【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O

文字の大きさ
24 / 42
グレイス編

24 ◎

「ソレイユでは、16歳で成人。お互い成人を迎えていれば番になれるんだ。」






下から覗き込むように、俺を見上げる黒い瞳は、今日も美しい。


俺より少し低い体温を布ごしに感じながら、並んだ腕を比べると、こうも肌の色が違うのか、と驚くほど、シンは相変わらず色白だ。

食べる量も、動く機会も増えたが、それでもまだまだ身体は細く、その色白の腕ともなれば強く掴んだら簡単に折れてしまうのではないかと、実は、気が気ではない。





俺たちは、色んなことが違って、知らないことも多い。

だからこそ、お互い知るべきだった。





番、のこともそうだ。






「互いに頸を噛むことで番として成立するんだ。番になれば・・・離れられなくなる。精神的な繋がりが出来るからだ。」

「人間のシンちゃんにはまだ分からない部分も多いわよね。でも、獣人にとって番、って言ったらそりゃあもう、自分の命と同じ・・・いえ、自分の命よりも尊い存在なの。」

「は、はい・・・それは以前、ロシュさんから聞きました。」

「・・・・・・番から、無理矢理離されて、精神的に狂った獣人もいる。」

「・・・そ、うなんですか・・・?!」

「ヴァンさんの言ったことは本当っすよ。団長のことだから、色んな説明すっ飛ばしてると思うんすけど、シンくんのことがめっちゃくちゃ大事っていうのは間違いないっすよ。」

「ディーナも、だよねぇ?その耳飾り、ディーナの魔力感じるもん。何か特殊な魔法でもかけてるんじゃなぁい?うーんとね、・・・・・・・・・追跡?ねぇ!当たってる??」

「そ、そ、そうなんですか?!」
「・・・ディーナ、お前ぇ・・・っ」

「シンちゃんの見守りも兼ねてるのよぉ。いいでしょお?」





ディーナがシンの頭を撫でる。
シンは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


・・・面白くない。

ディーナが手を伸ばしても届かない位置に腰をずらす。

「相変わらず大人気ないっすね、団長」と頬杖を突きながら言うのはもちろんフォルだ。





ここは、塁壁境にある騎士団の詰所。







まさか、シンが成人17歳だったとは。
考えもしなかった。



14、15歳だと思い、成人になるまでは・・・とあの白い頸を見るたび噛みたくなるのを必死に我慢してきた。







【 と、歳、ですか?えっと・・・今、じゅ、17歳です、けど・・・  】





そうシンの口から聞いた時、本当に自分の感情がコントロール出来なくなりそうだった。




俺の中の本能が、噛め、噛んでしまえ、と叫ぶ。

口の中に涎が溜まって、それをひたすら飲み込むしかない。









ああ、何ともどかしい。









だが、そんな俺をここまで引き戻したのは、他でもなくシンだった。




【 僕、知らないことばっかりでごめんなさい!でも、お、教えてください!ロシュさん達のこと、もっと・・・もっと、知りたいですっ!! 】








知りたい。
シンが、知りたい、と言ってくれた。







あれがしたい。
こうしたい。

これらはシンがほとんど言わなかった類の言葉。




シンが少しずつ、少しずつ、変わっていく。
もちろん、人として良い方向に。

それを一番近くで見るのは、俺でありたい。


シンのことをもっと知りたい。
そしてきっと、シンのことを知るたびにまた愛おしさが募っていくのだろう。











「俺はシンを番にしたい。本音を言うと、今すぐにでも、だ。それは変わらない。だが、無理強いはしたくない。18歳成人になるまで、考えてみて欲しい。」

「は、はいっ、」

「・・・すまないが、全く手を出さない、というのは・・・約束できん。」

「・・・?手、ですか?」

「ちょっと!シンちゃんに何を宣言してんのよっ!狡いじゃない!!!」

「・・・・・・え?!狡い?!ディーナさん、団長止めるかと思いきや、まさかのそっちすか?」

「当たり前でしょ!私だって、耳飾り渡してんのよ!!?本気なんだからねっ!」

「・・・あ、あのっ、」

「なんだ?」「どうしたの?」

「ご、ごめんなさい、世間知らずで・・・あの、手を出すって、ど、どういう意味ですか・・・?」

「「・・・・・・・・・・・・」」


この純粋すぎる人間生き物は、何だ。
近くでやりとりを見ていたヴァンが両手で顔を押さえたのが見える。

・・・気持ちはわかる。だが、お前には、いや、お前にも絶対渡さんがな。






「あのねぇ、シンくん!手を出す、っていうのはこういうことを言うんだよぉ!」




俺の膝の上に乗せていたシンの腕を、ヨミがぐぃっと引っ張るのが、スローモーションのように見えた。




「僕も、シンくんと仲良くしたいんだぁ!」



そう言って、そのままシンを抱きしめたあと、シンの透明感のある頬にキスをするヨミ。



「うっわぁ!お肌すべすべ~~っ!!!」

「・・・・・・殺す。外出ろ、ヨミ。」

「えぇ~~?やだぁ。身を持って教えただけだもん。」

「ヨミ、どけ。私と今すぐ代わりなさい。」

「~~っ、き、き、きす・・・?!」

「・・・シンくん。手を出すってそう言うことっすよ。うちの奴らがほんとごめんね。」

「・・・・・・いいなぁ。」








この後は察しの通り。
混沌とする詰所の中で、あの時と同じようにシンの腹の虫が可愛くなるまで乱闘騒ぎは続いた。



「・・・次シンに手出したら、羽焼いてやるからな。」

「番気取りにそんなこと言われても、僕聞く必要ないもーん。」

「・・・毒でも混ぜてやろうかしら。」





シンには聞こえないよう小競り合いは続いたが、腹が鳴ったことに照れてしまったシンを抱き上げ、鼻の先にキスをして、とりあえずその場は収まった。



感想 9

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

もふもふ聖獣様に拾われた不遇オメガは、空に浮かぶ島で運命の番として極上の溺愛を注がれる

水凪しおん
BL
「オメガがいるから、村に災いが降りかかったのだ」 理不尽な理由で村人たちから忌み嫌われ、深い雪の森へと生贄として捨てられた十九歳の青年、ルカ。 凍える寒さの中、絶望に目を閉じた彼の前に現れたのは、見上げるほど巨大で美しい「白銀の狼」だった。 伝説の聖獣である狼に拾われたルカが目を覚ましたのは、下界の汚れから切り離された雲海に浮かぶ美しい島。 狼は人間の姿——流れるような銀髪と黄金の瞳を持つ壮麗なアルファの偉丈夫、レオンへと変化し、ルカにこう告げる。 「君は、俺の運命の番だ」 これまで虐げられ、自分を穢れた存在だと思い込んでいたルカは、レオンの甘く深いアルファの香りと、恐ろしいほどの優しさに戸惑うばかり。 温かい食事、美しい庭園、そして決して自分を傷つけない大きな手。 極上の溺愛に包まれるうち、ルカの心に固く巻きついていた冷たい恐怖の糸は、少しずつほどけていく。 そして、ルカを捨てた村人たちが強欲にも島へ足を踏み入れたとき、ルカは自らの意志とオメガとしての本当の力に目覚める——。 これは、孤独だった不遇のオメガが、伝説の聖獣の番として永遠の幸せと自分の居場所を見つけるまでの、心温まる溺愛ファンタジー。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。