7 / 18
7
しおりを挟む
最初からサフィーは身分を隠す気はないらしい。
俺は昨日よりも少し鍔の小さな帽子を被ってきたけど、隠したところでサフィーの場合、赤い髪も、灰色の目も珍しいから目立つもんな。
街に着いた途端、みんなサフィーに手を振ったり、声掛けてきたり。勿論、少し距離を置いて。
おお・・・!当たり前だけど、超超有名人。
帝国の皇族と平民の距離感も割と近いんだな。
しかもサフィーも愛想はあんまりないけど、ちゃんと対応してる。
意外と、いい感じだ。
近寄ってきた人の中にはサフィーと俺を見比べて「良かったですね・・・っ!」と涙ぐむ人も結構居たんだけど、あれは何・・・?
しかも「お二人が持ってるだけで良い宣伝になるから!」と店の売り物である菓子とか、串焼きとか果物とか渡してくる人もいて。
あれよあれよと・・・・・・
「ほ、本当にこんなに貰っていいのかな・・・」
「民の厚意だ。好きなだけ食えばいい。」
「ええ・・・・・・?」
年季の入った木製のテーブルの上には、種類豊富な食べ物たち。
両手で抱えきれなくなって、キョロキョロしてたらたまたま昨日リファと一緒に串焼きを食べた場所が空いていたからそこに座った。
リファが見たら、涎垂らして喜びそう。
「だっ、だって、みんなサフィーにあげた訳だし、俺は・・・」
「むしろ、ジェハへの貢物だろ。」
「・・・・・・・・・何故にそうなる?」
「ジェハは自分の立場を全く分かっていない。」
「はあ?」
「・・・・・・心配だ。」
「はあ??」
サフィーの言ってる意味がわからなくて、う~んと腕を組み、無い頭を捻って考えたけど、やっぱわからん。
そんな俺をサフィーは頬杖をつきながら、まるで観察するように眺めていた。
「とにかく好きなものから食え」と、急かされて、俺は好物の甘酸っぱい果物を手に取り、皮も剥かずにかぶりつく。
串焼きから食べても良かったけど、朝ろくに食べてなかったから、いきなり串焼きは重いな~、と思ってさ。
うん。これが、正解。
「最っ高・・・!うまぁ・・・!」
ああ・・・美味しい。瑞々しい。甘味が強い。
今朝採ったばっかりの物かな?
何個でもいける。
もぐもぐと、果汁が滴り落ちるのも無視してかぶりついていると、サフィーの手が俺の腕に伸びてきた。
あ、さすがに行儀が悪すぎたとか?
一応皇子だったな、サフィー。
「すまん」と言う意味を込めて、ちょっと頭を下げるとサフィーは眉を下げて、くすりと笑った。
「・・・相変わらずそれ好きなんだな、ジェハ。」
「え?」
ぐんっ、とサフィーの方へ腕を引かれた。
俺の腕に垂れた果汁を、サフィーは何の抵抗もなく舐めとる。
普段なら、絶叫して、ぶん殴ってるところだと思う。
けど、この時何故か強烈な既視感と共に"そうされるのが当たり前"のような、不思議な、不思議な感覚に陥ってしまって、俺は食べかけだった果物を思わず落としてしまった。
俺がぽかん、と固まってしまったのを見てジェハも不思議そうな顔で首を傾げる。
そのサフィーの顔が、本当に穏やかな顔で、優しくて、「おいおいさっき声掛けたみんなにその顔したらイチコロだぜ」と声に出して言ってしまいそうだった。
最後の一滴、と言わんばかりに俺の手首についた果汁をペロリと舐めた後、サフィーは瞬時に意地悪そうな顔をして、ムギュと俺の鼻を摘む。
「・・・何すんだよ、こら。」
「目ぇ開けて寝てるのかと思ってな。」
「んなわけねぇだろ。」
「くっ、ふふふ、ふはっ、」
「お、俺で遊ぶな!!!」
「遊んでない。愛おしいと思っただけだ。」
「ぐっ、ぐぬぬ・・・っ!お前も早く食え!!勿体無いだろ!!」
「はいはい。」
「適当にあしらうな!!」
「はいはい。」
「~~~~クソッ!!!!」
ガブッと、蒸したパンに齧り付く。
絶対絶対絶対絶対、美味しいはずなのに。
耳が熱くて。
心臓が煩くて。
味がよくわからない。
ごめんよ、屋台のおばちゃん。
また今度ちゃんとお金を払って買いに行くから。
この後サフィーは俺の三倍くらいの量をぺろりと平らげて、さも当然かの如く俺の腰に手を回し、次の目的地へと歩き始めた。
俺は昨日よりも少し鍔の小さな帽子を被ってきたけど、隠したところでサフィーの場合、赤い髪も、灰色の目も珍しいから目立つもんな。
街に着いた途端、みんなサフィーに手を振ったり、声掛けてきたり。勿論、少し距離を置いて。
おお・・・!当たり前だけど、超超有名人。
帝国の皇族と平民の距離感も割と近いんだな。
しかもサフィーも愛想はあんまりないけど、ちゃんと対応してる。
意外と、いい感じだ。
近寄ってきた人の中にはサフィーと俺を見比べて「良かったですね・・・っ!」と涙ぐむ人も結構居たんだけど、あれは何・・・?
しかも「お二人が持ってるだけで良い宣伝になるから!」と店の売り物である菓子とか、串焼きとか果物とか渡してくる人もいて。
あれよあれよと・・・・・・
「ほ、本当にこんなに貰っていいのかな・・・」
「民の厚意だ。好きなだけ食えばいい。」
「ええ・・・・・・?」
年季の入った木製のテーブルの上には、種類豊富な食べ物たち。
両手で抱えきれなくなって、キョロキョロしてたらたまたま昨日リファと一緒に串焼きを食べた場所が空いていたからそこに座った。
リファが見たら、涎垂らして喜びそう。
「だっ、だって、みんなサフィーにあげた訳だし、俺は・・・」
「むしろ、ジェハへの貢物だろ。」
「・・・・・・・・・何故にそうなる?」
「ジェハは自分の立場を全く分かっていない。」
「はあ?」
「・・・・・・心配だ。」
「はあ??」
サフィーの言ってる意味がわからなくて、う~んと腕を組み、無い頭を捻って考えたけど、やっぱわからん。
そんな俺をサフィーは頬杖をつきながら、まるで観察するように眺めていた。
「とにかく好きなものから食え」と、急かされて、俺は好物の甘酸っぱい果物を手に取り、皮も剥かずにかぶりつく。
串焼きから食べても良かったけど、朝ろくに食べてなかったから、いきなり串焼きは重いな~、と思ってさ。
うん。これが、正解。
「最っ高・・・!うまぁ・・・!」
ああ・・・美味しい。瑞々しい。甘味が強い。
今朝採ったばっかりの物かな?
何個でもいける。
もぐもぐと、果汁が滴り落ちるのも無視してかぶりついていると、サフィーの手が俺の腕に伸びてきた。
あ、さすがに行儀が悪すぎたとか?
一応皇子だったな、サフィー。
「すまん」と言う意味を込めて、ちょっと頭を下げるとサフィーは眉を下げて、くすりと笑った。
「・・・相変わらずそれ好きなんだな、ジェハ。」
「え?」
ぐんっ、とサフィーの方へ腕を引かれた。
俺の腕に垂れた果汁を、サフィーは何の抵抗もなく舐めとる。
普段なら、絶叫して、ぶん殴ってるところだと思う。
けど、この時何故か強烈な既視感と共に"そうされるのが当たり前"のような、不思議な、不思議な感覚に陥ってしまって、俺は食べかけだった果物を思わず落としてしまった。
俺がぽかん、と固まってしまったのを見てジェハも不思議そうな顔で首を傾げる。
そのサフィーの顔が、本当に穏やかな顔で、優しくて、「おいおいさっき声掛けたみんなにその顔したらイチコロだぜ」と声に出して言ってしまいそうだった。
最後の一滴、と言わんばかりに俺の手首についた果汁をペロリと舐めた後、サフィーは瞬時に意地悪そうな顔をして、ムギュと俺の鼻を摘む。
「・・・何すんだよ、こら。」
「目ぇ開けて寝てるのかと思ってな。」
「んなわけねぇだろ。」
「くっ、ふふふ、ふはっ、」
「お、俺で遊ぶな!!!」
「遊んでない。愛おしいと思っただけだ。」
「ぐっ、ぐぬぬ・・・っ!お前も早く食え!!勿体無いだろ!!」
「はいはい。」
「適当にあしらうな!!」
「はいはい。」
「~~~~クソッ!!!!」
ガブッと、蒸したパンに齧り付く。
絶対絶対絶対絶対、美味しいはずなのに。
耳が熱くて。
心臓が煩くて。
味がよくわからない。
ごめんよ、屋台のおばちゃん。
また今度ちゃんとお金を払って買いに行くから。
この後サフィーは俺の三倍くらいの量をぺろりと平らげて、さも当然かの如く俺の腰に手を回し、次の目的地へと歩き始めた。
243
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
この世界で、君だけが平民だなんて嘘だろ?
春夜夢
BL
魔導学園で最下層の平民としてひっそり生きていた少年・リオ。
だがある日、最上位貴族の美貌と力を併せ持つ生徒会長・ユリウスに助けられ、
なぜか「俺の世話係になれ」と命じられる。
以来、リオの生活は一変――
豪華な寮部屋、執事並みの手当、異常なまでの過保護、
さらには「他の男に触られるな」などと謎の制限まで!?
「俺のこと、何だと思ってるんですか……」
「……可愛いと思ってる」
それって、“貴族と平民”の距離感ですか?
不器用な最上級貴族×平民育ちの天才少年
――鈍感すれ違い×じれじれ甘やかし全開の、王道学園BL、開幕!
出来損ないΩと虐げられ追放された僕が、魂香を操る薬師として呪われ騎士団長様を癒し、溺愛されるまで
水凪しおん
BL
「出来損ないのβ」と虐げられ、家族に勘当された青年エリオット。彼に秘められていたのは、人の心を癒し、国の運命すら変える特別な「魂香(ソウル・パフューム)」を操るΩの才能だった。
王都の片隅で開いた小さな薬草店「木漏れ日の薬瓶」。そこを訪れたのは、呪いによって己の魂香を制御できなくなった「氷の騎士」カイゼル。
孤独な二つの魂が出会う時、運命の歯車が回りだす。
これは、虐げられた青年が自らの力で居場所を見つけ、唯一無二の愛を手に入れるまでの、優しくも力強い癒やしと絆の物語。
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
【完結】人見先輩だけは占いたくない!
鳥居之イチ
BL
【登場人物】
受:新島 爽《にいじま そう》
→鮫島高等学校/高校二年生/帰宅部
身長 :168センチ
体重 :59キロ
血液型:A型
趣味 :タロット占い
攻:人見 孝仁《ひとみ たかひと》
→鮫島高等学校/高校三年生/元弓道部
身長 :180センチ
体重 :78キロ
血液型:O型
趣味 :精神統一、瞑想
———————————————
【あらすじ】
的中率95%を誇るタロット占いで、校内の注目を集める高校二年生の新島爽。ある日、占いの逆恨みで襲われた彼は、寡黙な三年生の人見孝仁に救われる。
その凛とした姿に心を奪われた爽だったが、精神統一を重んじ「心を乱されること」を嫌う人見にとって、自分は放っておけない「弟分」でしかないと告げられてしまうが……
———————————————
※この作品は他サイトでも投稿しております。
花形スタァの秘密事
和泉臨音
BL
この国には花形と呼ばれる職業がある。人々を魔物から守る特務隊と人々の心を潤す歌劇団だ。
男ばかりの第三歌劇団に所属するシャクナには秘密にしていることがあった。それは幼いころ魔物から助けてくれた特務隊のイワンの大ファンだということ。新聞記事を見ては「すき」とつぶやき、二度と会うことはないと気軽に想いを寄せていた。
しかし魔物に襲われたシャクナの護衛としてイワンがつくことになり、実物のイワンが目の前に現れてしまうのだった。
※生真面目な特務隊員×ひねくれ歌劇団員。魔物が体の中に入ったり出てきたりする表現や、戦闘したりしてるので苦手な方はご注意ください。
他サイトにも投稿しています。
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる