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グレイス編
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今日は、移動五日目。
あれからすぐ、ロシュさん達は帰投の準備を始め、次の日にはすぐにソレイユに戻るヒトと、僕と一緒に移動するヒトに分かれた。
僕は毎日、ヨミさんに魔道具の場所を教えてもらっている。
魔力量なら単純に僕に軍配が上がるけど、なんて言うか・・・・・・ヨミさんは、魔法に関する知識も技術も次元が違う。
ヨミさんから身体に魔力を込められると、その魔道具の場所が感覚で分かるんだよ?
もう、意味わかんないよね。
「僕の魔力を残してきたからそれを辿ればいいんだぁ」って言ってたけど、そんな簡単にできることじゃないだろうな、と思った。
僕は浄化をする時に、加減なく魔力を使う。
それでもし、ヨミさんに何かあったら大変だから、離れててもらおうと思ったんだけど「一通りの実験は済んだ身体だから大丈夫だよぉ」と何やら恐ろしい発言をされた。
だから毎日、馬に二人乗りして移動しながら、浄化をしているんだけど・・・・・・
「んん~っ!こんなに強力な魔力感じるとやっぱ僕興奮しちゃう~!・・・うわっ、ちょっとロシュ!氷投げないでよねっ!馬がビックリしちゃうでしょ!」
「それ以上、シンに近づくな。」
「シンの身体に触らないと、魔道具の場所伝えにくいいのぉ。だからこうして一緒に馬乗ってるんでしょ~。羨ましいからって、うひゃっ!また投げたぁ!!!」
僕の背中にピトッと隠れるようにくっつくヨミさん。
身体はヨミさんの方が大きいから、だいぶはみ出てるんだけどね。
鳥の獣人のヒトは、他のヒトより体温が高いんだって。
確かにそうかも。ヨミさん、身体ぽっかぽか。くっついた僕の背中からじんわりと汗が滲んでくる。
「・・・あ~・・・いい匂い。」
「んひゃあっ、」
僕の頸に顔を埋めるヨミさんが、ポツリと呟く。
息がふぅーっと、そこにかかって僕は変な声が出てしまった。
カアっと、顔が熱くなる。
「・・・・・・ヨミぃ、いい加減にしろよ・・・っ」
「よ、ヨミ、さん、僕、あ、汗かいてるから、汗臭いで、すよっ!?」
「んーん。とっても甘くていい匂いだよぉ・・・ねぇ、この首輪取っちゃダメ?直接嗅ぎたいんだけどぉ。」
「・・・っ、ダメに決まってんだろうが!!!」
「うわぁっ!羽の先っぽ凍ったぁー!!」
「あ、甘い・・・?!ロ、ロシュさんっ、ダメですよ!よ、ヨミさん、大丈夫ですか?!」
「・・・今のはヨミが悪い。」
「同感よ、ヴァン。私だって嗅いだことないのに。」
「ヨミ、今日はもう終われ。シン、こっち来い。」
ロシュさんは、自分が乗っていた馬を止め、颯爽と飛び降りると、僕とヨミさんの馬も止めた。
「絶対に落とさないから」とロシュさんから初日に言われて以来、僕は馬から落ちるようにして降りている。
落ちた先には、もちろんロシュさん。
筋肉質な腕で、毎回僕を抱き止めてくれる。
「おかえり、シン。」
「た、ただいま、です、ロシュさん・・・」
そして、ぎゅーっと抱きしめられるのがいつもの流れ。
・・・でも今日は一段とぎゅーが長い・・・?
「ヨミの匂いがする・・・クソッ」
ガバっと顔を上げたロシュさんは、僕の頸や、背中をパッパッと手で払い出した。
「鼻がいいと大変だねぇ。アハハ。」
「・・・あと、何日くらいで村に着くんだ、ヴァン。」
「・・・もうすぐ着きます。」
「は?」
「あ、ほら。あれです。」
「もうっ、羽の手入れ大変なのにぃ・・・。あっ、本当だ!シンくん、あの大きなポポの木覚えてるんじゃないの?」
ヨミさんが指差した先。
もう二度と見ることはないと思っていた風景が広がっていた。
死ぬまで、あそこに、いるはずだったから。
村までの道は、少し様子が変わっているみたい。道もこんなに綺麗じゃなかったはずだ。
だから、こんな近くに来てもわからなかった。
でも、あの木は、何も変わってない。
「・・・・・・はい・・・覚えてます・・・」
巨大なポポの木は、母さんや、それこそララと、村の外に出た時に帰る目印にしていた木だった。
ザァザァ、と吹く風に大きな枝が揺れている。
もうすぐ、もっと日差しが強まる時期だ。
あのポポの木の下は、きっと、今も涼しいんだろう。
「懐かしい・・・」
「・・・そうか。」
「あ、シンくん!あの子がララでしょ?昨日のうちに使い魔に知らせに行かせたんだぁ。ほら、木の下にいるよぉ。ちょっと先に確認してくるねぇ。」
「えっ、」
ヨミさんは大きな翼を広げ、馬を軽く蹴ってふわりと浮かび、先に飛んでいった。
「・・・あれが、ララ?」
遠目から見ても、かなり背が伸びた。
ララは僕より二つ歳下で、それはもう、泣き虫の女の子だった。
僕と同じ黒髪だったけど、浄化の力は弱くて。
歳が近いってのもあったけど、その共通点がより一層、幼いながらも僕たちの仲を深めたんだと思う。
【うちの娘じゃなくて、こっちの子どもをっ!最近母親も死んだから、連れて行くのにちょうどいいでしょう?!】
王都から浄化が出来る人間を探しにきた人達に、必死に訴えるララの親を思い出す。
あの場にララが居なかったのは、きっと事前にその人達が来ることを聞きつけて、どこかへ隠していたんだと思う。
でもそれでよかった。
ララに、あんな顔をした自分の親を見て欲しくなかったから。
「あ、走ってくるっすね。シンくん、そのララちゃんで間違いなさそうっすか?」
近づいて来るその女の人。
僕よりも少し薄い黒の、長い髪。
そして、何よりあの走り方。
【ララの走り方って、おもしろいよね。必死な感じがする。】
【シン兄ったら・・・またそれ言う~!気にしてるのっ、言わないで!】
【アハハハハ!】
【もうっ!笑わないでよぉっ!】
「ララ、です。間違いありません。」
「・・・そうか。」
息を切らし、僕たちの元へ走って来るララの目からはすでに、涙が溢れていて。
「うわーーーーーーーん、シン兄ちゃぁーーーーん!」
一直線に僕に飛びついてきたララは、僕より少し大きくなっていて。
さっきまでヨミさんに離れろ、と怒っていたロシュさんも、何も言わずにただ見守ってくれていた。
「・・・久しぶり、ララ。」
声に出すと、涙が出そうになったけど、ララには涙を見せたくなくて、僕は必死に奥歯を噛んで我慢した。
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