団員虐め訓練だし、食事も宿舎の食堂を使う。
休みもそんなにとらなかったが「シャチクじゃないっすか!駄目ですよ!!」と、強引に休みを取らされるようになった。




「今日はをお願いしてるんで、着けて帰りましょうね♪楽しみだなぁ。」

「・・・だから、何をだよ。」

「俺からの愛です。」

「ぶふっ、なっ、おまっ、」

「・・・はあぁあ・・・恥ずかしくてジュース噴いちゃうノクスさんも可愛い。」

「~~っ、早く行くぞ!店、どこだよ!!」



ここ最近、キイチが何かノクスへの贈り物を準備していることは分かっていた。

「ノクスさん何色が好きですか?」
「太いのと細いのと、どっちがいいですか?」
「肩こりやすいですか?」
「はぁ・・・可愛い・・・」


などなど。
とにかく質問攻めだったからだ。
隠すつもりもない・・・かと思いきや、その贈り物が一体何なのかは最後まで教えないつもりらしい。

一昨日、ノクスがスィーガの所に行った時なんか「キイチから溢れんばかりの愛を感じるよね」なんてニヤニヤしながら言われたものだから、ノクスは「相談相手にスィーガを選ぶのはやめろ」とキイチに釘を刺したのだった。



「あ、つきましたよ!ここでーす!スィーガさんに教えてもらったんです~!」

「・・・なるほど?」




看板も何も出ていないが、こじんまりして、落ち着いた店構え。
騒がしい通りからは少し離れた場所にある。

扉を開けると、からん、ころん、と陽気なベルの音が鳴った。



「おや、いらっしゃいましたか、キイチ様。・・・お相手は本当に魔法師団の団長様でしたね。これは失礼致しました。」


店の奥から出てきた初老の男性。
ノクスと同じ兎の獣人のようだが、彼の耳は薄茶色で長めの耳は垂れていた。
並んだ二人を見比べて、驚いたような顔をしたが、すぐ優しい笑みに戻った。


「俺嘘ついてなかったでしょ~??!本当にノクスさんと番なんですからね!ほらっ、」

「ぎゃっ!!何すんだ!!」


その男性に見せつけるように、ノクスをくるりと回し、着ていたシャツの襟を下にずらす。

白い頸に残る大きな噛み跡が露わになり、ノクスは驚きと恥ずかしさで、耳がぴーんと立ち上がり、慌てて両手で噛み跡を隠した。



「おや、おや。そのようにお顔が赤くなって・・・、随分可愛らしいお方なんですね。」

「・・・好きになっちゃ駄目ですよ、ジョルジュさん。」

「なる訳ねぇだろ!!」

「ふふふ、さぁ、こちらへどうぞ。もう品は出来てますから。」

「本当ですかっ!うわ~~楽しみ!!」

「・・・何か怖くなってきたんだけど。」



ノクスの手を引き、店の奥へと進んでいく狼の尻尾は嬉しそうに揺れている。
その後ろからついて行くノクスは、ソワソワと落ち着かない様子だった。






「うん!!うん!!!!!!やっぱノクスさんには黒!!髪も目も、も黒で正解!!はぁぁあ~・・・可愛い・・・っ」

「ち、近い、顔が近い・・・っ、」

「本当にお似合いです。肌が白く美しいので、キイチ様がお選びになった黒が際立ってますね。」

「・・・そ、うですか・・・」



ノクスの首に着けられていたのは、特殊な糸で編まれたレース状の首輪だった。

繊細な網目模様が、放射状に広がっている。

ノクスは日頃装飾品は身につけないので、そういった類のものに詳しくないが、にはどこか見覚えがあった。



「・・・だからスィーガ様に相談したわけだな。」

「はいっ!スィーガの番クレアさんが着けてるのを見て、いいなぁ~~って!デザインとか、色とかはジョルジュさんと相談して決めたんです!ん~~っ、よく似合ってます!!」

「・・・・・・おう。」

「~~っ、ジョルジュさん!!!どうやってこれ留めて完成でしたっけ?!早く宿舎戻って堪能したいんですけど!!!」

「ばっっか!!!キイチ!!」

「若さとは素晴らしいですね、ノクス様。」

「・・・・・・うう・・・」

「最後はこの糸の端に、ノクス様とキイチ様の魔力を流して完成です。特殊な糸ですので、金属よりも丈夫で、羽根のように軽いですから。実戦でも邪魔にならないかと。」

「俺は噛み跡見せびらかしたいんでこのままで良いんですけど、ノクスさんは恥ずかしがってたでしょ?は、俺だけ見れればいいし。」

「・・・・・・あり、がと。」

「~~はいっ!!!」




ジョルジュはほやほやの番二人を優しい顔で見守っている。

教えてもらった通り、まずはノクスの魔力を、そしてキイチの魔力を糸に流すと、垂れていた糸が自動で編み上がって行く。

キイチは「おお・・・!」と感嘆の声をあげた。





「お代はもう戴いておりますので。・・・お幸せに、ノクス様、キイチ様。」

「・・・世話になった。ありがとう。」

「他のデザインも今度お願いしますね!!!じゃ、また!!」

「うわっっ!!担ぐな!!恥ずかしい!お前、まさかこのまま、」
「帰りましょうね~♪早くしたいんで!」

「~~、ばっかやろう!!!!」





にこにこと、微笑むジョルジュは二人を見送ると「羨ましいですな」と独り言をこぼし、からん、ころん、とベルを鳴らし、扉を閉めた。

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