【完結】泡の消えゆく、その先に。〜人魚の恋のはなし〜

N2O

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僕は十八歳になった。
六つ歳下の妹、ユイと並ぶと僕の方が小さい。
・・・なんでだ。
きっとユイがいつまで経っても食いしん坊だから、ユイに栄養をとられたんだ。

体も細くて、色白。
それが少しコンプレックス。
人魚の中では珍しい真っ黒な髪をあの王子様と同じように一つに結んでいる。


「兄様、今日も地上うえに行くの?ユイと遊ぼうよぉ。」

「ユイが木の実食べたいって言ったんだろ~!!要らないの!?」

「・・・いるぅ。いってらっしゃーい。」


ぷぅ、と頬を膨らませるユイ。
人魚が地上に上がっていいのは十四歳になってから。
ユイはまだ十歳だ。地上には上がれない。
そもそも魔力がまだ足りないから人間の姿になれない。
ユイはどこか不満げな顔で僕に手を振り見送りをする。
・・・僕、ユイのために木の実探しに行くんだけど?


「・・・うわっ、今日も良い天気!さすが太陽の国クラート!」


燦々と注ぐ陽の光に目が眩む。
まだ朝なのにもうすでに暑い。
これなら湖の水もすぐ乾くから、早く人間になれそう。

いつも決まった木の下で僕はヒレを乾かす。
僕の鱗は薄い灰色なんだけどあの宝玉みたいな不思議な光り方をする。

僕はそれがお気に入りだ。
婆様も綺麗っていつも褒めてくれていた。


「うう~・・・やっぱりゾワゾワするなぁ、この瞬間。いつまで経っても慣れない。」


淡い光を発しながら僕のヒレが人間のそれへと変化していく。
初めてこれを体験した時には気持ち悪くて気持ち悪くて・・・・・・
今ではゾワゾワ程度になったけど、気持ち悪いのには変わりない。

さてと。
事前に隠しておいた人間の服をささっと着たら・・・


「はいっ!人間の男の子の完成!」


歩く練習も父様に随分と手伝ってもらって何とか様になった。
今では普通の人間に見える・・・はず。


「この黒い髪が役に立ってるよなぁ。人魚の中では浮いちゃうけどさ。」


人魚では珍しい黒い髪も人間にはいくらでもいる。
むしろあの王子様の銀の髪こそ人魚の色だ。


「あの人も人魚の血が入ってるんだろうな・・・王族だし。・・・さてと。」


僕は湖のすぐ隣の森に向かって、片手を突き出した。


「今日もたっっくさん、木の実集めるぞーーー!」


そよそよと吹く風が心地いい。
・・・しかし。
まさかこの後あんなことが起こるだなんてこの時の僕は、まだ知る由もない。






感想 1

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