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下(挿絵あり)
頬を伝う雫のせいで、ズボンの膝がぐしょぐしょで気持ちが悪い。
いっそ雨でも降ってくれたら誤魔化しがきくというのに、木々の間から見える空は腹が立つほど青かった。
濡れたズボンを乾かすのにはちょうどいいかもしれないが、巨木の影に隠れていてはその恩恵にあやかる事もできない。
擦りすぎた目元はヒリヒリと痛んで、今日もダメだったという事実を僕に突きつけてくる。
────こんなちっぽけな僕に、できることがあるのだろうか。
「おー、嬢ちゃん。今日もやっぱりここに居たか。お前も懲りないねぇ。」
「・・・僕は歴とした男です。何度も言わせないでください。あと迷子でもありませんので、一人で帰れます。」
「まあまあ、そう言うなって。ほら、お前も食え。うまいぞ?」
「・・・・・・またあの甘い煮豆を穀物に塗りたくった悪趣味な菓子ですか?」
「そんなこと言って食うくせに。お前おはぎ絶対好きじゃん。」
「・・・・・・」
誰にもこの様な姿を見られたくないからこうやって、わざわざ人目につかない巨木の影を選んだというのに、僕は今日もこの男に見つかってしまった。
この森へ足を運んだ初日は、目的を達成できないばかりかこんな無神経な男に声をかけられるだなんて・・・と、更に泣けてきて、随分とこの男を狼狽えさせたことを思い出す。
帽子で顔を隠しながら、慎重に目の前の男の様子を窺った日が懐かしい。
武器になるようなものは何も・・・と言うか、いつもこの男の手には木の実や山菜の入った小さな籠か、お世辞にも上手とは言えない野花の冠しか持っていない。
何者か知らないけど目つきが悪い割に、お人好しもお人好し。
こんなのが盗賊なわけもないと、疑り深い僕が早々に切り替えたぐらいだ。
もし逆に、獣や盗賊の類に襲われたらこの男はどうするつもりなのだろう。
大手を振って人様のことは言えないが、この森に入る装備としては不十分なのではないか。
そんな余計な心配をしたことを、昨日のことのように覚えている。
・・・まあ、仕方あるまい。
万が一の緊急事態には、不格好な見た目の割に甘くて美味しい菓子に免じて僕がこの男を助けてやろう。
「で、魔法使いサマへのアタックは今日もダメだったん?本当ケチな奴だな~。」
「・・・変な言い方はやめてください。それにあの方は《東の森の守護者》様、です。ケチ等と低俗な表現は許されません。あなたはお会いしたことがないでしょうけど、あの方は聡明で誰にでも公平、素晴らしい力を持った第十三代《東の────」
「はいはいはい、わかったわかったわかった。ダメだったわけね、うん。わかったって。ほら俺の分、もう一つおはぎ食えよ。」
「・・・・・・」
城の者の目を盗みここまで一人で来た手前、僕は完璧に素性を隠したつもりだ。
馬は森の入り口に繋ぎ、ここまでは徒歩。
髪はできるだけ帽子の中に隠し、いつも服は庭師に無理を言って彼の息子のお古を借りている。
大きな鍔の帽子を深く被れば、獣耳はもちろん見えなくなる。
僕の鹿角が小さくまだ目立たないことを嬉しく思うのは、ここへ来る時だけだ。
正直僕にとってここへ来ることが、最後の頼みの綱だ。
どれだけ優秀な医者や祈祷師を呼んだところで、母上の具合は良くならなかった。
それどころか日に日に起きていられる時間が短くなり、最近は会話さえままならないほどに弱りきっている。
父上にはこれ以上の心労をおかけしたくない。
だから内緒で城の書庫、禁書棚まで読み漁り辿り着いたのがこの東の森に棲む《東の森の守護者》様の存在。
代々《東の森の守護者》の名を受け継ぐ者は、"御業"とされる治癒や回復の魔法を使うことができると知った。
何でも妖精の力を借りるとか・・・、本当のところは御本人にしかわからないことだが。
だから僕は、ここへ来た。
《東の森の守護者》様が御力を貸してくださると、手放しで、勝手に、無責任に信じ込んで。
「・・・《東の森の守護者》様のおっしゃるとおりだということは十分理解しています。一人に力を貸せば、他の者にも力を貸さなくてはならない。特に"御業"となれば・・・、それもそうでしょう。魔法の行使には責任が伴う。当たり前の事、です。だけど・・・、だけど、僕は・・・・・・」
・・・ああ、腹が立つ。
自分では何もできない無力さに、木の陰で涙を流すしか手立てを持たない子どもの弱さに。
僕がもっと有能であれば、口から血を吐く母上を見る事も目の下の隈が濃くなる父上を心配することもないのかもしれない。
そう考えると僕の意思とは無関係に涙が頬を伝うのだ。
そして自分では止め方が分からない僕の涙を止めるのは、いつもこの顔色と目付きの悪い男の、ガサガサと肌触りの悪い手だった。
「・・・勝手に触らないでください。憲兵に突き出しますよ。」
「俺さ~、こっち来て二年くらい経つけどさ~、お前みたいな奴は初めてなんよなぁ。」
「・・・・・・泣いてばかりの役立たずってことですか。」
「あはは、違う違う。お前卑屈になりすぎ。」
「でも僕は自分のことをそう表すしか────・・・、って、何のつもりです?」
「やる。さっき作ったんだ。今日は結構上手だろ?」
「・・・・・・」
人が真面目に話しているのというのに、この男は。
勝手に頭に乗せておいて・・・これのどこか上手だって?
飛び出した茎が帽子の網目を突き抜け、髪の間をぬうように刺さる。
花の向きを揃えたいのか、揃えたくないのか、わからない方向性。
絶妙に頭よりも大きく、帽子の鍔が無ければずるずると目元に落ちてくる大きさ。
頭から外し、まじまじと花冠を見る。
すると隣から吹き出すように笑う声が聞こえてきて、僕は異議を唱えるため片頬を故意に膨らませた。
「すまん、怒んなって。普通はさ、二、三日で諦めんだよ。そういう奴なら、やべえ数見たことある。今じゃあいつが魔法で来られないようにしたみたいだけど。」
「・・・一体何の、話で」
「でもお前は違う。もう三ヶ月近く毎日だ。それに断られても一切あいつの陰口を叩かない。幻獣には敬意を払い、自然を荒らさず・・・誰にも頼らず、こんな小さな体でたった一人だ。」
「は、はあ?突然、な、何ですか?子どもだからと馬鹿に、」
「してるように見えるなら、俺だってさすがに泣くぜ?」
「・・・・・・して、ないです。申し訳ありません。」
「はは、お前、本当真面目でえらいなぁ。立派だよ。あ、もちろん全部いい意味で。」
男は、帽子の上から僕の頭を無遠慮に撫でた。
距離をとり、頭を逸らしてもその分だけついてきてまた頭しつこく撫でる。
僕は日頃、両親や家庭教師からこのように手放しで甘やかされたり、褒められたりすることがない。
僕の立場上、そう育てることは間違っていないし、正しいことだと分かっている。
だから、困ったことに僕はこういう時どう返していいのか分からない。
勝手に赤くなる頬を元に戻す方法、滲んでくる涙の止め方も分からないから、ただ黙るしかない。
男はいつも静かに、僕の気持ちが落ち着くまで待ってくれる。
そしてこの日の別れ際、男はポケットから小瓶を取り出し僕に差し出した。
信用できないかもしれないからと、一度手を引っ込めた男は近くに落ちていた石でいきなり自身の頭を打ち付け血を流し、唖然とする僕の目の前で小瓶を中身を数滴垂らして見せた。
男の額から淡い光が溢れた後、血は止まり、抉れていた肉が元に戻っていた。
衝撃的な事実に動けなくなった僕の手を取り、男はそこへ小瓶を乗せ、手を重ねた。
ただでさえ細い目を、更に細めて。
「いや~・・・それにしてもこれ作らせるの大変だったわ。怖ぇ~くらい条件つけてくるし・・・全部契約書まで書かせるんだぜ?借金取りみたいだろ?」
「あ・・・あなたは・・・っ」
「俺はまだ《癒しの魔法》使えないから・・・ごめんな。修業っての?本当嫌で。でもお前見習って覚悟決めたから、そのうち使えるようになるかも。はは、俺ってかっこいー。」
「・・・え、あ、あの・・・」
小瓶を見つめ戸惑う僕を置き去りに、帽子の上から頭を撫で続ける男は話し続けた。
目に見える傷と違って、体の中の病気を完全に治すことは《東の森の守護者》でもできないけど、痛みや苦しみを軽減させることはできること。
小瓶の出処は誰にも言わないでほしいこと。
多分これから会えなくなること。
「お前と話すの楽しかったんだけどさ。ババア・・・、あ、ババア様?が逃げ道つくんなってうるせーんだわ。」
「そ、そんなっ、」
「こっちから用がある時だけ顔出すことにしたんだって。勝手だよな~。まあ、俺が来た時から言ってたことだし、本来の仕事はそれで事足りるんだろうけど。色々面倒だからもう家ごと隠すみたい。」
「・・・え、」
「あ、そうだ。最後にさ、よかったら俺のお願い聞いてくんない?大丈夫、すっげぇ簡単だから。」
僕と目線を合わせるように屈んだ男の顔は、笑っているのにどこか苦しそうに見えた。
いまだ状況が飲み込めず、言葉がうまく出てこない僕は必死に頷いて返事をする。
男は感謝を口にして、僕の顔を覗き込んだ。
瞳の色が新月の夜みたいで綺麗だといつも思っていたのに、今日も口にできそうにない。
「ハルタ、がんばれって、言ってくんない?」
「・・・・・・そ、それ、だけ・・・?」
「うん、そう。・・・やっぱやめとく?」
「(ふるふるふる)」
「はは、お前本当優しいな。」
何を言っているんだろう。
優しいのは、いつもあなたの方なのに。
僕の頭を撫でる手つきも、いつも心配してあの巨木を見にきてくれたことも、全部あなたが優しいから。
小瓶を握る手が、意識と関係なく震えてしまう。
彼の願いを叶えてしまったら、多分もう本当に、姿を隠して会えなくなってしまうのだろう。
赤の他人と割り切って悪態をついてきた。
いつの間にか、苦しくも優しい、あの温かな時間が好きになっていた。
この目付きの悪い痩せっぽっちの顔色の悪い男のことが、僕は大好きだ。
「・・・ハ、ハルタ、」
「ふふ、うん。なんかちょっと照れる。」
「が、がんば・・・れ・・・?」
「疑問形じゃん。まあいいか。」
「がっ、がんばれ!」
「・・・ふはっ、自主的なテイクII。」
よく分からないことを口にして、男は今度こそ嬉しそうに笑った。
そして労るような手つきで僕の頭を撫でたあと、何度も感謝の言葉を口にする。
寂しさと、今更好意を自覚した恥ずかしさで、顔があげられず俯くばかりの僕の腕に掛かった花冠を見て「下手でごめんな」と男は呟いて────────
「・・・ハルタ?」
僕の前から姿を消したのだった。
----------------☆
「うゔ~・・・、リオ・・・暑いから離れろよぉ・・・。つか、ここ俺の寝室ぅ・・・」
「おはようございます。《東の森の守護者》様。今日も大変美しく・・・ああ、顔色もよろしいですね。体温はええっと、」
「っ、ぁぁわぁああ!ふっ、服の中を、まさぐるなぁああああ!!」
「お断りします。僕が触りたいだけなので、っ、だから叩くならもっと思いきり、」
「ひぃいいっ、」
寝室を分けるだなんて、とんでもない。
あの竜のおかげでやっと、やっと、彼を見つけることができたのに、片時だって離れてたまるものかと今日も鼻孔いっぱいに彼の甘い香りを堪能する。
彼と再会できたのは、《東の森の守護者》の代替りの報告を先代となる第十三代と、第十四代が揃って宮殿に訪れた時だった。
「・・・よろしく、お願い、します・・・」
僕が彼を見間違えるわけがない。
毎夜の如く夢に見るほど会いたかった彼よりも、僕の方が背が随分高くなっていることに驚いた。
猫背の彼はフードを深く被り、こちらを少しも見ようとしない。
早く帰りたいと物語っている姿が可笑しくて、必死に笑いそうになるのを我慢した。
久しぶりに会えた喜びを伝えたかったのに、彼は僕のことに気づきもせず、さっさと第十三代と森へ帰っていった。
猛烈な虚無感と、不可解な嫉妬心を覚えたが、仕方あるまい。
あれから約八年、僕の角は父上よりも太く大きくなり、背は五十センチ以上伸びていた。
「あ!お、お前・・・リオ!ま、またっ、首にキ、キスマーク・・・つか、もうこれ歯型じゃん!!ややややめろっつってんだろ!」
「僕は《東の森の守護者》様の番ですから。当然の権利です。」
「だっ、だから、番って何なんだ?!そんなシステム知らないんだけど??」
「長年の恨みのようなものですから。そのうち教えますので、今は好きにさせていただきます。」
「何それっ!?怖っ!」
震える真似をする彼の手を取り、リビングへ向かう。
年季の入った壁や床は所々修繕が必要で、彼は気にしないと言ったけどこれから一生住む家だ。僕が直すことにした。
眠そうな目を擦り渋々ダイニングチェアに座った彼の前へ、すでに準備してあった焼き立てパンと具材を大きめにカットしたスープ、サラダを差し出す。
「いただきます」と口にして、小リスのように口を動かす彼を眺めるのが僕の毎日の、幸せな日課だ。
「なあ、リオ。」
「はい、何でしょう。まだ何か食事をご用意しましょうか?」
「や、俺もう腹一杯・・・、違う、そうじゃなくて、お前さ、」
「はい。今日の寝癖もとても素敵です。」
「お前、どんな人がタイプだ?」
「・・・はい?」
申し訳ないことに、彼の発言の意味が分からない。
彼の隣に椅子を移動させ彼の口元を拭いていると、残念なことにナプキンを奪い取られてしまった。
「別に急いでるわけじゃねぇけど、お前の好み知っとかねぇと後々嫁探しで困るだろ。」
「よめさがし。」
「お前の子どもは俺からすると孫・・・?なら俺は際限なく甘やかしてもいいよな。お菓子いっぱい買ってやるんだ。」
「まご。」
「・・・あ、ひょっとして同性が好きか?そっか、だったらちょっと別の手を考え、んひぃっ!か、顔!ちちちち近いって!」
考え事を始める彼の肩を抱き寄せた。
当時は大きく見えた体────痩せているのは変わらない────は、年が経つとこんなにも小さく感じる。
耳を赤くさせ目を泳がせる彼の顔を捕まえて、強引に目を合わせた。
ようやく伝える時がきたのだと瞬間的に悟った。
「新月の夜の瞳が、綺麗だなといつも思っていました。」
「っ、これは、ただっ、く、黒いってだけだから!日本人なら普通の色!は、離れなさい!」
「・・・この国の《森の守護者たち》は、代々真名を配偶者となる者にしか教えないそうですね。禁書棚の歴史書で読みました。王族さえ彼らの名前を呼ばないのは単純に知らないから。」
「・・・そ、そうらしい、な?けど、今そんな話する必要────────」
恐らくこの人は、あの時そんなこと知らなかったのだろう。
ただ単純に誰かに背中を押して欲しくて、たまたま僕がそこにいただけ。
でも、それでいい。十分だ。
彼がこの立場まで辿り着いた理由の一つに、僕の言葉がある。
何と誇らしいことだろう。
「そうだ、ハルタさん。またあのおはぎを作ってくださいね。」
「・・・・・・は、」
「さあ、歯を磨いたら森の見回りに行きますよ。早く準備しましょう。ええっと、今日の服は、」
「ちょちょちょっ、と待て!!お、お前っ、リオ!!?は?」
まるであの時と、立場が逆だ。
混乱する僕と、それを嗜めるまだ《東の森の守護者》になる前のハルタさん。
手を引いて彼の体を引き寄せる。
額に触れるだけのキスをした。
とくとくと激しく鳴り響く鼓動は僕と彼、二人のものだろう。
「ハルタさん、よくがんばったね。」
ぴくりと眉を動かしたハルタさんの夜が潤んでいく。
今度は鼻先にキスをして、僕は彼を抱きしめた。
おしまい
----------------☆
読んでいただき、ありがとうございました◡̈
また、どこかでお会いできるのを楽しみにしております。
N2O 2025.7.20
追記 (2025.8.8)
素敵なイラストを描いていただきましたので、下に⇩載せます♡
----------------☆
いっそ雨でも降ってくれたら誤魔化しがきくというのに、木々の間から見える空は腹が立つほど青かった。
濡れたズボンを乾かすのにはちょうどいいかもしれないが、巨木の影に隠れていてはその恩恵にあやかる事もできない。
擦りすぎた目元はヒリヒリと痛んで、今日もダメだったという事実を僕に突きつけてくる。
────こんなちっぽけな僕に、できることがあるのだろうか。
「おー、嬢ちゃん。今日もやっぱりここに居たか。お前も懲りないねぇ。」
「・・・僕は歴とした男です。何度も言わせないでください。あと迷子でもありませんので、一人で帰れます。」
「まあまあ、そう言うなって。ほら、お前も食え。うまいぞ?」
「・・・・・・またあの甘い煮豆を穀物に塗りたくった悪趣味な菓子ですか?」
「そんなこと言って食うくせに。お前おはぎ絶対好きじゃん。」
「・・・・・・」
誰にもこの様な姿を見られたくないからこうやって、わざわざ人目につかない巨木の影を選んだというのに、僕は今日もこの男に見つかってしまった。
この森へ足を運んだ初日は、目的を達成できないばかりかこんな無神経な男に声をかけられるだなんて・・・と、更に泣けてきて、随分とこの男を狼狽えさせたことを思い出す。
帽子で顔を隠しながら、慎重に目の前の男の様子を窺った日が懐かしい。
武器になるようなものは何も・・・と言うか、いつもこの男の手には木の実や山菜の入った小さな籠か、お世辞にも上手とは言えない野花の冠しか持っていない。
何者か知らないけど目つきが悪い割に、お人好しもお人好し。
こんなのが盗賊なわけもないと、疑り深い僕が早々に切り替えたぐらいだ。
もし逆に、獣や盗賊の類に襲われたらこの男はどうするつもりなのだろう。
大手を振って人様のことは言えないが、この森に入る装備としては不十分なのではないか。
そんな余計な心配をしたことを、昨日のことのように覚えている。
・・・まあ、仕方あるまい。
万が一の緊急事態には、不格好な見た目の割に甘くて美味しい菓子に免じて僕がこの男を助けてやろう。
「で、魔法使いサマへのアタックは今日もダメだったん?本当ケチな奴だな~。」
「・・・変な言い方はやめてください。それにあの方は《東の森の守護者》様、です。ケチ等と低俗な表現は許されません。あなたはお会いしたことがないでしょうけど、あの方は聡明で誰にでも公平、素晴らしい力を持った第十三代《東の────」
「はいはいはい、わかったわかったわかった。ダメだったわけね、うん。わかったって。ほら俺の分、もう一つおはぎ食えよ。」
「・・・・・・」
城の者の目を盗みここまで一人で来た手前、僕は完璧に素性を隠したつもりだ。
馬は森の入り口に繋ぎ、ここまでは徒歩。
髪はできるだけ帽子の中に隠し、いつも服は庭師に無理を言って彼の息子のお古を借りている。
大きな鍔の帽子を深く被れば、獣耳はもちろん見えなくなる。
僕の鹿角が小さくまだ目立たないことを嬉しく思うのは、ここへ来る時だけだ。
正直僕にとってここへ来ることが、最後の頼みの綱だ。
どれだけ優秀な医者や祈祷師を呼んだところで、母上の具合は良くならなかった。
それどころか日に日に起きていられる時間が短くなり、最近は会話さえままならないほどに弱りきっている。
父上にはこれ以上の心労をおかけしたくない。
だから内緒で城の書庫、禁書棚まで読み漁り辿り着いたのがこの東の森に棲む《東の森の守護者》様の存在。
代々《東の森の守護者》の名を受け継ぐ者は、"御業"とされる治癒や回復の魔法を使うことができると知った。
何でも妖精の力を借りるとか・・・、本当のところは御本人にしかわからないことだが。
だから僕は、ここへ来た。
《東の森の守護者》様が御力を貸してくださると、手放しで、勝手に、無責任に信じ込んで。
「・・・《東の森の守護者》様のおっしゃるとおりだということは十分理解しています。一人に力を貸せば、他の者にも力を貸さなくてはならない。特に"御業"となれば・・・、それもそうでしょう。魔法の行使には責任が伴う。当たり前の事、です。だけど・・・、だけど、僕は・・・・・・」
・・・ああ、腹が立つ。
自分では何もできない無力さに、木の陰で涙を流すしか手立てを持たない子どもの弱さに。
僕がもっと有能であれば、口から血を吐く母上を見る事も目の下の隈が濃くなる父上を心配することもないのかもしれない。
そう考えると僕の意思とは無関係に涙が頬を伝うのだ。
そして自分では止め方が分からない僕の涙を止めるのは、いつもこの顔色と目付きの悪い男の、ガサガサと肌触りの悪い手だった。
「・・・勝手に触らないでください。憲兵に突き出しますよ。」
「俺さ~、こっち来て二年くらい経つけどさ~、お前みたいな奴は初めてなんよなぁ。」
「・・・・・・泣いてばかりの役立たずってことですか。」
「あはは、違う違う。お前卑屈になりすぎ。」
「でも僕は自分のことをそう表すしか────・・・、って、何のつもりです?」
「やる。さっき作ったんだ。今日は結構上手だろ?」
「・・・・・・」
人が真面目に話しているのというのに、この男は。
勝手に頭に乗せておいて・・・これのどこか上手だって?
飛び出した茎が帽子の網目を突き抜け、髪の間をぬうように刺さる。
花の向きを揃えたいのか、揃えたくないのか、わからない方向性。
絶妙に頭よりも大きく、帽子の鍔が無ければずるずると目元に落ちてくる大きさ。
頭から外し、まじまじと花冠を見る。
すると隣から吹き出すように笑う声が聞こえてきて、僕は異議を唱えるため片頬を故意に膨らませた。
「すまん、怒んなって。普通はさ、二、三日で諦めんだよ。そういう奴なら、やべえ数見たことある。今じゃあいつが魔法で来られないようにしたみたいだけど。」
「・・・一体何の、話で」
「でもお前は違う。もう三ヶ月近く毎日だ。それに断られても一切あいつの陰口を叩かない。幻獣には敬意を払い、自然を荒らさず・・・誰にも頼らず、こんな小さな体でたった一人だ。」
「は、はあ?突然、な、何ですか?子どもだからと馬鹿に、」
「してるように見えるなら、俺だってさすがに泣くぜ?」
「・・・・・・して、ないです。申し訳ありません。」
「はは、お前、本当真面目でえらいなぁ。立派だよ。あ、もちろん全部いい意味で。」
男は、帽子の上から僕の頭を無遠慮に撫でた。
距離をとり、頭を逸らしてもその分だけついてきてまた頭しつこく撫でる。
僕は日頃、両親や家庭教師からこのように手放しで甘やかされたり、褒められたりすることがない。
僕の立場上、そう育てることは間違っていないし、正しいことだと分かっている。
だから、困ったことに僕はこういう時どう返していいのか分からない。
勝手に赤くなる頬を元に戻す方法、滲んでくる涙の止め方も分からないから、ただ黙るしかない。
男はいつも静かに、僕の気持ちが落ち着くまで待ってくれる。
そしてこの日の別れ際、男はポケットから小瓶を取り出し僕に差し出した。
信用できないかもしれないからと、一度手を引っ込めた男は近くに落ちていた石でいきなり自身の頭を打ち付け血を流し、唖然とする僕の目の前で小瓶を中身を数滴垂らして見せた。
男の額から淡い光が溢れた後、血は止まり、抉れていた肉が元に戻っていた。
衝撃的な事実に動けなくなった僕の手を取り、男はそこへ小瓶を乗せ、手を重ねた。
ただでさえ細い目を、更に細めて。
「いや~・・・それにしてもこれ作らせるの大変だったわ。怖ぇ~くらい条件つけてくるし・・・全部契約書まで書かせるんだぜ?借金取りみたいだろ?」
「あ・・・あなたは・・・っ」
「俺はまだ《癒しの魔法》使えないから・・・ごめんな。修業っての?本当嫌で。でもお前見習って覚悟決めたから、そのうち使えるようになるかも。はは、俺ってかっこいー。」
「・・・え、あ、あの・・・」
小瓶を見つめ戸惑う僕を置き去りに、帽子の上から頭を撫で続ける男は話し続けた。
目に見える傷と違って、体の中の病気を完全に治すことは《東の森の守護者》でもできないけど、痛みや苦しみを軽減させることはできること。
小瓶の出処は誰にも言わないでほしいこと。
多分これから会えなくなること。
「お前と話すの楽しかったんだけどさ。ババア・・・、あ、ババア様?が逃げ道つくんなってうるせーんだわ。」
「そ、そんなっ、」
「こっちから用がある時だけ顔出すことにしたんだって。勝手だよな~。まあ、俺が来た時から言ってたことだし、本来の仕事はそれで事足りるんだろうけど。色々面倒だからもう家ごと隠すみたい。」
「・・・え、」
「あ、そうだ。最後にさ、よかったら俺のお願い聞いてくんない?大丈夫、すっげぇ簡単だから。」
僕と目線を合わせるように屈んだ男の顔は、笑っているのにどこか苦しそうに見えた。
いまだ状況が飲み込めず、言葉がうまく出てこない僕は必死に頷いて返事をする。
男は感謝を口にして、僕の顔を覗き込んだ。
瞳の色が新月の夜みたいで綺麗だといつも思っていたのに、今日も口にできそうにない。
「ハルタ、がんばれって、言ってくんない?」
「・・・・・・そ、それ、だけ・・・?」
「うん、そう。・・・やっぱやめとく?」
「(ふるふるふる)」
「はは、お前本当優しいな。」
何を言っているんだろう。
優しいのは、いつもあなたの方なのに。
僕の頭を撫でる手つきも、いつも心配してあの巨木を見にきてくれたことも、全部あなたが優しいから。
小瓶を握る手が、意識と関係なく震えてしまう。
彼の願いを叶えてしまったら、多分もう本当に、姿を隠して会えなくなってしまうのだろう。
赤の他人と割り切って悪態をついてきた。
いつの間にか、苦しくも優しい、あの温かな時間が好きになっていた。
この目付きの悪い痩せっぽっちの顔色の悪い男のことが、僕は大好きだ。
「・・・ハ、ハルタ、」
「ふふ、うん。なんかちょっと照れる。」
「が、がんば・・・れ・・・?」
「疑問形じゃん。まあいいか。」
「がっ、がんばれ!」
「・・・ふはっ、自主的なテイクII。」
よく分からないことを口にして、男は今度こそ嬉しそうに笑った。
そして労るような手つきで僕の頭を撫でたあと、何度も感謝の言葉を口にする。
寂しさと、今更好意を自覚した恥ずかしさで、顔があげられず俯くばかりの僕の腕に掛かった花冠を見て「下手でごめんな」と男は呟いて────────
「・・・ハルタ?」
僕の前から姿を消したのだった。
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「うゔ~・・・、リオ・・・暑いから離れろよぉ・・・。つか、ここ俺の寝室ぅ・・・」
「おはようございます。《東の森の守護者》様。今日も大変美しく・・・ああ、顔色もよろしいですね。体温はええっと、」
「っ、ぁぁわぁああ!ふっ、服の中を、まさぐるなぁああああ!!」
「お断りします。僕が触りたいだけなので、っ、だから叩くならもっと思いきり、」
「ひぃいいっ、」
寝室を分けるだなんて、とんでもない。
あの竜のおかげでやっと、やっと、彼を見つけることができたのに、片時だって離れてたまるものかと今日も鼻孔いっぱいに彼の甘い香りを堪能する。
彼と再会できたのは、《東の森の守護者》の代替りの報告を先代となる第十三代と、第十四代が揃って宮殿に訪れた時だった。
「・・・よろしく、お願い、します・・・」
僕が彼を見間違えるわけがない。
毎夜の如く夢に見るほど会いたかった彼よりも、僕の方が背が随分高くなっていることに驚いた。
猫背の彼はフードを深く被り、こちらを少しも見ようとしない。
早く帰りたいと物語っている姿が可笑しくて、必死に笑いそうになるのを我慢した。
久しぶりに会えた喜びを伝えたかったのに、彼は僕のことに気づきもせず、さっさと第十三代と森へ帰っていった。
猛烈な虚無感と、不可解な嫉妬心を覚えたが、仕方あるまい。
あれから約八年、僕の角は父上よりも太く大きくなり、背は五十センチ以上伸びていた。
「あ!お、お前・・・リオ!ま、またっ、首にキ、キスマーク・・・つか、もうこれ歯型じゃん!!ややややめろっつってんだろ!」
「僕は《東の森の守護者》様の番ですから。当然の権利です。」
「だっ、だから、番って何なんだ?!そんなシステム知らないんだけど??」
「長年の恨みのようなものですから。そのうち教えますので、今は好きにさせていただきます。」
「何それっ!?怖っ!」
震える真似をする彼の手を取り、リビングへ向かう。
年季の入った壁や床は所々修繕が必要で、彼は気にしないと言ったけどこれから一生住む家だ。僕が直すことにした。
眠そうな目を擦り渋々ダイニングチェアに座った彼の前へ、すでに準備してあった焼き立てパンと具材を大きめにカットしたスープ、サラダを差し出す。
「いただきます」と口にして、小リスのように口を動かす彼を眺めるのが僕の毎日の、幸せな日課だ。
「なあ、リオ。」
「はい、何でしょう。まだ何か食事をご用意しましょうか?」
「や、俺もう腹一杯・・・、違う、そうじゃなくて、お前さ、」
「はい。今日の寝癖もとても素敵です。」
「お前、どんな人がタイプだ?」
「・・・はい?」
申し訳ないことに、彼の発言の意味が分からない。
彼の隣に椅子を移動させ彼の口元を拭いていると、残念なことにナプキンを奪い取られてしまった。
「別に急いでるわけじゃねぇけど、お前の好み知っとかねぇと後々嫁探しで困るだろ。」
「よめさがし。」
「お前の子どもは俺からすると孫・・・?なら俺は際限なく甘やかしてもいいよな。お菓子いっぱい買ってやるんだ。」
「まご。」
「・・・あ、ひょっとして同性が好きか?そっか、だったらちょっと別の手を考え、んひぃっ!か、顔!ちちちち近いって!」
考え事を始める彼の肩を抱き寄せた。
当時は大きく見えた体────痩せているのは変わらない────は、年が経つとこんなにも小さく感じる。
耳を赤くさせ目を泳がせる彼の顔を捕まえて、強引に目を合わせた。
ようやく伝える時がきたのだと瞬間的に悟った。
「新月の夜の瞳が、綺麗だなといつも思っていました。」
「っ、これは、ただっ、く、黒いってだけだから!日本人なら普通の色!は、離れなさい!」
「・・・この国の《森の守護者たち》は、代々真名を配偶者となる者にしか教えないそうですね。禁書棚の歴史書で読みました。王族さえ彼らの名前を呼ばないのは単純に知らないから。」
「・・・そ、そうらしい、な?けど、今そんな話する必要────────」
恐らくこの人は、あの時そんなこと知らなかったのだろう。
ただ単純に誰かに背中を押して欲しくて、たまたま僕がそこにいただけ。
でも、それでいい。十分だ。
彼がこの立場まで辿り着いた理由の一つに、僕の言葉がある。
何と誇らしいことだろう。
「そうだ、ハルタさん。またあのおはぎを作ってくださいね。」
「・・・・・・は、」
「さあ、歯を磨いたら森の見回りに行きますよ。早く準備しましょう。ええっと、今日の服は、」
「ちょちょちょっ、と待て!!お、お前っ、リオ!!?は?」
まるであの時と、立場が逆だ。
混乱する僕と、それを嗜めるまだ《東の森の守護者》になる前のハルタさん。
手を引いて彼の体を引き寄せる。
額に触れるだけのキスをした。
とくとくと激しく鳴り響く鼓動は僕と彼、二人のものだろう。
「ハルタさん、よくがんばったね。」
ぴくりと眉を動かしたハルタさんの夜が潤んでいく。
今度は鼻先にキスをして、僕は彼を抱きしめた。
おしまい
----------------☆
読んでいただき、ありがとうございました◡̈
また、どこかでお会いできるのを楽しみにしております。
N2O 2025.7.20
追記 (2025.8.8)
素敵なイラストを描いていただきましたので、下に⇩載せます♡
----------------☆
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