【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O

文字の大きさ
20 / 42
グレイス編

20

「ほら。ララ、もう泣き止んで?せっかく・・・また会えたんだから。」

「んっ、ぐすっ、う、うん。わかった。ぐす、」



ララは僕にしがみついたまましばらく泣き続けた。
あの頃みたいに、僕はララの背中をとんとん、と摩る。
お互い母さんに叱られた時はこうやって、慰め合ってたなぁ。

僕の母さんも怒るとめちゃくちゃ怖かったから、よく泣いてた。




「シン、立ったままも疲れる。向こうで休憩しよう。」

「は、はいっ!ありがとうございます・・・。ララ、行こう?」



こくんと、ララが静かに頷く。
僕はララの手を引いて、少し離れた森の入り口を目指した。
何箇所か、木と木の間にタープが張られているのが見える。

身体はこんなに大きくなったのに、泣き虫なのは相変わらずなんだな。




「ほらほら、人間のララちゃん。いつまでも泣いてたら不細工になるわよ。そろそろ泣き止みなさい。いいわね?これ、ハーブティーよ。二人で飲むといいわ。」

「はっ、はい!ご、ごめんなさい・・・嬉しくて・・・」

「ディーナさん・・・ありがとうございます。」

「いいのよ。私たちはあっちにいるから。ゆっくりお話しするといいわ。ほら、あんた達っ、そっち行くわよっ!」

「・・・・・・シン、あとで迎えに来る。」

「はい!ロシュさん。ありがとうございます。」




ディーナさんに腕を引っ張られながら移動するロシュさんの尻尾がペタッと下がっている。
・・・心配してくれてるんだろうな。
獣人のヒト達は感情が目に見えて分かるから、人間より安心する。




「・・・シン兄ちゃん、大丈夫なの・・・?」

「ん?何が?僕はそのララの腫れた目の方が心配だけど?」

「・・・もう。あのヒト達のことだよ。前に来たことある、あの翼が生えたヒト達は、優しかったけどさ。」

「翼・・・、ヨミさん達ね。ヨミさんが教えてくれたんだよ。ララのこと。・・・もしかして、ロシュさんのこと?」



ララがチラッと、ロシュさん達の方を見る。
不安そうで、そしてどこか疑っているような目だ。
そうだよね。戦争に勝った国の相手と僕は今一緒にいる。
そして、この黒髪だ。

僕がロシュさん達に利用されてるんじゃないか、ララは心配してくれているんだろう。
同じ黒髪だ。
これまで少なからず、そういう理由で嫌な思いはしてきたはず。



僕は、ララにあの頃と同じように微笑んだ。




「ララ、心配してくれてるんだよね。ありがとう。でも僕今、とっても安心出来る場所にいるんだ。」




そう、これが今の僕の本心。

母さんがいない村。
そして、誰もいないあの塔の中。

安心できる場所なんてなかった。




本当は誰にも会わず、ソレイユに行っても良かったのかもしれない。

でもララのことを聞いて、ララにだけは会いたかった。



僕の、たった一人の人間の友達だったから。






ララは僕の言葉を静かに聞いていた。
しばらく目に涙を溜めながら何か考えていたけど、その溜まった涙をごしごし手で拭うと、真っ直ぐ僕を見た。


薄茶色の瞳が、相変わらず澄んでいて、安心する。




「私ね、ずっと・・・ずっと、シン兄ちゃんに謝りたかったの。村の・・・ううん、私の両親がシン兄ちゃんにしたこと、聞いたの。」

「・・・あの時はきっとそうするしかなかったんだよ、ララ。」

「そんなことないっ!!!あんなの間違ってる!!私が・・・もう少し強い力持ってたら・・・シン兄ちゃんを一人で行かせることなんて・・・っ、」

「ララ。それ以上言わないで。・・・もう、全部終わったんだよ。」

「ひっく、でも、でもぉ~・・・」

「ララ、よく聞いて。」




僕はララの手を優しく手に取る。
家の手伝いを良くしてるんだろう。
ところどころ、小さな切り傷がある。

その手をそっと、握りしめた。



「この首輪見て。僕のこと・・・本当に大切に思ってくれるヒトができたんだよ。僕・・・・・・そのヒト達と一緒にソレイユに行く。ララとはここで、お別れなんだ。」




握った手が、ピクリと動いた。
口をぎゅっと固く閉め、泣かないように、泣かないように、我慢するララの瞳は本当に澄んでいる。



「また会いに来れるか分からない・・・けどね、僕、きっと幸せになるから。ララも、幸せになって。」

「・・・ん。わ、かった。私、村一番の美人、って言われてるんだからっ!シン兄ちゃんより可愛い人見つけて、その人と結婚するっ!」

「か、か、可愛い!?僕喜んでいいの、それ・・・?」

「喜んでいいのっ!シン兄ちゃん・・・大好きだよ。絶対、絶対、幸せになってね。約束・・・ひっく、なんだからぁ~~!」

「・・・ふふ、ふふふっ、また泣くんだから。ほら、ディーナさんにも言われたでしょ?不細工になるよ。泣き止んで。ほら、ハーブティー飲もう?」

「でぃーな、さん?ぐすっ、あの綺麗なヒト?あのヒトが、シン兄ちゃんの恋人?」

「ブッフォっ!ゲホッ、ゴホッ、」

「あ、違うの?じゃあ、あの髪の毛結んでるヒト?・・・・・・・・・まさかあの怖そうな虎のヒトじゃないよね?!」

「ゲホッ、ゲホッ。もう、ララったら本当そういう話好」
「ねぇってば!どのヒト!?」



僕はチラリとロシュさんの方を見た。
ディーナさんやフォルさんに話し掛けられているけど、ブスッと不機嫌そうにそっぽを向いている。
相変わらず耳も尻尾も元気が無さそう。

いつもあんなに自信満々なのに。


木の間から注ぐ陽の光に反射する金髪、そして黄金の瞳。
手や足はとっても長くて、きゅっと引き締まっている身体。

そんなヒトが何で僕を・・・?っていまだに思うけど。





「・・・・・・虎のヒトなんだね。シン兄ちゃん、顔真っ赤だよ。」

「・・・顔洗って冷やしたい・・・。ララのせいだからね、もう・・・」




そんな僕をニヤリとした顔で見たララが「虎の獣人様~!シン兄ちゃんのお迎えお願いしまーす!」と大声で叫んだのは、その後で。


僕は大慌ててで、顔に目一杯手で風を送るはめになった。

感想 9

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

もふもふ聖獣様に拾われた不遇オメガは、空に浮かぶ島で運命の番として極上の溺愛を注がれる

水凪しおん
BL
「オメガがいるから、村に災いが降りかかったのだ」 理不尽な理由で村人たちから忌み嫌われ、深い雪の森へと生贄として捨てられた十九歳の青年、ルカ。 凍える寒さの中、絶望に目を閉じた彼の前に現れたのは、見上げるほど巨大で美しい「白銀の狼」だった。 伝説の聖獣である狼に拾われたルカが目を覚ましたのは、下界の汚れから切り離された雲海に浮かぶ美しい島。 狼は人間の姿——流れるような銀髪と黄金の瞳を持つ壮麗なアルファの偉丈夫、レオンへと変化し、ルカにこう告げる。 「君は、俺の運命の番だ」 これまで虐げられ、自分を穢れた存在だと思い込んでいたルカは、レオンの甘く深いアルファの香りと、恐ろしいほどの優しさに戸惑うばかり。 温かい食事、美しい庭園、そして決して自分を傷つけない大きな手。 極上の溺愛に包まれるうち、ルカの心に固く巻きついていた冷たい恐怖の糸は、少しずつほどけていく。 そして、ルカを捨てた村人たちが強欲にも島へ足を踏み入れたとき、ルカは自らの意志とオメガとしての本当の力に目覚める——。 これは、孤独だった不遇のオメガが、伝説の聖獣の番として永遠の幸せと自分の居場所を見つけるまでの、心温まる溺愛ファンタジー。

処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される

水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。 しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み! 生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。 ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。 しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。 「――俺の番に、何か用か」 これは破滅を回避するためのただの計画。 のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。 悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。