【完結】竜討伐の褒賞は、鹿角の王子様。(志願)

N2O

文字の大きさ
4 / 4
番外編

貴方の隣は、僕のもの。




「どうだ?マシになったか?」


額に少し冷たい手が触れる。
ぺたぺたと顔の形をなぞるように動いたそれは、僕の熱を吸収して、あっという間に離れてしまった。



「・・・もっと沢山触って確認してくだ、っ、」

「よし、さっきより大丈夫そだな。」

「も~・・・だから叩くならもっと思いっきりやってくださいって言ってるのに・・・」

「残念ながら俺に病人を殴る趣味はねぇんだわ。」



ベッドに腰掛け、眉を下げた顔も心の底から愛おしい。
傍に居てくれるだけで十分なはずなのに、もっと、もっと、と自分の中の奥底から欲望が溢れ出てしまって、もう、どうしようもない。



「じゃ、俺今度こそ畑行くから。くれぐれもついてくんなよ?わかってるよな、リオ?」

「・・・・・・」



僕の体は無理が効く。
幼少期からそういう風に教育されてきた。

弱いところを見せてはならない。
油断なんてもっての外。
だから季節の変わり目で、少し熱が出たくらいどうってことない。
普段どおり、いつもどおり。


なのに今朝、目があった瞬間ハルタさんにはバレてしまった。



「強制的に眠らせてやろうか?」

「・・・・・・」

「・・・ふっ、ふふっ」

「・・・何で笑うんですか。」

「べっつに~?ほら、いいから目瞑れ。俺だってそんな魔法使いたくねぇよ。な?」

「・・・・・・はい。」



仕方なく目を瞑ると、くすくすと笑う声と共に、さっきより温もりを纏った小さな手が降りてきた。
僕の眉間に寄った皺を梳かすように上へ下へ行き来する。


「・・・行ってきます。」



そう呟くようなハルタさんの声が遠くに聞こえてから、次、目を開けた時には、すでに日は高く昇っていた。



起き上がってくるくると腕を回す。
朝のような体のだるさは感じない。
それがハルタさん特製の薬のおかげなのか、ハルタさん自身のおかげなのか、この際もう、どっちでもいいのだけど。

温もりをたどりキッチンへ向かう。
片手を腰に当て、もう片手でお玉を持ってスープを混ぜる姿が見えた。

小さいのに、大きく見えるのは何故だろう。
背中を包むように後ろから体を沿わせれば、彼を誰にも見せなくて済むくらいすっぽりと隠せてしまうのに。



「熱は?」

「・・・自分じゃわかりません。」

「・・・・・・ったく、しょうがねえなぁ。」



新月の夜が、僕に向いた。
額に触れた手を捕まえて、甘い香りを目一杯吸い込む。

幸せが溢れそうで、目を瞑る。
愛しい彼はまた、くすくすと笑った。



「あとで畑手伝えよ。」

「・・・もちろんです、ハルタさん。」



カーテンを揺らす風が新しい季節を告げる。

ハルタさんと迎える二度目の春は、去年よりきっと、もっと、優しい香りがするだろう。





----------------☆

素敵なイラストから着想を得て、番外編を書きました。

この二人はたぶん、ゆっくりゆっくり、築いていく二人なので、自然とこんな感じになりました◡̈(どんな感じ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

素敵絵師⇨MBM様(X @MBMpaper)

2025.11.15

----------------☆
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

Viura
2025.12.18 Viura

好き。大好きです。素敵なお話をありがとうございました。

2025.12.18 N2O

Viura 様

好きと言っていただけてほんとにほんとに嬉しい〜〜〜です!!
こちらこそありがとうございます😭
機会がありましたらぜひまたリオとハルタの世界をのぞきに来てください!✨

解除
turarin
2025.08.10 turarin
ネタバレ含む
2025.08.11 N2O

turarin 様

感想ありがとうございます✨
そう言っていただけて大変嬉しいです!
二人は幸せに暮らしましたとさ、がぴったりですよね☺️
互いに甲斐甲斐しく世話を焼きながら歳をとっていくと思います。

イラストも素敵に仕上げていただきました!
絵師様には感謝しかありません・・・ッ

解除
なっぱ
2025.07.28 なっぱ
ネタバレ含む
2025.07.28 N2O

なっぱ 様

なっんと・・・嬉しいお言葉・・・ッ😭
最後まで読んでいただき、ご感想までありがとうございます!!
ハルタもリオもきっかけは違えど、互いが大きな支えになった二人です◡̈
幸せになってくれ〜〜と願いを込めて書きました。(絶対幸せになる)

細々と書いてますので、また読んでいただければ幸いです♡

解除

あなたにおすすめの小説

短編版【けもみみ番外編】卒業の朝〜政略結婚するつもりで別れを告げた宰相子息ユリウスは黒豹エドワードの策略に嵌る〜

降魔 鬼灯
BL
 銀の髪が美しい銀狼獣人ユリウスは宰相家の一人息子だ。  留学中、同室になった黒豹獣人のエドワードと深い仲になる。  子供の頃からエドワードに想いを寄せていたが、自国では同性の婚姻は認められていない。しかも、文官トップの宰相家と武官トップの騎士団長家の仲は険悪だ。  エドワードとは身体だけの関係。そう言い聞かせて、一人息子のユリウスは、帰国を期にエドワードと別れ政略結婚をする決心をする。  一方、エドワードは……。  けもみみ番外編  クロードとアンドレアに振り回される学友2人のお話。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。