49 / 128
メラン編
49
『まだ半分も溜まってないな。しかしやはりあの方法は合理的だ。一気に譲渡される』
「・・・ちょっと忘れてたのに。思い出させんなよ、ディーのアホ。」
トウヤは黒の柱にもたれかかっている。ダニエルとエドガーとの会話で少し落ち着いたのに、またあの恥ずかしさを思い出してしまった。ジロリとディーを睨みつける。大体合理的とは何だ、とトウヤは苛立ったように鼻息を荒くした。
あと数日魔力を譲渡して貰えば、メランの結界を張り直すこともできるだろう。
だが今日のダニエルの話を聞いて、トウヤは考えたことがあった。
「・・なぁ、ディー。俺の魔法で怪我した人も治せんの?」
『トウヤ、お前出来るだけ表に出たくないのではなかったのか?お前の修復は治癒魔法の比ではない。元に戻るのだ。身体の欠損も元に戻る。それは異質だぞ?』
「んー・・表には出たくないけどさ、例えばまた魔物と戦うことになって、怪我した人が目の前にいてさ。俺が助けなきゃその人が死ぬ、ってなったら・・・魔法使うと思うんだ。」
トウヤは落ち着いた声色で話す。表情も穏やかだ。
ディーと以前一緒に立てた作戦が無事終わったら、村に帰りたいという気持ちは変わらない。これからもそうだ。
だが、自分の力や自分の置かれた状況をよく考えると、そうは言っていられないということにも気付いたのである。
「ディーもさ、最初は普通の人間だったんだろ?俺なんかよりずっとずっと長い間力使って葛藤もあったんだろうなぁって。俺にやれることはやんなくちゃって思ったんだ。国中の怪我人を治して回る、なんかはさすがに無理だけど。目の前にいる人だけでも助けたい。」
『・・・私は元から魔力が多すぎた。譲渡してもらうこともそんなに無かったのだ。・・・お前は周りに愛される人間なのだから、存分に助けてもらうといい。一人で行こうとするな。トウヤが魔法を使いたいと思うなら私は止めたりなぞ、せん。トウヤはトウヤだ、私ではない。自分の道を進むといい』
「・・・うん。ありがとう、ディー。」
ディーの言葉が、じんわりとトウヤの心に響く。自分は自分のままでいいのだ、他でもないディーにそう言ってもらえた。それがどれだけ心強いことか。
少しずつ自分ができることを広げていければいいな、と昨日よりも前向きになれたトウヤだった。
「・・・ちょっと忘れてたのに。思い出させんなよ、ディーのアホ。」
トウヤは黒の柱にもたれかかっている。ダニエルとエドガーとの会話で少し落ち着いたのに、またあの恥ずかしさを思い出してしまった。ジロリとディーを睨みつける。大体合理的とは何だ、とトウヤは苛立ったように鼻息を荒くした。
あと数日魔力を譲渡して貰えば、メランの結界を張り直すこともできるだろう。
だが今日のダニエルの話を聞いて、トウヤは考えたことがあった。
「・・なぁ、ディー。俺の魔法で怪我した人も治せんの?」
『トウヤ、お前出来るだけ表に出たくないのではなかったのか?お前の修復は治癒魔法の比ではない。元に戻るのだ。身体の欠損も元に戻る。それは異質だぞ?』
「んー・・表には出たくないけどさ、例えばまた魔物と戦うことになって、怪我した人が目の前にいてさ。俺が助けなきゃその人が死ぬ、ってなったら・・・魔法使うと思うんだ。」
トウヤは落ち着いた声色で話す。表情も穏やかだ。
ディーと以前一緒に立てた作戦が無事終わったら、村に帰りたいという気持ちは変わらない。これからもそうだ。
だが、自分の力や自分の置かれた状況をよく考えると、そうは言っていられないということにも気付いたのである。
「ディーもさ、最初は普通の人間だったんだろ?俺なんかよりずっとずっと長い間力使って葛藤もあったんだろうなぁって。俺にやれることはやんなくちゃって思ったんだ。国中の怪我人を治して回る、なんかはさすがに無理だけど。目の前にいる人だけでも助けたい。」
『・・・私は元から魔力が多すぎた。譲渡してもらうこともそんなに無かったのだ。・・・お前は周りに愛される人間なのだから、存分に助けてもらうといい。一人で行こうとするな。トウヤが魔法を使いたいと思うなら私は止めたりなぞ、せん。トウヤはトウヤだ、私ではない。自分の道を進むといい』
「・・・うん。ありがとう、ディー。」
ディーの言葉が、じんわりとトウヤの心に響く。自分は自分のままでいいのだ、他でもないディーにそう言ってもらえた。それがどれだけ心強いことか。
少しずつ自分ができることを広げていければいいな、と昨日よりも前向きになれたトウヤだった。
あなたにおすすめの小説
騎士は魔石に跪く
叶崎みお
BL
森の中の小さな家でひとりぼっちで暮らしていたセオドアは、ある日全身傷だらけの男を拾う。ヒューゴと名乗った男は、魔女一族の村の唯一の男であり落ちこぼれの自分に優しく寄り添ってくれるようになった。ヒューゴを大事な存在だと思う気持ちを強くしていくセオドアだが、様々な理由から恋をするのに躊躇いがあり──一方ヒューゴもセオドアに言えない事情を抱えていた。
魔力にまつわる特殊体質騎士と力を失った青年が互いに存在を支えに前を向いていくお話です。
他サイト様でも投稿しています。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される
水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。
しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み!
生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。
ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。
しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。
「――俺の番に、何か用か」
これは破滅を回避するためのただの計画。
のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。
悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。